猪突『大機小機 東京市場国際化の功罪』日経H22.4.27
猪突『大機小機 東京市場国際化の功罪』日経H22.4.27
東京証券市場を国際化し、金融産業を将来の成長産業に育てようという政府の戦略は、残念なことに戦略的発想に欠けていた。
…欧米市場追随が国際化だという誤った戦略のもとで、海外の投資家が喜びそうなルールを次々に導入した。そのツケが様々なところに表れている。確かに海外の投資家の売買シェアは増えたが、その結果、企業業績とは無関係な売買が
増えてしまった。円が下がれば日本株が買われ、円が上がれば売られるというパターンが定着しつつある。
…結果として、国内の投資家には参加しにくい怖い市場になってしまい、ますます海外投資家に依存するという悪循環が起こっている。
個別企業を評価するという市場本来の機能は低下している。この機能を取り戻すには、国内の投資家が参加しやすい市場をつくる必要がある。
…国際化戦略の誤りのもっと深刻な問題は、海外の投資家に迎合したルールが日本企業を痛めていることだ。デフレ経済下での時価会計は長期投資の意欲をなえさせてしまった。
…海外の投資家が喜ぶと思って導入した制度は、本当に海外の投資家が望むものであったかどうか、冷静に反省してみる必要がある。
<外国資本の導入は不可避>
確かに、東証の株式市場で、保有比率が一番高いのは、「外国人=外国の会社・個人etc」です。企業や銀行による株式の持合が減り、その代わり、外国人投資家や、個人投資家の比率が高くなりました。

ですが、この流れは不可避です。なぜなら、日本の貯蓄率が低下し、日本は、いずれ間違いなく、貿易赤字=資本黒字(外国からの資本流入超過)になるからです。
新聞を解説 『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
政府が家計の貯蓄に頼って借金を重ねる構図に限界がみえ始めた。政府の負債残高が膨張し…家計資産に対する比率は66%まで上昇した。…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
<貯蓄率が低下すると・・・>

貯蓄Sが、①企業の借金:I・②政府の借金:G-T・③外国の日本に対する借金:EX-IMの原資です。国民が、政府に貸しているのです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
現在は、左辺がプラスなので、右辺の財政赤字・貿易黒字もプラスです。
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに

櫨浩一2006年 p106

現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺マイナス=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
(2)左辺マイナス=財政赤字ゼロ+貿易黒字マイナス
このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります。
貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増えることを示します。
「櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る」というのは、海外からの投資黒字=貿易赤字国になるということです。日本は、必ずそうなります。今のイギリスや、アメリカのようにです。
その際に、外国資本を導入するには、外国人が分かりやすいルール・システムにする必要があります。日本人が、新興国に投資する場合、「分かりやすいルール」「分かりやすい財務諸表」「分かりやすいバランスシート・損益計算書」でなければ、投資に二の足を踏みます。世界中が、同じルールで運営されていれば、日本の企業と、外国企業を比較検討し、投資先を選ぶことが可能です。ある新興国が「独自のルール」を採用していれば、比較検討が出来ません。
資本不足(貯蓄不足)が将来的に確実な日本は、国際的標準ルール=グローバル・スタンダードな会計を導入せざるを得ないのです。
東京証券市場を国際化し、金融産業を将来の成長産業に育てようという政府の戦略は、残念なことに戦略的発想に欠けていた。
…欧米市場追随が国際化だという誤った戦略のもとで、海外の投資家が喜びそうなルールを次々に導入した。そのツケが様々なところに表れている。確かに海外の投資家の売買シェアは増えたが、その結果、企業業績とは無関係な売買が
増えてしまった。円が下がれば日本株が買われ、円が上がれば売られるというパターンが定着しつつある。
…結果として、国内の投資家には参加しにくい怖い市場になってしまい、ますます海外投資家に依存するという悪循環が起こっている。
個別企業を評価するという市場本来の機能は低下している。この機能を取り戻すには、国内の投資家が参加しやすい市場をつくる必要がある。
…国際化戦略の誤りのもっと深刻な問題は、海外の投資家に迎合したルールが日本企業を痛めていることだ。デフレ経済下での時価会計は長期投資の意欲をなえさせてしまった。
…海外の投資家が喜ぶと思って導入した制度は、本当に海外の投資家が望むものであったかどうか、冷静に反省してみる必要がある。
<外国資本の導入は不可避>
確かに、東証の株式市場で、保有比率が一番高いのは、「外国人=外国の会社・個人etc」です。企業や銀行による株式の持合が減り、その代わり、外国人投資家や、個人投資家の比率が高くなりました。

ですが、この流れは不可避です。なぜなら、日本の貯蓄率が低下し、日本は、いずれ間違いなく、貿易赤字=資本黒字(外国からの資本流入超過)になるからです。
新聞を解説 『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
政府が家計の貯蓄に頼って借金を重ねる構図に限界がみえ始めた。政府の負債残高が膨張し…家計資産に対する比率は66%まで上昇した。…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
<貯蓄率が低下すると・・・>

貯蓄Sが、①企業の借金:I・②政府の借金:G-T・③外国の日本に対する借金:EX-IMの原資です。国民が、政府に貸しているのです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
現在は、左辺がプラスなので、右辺の財政赤字・貿易黒字もプラスです。
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに

櫨浩一2006年 p106

現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺マイナス=財政赤字プラス+貿易黒字マイナス
(2)左辺マイナス=財政赤字ゼロ+貿易黒字マイナス
このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります。
貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増えることを示します。
「櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る」というのは、海外からの投資黒字=貿易赤字国になるということです。日本は、必ずそうなります。今のイギリスや、アメリカのようにです。
その際に、外国資本を導入するには、外国人が分かりやすいルール・システムにする必要があります。日本人が、新興国に投資する場合、「分かりやすいルール」「分かりやすい財務諸表」「分かりやすいバランスシート・損益計算書」でなければ、投資に二の足を踏みます。世界中が、同じルールで運営されていれば、日本の企業と、外国企業を比較検討し、投資先を選ぶことが可能です。ある新興国が「独自のルール」を採用していれば、比較検討が出来ません。
資本不足(貯蓄不足)が将来的に確実な日本は、国際的標準ルール=グローバル・スタンダードな会計を導入せざるを得ないのです。
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