GDP 日米生産性の違い
『大機小機』日経H22.4.7 数字は筆者挿入
日本経済は短期的には不況の底を脱したようだが、長期的な成長率はどのようになるのだろうか。
潜在成長力とは土地、①労働力、②資本の増加、③生産要素の生産性の上昇率などを加えたもの…。…61~71年の高い成長率の要因は労働1.78%、資本2.57%、生産性の上昇率5.3%…。
①労働については戦後の過剰入□、②資本については固定資産や在庫品の不足、生産性については戦後の国際的遅れであり、それらは年を追って漸次消滅…。
現在の日本の潜在成長率の予想方法…20年までの平均成長率を実質1~1.5%前後とみているものがほとんどである。
…このうち最も予測が可能なのは①労働力で、人□が減るのでゼロ成長であろう。
…②資本は多くの予測が増加率を1%前後とみている。
…最も問題なのは③生産性の増大である。…日本の高成長期には、ソニーなどに優れた企業経営者がいて日本経済を引っ張った。そのような経営者が少なくなったことが、90年代、00年代の経済低迷に大きく影響している…。
<低すぎる日本の生産性>
GDPは次の3つの要素で構成されます。
① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)
GDPは,①労働力,②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。

現在,日本のGDPは,約500兆円ですが,今後,どのように推移していくと考えられるでしょうか。
まず,①労働量です。日本は,少子化・高齢化が進んでいます。現在のままでは,明らかに「減る」ことは,間違いありません。15才から,64才までを生産年齢人口と言いますが,今後その実数も,人口に占める割合も,大変な勢いで低下していきます。
図55 帝国書院『アクセス現代社会2008』 2008年 p50

次に②資本ストックです。機械や工場設備の量と,その稼働率ですが,やはり日本は,高度経済成長時代に,大変な設備投資をしてきました。つまり,企業が,機械や工場設備をどんどん増やしたのです。
表24 とうほう 資料集『政治・経済資料2008』 2008年 p227

この表のように,1955年~1970年まで,機械や工場設備(民間設備投資)の年平均増加率は,17.3%です。つまり,15年間もの間,前の年に比べて,17.3%ずつ,機械や工場設備を増やしてきたのです。日本がこの間に,GDPを増加させた要因のうち,27.1%が,設備投資によるものでした。
次に③技術力(生産性)です。やはり,日本の高度経済成長時代は,この技術力を,欧米,特にアメリカから導入していました。「欧米に追いつけ追い越せ」という時代だったのです。
図62 東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313

この時代は,欧米から,技術を導入すれば,自動的に生産性は上がっていたのです。1960年から1970年までの,GDP成長の要因のうち,45%を占めるのが,技術進歩だったのです 。もちろん,これが成長の一番の要因です。
「欧米に追いつけ追い越せ」の時代はとっくに過ぎました。「欧米の技術を導入すれば,経済成長できた」時代ではありません。すでに,世界一の水準にある日本は,今後,独自に,新たな技術や,ビジネスのやり方を開発していかなければなりません。
資本主義発展の原動力は「イノベーション=革新」です。日本では,第3次産業(サービス業)では,アメリカに比べて,まだまだ生産性が低いのです。今,地方の駅前中心商店街が,シャッター通りとなっています。そして,郊外型の大型スーパーが盛況です。人通りの少ない通りで,お客さんを待つのと,次から次へとお客さんが来るのとでは,どちらの生産性が高いかは明白です。①労働量と,②資本ストックを最大限に活用するのが,③技術力(生産性)なのです。
この生産性において、昔はともかく現在は、「米/英」に置いてきぼりにされている「日本」があります。
参考/引用文献 原田泰『新社会人に効く日本経済入門』毎日新聞社 2009 p80~
アメリカ・日本生産性比較

英国・日本生産性比較

アメリカを100とした場合、日本は、56.4%しかありません(イギリスに対しては70.7%)。これは、同じ時間働いて、アメリカが給与を1万円もらうのに、日本は5,600円に過ぎないことを示します。これでは、アメリカやイギリスに1人あたりGDPでも、どんどん置いて行かれるわけです。
日本は,3万8,457ドル(’08年 JETRO)です。オーストラリア,シンガポール(38,972ドル 同)イタリア(38,996ドル 同)にも抜かれています。OECD30か国中19位(2008年 内閣府)であり,日本は,もはや経済の一流国とはいえない状況です。
特に農林漁業は致命的に低いですね。サービス業、飲食宿泊業、運輸通信業、卸小売業などは、アメリカの40%ほどの生産性しか挙げていません。いかに「ムダなこと」をやっているかということです。
逆に言えば、この「生産性」を引き上げる余地がこんなにあるということは、「1人あたりGDP」を上昇させる余地も十分にあるということです。幼保一元化、空港のハブ空港化、混合診療の導入etc、サービス業において生産性を挙げる余地は十二分にあります。
日本経済は短期的には不況の底を脱したようだが、長期的な成長率はどのようになるのだろうか。
潜在成長力とは土地、①労働力、②資本の増加、③生産要素の生産性の上昇率などを加えたもの…。…61~71年の高い成長率の要因は労働1.78%、資本2.57%、生産性の上昇率5.3%…。
①労働については戦後の過剰入□、②資本については固定資産や在庫品の不足、生産性については戦後の国際的遅れであり、それらは年を追って漸次消滅…。
現在の日本の潜在成長率の予想方法…20年までの平均成長率を実質1~1.5%前後とみているものがほとんどである。
…このうち最も予測が可能なのは①労働力で、人□が減るのでゼロ成長であろう。
…②資本は多くの予測が増加率を1%前後とみている。
…最も問題なのは③生産性の増大である。…日本の高成長期には、ソニーなどに優れた企業経営者がいて日本経済を引っ張った。そのような経営者が少なくなったことが、90年代、00年代の経済低迷に大きく影響している…。
<低すぎる日本の生産性>
GDPは次の3つの要素で構成されます。
① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)
GDPは,①労働力,②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。

現在,日本のGDPは,約500兆円ですが,今後,どのように推移していくと考えられるでしょうか。
まず,①労働量です。日本は,少子化・高齢化が進んでいます。現在のままでは,明らかに「減る」ことは,間違いありません。15才から,64才までを生産年齢人口と言いますが,今後その実数も,人口に占める割合も,大変な勢いで低下していきます。
図55 帝国書院『アクセス現代社会2008』 2008年 p50

次に②資本ストックです。機械や工場設備の量と,その稼働率ですが,やはり日本は,高度経済成長時代に,大変な設備投資をしてきました。つまり,企業が,機械や工場設備をどんどん増やしたのです。
表24 とうほう 資料集『政治・経済資料2008』 2008年 p227

この表のように,1955年~1970年まで,機械や工場設備(民間設備投資)の年平均増加率は,17.3%です。つまり,15年間もの間,前の年に比べて,17.3%ずつ,機械や工場設備を増やしてきたのです。日本がこの間に,GDPを増加させた要因のうち,27.1%が,設備投資によるものでした。
次に③技術力(生産性)です。やはり,日本の高度経済成長時代は,この技術力を,欧米,特にアメリカから導入していました。「欧米に追いつけ追い越せ」という時代だったのです。
図62 東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313

この時代は,欧米から,技術を導入すれば,自動的に生産性は上がっていたのです。1960年から1970年までの,GDP成長の要因のうち,45%を占めるのが,技術進歩だったのです 。もちろん,これが成長の一番の要因です。
「欧米に追いつけ追い越せ」の時代はとっくに過ぎました。「欧米の技術を導入すれば,経済成長できた」時代ではありません。すでに,世界一の水準にある日本は,今後,独自に,新たな技術や,ビジネスのやり方を開発していかなければなりません。
資本主義発展の原動力は「イノベーション=革新」です。日本では,第3次産業(サービス業)では,アメリカに比べて,まだまだ生産性が低いのです。今,地方の駅前中心商店街が,シャッター通りとなっています。そして,郊外型の大型スーパーが盛況です。人通りの少ない通りで,お客さんを待つのと,次から次へとお客さんが来るのとでは,どちらの生産性が高いかは明白です。①労働量と,②資本ストックを最大限に活用するのが,③技術力(生産性)なのです。
この生産性において、昔はともかく現在は、「米/英」に置いてきぼりにされている「日本」があります。
参考/引用文献 原田泰『新社会人に効く日本経済入門』毎日新聞社 2009 p80~
アメリカ・日本生産性比較

英国・日本生産性比較

アメリカを100とした場合、日本は、56.4%しかありません(イギリスに対しては70.7%)。これは、同じ時間働いて、アメリカが給与を1万円もらうのに、日本は5,600円に過ぎないことを示します。これでは、アメリカやイギリスに1人あたりGDPでも、どんどん置いて行かれるわけです。
日本は,3万8,457ドル(’08年 JETRO)です。オーストラリア,シンガポール(38,972ドル 同)イタリア(38,996ドル 同)にも抜かれています。OECD30か国中19位(2008年 内閣府)であり,日本は,もはや経済の一流国とはいえない状況です。
特に農林漁業は致命的に低いですね。サービス業、飲食宿泊業、運輸通信業、卸小売業などは、アメリカの40%ほどの生産性しか挙げていません。いかに「ムダなこと」をやっているかということです。
逆に言えば、この「生産性」を引き上げる余地がこんなにあるということは、「1人あたりGDP」を上昇させる余地も十分にあるということです。幼保一元化、空港のハブ空港化、混合診療の導入etc、サービス業において生産性を挙げる余地は十二分にあります。
スポンサーサイト
theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済