『全大学でキャリア教育』読売新聞H22.3.30
『全大学でキャリア教育』読売新聞H22.3.30
来年春から義務化
大学生の就職内定率が就職氷河期以来の落ち込みを記録するなか、全国の大学、短大に、キャリア教育が義務づけられることになった。文部科学省が大学生の「就業力」向上5か年計画の柱として行う。4月以降、先進事例を集めて各大学に周知し、2011年春から正式導入する。
キャリア教育とは、社会的・職業的自立に向け、必要な知識、技能、態度をはぐくむ教育のこと。同省は、全国約800の大学と約400の短大に対して、こうした教育をカリキュラムに盛り込むよう求める。
具体的には、コミュニケーション能力や情報技術(IT)など社会人として必要な力について、どの授業でどう伸ばすかを全授業について示す東京女学館大の取り組みや、1年生から将来の進路を考えるカリキュラムを設ける目白大の例などを想定している。
同省によると、職業意識形成の授業がある大学は7割に上るなど、多くの大学で既にキャリア教育を実施しているが、服装や化粧法などノウハウだけのケースも少なくない。このため、大学の設置基準を改正、キャリア教育を大学教育として正式に位置づけた。
今の時代、仕事が変わってきています。簡単に言えば、「誰にでもできる仕事」と、「一定程度の能力を必要とする仕事」に分化しています。中間がありません。前者は、「形式知」といわれるもので、マニュアルに従えば、誰にでも出来ます。IT化によって、その知識がまとめられ、マニュアル化しました。コンビニのレジ打ちなどが該当します。
後者は、「暗黙知」といわれます。そのノウハウを、他者に伝えることの出来ない、「スキル」です。これは、誰にでも出来ませんので、希少価値が高く、当然給与水準も高くなります。ラーメン店の「その人にしか出せない味」や、会社で「その人にしか出来ない、組織として人をまとめる力」などを想像してください。
上記の新聞記事は、「コミュニケーション能力」といった、後者のスキルを身につけさせ、付加価値のある大学生を育てようという試みです。
大竹文雄『競争と公平感』中公新書2010 p51~

「男の非正規」は、近年の労働市場の変化の象徴でもある。・・・「男の非正規」が増えた背景に、技術革新があることだ。実は25才から54才の年齢層の男性の就業率は2000年以前は95%前後であったが、2000年代に入って数%低下している。特に若年男性の就業率の低下が大きい。これに対し、女性の就業率はトレンド的に上昇してきており、特に若年女性でその傾向が顕著である。女性の就業率が高まったとはいえ、男性よりも低いという事実は変わらないが、男性の就業率の低下と女性の就業率の上昇という変化が重要である。技術革新は、長時間労働や体力を要求する仕事から、対人能力、文書表現能力、技術力、データ解析能力、創造的能力などを要求する仕事に、仕事の中身を変えてきた。こういう仕事で必要とされる能力には、男女の間での差が小さいどころか、女性の方が得意とするものも含まれる。
それに加えて、技術革新やグローバル化の進展は、製品・サービス需要の不確実性を大きくした。需要の不確実性に対応するためには二つの方法がある。第1は正社員の雇用や賃金の不安定性を増すことで対応することである。第2は、正社員の雇用の安定性は維持したまま非正規社員という雇用の保障が小さい労働者の雇用比率を増すことである。アメリカは、主に第一の方法で需要の不確実性の増大に対応し、日本は第2の方法で対応した。・・・それが90年代末から2000年代にかけての非正規雇用者比率の高まりの理由である。
p140~
・・・なぜ最近になって貧困率が高くなってきたのだろうか。これにはいくつかの理由がある。・・・第2は、技術革新の影響である。コンピュータの発達で、コンピュータの得意な計算、決まりきった仕事はどんどん人からコンピューターに変わってきている。現在は駅の改札は全て自動改札であるが、昔は駅員の人が切符を確認していた。・・・日本に残っているのは、コンピューターにできない仕事か、コンピューターにさせるととてもお金がかかる仕事になる。それには二つのタイプがある。一つは、掃除や配達といった、機械化するとお金がかかるが多くの人ができる仕事である。こうした仕事は賃金が安くなる。
もう一つは、アイディアを考えたり、データから判断したり、人とコミュニケーションをとったりする仕事で、高度な能力を必要とし、その仕事ができる人が少ないタイプのものである。つまり、賃金の高い仕事と低い仕事に二極化してきているのである。
この二極化の流れは止めようがありません。「高校生・大学生にキャリア教育を」というのは、少しでも付加価値を持った学生(その人ならではのスキル)を育成したいということです。
来年春から義務化
大学生の就職内定率が就職氷河期以来の落ち込みを記録するなか、全国の大学、短大に、キャリア教育が義務づけられることになった。文部科学省が大学生の「就業力」向上5か年計画の柱として行う。4月以降、先進事例を集めて各大学に周知し、2011年春から正式導入する。
キャリア教育とは、社会的・職業的自立に向け、必要な知識、技能、態度をはぐくむ教育のこと。同省は、全国約800の大学と約400の短大に対して、こうした教育をカリキュラムに盛り込むよう求める。
具体的には、コミュニケーション能力や情報技術(IT)など社会人として必要な力について、どの授業でどう伸ばすかを全授業について示す東京女学館大の取り組みや、1年生から将来の進路を考えるカリキュラムを設ける目白大の例などを想定している。
同省によると、職業意識形成の授業がある大学は7割に上るなど、多くの大学で既にキャリア教育を実施しているが、服装や化粧法などノウハウだけのケースも少なくない。このため、大学の設置基準を改正、キャリア教育を大学教育として正式に位置づけた。
今の時代、仕事が変わってきています。簡単に言えば、「誰にでもできる仕事」と、「一定程度の能力を必要とする仕事」に分化しています。中間がありません。前者は、「形式知」といわれるもので、マニュアルに従えば、誰にでも出来ます。IT化によって、その知識がまとめられ、マニュアル化しました。コンビニのレジ打ちなどが該当します。
後者は、「暗黙知」といわれます。そのノウハウを、他者に伝えることの出来ない、「スキル」です。これは、誰にでも出来ませんので、希少価値が高く、当然給与水準も高くなります。ラーメン店の「その人にしか出せない味」や、会社で「その人にしか出来ない、組織として人をまとめる力」などを想像してください。
上記の新聞記事は、「コミュニケーション能力」といった、後者のスキルを身につけさせ、付加価値のある大学生を育てようという試みです。
大竹文雄『競争と公平感』中公新書2010 p51~

「男の非正規」は、近年の労働市場の変化の象徴でもある。・・・「男の非正規」が増えた背景に、技術革新があることだ。実は25才から54才の年齢層の男性の就業率は2000年以前は95%前後であったが、2000年代に入って数%低下している。特に若年男性の就業率の低下が大きい。これに対し、女性の就業率はトレンド的に上昇してきており、特に若年女性でその傾向が顕著である。女性の就業率が高まったとはいえ、男性よりも低いという事実は変わらないが、男性の就業率の低下と女性の就業率の上昇という変化が重要である。技術革新は、長時間労働や体力を要求する仕事から、対人能力、文書表現能力、技術力、データ解析能力、創造的能力などを要求する仕事に、仕事の中身を変えてきた。こういう仕事で必要とされる能力には、男女の間での差が小さいどころか、女性の方が得意とするものも含まれる。
それに加えて、技術革新やグローバル化の進展は、製品・サービス需要の不確実性を大きくした。需要の不確実性に対応するためには二つの方法がある。第1は正社員の雇用や賃金の不安定性を増すことで対応することである。第2は、正社員の雇用の安定性は維持したまま非正規社員という雇用の保障が小さい労働者の雇用比率を増すことである。アメリカは、主に第一の方法で需要の不確実性の増大に対応し、日本は第2の方法で対応した。・・・それが90年代末から2000年代にかけての非正規雇用者比率の高まりの理由である。
p140~
・・・なぜ最近になって貧困率が高くなってきたのだろうか。これにはいくつかの理由がある。・・・第2は、技術革新の影響である。コンピュータの発達で、コンピュータの得意な計算、決まりきった仕事はどんどん人からコンピューターに変わってきている。現在は駅の改札は全て自動改札であるが、昔は駅員の人が切符を確認していた。・・・日本に残っているのは、コンピューターにできない仕事か、コンピューターにさせるととてもお金がかかる仕事になる。それには二つのタイプがある。一つは、掃除や配達といった、機械化するとお金がかかるが多くの人ができる仕事である。こうした仕事は賃金が安くなる。
もう一つは、アイディアを考えたり、データから判断したり、人とコミュニケーションをとったりする仕事で、高度な能力を必要とし、その仕事ができる人が少ないタイプのものである。つまり、賃金の高い仕事と低い仕事に二極化してきているのである。
この二極化の流れは止めようがありません。「高校生・大学生にキャリア教育を」というのは、少しでも付加価値を持った学生(その人ならではのスキル)を育成したいということです。
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