円高について、コメント欄の質問にお答えします。
<お知らせ:12月14日より、3週間入院します。13日以降の、記事の更新は、来年になります>
<円高について、質問にお答えします>
12月10日の「円高」の記事について、以下の質問を受けましたのでお答えします。
(1)ちょっと話が難しかったので簡潔にいうとどういうことですか?
円高だと輸出企業のダメージが増えるが輸入企業の利益が増えるからトントンということでしょうか?
(2)輸出企業の社員に給料を支払うお金は日本円ですからドルを円に買えるときに損をするから痛いというわけではないんですかね。素人の質問すみません。
2006年 実質GDP(内閣府HP 単位10億円)
GDP 507,364.8 100.0%
輸出 81,756.3 16.11%
輸入 75,407.8 14.86%
貿易黒字 6,348.5 1.25%
GDP=C+G+I+(EX-IM) 総生産=家計消費+政府+企業投資+(輸出-輸入:貿易黒字)
これを、グラフにします。2006年GDP

円高になると、 輸出業者は、「損」をします。100円=1ドルだったのに、90円=1ドルの円高になれば、1ドルで売れたもの(例えば乾電池)が、90円にしかならないからです。
一方、輸入業者は「得」をします。100円=1ドルだったものが、90円=1ドルになると、100円で1.11ドル分の商品(例えば石油)が購入できます。
単純に考えます。日本の場合、輸出業者が16%います。輸入業者は15%います。16%の輸出業者は、円高でダメージを受けます。15%の輸入業者は,メリットを受けます。ダメージ-メリット=1%(正確には、1.25%)ですので、GDPの1%部分(上図参照)に影響を及ぼすのが「円高」です。
この1%部分について、10%円高になって、影響を受けるとしたら、1%×10%=0.1%です。これが、「円高の脅威」です。20万円の給料のうち、200円減る計算です。大変?なダメージですね。
(実際の計算)
1%=63485億円が、約10%円高(1ドル=100円から、1ドル=90円)になると、63485億円×10%=6348.5億円、GDPが減ります。507兆3648億円に対して、6348.5億円ですから、0.125%に値します。
10%円高になると、貿易黒字が、10%減る=日本のGDPの0.1%に相当
ところが、貿易黒字額=資本収支赤字額ですから、貿易黒字は,国内に環流するおカネではありません。外国の株、社債、国債、外国通貨、外国の土地の購入額になります。

1ドル=100円時
貿易黒字 6兆3485億円→634億8500万ドルの、外国資産増(外国の株、社債、国債、外国通貨、外国の土地)
↓ ↑
10% 円高 同じ
↓
1ドル=90円時 ↓
貿易黒字 5兆7137億円→634億8500万ドルの、外国資産増(外国の株、社債、国債、外国通貨、外国の土地)
このように、10%の円高なら、逆に、10%も安く(多く)、外国の資産を買えることになります。(1ドル=100円なら、アメリカのハンバーガー1ドルに100円払うが、1ドル90円になれば、90円でハンバーガーを購入できる。または、100円で1.1個のハンバーガーを購入できる)
貿易黒字は10%ダウンしても、海外資産は、変化ありません。これが「円高で日本経済に打撃」の正体です。
<円高になって、日本経済は打撃を受けたか?>
では、円高で、日本経済はどうなったのか、検証してみましょう。2009年現在、1ドル=80円台~90円で推移し、5円も円高になれば、「大騒ぎ」です。
ところが、過去に、5円どころか、1ドル=260円台から、130円台に大暴騰(文字通り、ドルの大暴落)した時期がありました。85年のプラザ合意です。わずか2年間にです。
新聞によれば「円高=日本経済危機」ですから、この当時は、「円大暴騰=日本経済壊滅」となるはずでした。しかし、結果はどうだったのでしょう。
山川「詳説政治・経済」22年度見本


日本はバブル経済という、好景気に沸きました。GDPは85年→87年にかけて、ガンガン伸張しています。
注)バブル経済には、また資本の国内投資増大という別な側面がありますが、今回は難しい話は抜きです。
おかしいですね、「日本経済は、輸出で成り立っている」→「円高だ」→「輸出企業は大打撃だ」→「日本経済危機だ」のはずなのに。
同様に、93年から、95年にかけても、円高は進みました。約130円台→79円(85年4月)に、40%も、円高になりました。日本経済は壊滅したか?やはりGDPは、93年→95年と、増加しています。
「日本経済は、輸出で成り立っている」→「円高だ」→「輸出企業は大打撃だ」→「日本経済危機だ」は100%、論理的に,成り立たないのです。
日経21年11月21日『経済全体には打撃 円高 GDP を下押し』
円高は輸出産業に悪影響をもたらし、取引を下押しする。ただ一方で、輸入品は値下がりするため、原燃料を輸入に頼る企業や個人にはメリットもある。日本経済は…立場によって影響も異なる。
第一生命経済研究所の永浜主席エコノミストによると…今年度の国内総生産成長率を0.3ポイント押し下げる。…輸出産業や関連産業への悪影響が大きいためだ。… 一方、輸入価格が下がることのメリットもある。例えば原料を輸入に頼る電力会社や航空会社は円高で燃料の購入費が安くなり収益にプラスに働く。海外のブランド品やワインなどの値段が安くなり、消費者にはメリットもある。…輸入品ばかり売れるようになれば、国内メーカーの経営が苦しくなったり、工場の空洞化が進んだりして、結局は日本経済に悪影響が及ぶ。
悪影響なんか、全くありません。
ちょっと話が難しかったので簡潔にいうとどういうことですか?
円高だと輸出企業のダメージが増えるが輸入企業の利益が増えるからトントンということでしょうか?
は、原則的にその通りです。なおかつ貿易黒字=海外資産額なので、海外資産額は、10%円高になれば、今までの90%の代金で購入できますので、海外資産額は、変わりません。
<輸出企業は、ダメージを被る>
輸出企業の社員に給料を支払うお金は日本円ですからドルを円に買えるときに損をするから痛いというわけではないんですかね。素人の質問すみません。
輸出企業は、ダメージを被ります。10%円高になれば、販売量が10%減ったり、売り上げが10%減ったりするからです。1ドル=100円時、1万ドルの自動車=100万円の収入だったものが、1ドル90円の円高になると、1万ドルの自動車=90万円の収入になってしまいます。これでは赤字になるからと、100万円の収入を確保しようと思えば、1万1111ドルの値段にしなければなりません。実質の値上げですから、販売量は減ります。
おそらく、輸出企業のボーナスには影響が出るでしょう。
一方、輸入企業にとっては最高です。1ドル=1リッター100円のガソリンが、90円で購入できます。ブランド品輸入業者は、仕入れが10%も安くすみます。あるいは、同じ予算で、1.1倍も商品を多く購入できます。日本の輸出業者は16%、輸入業者は15%(いずれも数字上の単なる単純計算)います。
注)上記の例はあくまでも、わかりやすいようにとの、現実にはありえない単純化なので、ご容赦を。
<円高について、質問にお答えします>
12月10日の「円高」の記事について、以下の質問を受けましたのでお答えします。
(1)ちょっと話が難しかったので簡潔にいうとどういうことですか?
円高だと輸出企業のダメージが増えるが輸入企業の利益が増えるからトントンということでしょうか?
(2)輸出企業の社員に給料を支払うお金は日本円ですからドルを円に買えるときに損をするから痛いというわけではないんですかね。素人の質問すみません。
2006年 実質GDP(内閣府HP 単位10億円)
GDP 507,364.8 100.0%
輸出 81,756.3 16.11%
輸入 75,407.8 14.86%
貿易黒字 6,348.5 1.25%
GDP=C+G+I+(EX-IM) 総生産=家計消費+政府+企業投資+(輸出-輸入:貿易黒字)
これを、グラフにします。2006年GDP

円高になると、 輸出業者は、「損」をします。100円=1ドルだったのに、90円=1ドルの円高になれば、1ドルで売れたもの(例えば乾電池)が、90円にしかならないからです。
一方、輸入業者は「得」をします。100円=1ドルだったものが、90円=1ドルになると、100円で1.11ドル分の商品(例えば石油)が購入できます。
単純に考えます。日本の場合、輸出業者が16%います。輸入業者は15%います。16%の輸出業者は、円高でダメージを受けます。15%の輸入業者は,メリットを受けます。ダメージ-メリット=1%(正確には、1.25%)ですので、GDPの1%部分(上図参照)に影響を及ぼすのが「円高」です。
この1%部分について、10%円高になって、影響を受けるとしたら、1%×10%=0.1%です。これが、「円高の脅威」です。20万円の給料のうち、200円減る計算です。大変?なダメージですね。
(実際の計算)
1%=63485億円が、約10%円高(1ドル=100円から、1ドル=90円)になると、63485億円×10%=6348.5億円、GDPが減ります。507兆3648億円に対して、6348.5億円ですから、0.125%に値します。
10%円高になると、貿易黒字が、10%減る=日本のGDPの0.1%に相当
ところが、貿易黒字額=資本収支赤字額ですから、貿易黒字は,国内に環流するおカネではありません。外国の株、社債、国債、外国通貨、外国の土地の購入額になります。

1ドル=100円時
貿易黒字 6兆3485億円→634億8500万ドルの、外国資産増(外国の株、社債、国債、外国通貨、外国の土地)
↓ ↑
10% 円高 同じ
↓
1ドル=90円時 ↓
貿易黒字 5兆7137億円→634億8500万ドルの、外国資産増(外国の株、社債、国債、外国通貨、外国の土地)
このように、10%の円高なら、逆に、10%も安く(多く)、外国の資産を買えることになります。(1ドル=100円なら、アメリカのハンバーガー1ドルに100円払うが、1ドル90円になれば、90円でハンバーガーを購入できる。または、100円で1.1個のハンバーガーを購入できる)
貿易黒字は10%ダウンしても、海外資産は、変化ありません。これが「円高で日本経済に打撃」の正体です。
<円高になって、日本経済は打撃を受けたか?>
では、円高で、日本経済はどうなったのか、検証してみましょう。2009年現在、1ドル=80円台~90円で推移し、5円も円高になれば、「大騒ぎ」です。
ところが、過去に、5円どころか、1ドル=260円台から、130円台に大暴騰(文字通り、ドルの大暴落)した時期がありました。85年のプラザ合意です。わずか2年間にです。
新聞によれば「円高=日本経済危機」ですから、この当時は、「円大暴騰=日本経済壊滅」となるはずでした。しかし、結果はどうだったのでしょう。
山川「詳説政治・経済」22年度見本


日本はバブル経済という、好景気に沸きました。GDPは85年→87年にかけて、ガンガン伸張しています。
注)バブル経済には、また資本の国内投資増大という別な側面がありますが、今回は難しい話は抜きです。
おかしいですね、「日本経済は、輸出で成り立っている」→「円高だ」→「輸出企業は大打撃だ」→「日本経済危機だ」のはずなのに。
同様に、93年から、95年にかけても、円高は進みました。約130円台→79円(85年4月)に、40%も、円高になりました。日本経済は壊滅したか?やはりGDPは、93年→95年と、増加しています。
「日本経済は、輸出で成り立っている」→「円高だ」→「輸出企業は大打撃だ」→「日本経済危機だ」は100%、論理的に,成り立たないのです。
日経21年11月21日『経済全体には打撃 円高 GDP を下押し』
円高は輸出産業に悪影響をもたらし、取引を下押しする。ただ一方で、輸入品は値下がりするため、原燃料を輸入に頼る企業や個人にはメリットもある。日本経済は…立場によって影響も異なる。
第一生命経済研究所の永浜主席エコノミストによると…今年度の国内総生産成長率を0.3ポイント押し下げる。…輸出産業や関連産業への悪影響が大きいためだ。… 一方、輸入価格が下がることのメリットもある。例えば原料を輸入に頼る電力会社や航空会社は円高で燃料の購入費が安くなり収益にプラスに働く。海外のブランド品やワインなどの値段が安くなり、消費者にはメリットもある。…輸入品ばかり売れるようになれば、国内メーカーの経営が苦しくなったり、工場の空洞化が進んだりして、結局は日本経済に悪影響が及ぶ。
悪影響なんか、全くありません。
ちょっと話が難しかったので簡潔にいうとどういうことですか?
円高だと輸出企業のダメージが増えるが輸入企業の利益が増えるからトントンということでしょうか?
は、原則的にその通りです。なおかつ貿易黒字=海外資産額なので、海外資産額は、10%円高になれば、今までの90%の代金で購入できますので、海外資産額は、変わりません。
<輸出企業は、ダメージを被る>
輸出企業の社員に給料を支払うお金は日本円ですからドルを円に買えるときに損をするから痛いというわけではないんですかね。素人の質問すみません。
輸出企業は、ダメージを被ります。10%円高になれば、販売量が10%減ったり、売り上げが10%減ったりするからです。1ドル=100円時、1万ドルの自動車=100万円の収入だったものが、1ドル90円の円高になると、1万ドルの自動車=90万円の収入になってしまいます。これでは赤字になるからと、100万円の収入を確保しようと思えば、1万1111ドルの値段にしなければなりません。実質の値上げですから、販売量は減ります。
おそらく、輸出企業のボーナスには影響が出るでしょう。
一方、輸入企業にとっては最高です。1ドル=1リッター100円のガソリンが、90円で購入できます。ブランド品輸入業者は、仕入れが10%も安くすみます。あるいは、同じ予算で、1.1倍も商品を多く購入できます。日本の輸出業者は16%、輸入業者は15%(いずれも数字上の単なる単純計算)います。
注)上記の例はあくまでも、わかりやすいようにとの、現実にはありえない単純化なので、ご容赦を。
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