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新聞を解説(23) 猪突『大機小機:株主による企業統治を疑う』日経 H21.6.11

新聞を解説(23) 猪突『大機小機:株主による企業統治を疑う』日経 H21.6.11

 株主総会の季節…になると、なぜ上場会社の株主にこれほどまでに大きな権限が与えられているのだろうか、という素朴な疑問を抱く人が増えてくる。…企業統治の権限と責任を誰が持つべか…。  日本では…従業員は終身雇用…取引先とも…継続的な取引の慣行がある。これらの利害関係集団にも企業統治の権限を与えても良い



<従業員主権とは>

 日本では…従業員は終身雇用…取引先とも…継続的な取引の慣行がある。これらの利害関係集団にも企業統治の権限を与えても良い。
 
 「企業を統治する権限を、従業員や取引先企業にも与える」というのですが、実際にはどのようにしたら良いのでしょうか。
 
 実は、戦前の日本は、欧米型の株主主権資本主義でした。それが、戦時経済下、「極端な株主主権から、極端な従業員主権」へと移った のです。

以下、参考文献岡崎哲二 奥野(藤原)正寛『現代日本経済システムの源流』日本経済新聞社 1993

高碕達之助は,以下のようにその違いを指摘しました。
 
               1916年                    1947年
状態       従業員の知らぬ間に株式大量移動,  事業経営は,従業員に牛耳られる
           経営首脳絶えず変化         
主権            株主主権                      従業員主権
経営者方針       株主配当,高株価               従業員待遇第一
経営者無関心分野   会社の業績の良否               株主配当,株価
              会社の基礎向上                会社の基礎向上


 戦時体制下、企画院「勤労新体制確立要綱」1940年により,資本の優位から,勤労者が優位にたつ労使関係制度改革が明記されます。 従業員組織として生産協力会議が設置され,賃金・福利厚生・労働条件などの事項を協議することが提案されました。

 金融制度も、政府による価格(利潤)と配当の統制強化があり,株式市場は停滞します。戦前機能していた市場は,株価を通じ,企業をモニターする機能を失います

 さらに、戦後の初期GHQの占領政策は,従業員に地位向上・株主の地位低下をさらに進展させます。商工省は,株主総会と抵当権者の同意をできるだけ排除する法的措置をとるとともに,従業員の経営参加のため,従業員持ち株制度を採用するとしました。

 政府が企業別に求めた「経営協議会」は,協議事項として賃金・労働条件のほか,経営方針・経理も含めるタイプが多く,設置率は1947年末には労働組合総数の50%以上に達します。
 
 このように、 「従業員主権」は、どちらかというと、共産主義的な体制ということが言えるでしょう。

 もしも、「従業員にも主権」「取引先にも主権」を望むのなら、「従業員・取引先が株主になる」ことを選択せざるを得ないでしょうね
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