新聞を解説(22) 猪突『大機小機:株主による企業統治を疑う』日経 H21.6.11
新聞を解説 猪突『大機小機:株主による企業統治を疑う』日経 H21.6.11
株主総会の季節…になると、なぜ上場会社の株主にこれほどまでに大きな権限が与えられているのだろうか、という素朴な疑問を抱く人が増えてくる。…企業統治の権限と責任を誰が持つべきか…。日本では…従業員は終身雇用…取引先とも…継続的な取引の慣行がある。これらの利害関係集団にも企業統治の権限を与えても良い。
<株主権限は大きいのでしょうか?>
「決定権を有するのは,会社法の原則どおり株主ということ」なのですが,実際には,その主権が実質的に行使できないように,仕組まれています。それが,下記に見る株主総会の集中です。
『日本経済新聞』H21.6.27
3月期決算企業の株主総会が26日ピークを迎え1321社が全国で一斉に総会を開いた。
総会の集中は,株主主権を制限します。
07年は, 株主総会集中日の「6月28日に全国で総会を開く企業は,昨年より約100社少ない約1400社になることが21日,警察庁のまとめで分かった。同庁によると,集中日の開催企業数は分散傾向にあり,1997年の約2350社をピークに10年連続で減少」しています。
NIKKEI NET ’07年6月21日
http://markets.nikkei.co.jp/special/sp017.cfm?id=d1g2100h21&date=20070621
しかし、逆に特定週への集中は上昇している のです。
参考文献 牧野洋 『不思議の国のM&A』日本経済新聞出版社 2007 p293~302
’06年,東証一部上場の三月決算会社のうち,77%が6月最終週に開催する予定で, 前年の75%を上回ったのです。
この問題点は,機関投資家が議案を分析し,適確に議決権を行使する時間的余裕を持てない事です。上場株に広く分散投資する機関投資家は,6月だけで1300社(東証一部上場企業ベース)以上から議案を受け取(’06年)ります。
単純計算で7000にも迫る議案を受け取り分析し返送するまで,わずか3日の猶予しかありません。上場企業が,ぎりぎりまで議案を発送しない状況は,’04年,’05年と比べてほとんど改善していません。インターネットで議案を公開する企業も,上場企業のうち数百社しかないのが現状です。
しかも,議案の中身は,80円議案といわれ,最低限の郵便料金で発送できるほど,内容量が少ないのです。取締役についても,独立性を推測できる説明はなく,株主総会召集通知も,法的に義務付けられた最低限の内容で,まるで,議案は企業秘密とでもいう扱いになっています。
また,議決権行使については,機関投資家には,郵便とバイク便(実物配送)使用が強いられます。本格的な電子投票を,機関投資家は使用できないシステムになっているのです。
このような形で行われる,株主総会という最高意思決定機関の実体について,かつて奥村宏は「(フィクション),虚構」と呼んでいました。
奥村宏 『株主総会』岩波新書 1998年 p16
その実体は,10年後の今日も変わっていないことがわかります。
このように、「株主総会は形骸化」しているのです。
株主総会の季節…になると、なぜ上場会社の株主にこれほどまでに大きな権限が与えられているのだろうか、という素朴な疑問を抱く人が増えてくる。…企業統治の権限と責任を誰が持つべきか…。日本では…従業員は終身雇用…取引先とも…継続的な取引の慣行がある。これらの利害関係集団にも企業統治の権限を与えても良い。
<株主権限は大きいのでしょうか?>
「決定権を有するのは,会社法の原則どおり株主ということ」なのですが,実際には,その主権が実質的に行使できないように,仕組まれています。それが,下記に見る株主総会の集中です。
『日本経済新聞』H21.6.27
3月期決算企業の株主総会が26日ピークを迎え1321社が全国で一斉に総会を開いた。
総会の集中は,株主主権を制限します。
07年は, 株主総会集中日の「6月28日に全国で総会を開く企業は,昨年より約100社少ない約1400社になることが21日,警察庁のまとめで分かった。同庁によると,集中日の開催企業数は分散傾向にあり,1997年の約2350社をピークに10年連続で減少」しています。
NIKKEI NET ’07年6月21日
http://markets.nikkei.co.jp/special/sp017.cfm?id=d1g2100h21&date=20070621
しかし、逆に特定週への集中は上昇している のです。
参考文献 牧野洋 『不思議の国のM&A』日本経済新聞出版社 2007 p293~302
’06年,東証一部上場の三月決算会社のうち,77%が6月最終週に開催する予定で, 前年の75%を上回ったのです。
この問題点は,機関投資家が議案を分析し,適確に議決権を行使する時間的余裕を持てない事です。上場株に広く分散投資する機関投資家は,6月だけで1300社(東証一部上場企業ベース)以上から議案を受け取(’06年)ります。
単純計算で7000にも迫る議案を受け取り分析し返送するまで,わずか3日の猶予しかありません。上場企業が,ぎりぎりまで議案を発送しない状況は,’04年,’05年と比べてほとんど改善していません。インターネットで議案を公開する企業も,上場企業のうち数百社しかないのが現状です。
しかも,議案の中身は,80円議案といわれ,最低限の郵便料金で発送できるほど,内容量が少ないのです。取締役についても,独立性を推測できる説明はなく,株主総会召集通知も,法的に義務付けられた最低限の内容で,まるで,議案は企業秘密とでもいう扱いになっています。
また,議決権行使については,機関投資家には,郵便とバイク便(実物配送)使用が強いられます。本格的な電子投票を,機関投資家は使用できないシステムになっているのです。
このような形で行われる,株主総会という最高意思決定機関の実体について,かつて奥村宏は「(フィクション),虚構」と呼んでいました。
奥村宏 『株主総会』岩波新書 1998年 p16
その実体は,10年後の今日も変わっていないことがわかります。
このように、「株主総会は形骸化」しているのです。
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