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同志社大学教授 浜矩子さん その2

『聞く:同志社大学教授 浜矩子さん:日本のカネ呼び戻せばいい』朝日新聞H21.2.27
…外国にカネを貸して、外国に日本製品を買ってもらうのが外需(注:資本収支赤字=貿易黒字のこと)だとすれば、カネを国内で使ってもらえば、いいわけです。金利を上げて日本にカネが集まるようにすれば、バランスがとれてきます
…海外で跳びはねているジャパンマネーを呼び戻して使えば(注:資本収支赤字=貿易黒字をなくす=0に近づけること)、収益も上がり、税収も上がる。それが最も本質的な解決方法と思うのです。

 浜先生は著書『グローバル恐慌』岩波新書で、「ジャパンマネーが、世界的な過剰流動性景気を地球経済にもたらした」p38といい、「ジャパンマネーの存在を語らずしてグローバル恐慌に至る道を語ることは出来ない」p44といいます。なぜなら、「ただ同然の金利負担で日本で資金を調達し、外貨に換えて運用する。…あふれ出るジャパンマネーが、世界的な過剰流動性をもたらした」p38からです。「超低金利の日本から、世界に向けての大量の資金流出をもたらした。その結果としての世界的カネ余りが、今回の危機の遠因ではなかったか」というほど、「ジャパンマネーが問題だった」とするスタンスです。

①しかし、それを指摘するなら、日本よりももっと資本収支赤字=貿易黒字の国・地域を指摘しなければならないはずです。日本のカネなど、それらの国・地域に比べれば可愛いものです。貯蓄投資バランス

②さらに、このジャパンマネーは、(注:資本収支赤字=貿易黒字のこと)ですので、モノ・サービスの取引に使われた金額と同額のカネです。つまり、フローのカネ(その年に動いたお金)です。
 でも、今回の金融危機は、浜先生が前掲書で「モノの世界から遊離したカネの世界の自己展開…ひたすらカネを増やすためにカネを回すビジネス」p75「モノの世界を離れて一人歩き」p76「モノが動かなくてもカネは動く。地球経済上を金融が一人で勝手に闊歩する」p79類(たぐい)のカネが問題なのです。フローよりストックされたカネがカネに投資され、自己増殖したのです。
 2007年現在,外国為替市場の1日の平均取引額は3.2兆ドル(340兆円)にも上ります(2007年4月 国際決済銀行BIS統計)。同年の世界貿易額は,1日当たり357億ドルですから(2007年4月 国際決済銀行BIS統計),貿易額の約90倍にのぼる資本の取引があることになります(JETRO 2007年統計)。
 例えば,東京証券取引所の売買代金は,1か月に40兆円~70兆円です。日本の1年間の国家予算が約82兆円,GDP(国内総生産)は約510兆円です。これらの実体経済をはるかに上回る,資本の取引があるのです。
 90年代初頭までは,実体経済が犬の頭,資本経済が犬の尻尾でした。しかしいまや,バーナンキFRB議長が「貿易は犬の尻尾」というほど資本取引が巨額になったのです。
 これらの金融・資本取引の結果,世界の金融資産は,総額167兆ドル(1京7744兆円)に達します。実体経済(世界全体のGDP48兆ドル)の3.5倍です。しかも,その成長率は2006年までの11年間で年平均9.1%,世界の実体経済(GDP)成長率の5.7%を大きく上回っています。

図79 経済産業省 平成20年版『通商白書』概要 第1章図の5金融資産推移3
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