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プーチンさん、間違ってますよ。「ロシアの自動車産業が“瀕死” 低品質に無力」

5月4日16時39分配信 産経新聞
 現下の経済危機に直撃され、ソ連崩壊後も生き長らえてきたロシアの国産自動車産業がいよいよ瀕死(ひんし)の状態に陥った。政権は輸入関税引き上げや公的資金の投入で国産車保護に躍起だが、時代遅れのロシア車をどこまで延命させられるかは不透明だ。
…そんな自動車業界を、昨年秋以降の経済危機が襲った。今年第1四半期(1~3月)にはロシアでの自動車生産台数が前年同期比65%減、新車の販売台数でも4割減となった。特に国産乗用車の落ち込みが激しく、生産台数は前年の3・5分の1にまで急減している。
プーチン首相は昨年12月、「経済が大変な時は国産車を買うべきだ」と号令をかけ、新車輸入の関税を25%から30%に、中古車の関税を2~3倍に引き上げることを決定。…3月末にはアフトバス社に330億ルーブル(約957億円)の無利子融資を決めるなど、国産各社への公的資金投入にも踏み切り、政権の支援は少なくとも574億ルーブル規模にのぼるとみられる。
…他方、関税引き上げと通貨ルーブルの下落で日本製中古車の価格は最大2倍にも値上がりしており、輸入拠点である極東のウラジオストク(沿海州)では輸入取引が停止に近い状態に陥っている。沿海州では住民の大半が中古車に関連する仕事に就いているだけに、国産車保護の余波が地方全体の死活問題となっている。


 誰か、プーチン首相に、経済政策を教えてあげてください。「輸入を押さえ、輸出を伸ばすことは不可能」「輸出を伸ばしたかったら、保護政策はとってはいけない」と。
 ロシアは、民間の石油卸売会社を、国家経営にするなど、エネルギーを中心とした輸出で、経済規模を拡大させようとしています。ガス供給をめぐり、ウクライナや西欧とトラブルになっているほど、強硬な輸出政策を変えようとはしていません。
 
 サハリン沖で開発した「サハリン1」の天然ガスは、もともと中国に輸出する予定(06年)でしたが、ロシア政府の横やりが入り、政府系ガスプロムに全量を売却する方向になっています。
参考資料:『日本経済新聞』H21年5月7日
 
 サハリン2の経営権を、ガスプロムが奪ってしまったのは、ご存知の通りです。そこまでして経済発展を遂げようとしているのに、政策は全く逆を向いています

 輸出の裏には,必ず輸入があり,輸入の裏には必ず輸出があるのです。「輸出を伸ばし,輸入を抑える」のは,理論上,不可能なのです。一人当たり輸出入


 輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

比較劣位産業 → 労働力を集める → 特化し,生産量拡大
   ↓                    ↓
  生産量減少 → 輸入拡大  ⇄ 輸出拡大
                   セット
 『日本経済新聞』H21年5月6日産業別就業者数

 日本の産業別の就業は、年々変化しています。就業者数が減っている業界があれば、増えている業界があります。労働者数(日本の場合、02年~08年に55万人増加)には、上限があるのです
 輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。日本の輸出入

 発展途上国が,「私たちの国は,先進国に比べて,テレビを作っても,自転車を作っても,生産性が低い。だから我が国の生産性が上がるまで,先進国との貿易(輸入)は制限しよう」という,本当によくありそうな話が,経済学的には誤りだということになります。

 架空の話ではなく,70年代までのアジアや南米では,「幼稚産業保護」として,本当にとられていた政策です。「輸入代替化」政策とも言われていましたリストの保護貿易論も,これと同じです。輸入数量制限や高関税,外国為替管理といった輸入制限策を用いて国内市場を保護する政策です。
 しかしこの政策は行き詰まり,アジアNICsでは,外向きの成長政策が採用されることになりました
参考資料:福田邦夫 小林尚朗編『グローバリゼーションと国際貿易』大月書店 2006 p256-257

 その後のアジアNIESの発展は、私たちの良く知るところです。貿易は、発展途上国であろうが、先進国であろうが、すべての国を利する のです。

<追記:ロシア自動車その後>

日経H21.8.18『ロシア自動車、苦境鮮明』
 ロシア自動車市場の不振が続く中で、大手メーカーの苦境が鮮明になってきた。最大手の国営アフトワズ…の生産台数は前年比6割減の33万台に落ち込む見通し。…国内2位のGAZも…前年同期比6割減と苦戦。…両社にとってロシア政府による金融支援が命綱。…投資銀行FINAMのアナリスト、バラノフ氏は「非効率な組織や社員の意識改革が必要で、復活には10年はかかる」と協調。


 非効率な産業を温存するのは、やはり「不可能」なのです。
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