資料集の間違い (9) 浜島書店 『最新図説 現社』2008.10.10

浜島書店 『最新図説 現社』2008.10.10
p255 

…1980年代以降は、サービス収支の赤字が海外旅行ブームを反映して拡大するものの、莫大な貿易収支の黒字の発生によって経常収支が大幅な黒字となった。この黒字を海外に積極的に投資する形で、資本収支は大幅な赤字となっている。

この、「黒字を海外に積極的に投資する形で、資本収支は大幅な赤字」には、根拠がありません。「日本の黒字を外国に投資する」は完全に誤りなのです。よく、「アメリカ(経常収支赤字国)が資本輸入をするのは、その経常収支赤字を埋め合わせるために、資金を借りなくてはいけないからだ」といわれますが、これも成り立ちません正解は全く逆で、「資本収支が赤字だから、経常収支が黒字になるのです。

1 国際収支表の記入原則 東学の資料集です。東学 資料政経2009 p375国際収支表の記載方法1
このように、経常収支(+)は資本収支(-)に記載される。逆に経常収支(-)は資本収支(+)に記載される。資本取引の場合、資本(カネ)を国内に持つか、海外に持つかの違いで、資産総額が変わるわけではないから、資本(カネ)収支(+)は資本収支(-)、資本(カネ)収支(-)は資本収支(+)に記載され相殺される。結果、日本の国際収支は、次のようになる。
国際収支表の記載方法2
  経常収支黒字(貿易黒字)国は、必ず資本収支赤字になります。しかも、貿易黒字が原因→資本収支赤字が結果ではなく、資本収支赤字→貿易黒字が正解です。
  トヨタや、パナソニックは「輸出」の主体で、「貿易黒字」を生み出す企業です。一方、「資本収支赤字」を出すのは、銀行などの金融機関、生命保険会社・投資信託などの機関投資家、政府、企業、個人です。これらは別々の主体です。
  投資家が海外投資をするのは、自分のもうけのためであり、「日本の貿易黒字分」や「外貨が余っているから」投資しなければならないのではありません。トヨタやパナソニックが海外投資を行っているわけではないのです(もちろん0ではありませんが)。
  また、外国の政府・企業・個人からすると、社債・国債・株式を発行して資金を調達するのは、「貿易赤字」を穴埋めするために行っているのではありません。お金を貸してくれる主体は、国内であれ、海外であれ、企業・政府・個人にとってはどちらでもかまわないのです。
「EX-IM」は、資本収支赤字(海外投資)から、生まれる のです。つまり、「お金の貸し借り」が先で、「貿易黒字」は後なのです。
  三面等価の図を見て見ましょう。
三面等価

  我々が、消費せず、税金にも回さなかったお金を、貯蓄Sと言います。その国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G-T:公債)、(EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=144兆円、それがI93兆円、G-T32兆円、EX-IM18兆円に回るのです。EX-IM18兆円は、海外へのお金の貸し出しなのです
  外国債・外国株・外国社債などの購入や、外国への貸付額がEX-IM18兆円なのです。
これらは、銀行などの金融機関、生命保険会社・投資信託などの機関投資家、政府、企業、個人です。これらは、資本収支赤字=海外資産増加になります。

 資料集や教科書が間違いを記載するのは、正しい経済理解ISバランス式
 (S-I) = (G-T)+(EX-IM)
貯蓄超過= 公債 +経常黒字
理解していないからです。この式は、経済学のイロハで、全ての経済学(学者)の前提となる式です。「九九」みたいなものです。これを否定した経済学は成立しません
 その基本中の基本を掲載しないので、経済について詳しく記述すればするほど、矛盾するのです。
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