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経済学を知らない教師が執筆するから、デタラメになる。教科書出版社 清水書院

<経済学を知らない教師が執筆するから、デタラメになる。教科書出版社 清水書院>

 未だに、バカ論を述べている教科書会社があります。清水書院です。

政治・経済資料集 2017 清水書院p327

清水書院 2

1) 国際収支に、善悪などない。

 このバカ資料集では、貿易黒字は善、貿易赤字は悪というトンでも論を、未だに述べています。

 まともな方は、こっちです。

清水書院『新政治・経済 最新版』平成26年度p133
 国際収支では単に「赤字か黒字か」で望ましさを論じるのはふさわしくない。家計の赤字の意味とは異なることに注意したい。



????不思議ですね、教科書はまとも、資料集はアホ論です。なぜ、同じ出版社なのに、記述が違うのか?

それは、教科書は、「大学教授」という専門家が執筆し、「資料集」は「教科書検定」を受けないので、経済学など勉強したこともない「高校教諭」が執筆するからです。

同社の教科書執筆陣です。

大芝 亮/大山 玲子/山岡 道男/猪瀬 武則/栗原 久 他7名

山岡教授、猪瀬武則など、経済学の重鎮ですね。

一方の資料集は「シロウト」が書いています。

清水書院 1

本当にどうしようもないです。

2) 日本製品の国際競争力???

 こんな、「国際競争」など、定義できない概念の代表です。逆に言えば、各人が、勝手に決められます。本当は、書いている人も、自分が何を言っているのか、理解していません。

ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』(1999) p41

「みんなが、『アメリカの競争力』とか言ってるのは、ありゃいったい何のことかって? 答えはだねえ、残念ながら要するにそいつら、たいがいは自分が何言ってんだか、まるっきりわかっちゃいないってことよ」



3)貿易立国の日本???

 日本は、高度成長期も含めて、「貿易立国」だったことなど、1度もありません。



拙著 高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学より

 日本が経済成長を達成したのは、国内市場の拡大(内需拡大)によるものです。
 この10年間で、日本の外需(貿易黒字)の経済全体(GDP)に占める割合が一番多かったのは、2004年の1.95%です。同年の外需(貿易黒字)額は9兆8590億円、GDPは503兆7253億円です。

貿易立国

 リーマン・ショックに端を発した、世界的大不況に吞み込まれた2009年は、0.36%です(外需1兆7267億円、GDP 469兆4120億円)。その比は、体重60キログラムの人でいえば、216〜1170グラム相当にすぎません。
 世界で比較しても同じです。日本よりも、工業製品を輸出していないはずのイギリスでさえ、その輸出額/ GDP比率は、日本より上です。つまり、日本は、「貿易立国」だったことはないのです。



 このようなシロウト高校教師の記述によって、高校生がだまされます。犯罪です(苦笑)。
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資料集の間違い(4)

第一学習社『最新現代社会資料集2007』p134

鈴木先生:日本は1960年代半ば以降、貿易収支は)ずっと黒字が続いているんだ。
健太:日本はずいぶんもうかっているんですね
鈴木先生:でもね、黒字国はその「もうけ」をためこんではいけないんだ。赤字国にまた環流させないと赤字国が困るからね。そこで日本はアメリカの株を買ったり、アメリカに工場を建てたりして、貿易でもうけた分をアメリカに投資しているんだ。それが投資収支だ。


「貿易黒字はもうけではない」と出版社に指摘すると、下記の表現に変わりました。

第一学習社『最新現代社会資料集2009』p134

健太:でも、最近の貿易・サービス収支はずっと黒字ですね。日本はずいぶんもうかっているんですね
鈴木先生:もうかっているという表現は正しくない。輸出が増えても為替レートの変動でもうからない場合もあるからね


 貿易黒字は「もうかる」とか「もうからない」とか、経済学に基づかない表現を使っています。野球に例えたら、「球を打ったら、1塁か3塁に走る」とルールブックに書くようなものです。

 通常の会社なら、黒字=もうけです。仕入れと売上げの差がもうけだからです(ものすごく単純化しています。以下に出てくることばも、ものすごく単純化しています)。
Our company is in [got into] the black.「我が社は黒字になった(yahoo辞書より)」黒字はBlackで、赤字はRedなんですね。

 ところが、貿易黒字(赤字)は仕入れと売上げの差ではありません。貿易黒字分は、必ずどこかの国の貿易赤字分です。ここが、会社の黒字と決定的に違うところです。
日本の会社の黒字(もうけ)額を全部まとめると、必ずどこかの会社の赤字(損)額と等しくなる」こんなことは、絶対にあり得ません。「もうけ(付加価値)」を全部足したものが日本のGDP(国内総生産)で、約500兆円です。黒字会社のもうけが、500兆円で、赤字会社の損が500兆円なら、日本の所得は0円になってしまいます。

 貿易黒字は a trade surplus です。貿易赤字は、a trade deficit です。足すと「0円」になります。輸出>輸入なら黒字、輸出<輸入なら赤字と言います。

 貿易(モノ・サービス)をすると、必ず同額のカネが動きます。ですから、貿易黒字=資本(カネ)収支赤字、貿易赤字=資本(カネ)収支黒字になります。貿易黒字国は同額分のカネが外国に出て行き、貿易赤字国は同額分のカネが外国から入ってきます

 アメリカも、オーストラリアも、イギリスも、基本的に貿易赤字国です。でもアメリカもオーストラリアもイギリスも、2008年夏までは、未曾有の好景気でした。「貿易黒字はもうけ赤字は損」なら、あり得ない話です。アメリカは96年から06年の10年間にGDPが約1.7倍になりました。日本の高度成長期さながらです。

貿易黒字はもうけ赤字は損」ではなく、「貿易黒(赤)字)はカネの貸し借りのこと」なのです。もちろん、「貸せば得、借りれば損」ではありません。「もうけ」ということば自体が、出てくるわけがない のです。
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