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資料集の間違い(8) とうほう『政治・経済資料

とうほう『政治・経済資料2009』p222
 産業の空洞化とその対策 p268-269
…産業の空洞化とは、国内企業が海外移転し、国内生産・雇用・GDP(国内総生産)が減少すること である。日本の産業の空洞化の原因として…貿易摩擦を克服するため…輸出相手国内に移転、…プラザ合意によって…日本製品の輸出価格が上昇。…安い人件費を求めてアジアへ移転したなどの事情があげられる。

 さて、資料集の言う、産業の空洞化はあったのか。答え「なかった資料集の言う産業空洞化など、ありえません。
国内生産・雇用・GDP(国内総生産)が減少すること」ですが、①国内生産・GDP(国内総生産)は減少ではなく、一貫して上昇しています。(除く1974年石油危機、1998年山一證券・拓銀倒産・消費税UPの翌年)
とうほう『政治・経済資料2009』p222経済成長グラフ
続いて、②雇用ですが、雇用は、比較劣位産業から、比較優位産業に移転し、全体として雇用者数は、極端には変化しないのです。同年の雇用者数推移のグラフです(数字出典:総務省統計)。雇用者数 推移グラフ
(もちろん、不況時には失業率が増加するなど、一時的な雇用の流動は起こります)

日本経済新聞H21年5月6日
日本の産業別の就業は、年々変化しています。就業者数が減っている業界があれば、増えている業界があります.産業別就業者数
このように、資料集の言う、「産業の空洞化」は実際には、存在しないのです。

次に、「国内企業が海外移転」という部分です。これは、対外投資額の増加を示しています。海外での合弁会社の設立やM&Aのことです。「対外直接投資は、01年を底に増加に転じ、03年と04年は多少減額しましたが、05年は急増(岩田規久男『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書 2008 p98)しているのです。対外資産
対外直接投資は増えているのに、「国内企業が海外移転し、国内生産・雇用・GDP(国内総生産)が減少する」のではなく、増えています

GDP拡大は,国内生産量拡大のことです。国内生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化する」=「比較劣位産業縮小」ということなのです。

比較劣位産業 → 労働力を集める → 特化し,生産量拡大
    ↓              ↓

生産量減少  →  セット
 

 ただし、「製造業からサービス業へのシフト」は存在します。製造業雇用者低下→サービス業雇用者増加です。
とうほう『政治・経済資料2009』p230
産業構造の変化 新

 地方の製造業都市が衰退し、大都市圏の人口が増えるので、これをあえて「地方製造業の空洞化」と言うことはできるでしょう。ですが、「地方製造業を守る(比較劣位産業を守る)」という保護を加えても、それは労働力・資本を、非効率に使用することです結果、本来得られるべきGDPの増加を低下させることになるのです
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