資料集の間違い(2)


帝国書院『アクセス現代社会2009』H21年 p239
「中国は…経済成長により急激に輸出額が増え、貿易収支の黒字は日本を超えている。ここからも中国の急激な経済成長が読みとれる。」
まず、経済成長(GDP増大)と、貿易黒字増は、関係がありません。よく、「経済成長で輸出増大」などと語られますが、これはでたらめです。


英国は…経済成長により急激に輸入額が増え、貿易収支の赤字は○○を超えている。ここからも英国の急激な経済成長が読みとれる。
この文章がそっくりそのまま成立してしまいます。「経済成長で輸入増大」もでたらめだということがお分かりいただけますか?
以上のように、経済成長(GDP増大)と、貿易黒(赤)字増は関係がないのです。中国が貿易黒字を増大させているのは、GDP(国内総生産)=GDI(国内総所得)が拡大したのに、国民がその所得を消費に回さず、貯蓄に回していることが原因です。所得が増えたので、貯蓄も増やしているのです。総生産=消費(税金含む)+貯蓄ですから、国民が消費にまわさず、貯蓄した分は、誰かが買います。企業・政府が主ですが、外国の人が買うと、貿易黒字になります。中国の人が買わない分、外国が買っていることになります。
しかも、グラフを見て分かるように、貿易黒字がGDPに占める割合は、少ない ことが分かると思います(07年:9.3%):。中国が経済成長しているのは、国内市場の拡大なのです。ちなみに、日本の場合も、国民所得GDPに占める経常黒字の割合は、わずか4.87%です(08年速報値)。残りの95.13%は国内市場なのです。
中国は…経済成長により急激に輸出額が増え、貿易収支の黒字は日本を超えている。ここからも中国の急激な経済成長が読みとれる。
この文章がおかしいのは、経済学に基づいて記載されていないです。つまり、帝国書院の資料集は、明らかな間違いを掲載しています(他の出版社も同様ですが)。
アメリカも、オーストラリアも、英国も、経済成長していますが、みな貿易赤字です。経済成長と貿易黒(赤)字は、関係ないのです。
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