教科書の間違い(6) 山川出版社 『詳説政治・経済』2009.3.1
山川出版社 『詳説政治・経済』2009.3.1 p150
日本の輸出が増え、経常収支の黒字が続き…日本の通貨「円」に対する信頼が高まり、為替相場は円高・ドル安になる。しかし、円高になれば、外国でドルを使用して購入する日本製品のドル建て価格は高くなり、日本の輸出品への需要は減少する。さらに円高はドル建てで購入する輸入品の価格を安くし、輸入量を増やす結果を招き、外貨が多く流出する。その結果、貿易収支の黒字幅は縮小する。その反対に円安・ドル高になれば、輸出が好調になり輸入が減少し、貿易収支は黒字に向かう。
間違い部分は赤で示しました。
では、検証してみましょう。同教科書p150の、円高・円安のグラフです。①85年(底値)から87年にかけて、②90年(底値)から94年にかけて、「円高・ドル安」になっています。教科書の説明によれば、貿易収支の黒字幅は縮小するはず ですが・・・
数字出展JETRO
このように、①85年(底値)から、87年にかけて貿易黒字は拡大しています。また、②90年(底値)から94年にかけて貿易黒字は拡大しています。教科書の説明は、まったくの間違い であることがわかります。
貿易黒字拡大→円高→貿易黒字縮小(均衡)といった、経済の古典的解釈は、現代ではまったく通用しません。貿易黒字の振幅は、カネ(資本)の貸し借りで生まれる のです。
三面等価の図を見て見ましょう。
我々が、消費せず、税金にも回さなかったお金を、貯蓄Sと言います。その国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G-T:公債)、 (EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=144兆円、それがI93兆円、G-T32兆円、EX-IM18兆円に回るのです。EX-IM18兆円は、海外へのお金の貸し出し なのです。
外国債・外国株・外国社債などの購入や、外国への貸付額がEX-IM18兆円なのです。
「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると,分配(所得)は「C+S+T」という式になります。
われわれが消費せずに貯蓄を増やす(S増)と,企業はモノ・サービスが売れないので,生産を縮小したり,値段を下げたり,新たな投資を控えます(I減少)。GDP(国民総生産)が減ります。GDPが減るので,我々の所得(給料)も減ります。所得が減ると,ますますお金を使うことが出来なくなります。社会全体の経済が縮小します。これを不況と言います。
貯蓄超過 = 公債 +経常黒字
(S-I) = (G-T)+(EX-IM)
増える 増える
左辺が増えると、右辺も増えます。不況になる(S-I増加)と、国債発行額と貿易黒字額は増えるのです。
①85年(底値)から、87年にかけて貿易黒字は拡大=プラザ合意後の円高不況
②90年(底値)から94年にかけて貿易黒字は拡大=バブル崩壊後の不況
これが、経済学の「掛け算の九九」に相当する基本中の基本、「貯蓄投資差額」「ISバランス論」です。
教科書の説明が誤りなのは、この原理を掲載しないからです。つまり、経済学と、(一般的な)経済常識は違うのです。
モノ・サービスの取引額:カネ(資本)取引額の比率は、1:90(07年)です。モノ・サービスの取引(実体経済)の90倍ものカネ(資本取引)がある のです。カネ(資本取引)が先、モノ・サービスの取引(実体経済)が後なのです。
これらの金融・資本取引の結果,世界の金融資産は,総額167兆ドル(1京7744兆円)に達します。実体経済(世界全体のGDP48兆ドル)の3.5倍です。しかも,その成長率は2006年までの11年間で年平均9.1%,世界の実体経済(GDP)成長率の5.7%を大きく上回っています。

経済産業省 平成20年版『通商白書』概要 第1章図の5
このように、貿易黒字の振幅は、カネ(資本)の貸し借りで生まれるのです。
日本の輸出が増え、経常収支の黒字が続き…日本の通貨「円」に対する信頼が高まり、為替相場は円高・ドル安になる。しかし、円高になれば、外国でドルを使用して購入する日本製品のドル建て価格は高くなり、日本の輸出品への需要は減少する。さらに円高はドル建てで購入する輸入品の価格を安くし、輸入量を増やす結果を招き、外貨が多く流出する。その結果、貿易収支の黒字幅は縮小する。その反対に円安・ドル高になれば、輸出が好調になり輸入が減少し、貿易収支は黒字に向かう。
間違い部分は赤で示しました。
では、検証してみましょう。同教科書p150の、円高・円安のグラフです。①85年(底値)から87年にかけて、②90年(底値)から94年にかけて、「円高・ドル安」になっています。教科書の説明によれば、貿易収支の黒字幅は縮小するはず ですが・・・

数字出展JETRO

このように、①85年(底値)から、87年にかけて貿易黒字は拡大しています。また、②90年(底値)から94年にかけて貿易黒字は拡大しています。教科書の説明は、まったくの間違い であることがわかります。
貿易黒字拡大→円高→貿易黒字縮小(均衡)といった、経済の古典的解釈は、現代ではまったく通用しません。貿易黒字の振幅は、カネ(資本)の貸し借りで生まれる のです。
三面等価の図を見て見ましょう。

我々が、消費せず、税金にも回さなかったお金を、貯蓄Sと言います。その国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G-T:公債)、 (EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=144兆円、それがI93兆円、G-T32兆円、EX-IM18兆円に回るのです。EX-IM18兆円は、海外へのお金の貸し出し なのです。
外国債・外国株・外国社債などの購入や、外国への貸付額がEX-IM18兆円なのです。
「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると,分配(所得)は「C+S+T」という式になります。
われわれが消費せずに貯蓄を増やす(S増)と,企業はモノ・サービスが売れないので,生産を縮小したり,値段を下げたり,新たな投資を控えます(I減少)。GDP(国民総生産)が減ります。GDPが減るので,我々の所得(給料)も減ります。所得が減ると,ますますお金を使うことが出来なくなります。社会全体の経済が縮小します。これを不況と言います。
貯蓄超過 = 公債 +経常黒字
(S-I) = (G-T)+(EX-IM)
増える 増える
左辺が増えると、右辺も増えます。不況になる(S-I増加)と、国債発行額と貿易黒字額は増えるのです。
①85年(底値)から、87年にかけて貿易黒字は拡大=プラザ合意後の円高不況
②90年(底値)から94年にかけて貿易黒字は拡大=バブル崩壊後の不況
これが、経済学の「掛け算の九九」に相当する基本中の基本、「貯蓄投資差額」「ISバランス論」です。
教科書の説明が誤りなのは、この原理を掲載しないからです。つまり、経済学と、(一般的な)経済常識は違うのです。
モノ・サービスの取引額:カネ(資本)取引額の比率は、1:90(07年)です。モノ・サービスの取引(実体経済)の90倍ものカネ(資本取引)がある のです。カネ(資本取引)が先、モノ・サービスの取引(実体経済)が後なのです。
これらの金融・資本取引の結果,世界の金融資産は,総額167兆ドル(1京7744兆円)に達します。実体経済(世界全体のGDP48兆ドル)の3.5倍です。しかも,その成長率は2006年までの11年間で年平均9.1%,世界の実体経済(GDP)成長率の5.7%を大きく上回っています。

経済産業省 平成20年版『通商白書』概要 第1章図の5
このように、貿易黒字の振幅は、カネ(資本)の貸し借りで生まれるのです。
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