教科書の間違い(5)

清水書院『現代 政治・経済』H21 p96
…機械技術の進歩は、自動車・航空機…などの新しい産業を生みだし、経済発展の原動力となった。化学や物理学・生物学の進歩も、繊維プラスチック…などの分野で新たな産業を生みだした。このように、現在の経済発展は、20世紀の欧米諸国を中心とした技術革新(イノベーション)注)に負うところが大きい

注)オーストリア生まれの経済学者シュンペーター(1883~1950)が用いた言葉。新機軸とも言う。

イノベーションは、技術革新のことではありません

吉川洋『景気はどうすれば回復する』週間ダイヤモンド2009.4.4号
…シュンペーターについて話をしましょう。彼はイノベーションの大切さを力説した経済学者として知られています。イノベーションには種類が5種類くらいあり、それがどれぐらい旺盛であるかどうかで、経済の好不況が決まると言っている。 
 しばしば誤解されるのですが、イノベーションとは技術革新と同義ではありません。…マーケットをつくり出す、新しいS字(筆者注)が出てくることこそ、まさにシュンペーターの言っているイノベーションにほかなりません。

筆者注)S字とは。モノ・サービスが誕生すると、はじめは勢いよく伸びるが、飽和点に近づくに従い小さくなり、最後はほとんど伸びない。携帯電話の飽和状態など。


吉川 智教『イノベーションとは―技術革新という訳は誤訳―』早稲田大学オピニオンno.58
…21世紀の高度に経済が発達した先進国の日本で、未だに、イノベーションに技術革新という訳が使われていることに私は、当惑を覚えます。なぜならば、技術革新以外にも、イノベーション、革新は存在するからです。もしも、イノベーションを技術革新としか考えないとすると、これは、大変にミスリーディングなことと言わざるを得ません。このミスリーディングな誤訳が現在の日本の経済にも大きく影響を与えているのではないか、と思います。


 イノベーションとは、そもそも、人々に新しい価値をもたらす行為です。その目的を達成するためには、科学的な進歩が必要なこともあれば、既存の製品とは異なった新製品開発が必要な場合もあるし、経営システムの革新が必要な場合もあるし、販売や制度的な革新 が必要なこともあります。
 例えば、トヨタ自動車で生まれた、カンバン・システム、ジャスト・イン・タイムは、製造に関するイノベーションです。研究開発型ベンチャー企業に代表される、未公開企業の株式公開を早める店頭株式市場のような「新しい社会的な制度」に関するイノベーションです。


筆者
 「イノベーション=技術革新」とされたのは、1958年の経済白書と言われています。正確さを期すなら、「新結合」「革新」が正しい訳になります。

 清水書院『2009資料 政治・経済』p215
「経済発展の理論」1912シュンペーター 東畑精一など訳
 新結合…は次の5つの場合を含んでいる。1新しい財貨(筆者注:モノ・サービスのこと)、すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産。2新しい生産方法、…3新しい販路の開拓、…4原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得。…5新しい組織の実現…


 このように、シュンペーターは「5類型」を示しています。1新しい財貨の生産 2新しい生産方法の導入 3新しい販売先の開拓 4新しい仕入れ先の獲得 5新組織の実現です。「新しく結合する」ということが,本来の意味です。「新(違い)を追求するのが,原動力」ということですね。

 同社の資料集では、「原典」を紹介しています。教科書執筆者は「原典」に忠実に書く必要があります。
スポンサーサイト
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

08月 | 2017年09月 | 10月
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

菅原晃

Author:菅原晃
図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格


注 コメントする方へ

このブログでは、個人的なご意見・ご感想(価値観 正しい・間違い、好き嫌い、善悪)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。
意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。
経済学は学問ですので、事実を扱い、規範(価値観)は扱っていません。事実に基づく見解をお願いいたします。
カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。
なお、はじめてコメントする方はコメント欄ではなく「質問欄」からお願いいたします。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ