プレミアム(上乗せ金利)とは
新聞を解説 『苦闘するロシア経済』H21.9.16
<ロシア経済の現状>
記事の要点は、下記のようになります。
ロシアの天然ガス独占企業「ガスプロム」の社債のプレミアムが、年初でプラス20%、7月でもプラス8%と高い。「ロシア・プレミアム」とも形容される。
背景には、ロシア企業の返済能力が低下しているのに、借入金返済の資金需要が旺盛なことがある。
10年ぶりに海外で発行する「ロシア国債(3年で580億ドル)」。石油価格下落で歳入減少、今年は財政赤字になる。原油輸出代金を積み立てた1400億ドルの基金も、底をつく。米格付け会社S&Pは、現在の「トリプルB」から、格下げする可能性もあると発表。
官と民ともに、海外マネーに依存する構図。
投資銀行は、「ルーブル」は年末までに15%下落する可能性もあると示唆。
以上から、ロシアは新興市場国内で、「ハイリスク・ハイリターン」であることを認識させる。
<過去のロシア>
上記のように、ロシア経済について、懸念が生じています。
(1)「ガスプロム社債のプレミアム」についてです。
社債は、企業の借入金です。例えば、日産や、トヨタや、ソニーが、社債を発行する場合、目安となるのは、「日本国債」の利回りです。「日本国債」が安心できる銘柄だとしたら、会社の発行する社債は、国債より、安心度が下がります。もちろん、トヨタやソニーなどの大企業の場合、「倒産して社債が返還されない」というリスクは、相当低いと考えられますが、それでも、国債よりは高い利回りを提示します。信用力のない企業であれば、より高い利回りを提示しなければ、社債を購入してもらえません。このような、国債と社債の利回りの差をプレミアム(あるいはスプレッド)と言います。
「ガスプロム社債のプレミアム」がロンドン銀行間取引金利より、20%~8%高いということは、「信用度が極端に低い(ロシア・プレミアム)」ということです。
天然ガス独占企業でさえ、こうなのですから、「ロシアを代表する民間企業の業績は軒並み悪化」し、 「ロシアの金融機関の不良債権比率が現在の11%から、年末には20%まで上昇する可能性」 が指摘されている状況は、「危機的」といっても、過言ではないでしょう。
(2)ロシア国債の信用度、S&P社の「トリプルB」という格付けは、危険性が低い分利回りも低く、比較的安全とされる基準です。これを格下げするということ(ダブルBなど)は、元本割れの可能性もある、利回りの高いプロ投資家向けの信用度になるということです。
参考文献 細野真宏『経済のニュースが良くわかる本 世界経済編』小学館2003
ロシアの国債は、過去に「返せません」とデフォルト(1998年8月7日)宣言をしたことがあります。
当時、アジア通貨危機が深刻になり、ロシア国債の売れ行きも落ちました。短期国債の利率(プレミアム)は、22%から、1ヶ月間(97年12月まで)で、37%にまで上昇したのです。「金利を高くしないと売れない」状態になったのです。さらに、1998年の7月には、80%を超えるまでに急騰します。
石油価格下落(アジア通貨危機によって、需要が急激に落ち込んだ)が響いたのです。ロシアの財政は、エネルギー関連税に頼っていたから、財政に対する不安が拡大したのです。
1998年8月には、とうとう172%まで利率(プレミアム)があがります。IMFの融資を期待していましたが、見送られたため、ロシア政府は「デフォルト(債務不履行)を宣言せざるを得ませんでした。
「ガスプロムのプレミアムが高く、ロシア国債の格付けが低下する可能性」という記事は、ロシア経済の10年前に重なります。もちろん、デフォルトの可能性は、当時に比べると、ずいぶん低いのですが、ロシアの「エネルギー会社(民間であれ、国営であれ)」に依存する体質は、全く変わっていないことがわかります。
ロシアはプーチン大統領時代、企業の国営化をさらに推し進めました。その体質が強化されているとしたら、経済政策に疑問符が付きます。
三菱東京UFJ『ロシア・中東経済の見通し』2009.5.25 図も同様

…ロシアは、民間部門を中心に莫大な対外債務残高を抱えており、2009年の対外債務支払い額は1.000億ドルを上回る見込みである。(第6図)これまで黒字を維持してきた経常収支が赤字に転じる懸念が高まる中、資金調達環境は依然として厳しい。今後、景気の低迷が長期化するとともに企業への政府関与がさらに強化されたり…資本流出が再び起こる可能性は考慮しておく必要があろう。
<ロシア経済の現状>
記事の要点は、下記のようになります。
ロシアの天然ガス独占企業「ガスプロム」の社債のプレミアムが、年初でプラス20%、7月でもプラス8%と高い。「ロシア・プレミアム」とも形容される。
背景には、ロシア企業の返済能力が低下しているのに、借入金返済の資金需要が旺盛なことがある。
10年ぶりに海外で発行する「ロシア国債(3年で580億ドル)」。石油価格下落で歳入減少、今年は財政赤字になる。原油輸出代金を積み立てた1400億ドルの基金も、底をつく。米格付け会社S&Pは、現在の「トリプルB」から、格下げする可能性もあると発表。
官と民ともに、海外マネーに依存する構図。
投資銀行は、「ルーブル」は年末までに15%下落する可能性もあると示唆。
以上から、ロシアは新興市場国内で、「ハイリスク・ハイリターン」であることを認識させる。
<過去のロシア>
上記のように、ロシア経済について、懸念が生じています。
(1)「ガスプロム社債のプレミアム」についてです。
社債は、企業の借入金です。例えば、日産や、トヨタや、ソニーが、社債を発行する場合、目安となるのは、「日本国債」の利回りです。「日本国債」が安心できる銘柄だとしたら、会社の発行する社債は、国債より、安心度が下がります。もちろん、トヨタやソニーなどの大企業の場合、「倒産して社債が返還されない」というリスクは、相当低いと考えられますが、それでも、国債よりは高い利回りを提示します。信用力のない企業であれば、より高い利回りを提示しなければ、社債を購入してもらえません。このような、国債と社債の利回りの差をプレミアム(あるいはスプレッド)と言います。
「ガスプロム社債のプレミアム」がロンドン銀行間取引金利より、20%~8%高いということは、「信用度が極端に低い(ロシア・プレミアム)」ということです。
天然ガス独占企業でさえ、こうなのですから、「ロシアを代表する民間企業の業績は軒並み悪化」し、 「ロシアの金融機関の不良債権比率が現在の11%から、年末には20%まで上昇する可能性」 が指摘されている状況は、「危機的」といっても、過言ではないでしょう。
(2)ロシア国債の信用度、S&P社の「トリプルB」という格付けは、危険性が低い分利回りも低く、比較的安全とされる基準です。これを格下げするということ(ダブルBなど)は、元本割れの可能性もある、利回りの高いプロ投資家向けの信用度になるということです。
参考文献 細野真宏『経済のニュースが良くわかる本 世界経済編』小学館2003
ロシアの国債は、過去に「返せません」とデフォルト(1998年8月7日)宣言をしたことがあります。
当時、アジア通貨危機が深刻になり、ロシア国債の売れ行きも落ちました。短期国債の利率(プレミアム)は、22%から、1ヶ月間(97年12月まで)で、37%にまで上昇したのです。「金利を高くしないと売れない」状態になったのです。さらに、1998年の7月には、80%を超えるまでに急騰します。
石油価格下落(アジア通貨危機によって、需要が急激に落ち込んだ)が響いたのです。ロシアの財政は、エネルギー関連税に頼っていたから、財政に対する不安が拡大したのです。
1998年8月には、とうとう172%まで利率(プレミアム)があがります。IMFの融資を期待していましたが、見送られたため、ロシア政府は「デフォルト(債務不履行)を宣言せざるを得ませんでした。
「ガスプロムのプレミアムが高く、ロシア国債の格付けが低下する可能性」という記事は、ロシア経済の10年前に重なります。もちろん、デフォルトの可能性は、当時に比べると、ずいぶん低いのですが、ロシアの「エネルギー会社(民間であれ、国営であれ)」に依存する体質は、全く変わっていないことがわかります。
ロシアはプーチン大統領時代、企業の国営化をさらに推し進めました。その体質が強化されているとしたら、経済政策に疑問符が付きます。
三菱東京UFJ『ロシア・中東経済の見通し』2009.5.25 図も同様

…ロシアは、民間部門を中心に莫大な対外債務残高を抱えており、2009年の対外債務支払い額は1.000億ドルを上回る見込みである。(第6図)これまで黒字を維持してきた経常収支が赤字に転じる懸念が高まる中、資金調達環境は依然として厳しい。今後、景気の低迷が長期化するとともに企業への政府関与がさらに強化されたり…資本流出が再び起こる可能性は考慮しておく必要があろう。
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