リカード 比較優位 比較生産費説 その15
<リカード 比較優位 比較生産費説 その15>
<儲かるから、比較生産費?>
清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152
間違い×「生産量が増え,交換すれば利益を得る」
正解 ○「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
横田宏治 小樽商科大学准教授
『15歳からの大学入門 美しい経済学』日本経済評論社2005
同書p89-98には、「利益を得るから、特化する」と、「貿易の利益」を「利潤」に置き換えるという、間違った説明が展開されます。いままで、説明してきたように、貿易は「損得」の問題ではありません。
P96 …イギリスは織物を輸出してワインを輸入すれば利益を上げることができ、逆にワインを輸出して織物を輸入すれば損することを示しました。
P98 …イギリスは比較優位のある織物の生産だけを行い…なぜなら、たとえばイギリスは1メートルの織物を作って輸出するごとに利潤を得るわけだから、できるだけ多くの織物を作りたいわけだよね。
貿易を「もうけを得るため」ととらえると、80年代の日米貿易摩擦、現在の米中貿易摩擦になります。いずれも、 「貿易黒字はもうけ」「貿易赤字は損」という、間違った経済理解に基づいています。
(このブログ、「貿易黒字は儲けの誤り」を参照)
同書の「もうけ」の論理をみてみましょう。(同書の内容について、趣旨を損なわない範囲で、簡略化して説明します)
①ポルトガルは、80人で、ワイン1リットルを生産します。 時給1000円で8万円
②ポルトガルは、90人で、毛織物1メートルを生産します。 時給1000円で9万円
③イギリスは、120人で、ワイン1リットルを生産します。 時給1000円で12万円
④イギリスは、100人で、毛織物1メートルを生産します。 時給1000円で10万円
絶対劣位(生産費が高い)にある、イギリスでも、「もうけられる」のです。
①イギリスは、毛織物1メートル(10万円)を、ポルトガルに持って行き、9万円で売る。
↓
②その9万円で、ポルトガルワイン(1リットル8万円)を、1.125リットル(9万円分)購入する。
↓
③1.125リットル(9万円分)のワインを、イギリスに持ち帰り、売る。イギリスでは、ワイン1リットル12万 円なので、1.125リットルは、13.5万円になる。
↓
④10万円の毛織物を輸出し、13.5万円分のワインを輸入し販売すれば、利潤は3.5万円になる。
P94…ほんとだあ。ちゃんと儲かるのね。賢いわあ。
P97…儲けることができるということは、実際にもそのような取引を行うだろうから、イギリスは織物の輸出国、ワインの輸入国になるんだ。

同様の論理で、ポルトガルは、8万円のワインを輸出し、1.2メートルのウールを購入し、ポルトガルで売れば、10.8万円になり、2.8万円儲けます。
P97…同様にして、ポルトガルはワインの輸出国、織物の輸入国になる。
P98…ポルトガルでも、同様の理由で、ワインの生産に特化する。そして両国ともそれぞれの比較優位がある財の生産に特化し、国際的な分業をすることによって、最大に利益を得るんだよ。
上の例では、各国が利益の総取りになっています。
ポルトガル ワイン 1リットル消費 織物 1.2メートル消費 もうけ 2.8万円
イギリス ワイン 1.125リットル消費 織物 1メートル消費 もうけ 3.5万円
「貿易の利益」を「利潤(もうけ)」で説明すると、以上のようになります。
この「リカード 比較生産費」連載で指摘してきたように、「もうける」ことが、貿易の目的ではありません。
貿易の目的は、誰もが、「消費者利益(効用)を増大できる」ところにあります。誰もが、WIN-WINの関係になるのです。
<リカード・比較生産費説 その2、その3・日常生活は貿易そのもの>で証明したように、我々の日常生活そのものが貿易(交換)です。
我々が一つの仕事に特化して生産するのは、消費を豊かにすることが、目的です。自給自足<貿易、生産量<消費量でした。
貿易の目的は「儲ける」ことではなく、「豊かに消費する」ことなのです。
ポール・クルーグマン『良い経済学悪い経済学』日本経済新聞出版社2008
P172
実業界でとくに一般的で根強い誤解に、同じ業界の企業が競争しているのと同様に、国が互いに競争しているという見方がある。1817年にすでに、リカードがこの誤解を解いている。経済学入門では、貿易とは競争ではなく、相互に利益をもたらす交換であることを学生に納得させるべきである。もっと基本的な点として、輸出ではなく、輸入が貿易の目的であることを教えるべきである。
間違い×「貿易(交換)すれば利潤を得る」
正解 ○
「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
<儲かるから、比較生産費?>
清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152

間違い×「生産量が増え,交換すれば利益を得る」
正解 ○「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
横田宏治 小樽商科大学准教授
『15歳からの大学入門 美しい経済学』日本経済評論社2005
同書p89-98には、「利益を得るから、特化する」と、「貿易の利益」を「利潤」に置き換えるという、間違った説明が展開されます。いままで、説明してきたように、貿易は「損得」の問題ではありません。
P96 …イギリスは織物を輸出してワインを輸入すれば利益を上げることができ、逆にワインを輸出して織物を輸入すれば損することを示しました。
P98 …イギリスは比較優位のある織物の生産だけを行い…なぜなら、たとえばイギリスは1メートルの織物を作って輸出するごとに利潤を得るわけだから、できるだけ多くの織物を作りたいわけだよね。
貿易を「もうけを得るため」ととらえると、80年代の日米貿易摩擦、現在の米中貿易摩擦になります。いずれも、 「貿易黒字はもうけ」「貿易赤字は損」という、間違った経済理解に基づいています。
(このブログ、「貿易黒字は儲けの誤り」を参照)
同書の「もうけ」の論理をみてみましょう。(同書の内容について、趣旨を損なわない範囲で、簡略化して説明します)
①ポルトガルは、80人で、ワイン1リットルを生産します。 時給1000円で8万円
②ポルトガルは、90人で、毛織物1メートルを生産します。 時給1000円で9万円
③イギリスは、120人で、ワイン1リットルを生産します。 時給1000円で12万円
④イギリスは、100人で、毛織物1メートルを生産します。 時給1000円で10万円
絶対劣位(生産費が高い)にある、イギリスでも、「もうけられる」のです。
①イギリスは、毛織物1メートル(10万円)を、ポルトガルに持って行き、9万円で売る。
↓
②その9万円で、ポルトガルワイン(1リットル8万円)を、1.125リットル(9万円分)購入する。
↓
③1.125リットル(9万円分)のワインを、イギリスに持ち帰り、売る。イギリスでは、ワイン1リットル12万 円なので、1.125リットルは、13.5万円になる。
↓
④10万円の毛織物を輸出し、13.5万円分のワインを輸入し販売すれば、利潤は3.5万円になる。
P94…ほんとだあ。ちゃんと儲かるのね。賢いわあ。
P97…儲けることができるということは、実際にもそのような取引を行うだろうから、イギリスは織物の輸出国、ワインの輸入国になるんだ。

同様の論理で、ポルトガルは、8万円のワインを輸出し、1.2メートルのウールを購入し、ポルトガルで売れば、10.8万円になり、2.8万円儲けます。
P97…同様にして、ポルトガルはワインの輸出国、織物の輸入国になる。
P98…ポルトガルでも、同様の理由で、ワインの生産に特化する。そして両国ともそれぞれの比較優位がある財の生産に特化し、国際的な分業をすることによって、最大に利益を得るんだよ。
上の例では、各国が利益の総取りになっています。
ポルトガル ワイン 1リットル消費 織物 1.2メートル消費 もうけ 2.8万円
イギリス ワイン 1.125リットル消費 織物 1メートル消費 もうけ 3.5万円
「貿易の利益」を「利潤(もうけ)」で説明すると、以上のようになります。
この「リカード 比較生産費」連載で指摘してきたように、「もうける」ことが、貿易の目的ではありません。
貿易の目的は、誰もが、「消費者利益(効用)を増大できる」ところにあります。誰もが、WIN-WINの関係になるのです。
<リカード・比較生産費説 その2、その3・日常生活は貿易そのもの>で証明したように、我々の日常生活そのものが貿易(交換)です。
我々が一つの仕事に特化して生産するのは、消費を豊かにすることが、目的です。自給自足<貿易、生産量<消費量でした。
貿易の目的は「儲ける」ことではなく、「豊かに消費する」ことなのです。
ポール・クルーグマン『良い経済学悪い経済学』日本経済新聞出版社2008
P172
実業界でとくに一般的で根強い誤解に、同じ業界の企業が競争しているのと同様に、国が互いに競争しているという見方がある。1817年にすでに、リカードがこの誤解を解いている。経済学入門では、貿易とは競争ではなく、相互に利益をもたらす交換であることを学生に納得させるべきである。もっと基本的な点として、輸出ではなく、輸入が貿易の目的であることを教えるべきである。
間違い×「貿易(交換)すれば利潤を得る」
正解 ○
「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
スポンサーサイト