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新聞の間違い 大塚節雄 木原雄士『10年代半ば、経常赤字に?』日経H22.5.17

<新聞の間違い>

大塚節雄 木原雄士『10年代半ば、経常赤字に?』日経H22.5.17 数字は筆者挿入

 2010年代半ばには日本の経常収支が黒字から赤字に転じる。…①財政収支と経常収支の「双子の赤字」に苦しむ日が来るのだろうか。
 …エコノミストに聞いたところ、13~18年度には②経常赤字に転落するとの予測が多かった。
③…家計の貯蓄率がマイナスなら、日本全体で見ても収入以上のお金を使う状態になりかねない。必要なモノを国内だけで生産できず、海外からの輸入が増えやすくなる。経常赤字転落のメカニズムはここにある
…貿易収支が赤字に転落し、経常収支の黒字が縮小すれば「成熟した債権国」になる。④…米国の経常収支は80年代前半から赤字が続くようになった。過剰な個人消費が輸入を膨らませたのが大きく、06年の赤字は8000億ドル強(約74兆円)にまで拡大した。


<経済新聞の暴走続く>

 もう、わけがわかりません。経済新聞記者が、経済のことが全く分かっていないのですから。

岩田規久男(学習院大学教授)『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009 p34,36
「戦前や戦後しばらくの間,日本の大学の経済学部で教えられていた経済学は,現代の金融政策を決定する上で全く役に立たない」
「政治家…世論をリードする大新聞や主要雑誌の経済担当記者などはそれでは困る…最低限,経済学の知識を持って仕事をしてもらいたいものである」
 「日本は,正統派経済学の知見なしには書けないはずの記事が新聞・雑誌に満載されている不思議な国である」


 世の中、特にマスコミは「危機だ危機だ」とあおるのが仕事です。だから経済学を学ぶ目的は,「マスコミやエコノミストによってつくられる俗説に惑わされずに,自分の目で経済現象を見つめる能力を身につけることにある 伊藤元重(東大教授) 『入門経済学 第2版』日本評論社2005 p2」のです。

 とはいっても、経済新聞でこのレベルですから、あとは推して知るべしです。問題は、正しい経済学が教えられていないことにあります。 

週間ダイヤモンド2010.3.27 p61
経常収支=資本収支.jpg

東大生でも、正答率は11.8%です。高校時代に、「政治経済」や「現代社会」で教えられていないんですね。

<双子の赤字>

①「双子の赤字」に苦しむ日が来るのだろうか。

 アメリカは「経常(貿易)赤字」と、「財政赤字」をずーっと続けてきました。財政赤字はクリントン政権時代に、一時黒字化したのですが、その時代のみです。そして、貿易黒字もずーっと拡大の一途です。

④…米国の経常収支は80年代前半から赤字が続くようになった。過剰な個人消費が輸入を膨らませたのが大きく、06年の赤字は8000億ドル強(約74兆円)にまで拡大した。


 でも、アメリカは「苦しむ日」など、迎えたことがありません。というより、GDPは拡大し続け、当然一人当たりGDP(=GDPの三面等価から、GDI国民総所得)も拡大の一途です。

 80年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われた時代がありました。「日本の土地の地価をすべて合わせるとアメリカが4つ買える」と言われた時代もありました。
ですが日本は毎年貿易黒字を出し、アメリカは貿易赤字で、アメリカのGDPは日本のGDPの手の届かないところまで拡大しました。ところが・・・

データ出典 世界経済のネタ帳
アメリカ 日本 GDP

アメリカ貿易赤字


2005年の1人あたりGDP(名目)は、日本35,633ドル、アメリカ42,680ドル、1.2倍です。

 経常(貿易)赤字が拡大しようと、財政赤字が拡大しようと、その国の豊かさには全く関係ないことがわかります。そりゃそうです。経常収支赤字資本収支黒字のことで、新聞のいう②「経常赤字転落」は、資本収支が「赤字から黒字に」上昇?したことなのですから。

<国際収支の原則>

2009年 国際収支表

経常収支黒字資本収支赤字 

 日本が経常収強調文支黒字を抱えるということは、同額分外国資産(外国の国債・社債・株式・資産・貸付)が増えるということです。

資本収支黒字経常収支赤字

 アメリカが資本収支黒字を抱えるということは、アメリカ国内に、外国資本(外国の国債・社債・株式・資産・貸付)が増えるということです。

 投資を受け入れるということはどういうことでしょうか。

参考・引用文献 石川城太『政府、過度な肩入れ避けよ』日本経済新聞H21.4.15
…グローバル化が進展し、国境を越えたヒト・モノ・カネ・サービスの移動の活発に伴い…自国企業に見えながら、所有構造を見ると…株式の多くを外国人が所有しているケースが…ある。…日産自動車の外国人持ち株比率は6割を超え、ホンダとトヨタも3割前後である。ソニー、任天堂、キヤノン、日立製作所など、日本を代表する企業…も4割を超えている。…日産はルノーの株式の15%を所有し、逆にルノーは日産の44.3%の株式を所有している。…ルノー出身のカルロス・ゴーン氏が両社の社長兼最高責任者(CEO)を兼務し、日産が保有するルノー株式には議決権がないため、日産はもはやフランスの企業といってもよい。


 今では,外国人株主の持ち株比率が30%を超える企業も少なくありません。東証一部上場企業では,’05年には100社を超えました。有力上場企業で,外国人持ち株比率が,50%を超える企業は,46社を数え,以下のような例があります。

出典 『会社四季報CD-ROMランキングでみる上場企業』2007年2週春号 東洋経済オンライン http://www.toyokeizai.net/online/topics2/?kiji_no=8

日産自動車69.3% 西友60.3% 昭和シェル石油61.3% 
ヤマダ電機55.2% HOYA50.5% 
富士フィルムホールディングス50.4% 

 これが、グローバル化の実態です。資本は国境を超え移動しているのです。「日産はフランス企業」です。
さらに、アメリカ貿易赤字額=資本収支黒字額なので、アメリカが貿易赤字を出せば出すほど、外国資本(外貨準備、外国債、外国証券ほか)の投入が増えるのです。「日産はフランス企業」と同様、アメリカの「○○社は日本企業・タイ企業・中国企業」という事例が膨大になっているということです。
 でも、「日産はフランス企業」で、何か困ったことはあるのでしょうか?「ヤマダ電機は外国企業」ですが、それが何か?

「貿易赤字は損」「貿易赤字は悪いこと」ではなく、 「貿易赤(黒)字」は「お金の貸し借り」のことなのです。ですから、貿易赤字があろうと無かろうと、経済成長(GDP増=GDI増=国民所得増)します。アメリカも、イギリスも、オーストラリアもです。

アメリカGDP推移
アメリカGDP推移・貿易赤字
英国GDP・貿易赤字 推移

 逆に、日本は’98年「貿易黒字」を出しながら、戦後2回目の「GDPマイナス成長=国民所得減」でした。さらに、2008年、貿易黒字を27,103(単位10億円)も出しながら、戦後3回目の「GDPマイナス成長=国民所得減」でした。前年度GDPは560,816、2008年度556,710となり、0.73%のマイナス成長です。(単位10億円 データ出展 内閣府速報値2009年2月13日)

 おかしいじゃありませんか、貿易黒字で儲けているのに、マイナス成長なんて。そう、「貿易黒字はもうけ」『貿易黒字は良いこと』が間違いなのです。貿易黒(赤)字と、経済成長は関係ありません。赤字だろうが、黒字だろうが、GDPは増減するのです。

櫻川昌哉『経済を動かす単純な論理』光文社2009 
p178
 貯蓄率が国家の間で異なっていれば、経常収支の不均衡が長期にわたって続くということはありえるのです。経常収支赤字国が持続的な経済成長をすれば、黒字国から赤字国へ資金は流れ、経常収支の赤字も持続できます。…実際にアメリカは、過去30年間、経常収支の赤字を継続してきましたが、大きな問題は生じていません


③…家計の貯蓄率がマイナスなら、日本全体で見ても収入以上のお金を使う状態になりかねない。必要なモノを国内だけで生産できず、海外からの輸入が増えやすくなる。経常赤字転落のメカニズムはここにある。 

 ですから、経常赤字になったり、黒字になったりするのは、「輸入が増える」とか、「輸出が増える」ことではなく、「お金の貸し借り=資本移動」のことなのです。モノの取り引きにメカニズムがあるわけではなく、「お金の貸し借りが原因→経常黒(赤)字」というメカニズムなのです。

<経常黒(赤)字額=カネの貸し借り額>

竹森俊平 慶大経済学部教授 『世界的な需要大幅減の背後に奇妙なるグローバルインバランス』週間ダイヤモンド 2009.4.4 (グラフも)
インバランス 


…世界的な問題には…米国を中心とした近年の国際貸借の増加、いわゆる「グローバルインバランス」問題がありました。
…「インバランス」というと、なにか悪いことのように感じられますが、海外から資本を借りている国もあれば、貸している国もあること自体は、国際資本取引の上ではおかしな話ではありません。
 

 お金の貸し借りは、善いとか悪いとかの対象ではありません。ですから、「赤字転落」という表現が、おかしいのです。

そして、お金の貸し借りは、財(モノ・サービス)の面から見れば、貿易赤(黒)字になるのです。

三面等価 汎用.jpg
22.1.24用
 経常(貿易)黒字は、貯蓄超過から生まれ、海外への貸し出し額と同意なのです。

…資本、おカネの流れは、財の流れという側面から見ることもできます。

 そもそも米国に流れ込んだアジアの国々のおカネ(上図③)とは、本質的には過剰貯蓄、つまり消費(上図①)にも投資(上図②)にも使われないおカネです。過剰貯蓄の存在は、そのぶんだけ生産されたモノ(上図④)に対する需要が欠如している状態を意味します。

「経常収支の赤字=海外からの純借入額=国内投資の国内貯蓄超過額」と頭にいれておいてください。

 はい、ここで、竹森先生の、重要な式が、提示されました。アメリカの場合は下記の式でA側から見た見方になります。一方、日本や中国、ドイツは、全く逆のBからの方向になります。

A→経常収支の赤字=海外からの純借入額=国内投資の国内貯蓄超過額←B

 …生産所得(上図④)のうち消費で使われないぶん(上図⑤)つまり貯蓄に見合った投資(上図②=政府の投資と企業の投資)があれば、生産所得と総支出は均衡することになります。

   貯蓄額=投資額なら、経常黒字(海外への貸し出し)は生まれません。

…アジアの国々が国内投資を抑制し、国内貯蓄を余らせた状態(過剰貯蓄)…しかるにそのとき、米国はアジアの余剰貯蓄を借り入れる一方、自国の貯蓄は減らしてそのぶん消費を増やし、投資も旺盛に行っていた。その結果、世界経済の生産余剰を米国の投資と消費が埋め…要するに…表裏一体の現象なのです。

 「貯蓄>投資」国≡「貯蓄<投資」国


 ですから、貿易黒字はもうけではなく、海外への貸し付け額なのです。例えば、日本国内とか、中国国内には環流しないおカネなのです。

 海外への貸し付け(投資)とは、外国の国債、社債、株、外国銀行への預金(外国銀行から見たら負債です)などです。

投資してもらっている国から見ます。

ある会社の株式が、外国人によって買われているということです。
ある会社の社債を、外国人が購入している状態です。
ある銀行の預金を、外国人がしていることです。
ある国の国債を、外国人が購入している状態です。
ある国の不動産の持ち主が、外国人の場合です。

 株式の50%超を外国人が持っている、ヤマダ電機や、日産は、外国企業です。日本の国債の4%~7%ほどは、外国人が購入しています。北海道のニセコにある長期滞在型のホテルやコンドミニアムは、オーストラリア人が購入しています。

 日本から見たら、「負債」になります。しかし、日本のGDI(国内総所得)は伸びます。企業も、銀行も、建設、不動産業もです。これらの企業にとって、買ってくれるのは、日本人であれ、外国人であれ、誰でもかまわないのです。

 だから、  「貿易黒(赤)字と、経済成長は無関係」なのです。

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新聞の間違い(41) 日経H22.2.2『韓国1年ぶり貿易赤字に』

<新聞の間違い>

日経H22.2.2『韓国1年ぶり貿易赤字に』
…1月の輸出入動向によると、貿易収支が4億7000万ドルの赤字となった。赤字は昨年1月以来1年ぶり。半導体の製造設備や自動車部品などの輸入が大幅に増えたのが響いた

日経H22.2.6『中国経常黒字昨年は35%減』
…経常黒字は前年を35%下回る2841億ドルだった。世界的な金融危機を受けた貿易黒字の縮小が響いた


<貿易黒字は良い、赤字は悪いという誤解>

 日経新聞でさえ、「貿易黒字は良い、赤字は悪い」という間違い記事を掲載します。「貿易黒字は良い、赤字は悪い」と考えているから、「赤字になった。○○が響いた」とか、「黒字は前年を下回った。○○が響いた」と書きます。「響いた」というのは、否定的な表現です。「優勝した。○○選手の活躍が響いた」とか、「黒字になった。○○商品が、前年比50%増になったのが響いた」とは書きません。

「貿易黒(赤)字は経済成長とは無関係」です

経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏) 

 ですから、「貿易黒字=お金の海外への貸し出し」「貿易赤字=海外からのお金の国内流入」なので、「貿易黒字はもうけ、赤字は損」ではありません。大切なのは、「GDP増」です。

以下は、以前掲載した記事です。

新聞の間違い 日経 H21.7.30 『韓国 資本収支7770億円黒字』

(1)『韓国 資本収支7770億円黒字』

韓国銀行が29日発表した1~6月の国際収支によると、資本収支が82億3000万ドル(約7770億円)の黒字となった。昨年7~12月は米金融危機をきっかけに466億ドルの大規模な赤字に陥っていた。


<国際収支表の原則>

 国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている、会社で言う「貸借対照表=バランスシート」のことです。商業科に通っている高校生なら、すぐに理解できます。
 モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2007年の日本は
国際収支表となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。貿易黒字=外国への資金提供のこと(国内に還元しないカネ)なのです。ですから、「貿易黒字はもうけ」ではありません。

①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
①経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)

この式が、常に成り立ちます。資本収支も、「黒字が良い」「赤字が悪い」ということではありません。


 中国が、「経常黒字2841億ドル 資本黒字1091億ドル」ということは、外貨準備△3584億ドルになります。中国が、外貨準備をがんがん増やし、世界一になっているのは、このような背景があります。でも、外貨準備増も「いいとか、悪いとかの話」ではありません。中国政府・中銀の持っている外貨が膨らんでいるということで、市場は逆に「元」があふれて、インフレ傾向になっています

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新聞の間違い(39) 編集委員 鈴置高史『韓国の“不気味な”資本収支』日経H21.10.19

編集委員 鈴置高史『韓国の“不気味な”資本収支』日経H21.10.19

…激しい「韓国売り」により、昨年1年間で509億ドルの赤字に上った資本収支は今年4月以降黒字基調…1~8月の累計は158億ドル…。株価は昨年夏の水準まで戻し、地価もうなぎ昇りだ。
…昨年後半以降の通貨安を背景に…輸出が急伸…GDP成長率(年率)は前期比10.8%を記録した。…韓国には景気が良くなると貿易収支が悪化するという“持病”。…韓国の場合貿易黒字が減っても、好景気を目がけたホットマネーが入り込み続け、資本収支の黒字が膨らんで通貨高が続くことが多い。
…第3四半期の貿易黒字は108億ドルと前期比39%減。3月に1ドル=1570ウオン台だったウオンは1200ウオンを割る…。…韓国政府が…神経をとがらせ始めたのも無理はない。



 なんでしょう。「貿易収支が悪化する」とか、景気回復しているのに、貿易黒字が縮小はまずい、ウオンが高くなったらまずいとか。


1「貿易黒(赤)字は経済成長とは無関係」

経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
 
 ですから、「貿易黒字=お金の海外への貸し出し」「貿易赤字=海外からのお金の国内流入」なので、「貿易黒字はもうけ、赤字は損」ではありません

 大切なのは、「GDP増」です。韓国はGDP増ですよね。「貿易黒字が縮小しようが、海外マネーが入ってこようが、」喜ばしいことなのですが。

以下は、以前掲載した記事です。

新聞の間違い 日経 H21.7.30 『韓国 資本収支7770億円黒字』

(1)『韓国 資本収支7770億円黒字』

韓国銀行が29日発表した1~6月の国際収支によると、資本収支が82億3000万ドル(約7770億円)の黒字となった。昨年7~12月は米金融危機をきっかけに466億ドルの大規模な赤字に陥っていた


<国際収支表の原則>

 
 国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている、会社で言う「貸借対照表=バランスシート」のことです。商業科に通っている高校生なら、すぐに理解できます。
 モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。

だから、2009年7・8月の日本は

2009 7月8月国際収支.jpg

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。貿易黒字=外国への資金提供のことなのです。ですから、「貿易黒字はもうけ」ではありません

経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)

この式が、常に成り立ちます。

 2009年1~6月期の韓国の場合、「経常収支217.5億ドル黒字 資本収支82,3億ドル黒字」です。

経常収支217.5=②資本収支赤字(資本収支82.3・外貨準備△299.8)となります(誤差脱漏は無視)。

 韓国の中央銀行・政府が保有する外貨が299.8億ドル増えたことを示します。外貨ですから、韓国国内には、還元しない「カネ」です。

 貿易黒字(経常収支黒字)は、「もうけ」ではありません同様に、「赤字は損」ではありません経常赤字額その国への外国からの投資額のことです。

 資本収支も、「黒字が良い」「赤字が悪い」ということではありません

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新聞の間違い(37) 論説委員長平田育夫 その3 『日本国債いつ火を噴くか』日経2009年12月20日

 論説委員長平田育夫『日本国債いつ火を噴くか』日経2009年12月20日

 …日本は、外貨建ての国債を出していないし、国債の93%も国内の金融機関や、個人が持つ。だから、両国の(筆者注:外国資本が、逃げ出し長期金利の上昇した、ギリシャ・スペイン)のようにはならない、というのが、常識的な見方だ。
 …個人の金融資産は、個人負債を除き、1065兆円。一方、国と地方の長期債務残高は、825兆円で今後も増える。2010年代中には、個人資産を、全部充てても、公債費を、買い切れなくなる
 …日銀の国債買い入れ拡大も、もろ刃の剣。これまでの買い入れ拡大は、賃金の上昇を押さえるのに役立ったという見方もある。だが、やり過ぎれば、制御不能のインフレや、金利上昇を招く
 …いま、年1.2%台の10年物国債利回りが、米国と同じ。3.6%になるとしよう。国の利払い費は新規国債を出さなくても、7~8年後には、約12兆円膨らむ。今年度の消費税収9.4兆円を上回る額で、財政をさらに悪化させ、後世代の負担を増やす。金利の上昇は、設備投資を冷やすなど経済への打撃も大きなものになる
 …財政再建は進まず歳出の半分程度を国債に頼り続ける。日銀は大幅な国債購入に乗り出す。インフレ懸念や財政悪化懸念が高まり、長期金利も急騰する。その惨劇の幕が上がるのはズバリ来年、財政運営への不信感がきっかけになる。


あまりにも間違いが多いので、赤で示しました。

(3)日銀の国債購入

日銀の国債買い入れ拡大も、もろ刃の剣。これまでの買い入れ拡大は、賃金の上昇を押さえるのに役立ったという見方もある。だが、やり過ぎれば、制御不能のインフレや、金利上昇を招く

…財政再建は進まず歳出の半分程度を国債に頼り続ける。日銀は大幅な国債購入に乗り出す。インフレ懸念や財政悪化懸念が高まり、長期金利も急騰する。その惨劇の幕が上がるのはズバリ来年、財政運営への不信感がきっかけになる。


 日銀や、そのほか金融機関が「国債」を購入するとは、どういうことなのかを明らかにしましょう。

 まず、国債は、毎日市場で売買されています。新規国債(借換債含む)も連日のように売り出されています。
 日銀は、金融政策で、FF金利を低下させたり、量的緩和を行う場合、「買いオペレーション」という手段を採用します。民間の金融機関が持っている国債などの債券を購入し、日銀券を当座預金に積み上げます。

 日銀が、市中の金融機関との間で、国債などの売買を行うことで、金融機関に資金を供給(吸収)し、無担保コールレートをコントロールします。

 各銀行は、企業や個人などの預金者への払い戻し準備や、金融機関通しの決済資金(A銀行口座からB銀行口座に送金すると、日銀のA銀行残高が減り、B銀行残高が増える)のために、日銀に預金をしています=日本銀行当座預金(銀行の銀行)。この資金の過不足を金融機関同士で補う際の金利が、無担保コールレート(’09年12月現在0.1%が目標)です。

 さて、このように日銀が、不況脱出のために購入した国債は、日銀のバランスシートではどのようになるのでしょうか。

H19年度バランス・シート
日銀 バランスシート

 このように、日銀が国債を市場から購入(買いオペ)すれば、それは、日銀の「資産」になります。そして その分、日銀券が発行されるわけです。

 国債購入を増やせば、市場に日銀券が出回ります(マネタリーベースを構成)。量的緩和や、金利引き下げです。
 
 逆にいえば、国債残高がなければ、銀行券は発行できないことになります。ですから、

 岩村充 早大教授は『貨幣の経済学』集英社 2008 p153 で「国債は政府の株式」に例えているのです。また、国債は通貨制度のアンカー(昔の金本位制度における金)だと喝破しています。

 金本位制では、その国の保有する金以上にマネーを増やすことができませんでした。それと同じように、日銀の保有する「国債」は、アンカーになっているのです。

 前回2001年から続いた、「量的緩和」のときに、日銀は、国債保有高を100兆円まで増やしています。まだまだ購入できます。

 さて、この「国債」ですが、政府は、「金利」を国債に対して払わなければいけません。
当然、日銀にも、その保有する分の「金利」を払いますが・・・

H19年 日銀 「損益計算書」「剰余金処分表」

政府が日銀に払った、金利        ① 6,820億円

日銀が政府に払った、利益 法人税など   459億円
                  国庫納付金  6,087億円
                   配当金     500万円
                      合計② 6,546億円
 
                       ①-②=274億円


 このように、実際には、67.4兆円の日銀の国債保有に対し、たった274億円のコストしか、日銀に払っていません。お金は政府と日銀の間で、ぐるぐるしているだけです。

 お札を刷るコストは、1万円札で16円です。1兆円分の1万円札は16億円で刷れます。
10兆円分、新札を発行すれば、160億円かかります。274億円のコストが、いかに低いかお分かりでしょう。

…財政再建は進まず歳出の半分程度を国債に頼り続ける。日銀は大幅な国債購入に乗り出す。インフレ懸念や財政悪化懸念が高まり、長期金利も急騰する。その惨劇の幕が上がるのはズバリ来年、財政運営への不信感がきっかけになる。

 来年度の新規国債発行が50兆円程度とします。日銀の「大幅な国債購入」を25兆円としてみましょうか。それを足したとしても、2003年当時の100兆円の保有には届きません。 

「インフレ懸念や財政悪化懸念が高まり、長期金利も急騰する。その惨劇の幕が上がるのはズバリ来年、財政運営への不信感がきっかけになる。」

 なんて、あり得ないことがお分かりでしょうか。

 新聞は、日経といえども、しかも論説委員長でも、「一般的な経済俗説」にはまっているという例です。

伊藤元重 東大教授『入門経済学第2版』日本評論社 2005  P 2

 経済学を学ぶ目的は、世間に流布する俗説や通説を鵜呑みにしないで自分の頭で経済現象について考え、理解することができる能力を身につけることであると思います。…「経財学を学ぶ目的は、マスコミや、エコノミストによって作られる俗説に惑わされずに自分の目で経済現象を見つめる能力を身につけることにある」…新聞や雑誌を開けば、俗説はいくらでも見つけることができます。

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新聞の間違い(27) 『上期の貿易黒字 韓国、初めて日本上回る』日経H21.10.22

新聞の間違い『上期の貿易黒字 韓国、初めて日本上回る』日経H21.10.22

 韓国の今年1~6月の貿易黒字が266億ドルとなり、上半期ベースで初めて日本を上回ったことがわかった。1~6月の韓国ウオン相場は…ウオン安基調が持続。円高傾向が続いた日本よりも輸出競争力が向上したのが原動力になった…。
…1~6月の韓国の貿易黒字額は…ドイツに次いで2番目に大きかった。日本は91億ドルで6位にとどまった。



<貿易黒(赤)字は経済成長とは無関係>

 今まで何度も、「貿易黒字はもうけではない」こと、「貿易黒(赤)字と経済成長は関係がない」「貿易黒字は不況になると増える」ことを示してきました。「国と国は、企業と違い、競争の主体ではない」ことも述べました。

 しかし、何度説明しても、一般の方には、通じないようです)。ポール・クルーグマンも、そのような誤解を取り除くことが、経済教育の目的と言っていますね。

<リカード比較優位 比較生産費 16 貿易は国際競争??>参照。

 貿易黒字額が伸びること=輸出競争力とします(便宜上)。その国の、世界に占める貿易黒字のシェアが、何パーセント伸びたかを見ます。世界の貿易黒字の中での、シェアが伸びれば伸びるほど、その国が「強い」「輸出競争力がある」となります。

 そのような強さがあれば、当然、その国のGDP(国民総生産=国民総所得)も伸びているはずですが…
正解は、そんな「輸出競争力」など、定義すらできないし、実態もないのです。

注)倉西雅子 ブログ参照。「中国が一人勝ちする自由貿易主義という難題」
専門は、政治学だそうです。

http://blog.goo.ne.jp/kuranishimasako/e/7d500efdc954e1becb6f917880ad74f4

 今回は、貿易黒字シェアの伸び率と、1人あたりGDPの関係を示したグラフをご紹介します。
参考・引用文献 原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』新潮選書2009グラフも

 図は、1978年~2000年までの、「輸出競争力」なるものと、「1人あたりGDPの伸び率」を掛け合わせたものです。
輸出競争力1?.jpg

 いかかでしょうか。「輸出競争力」なるものがある(伸びる)なら、1人あたりGDPも、伸びるはずです。グラフは右上がりになるはずです。しかしそのような関係は全く見られません

「アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのような先進工業国においても、そのような関係は見られなかったp186」のです。

 では、日本の高度成長期(発展途上国→先進国へ)の時代はどうだったのでしょうか。
輸出競争力2?.jpg
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 やはり、60年代も、70年代も、「輸出競争力」なるものと、「1人あたりGDP伸び率」は全く関係ない…というより、むしろ、「輸出シェアが伸びると、1人あたりGDP伸び率は下がる」関係になっていることがわかります。「輸出が成長しているのに、国民所得は同じように伸びない!!!」とんでもない(?)状態ですね。

 「輸出が伸びたら、強い国」、「輸出(貿易黒字)はもうけ」は間違いなのです。それがわからないので、新聞記事では、「円高傾向が続いた日本よりも輸出競争力が向上した」とか、「日本は(筆者注:貿易黒字が)91億ドルで6位にとどまった」などという表現が出てきます。「貿易黒字はもうけ」だから、「とどまる」という否定的表現が出てきます。

 経済新聞でさえ、こうなのだから、「貿易黒字はもうけ」という神話は永久に払拭されそうもありません

「一国の経済水準は、輸出部門ではなく,国内部門の生産性によって左右されるp188」のです。

<提案>
 
 貿易黒字は a trade surplus です。貿易赤字は、a trade deficit です。足すと「0円」になります。輸出>輸入なら黒字、輸出<輸入なら赤字と言います。

 貿易(モノ・サービス)をすると、必ず同額のカネが動きます。ですから、貿易黒字資本(カネ)収支赤字貿易赤字資本(カネ)収支黒字になります。

 企業の黒字はblack赤字はredといいます。こちらは「もうけ・損」のことです。

 貿易黒字赤字と書くから、企業の「黒字赤字」とおなじように、「もうけ・損」と書いてしまいます。

 貿易黒字は、貿易超過(資本流出)・輸出超過貿易赤字は、輸入超過(資本流入)と書いてはどうでしょうか。これなら、「善し悪し」とか、「もうけ・損」というニュアンスは感じなくなります

 本当は、資本流出といっても、日本のカネが海外に出て行くわけではないのですが…「超過」をプラス・マイナス0にする響きがあるのではないでしょうか。
 何か適切なネーミングはありませんか?
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