アダム・スミス(11) 教科書は、なぜ間違うのか

<教科書は、なぜ間違うのか>

 教科書は、学問的に正しい事を載せてはいません。
アダム・スミスの「自由放任」「見えざる手」について、問い合わせたときの、各社の回答です。


(1)価格の自動調整機能を『見えざる手』と言った

 上記のように表現している出版社に質問したところ、次のような回答をいただきました。
 
 経済学者・大河内一男氏は『世界の名著31 アダム・スミス』(中央公論社、1968年刊)のなかで「見えざる手」について次のように解説しています。
 
 「だが、スミス経済学が現代の経済学に再考をうながしているのは、なんといってもその『見えざる手』の思想ではないだろうか。『公益』は、もちろん社会の大いなる善にほかならないが、この善が個人の自由と完全に両立する機構の存在することを、スミスは洞察していたということができる。その機構というのは経済的には市場機構または価格機構のことである。(前掲書p51)
 
 ご指摘の小社・○○○では、現代経済学における一つの有力な解釈と思われる考え方にもとづき(たとえば前掲の大河内氏の解釈)記述しており、「○○○○た」という該当箇所は「表現した」という表現におきかえることもできると考えております。

 
 大河内一男(1905-1984)は、東大総長を勤めた人物で、「国富論」を訳したこともある人です。同社の説明は、簡単に言えば、 「だって、先生がいったんだもん」という、小学生と同じです。
 
 このように、教科書・資料集出版社には、「真理を追究」する姿勢はありません。「原典」を読まず、「孫引き」しておしまいです。これを、端的に示した社があります。

(2)アダム・スミスは「自由放任政策」を説いた。

 質問は、下記のとおりです。

 アダム=スミスについて、「自由放任政策」と書かれていますが、どのような根拠によるものなのか、教えてください。
「研究者の本に書いてある」ではなく、『道徳感情論』『国富論』にもとづいて、解説してください。 

 回答は、次の通りです。

 小社では,これまでの長年に渡る研究成果を尊重し,それによって明らかになった「通説」をベースに編集しております。
 アダム=スミスの政策が自由放任主義であるとの結論は研究者によって一般的に広く承認されております。
 たとえ,スミスが自由放任主義という言葉を使っていなくても,スミスの政策を一言でわかりやすく生徒さんに説明できる言葉を用いることについては何の問題もないと考えております。

 教科書p○○で掲載している○○は,政府の役割の変遷を整理したもので,
 スミスについて生徒さんに押さえておいていただきたいポイントをまとめさせていただいたものでございます。
 『道徳感情論』『国富論』にもとづいて解説してくださいとのことでしたが,
小社としては,学問的真理に関するところまでお答えする立場にはありません
 この件につきましては,これ以上の回答を申し上げることができません。ご理解賜れば幸いに存じます。

○○編集部 ○○


 教科書・資料集は、科学(~である)ではなく、哲学・価値論(~だと思う、~べき論)を述べているのですね。
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