アダム・スミス「見えざる手」(7)

2.神の見えざる手

教科書・資料集には2つのタイプがあります。

(1)価格の自動調整機能を『見えざる手』と言った
(2)価格の自動調節機能を『見えざる手』と解釈することができる

(2)見えざる手に例えた。

(2)価格の自動調節機能を『見えざる手』と解釈することができる立場についてはどうでしょうか。昨日に続いて、検証してゆきましょう。


教育出版「政治経済 明日を見つめて」H20.1.20
 このように価格が自動的に調節して需要と供給を均衡させようとする働きを市場の自動調節機能(価格メカニズム①)とよぶ。注①アダム=スミスはこの価格のはたらきを「見えざる手」と形容した。

清水書院『現代政治・経済』H21年 p94
 イギリスのアダム=スミスは、『諸国民の富』において、資本主義経済の自由な競争が「見えざる手」のはたらきにより社会全体の調和をもたらす、と述べた。このばあいの「見えざる手」とは市場機構のことである。

山川出版社『新版 現代社会』22.23年度用見本 p99
市場価格が需要と供給を調整する働きを価格の自動調節機能といい、アダム=スミスはこれを神の「見えざる手」にたとえた。


昨日、見てきた点は、下記の通りです。


<人間は利己的である>
     
<富を求める>

     
<人類発展>


『道徳感情論(下)』岩波文庫 2003.4.16 p22-23
…人類の勤労をかきたて、継続的に運動させておくのは、この欺瞞である。…土地を耕作させ、家屋を建築させ、都市と公共社会を建設させ、人間生活を高貴で美しいものとするすべての科学と技術を発明改良させたのはこれなのであって、地球の全表面をまったく変化させ、自然のままの荒れた森を快適で肥沃な平原に転化させ、人跡未踏で不毛の大洋を、生活資料の新しい資源とし、地上のさまざまな国民への交通の大きな公道としたのは、これなのである。 


(下の文に続く)
 
 手段の目的化=「欺瞞」が、人類を発展させました。「利己心」を持つわれわれの「富」の追求が社会全体を豊かにさせたのです。そして・・・下記の文に続きます。

     ↓
<見えざる手 その1>

『道徳感情論(下)』岩波文庫 2003.4.16 p23-24

(上の文から続く)

 人類のこれらの労働によって、土地はその自然の肥沃度を倍化させ、まえよりも多数の住民を維持する…。高慢で無感覚の地主が…成育した全収穫を…消費してみても…なんの役にもたたない。…かれの胃の能力は…欲求の巨大さに対して、まったくつりあいをもたず…貧しい農民の胃よりも多くを、うけいれはしない…。残りをかれ(筆者注:地主)は…人びとのあいだに、分配せざるを得ない。かれら(筆者注:農民や使用人や商人や労働者)…は…生活必需品のその分け前をひきだすのであって…それをかれ(筆者注:地主)の人類愛またはかれの正義に期待しても、むだだっただろう。土壌の生産物は…それが維持しうる住民の数に近いものを、維持するのである。

 富裕な人びとは…その…なかから、もっとも貴重で快適なものを選ぶだけである。かれら(筆者注:富裕な人びと)が消費するのは、貧乏な人びとよりも…多くないし…生まれつきの利己性と貪欲にもかかわらず…貧乏な人びととともに分割するのであって…自分たちだけの便宜をめざそうと…かれらが使用する(筆者注:やとう)数千人の…労働の目的が…かれら自身の…諸欲求の充足であるとしてもそうなのである。

 かれら(筆者注:富裕な人びと)は見えない手に導かれて、大地がそのすべての住民のあいだで平等な部分に分割されていた場合に、なされただろうのとほぼ同一の、生活必需品の分配をおこなうのであり、こうして、それを意図することなく、それを知ることなしに、社会の利益をおしすすめ、種の増殖に対する手段を提供するのである。

 
<ここで述べられていること>

 裕福な地主は、どんなに貪欲でも、食べ物をたくさん食べられない。残りの生産物で儲けようとするので、かならず、労働者・商人・手工業者たちに分配することになる。もちろん、食べ物の良い部分をとって食べるけれども。(地主と数千人の労働者という貧富の差がある階層社会)でも、千人で平等に土地を分けた場合(筆者注:共産主義のような状態か?)に分配された程度とほぼ同じ程度を、「見えない手」に導かれ分配する結果になっている。そして、儲けよう、贅沢しようとするから、意図せずに、知らず知らずに、社会の利益を増やすのである。


見えざる手



<結論その1:『道徳感情論』における見えざる手>

「富を追求する社会」の分配も、「平等に土地を分けた社会(注)」の分配も、結果として「見えざる手」に導かれ同じ程度になる・・・。不思議ですが、これが彼のいう『見えざる手』の導きなのですね。


「この章句を書く場合には、ルソーの『人間不平等起源論』を念頭においていたのであって財産の獲得は不平等の原因となる、というルソーの主張と暗黙裡に争っていたのである」
D.D.ラファエル 『アダム・スミスの哲学思考』久保芳和訳 雄松堂出版 1990 p81


これのどこが、「見えざる手=価格の自動調節機能」なのですか?
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