リカード 比較優位 比較生産費説 その4
<リカード・比較生産費説 その4>
<比較生産費:リカードの表>
清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152
間違い×「生産量が増え,交換すれば利益を得る」
正解 ○「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
では、リカード・モデルの「魔法」を解きほぐしてゆきましょう。
リカードは,国は,イギリスとポルトガルの2カ国だけ,生産される商品もワインと毛織物という2つだけの世界を仮定し,次のような表を示しました。

イギリスの全労働力を,220人とします。また,ポルトガルの全労働力を170人とします。そして,必要な労働量(労働者数)の違いがその生産費に反映し,商品の価値(価格)が決まるという,労働価値説の立場に立ち,理論を展開します。
商品を生産するには,土地の広さ(ワイン作り)とか,機械の生産力(ウール作り)とか,様々な要素が必要です。ワインを作るには,広い土地がある国の方が有利ですよね。また,ウールを生産するには,例えば優秀な毛織物の機械があれば,同じ1時間でも,より多くのウールを生産できます。機械の力ですね。
本当は,国によってこのような違いがあるのですが,ここではその違いを無視し,労働者数の違いが,生産費を決めると仮定します。
この表を見て分かるのは,ワインもウールも,ポルトガルの方が,イギリスに比べて少ない人数で生産できるということです。これを,ポルトガルの方が「絶対優位」の立場にある と言います。
つまり,ポルトガルの方が,圧倒的に優位な立場で,ワインもウールも生産できるので,ポルトガルとすれば,貿易する必要がないということになります。そもそも,貿易の必要がないのですが,あえて,貿易をしたとしても,ポルトガルの一人勝ちになりそうですね。ポルトガルが一方的に輸出してしまいそうです。
一方,イギリスにとっても,ワインとウール,両方ともポルトガルよりも生産費(コスト)がかかるので,貿易しても,イギリスの商品は,ポルトガルでは売れないと言うことになってしまいます。また,ポルトガルの商品が,イギリス市場に洪水のようにあふれてしまい,イギリス産業は壊滅してしまいそうです。

ところが,リカードによれば,ポルトガル,イギリスともに,「貿易をすれば,必ず利益がもたらされる」のです。ポルトガルは安い商品を生産できるのだからともかくとして,イギリスにはどうして利益がもたらされるのでしょうか。それを可能にするのが,「比較優位」の理論なのです。
さて,いよいよ比較生産費説の説明に入るのですが,表1は,数字が大きく,計算をすると小数点などが出てきて,わかりにくくなってしまうのです(100÷120=0.833…など)。とにかく,「できるだけわかりやすく説明する」のが主旨なので,ここで,表の数値を思い切り変えます。ただし,数字の大きさを変えるだけで,表の本質(例えば,ポルトガルの方が「絶対優位」にあるなど)は変わりません。

ずいぶんすっきりしました。ポルトガルは依然として絶対優位の立場にあります。
この表でも,ワインもウールも,ポルトガルの方が,イギリスに比べて少ない人数で生産できます。ワイン1㍑は,1人の労働者で作れますし,イギリスでは5人もかかることに比べれば,圧倒的に優位ですね。ウールも同様です。では,どうして,「貿易をすると,イギリスに利益がもたらされる」のでしょうか。
表2を見ると,イギリスはどちらの商品を作るにしても,労働量では不利なのですが,その不利な割合は,ワインとウールでは差があるのです。イギリスではウール1㍍を生産するために,4人の労働量が必要なので,ワイン1㍑生産に必用な5人の0.8倍の労働量ですみます。
ポルトガルでは,ウール1㍍を生産するために,2人の労働量が必要なので,ワイン1㍑生産に必要な1人の,2倍の労働量を投入しなければなりません。つまり,ウール生産にワイン生産の2倍の労働量がかかり,イギリスでは同じく0.8倍の労働量ですみます。比較すると,ウール生産では,その生産性において,イギリスの方がより優位です(0.8:2)。
逆にポルトガルの場合,ワイン1㍑生産に必要な労働量はウール1㍍生産に用いられた労働量の0.5倍(1÷2=0.5)ですみ,イギリスの場合は,1.25倍(5÷4=1.25)かかります。比較すると,ワイン生産では,その生産性において,ポルトガルの方がより優位です(0.5:1.25)。では,ここまでの論をまとめてみます。

イギリスは,ウール生産で比較優位にある =得意である
ポルトガルは,ワイン生産で比較優位にある=得意である
イギリスは,どちらを作っても,ポルトガルよりは,効率よく作れません。ですが,ウール作りの方が,かろうじて得意と言えます。
ポルトガルは,何を作ってもイギリスより得意です。でも,ウールづくりと,ワインづくりのどっちがより得意かといわれれば,ワイン作りの方がより得意です。
リカードによれば,ポルトガル,イギリスともに,特化して「貿易をすれば,必ず利益がもたらされる」のです。
続く
<比較生産費:リカードの表>
清水書院 教科書『現代政治・経済』2008 p152

間違い×「生産量が増え,交換すれば利益を得る」
正解 ○「特化前は,生産量≧消費量だったものが,特化後は生産量<消費量となり,消費者効用が増大する」
では、リカード・モデルの「魔法」を解きほぐしてゆきましょう。
リカードは,国は,イギリスとポルトガルの2カ国だけ,生産される商品もワインと毛織物という2つだけの世界を仮定し,次のような表を示しました。

イギリスの全労働力を,220人とします。また,ポルトガルの全労働力を170人とします。そして,必要な労働量(労働者数)の違いがその生産費に反映し,商品の価値(価格)が決まるという,労働価値説の立場に立ち,理論を展開します。
商品を生産するには,土地の広さ(ワイン作り)とか,機械の生産力(ウール作り)とか,様々な要素が必要です。ワインを作るには,広い土地がある国の方が有利ですよね。また,ウールを生産するには,例えば優秀な毛織物の機械があれば,同じ1時間でも,より多くのウールを生産できます。機械の力ですね。
本当は,国によってこのような違いがあるのですが,ここではその違いを無視し,労働者数の違いが,生産費を決めると仮定します。
この表を見て分かるのは,ワインもウールも,ポルトガルの方が,イギリスに比べて少ない人数で生産できるということです。これを,ポルトガルの方が「絶対優位」の立場にある と言います。
つまり,ポルトガルの方が,圧倒的に優位な立場で,ワインもウールも生産できるので,ポルトガルとすれば,貿易する必要がないということになります。そもそも,貿易の必要がないのですが,あえて,貿易をしたとしても,ポルトガルの一人勝ちになりそうですね。ポルトガルが一方的に輸出してしまいそうです。
一方,イギリスにとっても,ワインとウール,両方ともポルトガルよりも生産費(コスト)がかかるので,貿易しても,イギリスの商品は,ポルトガルでは売れないと言うことになってしまいます。また,ポルトガルの商品が,イギリス市場に洪水のようにあふれてしまい,イギリス産業は壊滅してしまいそうです。

ところが,リカードによれば,ポルトガル,イギリスともに,「貿易をすれば,必ず利益がもたらされる」のです。ポルトガルは安い商品を生産できるのだからともかくとして,イギリスにはどうして利益がもたらされるのでしょうか。それを可能にするのが,「比較優位」の理論なのです。
さて,いよいよ比較生産費説の説明に入るのですが,表1は,数字が大きく,計算をすると小数点などが出てきて,わかりにくくなってしまうのです(100÷120=0.833…など)。とにかく,「できるだけわかりやすく説明する」のが主旨なので,ここで,表の数値を思い切り変えます。ただし,数字の大きさを変えるだけで,表の本質(例えば,ポルトガルの方が「絶対優位」にあるなど)は変わりません。

ずいぶんすっきりしました。ポルトガルは依然として絶対優位の立場にあります。
この表でも,ワインもウールも,ポルトガルの方が,イギリスに比べて少ない人数で生産できます。ワイン1㍑は,1人の労働者で作れますし,イギリスでは5人もかかることに比べれば,圧倒的に優位ですね。ウールも同様です。では,どうして,「貿易をすると,イギリスに利益がもたらされる」のでしょうか。
表2を見ると,イギリスはどちらの商品を作るにしても,労働量では不利なのですが,その不利な割合は,ワインとウールでは差があるのです。イギリスではウール1㍍を生産するために,4人の労働量が必要なので,ワイン1㍑生産に必用な5人の0.8倍の労働量ですみます。
ポルトガルでは,ウール1㍍を生産するために,2人の労働量が必要なので,ワイン1㍑生産に必要な1人の,2倍の労働量を投入しなければなりません。つまり,ウール生産にワイン生産の2倍の労働量がかかり,イギリスでは同じく0.8倍の労働量ですみます。比較すると,ウール生産では,その生産性において,イギリスの方がより優位です(0.8:2)。
逆にポルトガルの場合,ワイン1㍑生産に必要な労働量はウール1㍍生産に用いられた労働量の0.5倍(1÷2=0.5)ですみ,イギリスの場合は,1.25倍(5÷4=1.25)かかります。比較すると,ワイン生産では,その生産性において,ポルトガルの方がより優位です(0.5:1.25)。では,ここまでの論をまとめてみます。

イギリスは,ウール生産で比較優位にある =得意である
ポルトガルは,ワイン生産で比較優位にある=得意である
イギリスは,どちらを作っても,ポルトガルよりは,効率よく作れません。ですが,ウール作りの方が,かろうじて得意と言えます。
ポルトガルは,何を作ってもイギリスより得意です。でも,ウールづくりと,ワインづくりのどっちがより得意かといわれれば,ワイン作りの方がより得意です。
リカードによれば,ポルトガル,イギリスともに,特化して「貿易をすれば,必ず利益がもたらされる」のです。
続く
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