2016年 GDP 確報
<実質賃金が上がるはずだの何だのって・・・需要と供給で決まる市場など、この世にない> 「実質賃金が上がらないのはなぜか」、あるいは、「労働市場が逼迫しているのだから、実質賃金が上がるはずだが、アベノミクスが成功していないので上がらない」だの、とんちんかんなことを言う人たちがいます。
2017年11月22日07:00
池田信夫
「デフレではない状況」でもインフレにならない構造変化
循環的要因で決まる「需要不足失業率」は最近はマイナスになり、人手不足なので賃金が上がってインフレになるはずだが、実質賃金は横ばいでインフレは起こらない。
https://38news.jp/economy/11049
【青木泰樹】実質賃金が低迷する理由
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12309380630.html
三橋貴明
なぜ日本の実質賃金は上昇しないのか?
結局
、「公共投資を増やせ」という主張のために、何でもかんでも無理やり理由をくっつけている話ですね。
公共投資を増やせ、財政出動しろなど、すでにできない話であることは論述しました。
①乗数効果などありません。
「中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇」
②日本の財政問題についても、詳細に取り上げました。
消費増税を凍結しろという暴論1~4
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1141.html
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1140.html
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1139.html
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-1138.html
古い経済学しか学んでいない、財政の全体像がまるでわかっていない、というレベルの話です。
今回は、それとは別に、
この人たちがやっていることは、100%無意味、そこに「エネルギー」を費やすことが無駄ですという話です。
この人たちの論理は、「需要と供給で、(実質)賃金が上昇するだのしないだのという枠組」ですね。つまり、労働市場は、「需要と供給」で動いているという前提です。
「需要と供給」で動く世界など、この世にないのですから、その論理で、「労働市場」を考える自体、無駄な話、論理的に成り立たない話です。
現実に、ピンポン玉はよく曲がり、ボウリングの球はそんなに曲がりません。重さや空気抵抗や摩擦が入るからです。
そんな現実世界の話に、「摩擦や空気抵抗はゼロとして考えるものとする」という、物理のテストの理論を持ち込んで、「ピンポン玉は・・・」と話すようなものです。理論を使うのが的外れなのに、本人、そこに気付かず、無意味な話をせっせせっせと組み立てている・・・
そういうことです。100%無駄なことです。
<需要と供給の世界とは>今や、中学校の教科書にも載っている、需要と供給の世界。市場メカニズムです。

マクロでは、
①財・サービス市場
②労働市場
③貨幣市場④債券市場
を市場として扱います(③④は表裏なので、同時に扱うこともあります)。

では、この「需要と供給」で描かれる市場、完全競争市場は、この世にあるのか?答えは「ない」です。
数研出版 改訂版・政治経済 2018用 P118
財の同質性、情報の完全性、多数の経済主体の存在、参入・退出の自由の四つの条件を満たした市場のこと。売り手も買い手も自分で価格を決定できず、市場で決まった価格を目安に行動する。ただし、これは、理論的に想定されたもので、このような市場は現実にはほとんど存在しない。
清水書院 政治・経済資料 2017 P229
市場メカニズムによって資源が配分されるには、完全競争が成立していなければならない。それには①買い手と売り手が多数存在し、どちらも価格に影響力を持たないこと。②買い手と売り手が同一の商品を取引していること。③買い手と売り手が各各独立して行動していること。④買い手と売り手は商品価格に関して十分な情報を持っていること。⑤買い手も売り手も自由に市場へ参入、実行、撤退することができること、などの条件が必要である。しかし、こうした完全競争市場は理論的モデルであって、現実には存在しない。実際には独占・寡占が存在し、所得の不平等の是正や公共財の供給は市場メカニズムにまかせておいても実現しない(市場の失敗)。
にもかかわらず完全競争市場を理解しなければならないのはそれが市場機構を評価するベンチマークだからである。現実の企業が直面するほとんどの市場は完全競争市場の条件のいずれかを欠いている不完全競争市場なのである。

つまり
、「需要と供給」で決まる世界など、この世にないのです。ないのに、その論理を使って「(実質)賃金が上がるだの下がる」だのと言っているので、バカなことだというのです。需給の世界など、ケインズが不況を論じた90年近く前から、この世にありません。
ケインズが大恐慌を論じたとき、アメリカの失業率は25%にのぼりました。失業とは、次のような状態です。
「需要と供給」メカニズムが働くのなら、賃金が下がって「失業」がなくなるはずです。実際に古典派経済学ではそう考えられていました。ピグーはどう分析していましたか?ケインズは何と言いましたか?
参照 中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇
実際には、需給で動く「労働市場」など、この世にないのです。実際にこの世にあるのは、完全競争市場の要件を欠いた「不完全競争市場」だけです。
清水書院 政治・経済資料 2017 P229
にもかかわらず完全競争市場を理解しなければならないのはそれが市場機構を評価するベンチマークだからである。

ベンチマーク、参照点だからです。摩擦と空気抵抗をゼロと考える物理問題と同じです。
資源(ヒト、資本、時間)を最も有効活用した状態が、社会的余剰が最大になる状態(パレート最適)だからです。
ですから、この「最適な状態」から乖離した状態とか、社会的余剰の損失(死荷重)をいかに最小限にするか・・・を分析するツールとして、完全競争市場モデルを使用するのです。
・独占
・関税か補助金か
・公定価格
・環境税
・公共財
参照 中高生の教科書でわかる経済学 ミクロ篇
だから、完全競争モデルは、なくてはならないツールなのです。しかし、実際にはこの世にありません。
完全な「円」など、この世にはありません。黒板に書いた円でも、円ではありません。線を使用した時点で、「幅」が生じるからです。でもそれがもっとも抵抗の少ない形として「車輪」や「ベアリング」に使用されているのです。
<不完全競争市場>この世にあるのは、すべて不完全競争市場と言っても過言ではありません。完全競争市場に似た形の市場がちらほら存在するだけです。
完全競争市場とは、市場の前に買い手(需要者)も売り手(供給者)もその存在が小さすぎて、価格に対して決定する力がない、市場価格を受け入れるしかない「プライス・テイカー」の状態にあることを示します。
数研出版 改訂版・政治経済 2018用 P118
財の同質性、情報の完全性、多数の経済主体の存在、参入・退出の自由の四つの条件を満たした市場のこと。売り手も買い手も自分で価格を決定できず、市場で決まった価格を目安に行動する。

(1)財・サービス市場
①完全競争市場に近い形
財・サービス市場で、「プライス・テイカー」であり、売り手も買い手も自分の思った価格をつけられない市場、完全競争市場に近いのは、例えば野菜とか魚の卸売市場、金銀銅などの素材市場、半導体やねじなどの基本部品市場、バラ済み船の船賃などの市場があります。

これらは、毎日のように価格が変動し、売り手も買い手もその価格を受け入れます。
(2)不完全競争市場
①独占的競争市場

実際にある市場です。鳥貴族やすき家は、自分で価格を決める「プライス・メイカー」です。買い手はその価格を受け入れざるを得ません。コンビニでもスーパーでも、マッサージ料金も宿泊料金も、床屋もネイルも、不動産価格も、衣料品も・・・・。
すべて「プライス・メイカー」の価格を、買い手は受け入れざるを得ません。このようなプライスが「需要と供給」で変化し、決まることはありません。
ただし、鳥貴族もすき家も、居酒屋同士、飲食業同士で競争しています。ですから、業界の動向を見ながら、価格を決定しています。鳥貴族は「低価格帯」で勝負していますので、
2980円均一価格はつけません。
一方、高級料亭や、予約の取れない日本料理店などは、別な価格をつけ、ニッチな市場を作り、独占的な価格をつけます。肉でも、牛どんから、高級ステーキ店まで、千差万別です。
この「差」があるところが、不完全競争市場の特徴です。
清水書院 政治・経済資料 2017 P229
市場メカニズムによって資源が配分されるには、完全競争が成立していなければならない。それには①買い手と売り手が多数存在し、どちらも価格に影響力を持たないこと。②買い手と売り手が同一の商品を取引していること。
③寡占市場
ビール業界などが典型です。この業界の特徴は、プライス・メイカーでありながら「価格競争」をしないという点にあります。寡占市場では、価格はあえて「横並び」となります。
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アサヒが値上げをすると、キリンも必ず値上げする! 寡占市場の法則④独占市場
必ず、市場価格より高い「独占価格」になります。利潤の最大化を狙うからです。
そこで、電気・都市ガス・水道や独占交通路線などの独占市場では、政府の規制価格が導入されます。
参照 中高生の教科書でわかる経済学 ミクロ篇
(3)金融市場
①貨幣市場
完全競争市場に近い形として 外国為替市場があります。
②債券市場
完全競争市場に近い形として 長期国債市場,,株式市場があります。

③不完全競争市場
・短期金利は、日銀が誘導プライスメイクしています。
・金利は、銀行間や、労金、共済組合、農協、漁協で違う金利を提供しています。
・銀行のカードローンから闇金まで、金利は千差万別です。
・企業向け貸出金利も、相手の企業によって金融機関は変えています。
・社債の金利も発行した企業が決めます。
・質屋の金利は全国統一です。
全て供給者がプライス・メイカーです。
独占的競争市場~独占市場まで成立する世界です。
(4)労働市場
①不完全競争市場
・最低賃金は公定価格です
・飲食店の時給も、ドライバーの時給も、企業が決めます。
・大企業は春闘や経団連がプライスの目安を決めます。
・初任給は企業が決めます。
供給者(労働者)は、企業の決めた時間の買取価格(プライス・メイク)を見て選ばざるを得ません。
一方、供給者(労働者)も千差万別です。1人1人みな違います。差があるので企業は面接をします。これが完全競争市場に近い形の市場、同質のねじやDRAMと違う点です。
財の同質性は、労働市場の場合、最初からありません。需給曲線で描ける世界ではないのです。
ただし、完全競争市場に近いのは、「パート・バイト賃金<小企業賃金<注企業賃金<大企業賃金」になります。また、「いつでもどこでもだれにでもできる単純労働市場<資格・能力で差別化する市場」になります。


読売2017.12.21 バイト争奪師走の陣
時給2000円 表彰や有給も
大手居酒屋チェーン「つぼ八」・・・忘年会が集中する年末のアルバイトは10~11月に募集時給を前年比で50円引き上げたにもかかわらず、人手不足は解消できず・・・。ヤマト運輸は一部地域で夜間のパートドライバーを破格の時給2000円で募集した。居酒屋「テング酒場」を展開するテンアライドも正月三が日は1100円の現金自給に200円から300円上乗せする。
11月の3大都市圏のアルバイト・パートの平均時給は1024円と過去最高を更新した。人材の奪い合いが激化しているため、時給を引き上げざるを得ない。ただ、時給の引き上げだけでは人材確保は難しいとの指摘もある。もともと低賃金の小売やサービス業は人件費の上昇が重荷となりやすく、年中無休の営業は限界にきていると分析している。
日銀短観…過剰から不足を引いた指数…業種ごとばらつきが鮮明だ。宿泊飲食サービスは-62と過去最低の水準で、運輸郵便もマイナス47と人手不足感が強い。一方で金融機関は-14にとどまった。
あくまでも「完全競争市場に近いと言えば言える」「完全競争市場的」なのであって、完全競争市場ではありません。
飲食店は周りの飲食店、コンビニは周りのコンビニ店やスーパーと競争しながら、独占的にプライスメイクします。花屋で働きたい人にとってスタバの時給がいくらであれ、関係ありません。
宿泊飲食業の給与が高くても、銀行に勤めたい人にとっては関係ありません。
介護の求人倍率は29年10月現在で4.56倍です。
https://www.fukushi-work.jp/toukei/index_2.html

この業界の人手不足は、給与が少ないことですか?給与が上がれば、必ず人手不足が解消できますか?
読売H29年12月24日

IT技術者の不足が、価格の問題で解決できますか?
一方、各業界はそれぞれの業界のみならず、他業種とも人材を取り合って競争しています。これが独占的競争市場という意味です。
鹿島や清水建設は、初任給を独占的に決めていますが、だからと言ってほかの企業の価格を無視するわけにはいきません。他の業界の価格を無視して初任給を決めているわけではありません。
さて、マクロの
①財・サービス市場
②労働市場
③貨幣市場④債券市場
を見てきましたが、
1つとして、「完全競争市場」はないことが分かります。
このような市場なのに、「需要と供給で実質賃金が上がる」だの、「まだ実質賃金が上昇していないから完全雇用ではない」だの、いかに無意味な話なのかがお分かりでしょう。
労働市場が「需要と供給原理で決まった(プライス・テイカ―)」ことなど、過去に1度もありません。
似たようなアルバイト・パート市場があるからと言って、これを労働市場全体に当てはめるなど、無理なのです。
結論
経済を論じるときに、「需要と供給」論理を持ち出した時点で、その人の言うことは意味不明ということになります。「需要と供給」で決まる世界など、この世にないからです。
特に、労働市場の供給は、5000万人、全部バラバラ(差だらけ)です。1つとして同じ個体がありません。このような不完全市場で、「需要と供給がひっ迫すると、(実質)賃金が上がるはずだ!」など、根本的に無意味です。
労働市場とひとくくりにし、失業率とまとめてはいますが、あくまでもざっくりとした統計です。事務職は求人倍率が1.0倍を切り、宿泊業は4倍を上回るような「市場」なのです。この失業率が完全雇用状態になれば、(実質)賃金が上がるはず!など、妄想といっても過言ではありません。全体ひとまとめ需給で決まる市場ではないのです。経済学が分析対象としているのは、理論の「完全競争市場」ではなくて、現実にある「不完全競争市場=需給メカニズムが働かない市場」です。

「需要と供給で決まるはずなのに、そうなっていないのはなぜなのか?」を分析するのが、経済学です。ケインズ以降、マクロ経済学はずっとそればかり考えています。
ですから、労働市場を論ずるときに、実際の失業率や内定率を指標とします。失業率が低下し、内定率が上昇するような状態を可とします。現在の状態は「可」なのです。

補足
経済学には統一路論などありません。この場合にはこう、この場合にはこう説明できるというものでしかありません。医学でいえば、外科、内科、耳鼻咽喉科、皮膚科・・・と分かれているようなものです。最適治療はそれぞれによって違います。放射能被曝が健康を害すこともあれば、放射線治療が有効な場合もあります。
<追記>
https://38news.jp/economy/11049
【青木泰樹】実質賃金が低迷する理由
https://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=new#
労働分配率が上がらない、企業は従業員にパイを配布していないと言っています。
労働分配率は、不況だと上昇します。


実質賃金がどうだとか、労働分配率がどうだとか、何を基準にしているのか意味不明です。それらを不十分と言いつのり、
目的は何が何でも「公共事業拡大!」です。ますます持って意味不明です。