アダム・スミス「見えざる手」(6)

2.神の見えざる手

教科書・資料集には2つのタイプがあります。
(1)価格の自動調整機能を『見えざる手』と言った
(2)価格の自動調節機能を『見えざる手』と解釈することができる

(2)見えざる手に例えた。

 昨日の検証で、(1)価格の自動調整機能を『見えざる手』と言った事実はないことがわかりました。
 では、(2)価格の自動調節機能を『見えざる手』と解釈することができる立場についてはどうでしょうか。検証してゆきましょう。


教育出版「政治経済 明日を見つめて」H20.1.20
 このように価格が自動的に調節して需要と供給を均衡させようとする働きを市場の自動調節機能(価格メカニズム①)とよぶ。注①アダム=スミスはこの価格のはたらきを「見えざる手」と形容した

清水書院『現代政治・経済』H21年 p94
 イギリスのアダム=スミスは、『諸国民の富』において、資本主義経済の自由な競争が「見えざる手」のはたらきにより社会全体の調和をもたらす、と述べた。このばあいの「見えざる手」とは市場機構のことである

山川出版社『新版 現代社会』22.23年度用見本 p99
市場価格が需要と供給を調整する働きを価格の自動調節機能といい、アダム=スミスはこれを神の「見えざる手」にたとえた

<人間は利己的である>

『道徳感情論(上)』岩波文庫 2003.1.14 p313-314
 シナという大帝国が…とつぜん地震によってのみこまれたとしよう。…ヨーロッパにいる人間愛のある人…が…この恐るべき災厄の報道を受け取ったとき…なによりもまず、あの不幸な国民の悲運に対するかれの悲哀をひじょうに強く表明するだろうし、人生の不安定、このようにして一瞬に壊滅させられうる人間の…労働のむなしさについて、多くのゆううつな省察をするだろう。(筆者注:その後)…いつもとかわらぬ気楽さと平静さをもって、自分の仕事または快楽を追及するであろうし、休息をとったり気晴らしをしたりするだろう
…もし、かれがあす、自分の小指を失うことになっていたとすれば、今夜はかれは眠らないだろう。しかし…彼の一億の兄弟(筆者注:シナ人)の破滅にもかかわらず…いびきをかくだろうし…この巨大な大衆の破滅は…彼自身のこのささやかな悲運よりも利害関心を引かない対象だ…。
…われわれの諸感情が、ほとんどつねに、これほどあさましく、これほど利己的であるとき…。

 2008年5月、中国四川省で7万人近い被災者を生んだ、地震がありました。人類は、自分の愛犬・愛猫の死以上の悲哀を、かの地の人々に、寄せることが出来たでしょうか。

<富を求める>

『道徳感情論(下)』岩波文庫 2003.4.16 p21-22
…われわれの想像力は…われわれをとりまくすべてのもの(筆者注:モノやサービス、カネetc)に、広がるのである。…地位ある人びとの邸宅と家計の中を支配している快適性の美しさに、魅惑される…すべてのものが…安楽の促進に…欲望の充足に…欲求を楽しませ慰めるのに、適合させられている…。
…富と地位の快楽は…偉大で美しく高貴なもの、それの達成は…われわれが…投じがちな…苦労と懸念の全てに十分にあたいするもの…。

 わたしたちは、富や地位の快楽に惹かれます。「マネー」は、人類の、数ある生きる目的の、一つです。手段の目的化です。

<人類発展>
『道徳感情論(下)』岩波文庫 2003.4.16 p22-23
…人類の勤労をかきたて、継続的に運動させておくのは、この欺瞞である。…土地を耕作させ、家屋を建築させ、都市と公共社会を建設させ人間生活を高貴で美しいものとするすべての科学と技術を発明改良させたのはこれなのであって、地球の全表面をまったく変化させ、自然のままの荒れた森を快適で肥沃な平原に転化させ、人跡未踏で不毛の大洋を、生活資料の新しい資源とし、地上のさまざまな国民への交通の大きな公道としたのは、これなのである。

 手段の目的化=「欺瞞」が、人類を発展させました。「利己心」を持つわれわれの「富」の追求が社会全体を豊かにさせたのです。
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