フランス その3 婚外子
嫡出子と、非嫡出子の間の「相続」に関する民法規定が、違憲になるかもしれません。1995年の最高裁大法廷で、「合憲」とされましたが、その後地裁、高裁レベルで、「違憲」とする判断が相次いでいます。
読売H25.2.28

嫡出子とは、婚姻関係にある夫婦(婚姻届を提出し、法的に夫婦)の間に生まれたこどもです。
非嫡出子とは、法的な婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもです。例としては、愛人関係にあるカップルの間に生まれた子、夫婦別姓のため、婚姻届を出さず、事実婚をしているカップルの間に生まれた子などがあります。
父親が、その子供を認知すると、非嫡出子になり、遺産分割の際の、相続の対象になります。逆に、女性が「シングルマザーとしてこの子を育てていく」とした場合、父親との法的な、親子関係は生じません。
また、非嫡出子は、養子縁組をすることで、嫡出子になります。「腹違いの子」でも、相続分は一緒になります。
で、普段の生活では、嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと、実際上の問題は何も生じないのですが、これが「相続」が絡むと、「法的権利」ということで、厄介になります。人間は合理的・・・つまり、法的にもらえるものはもらっておこうとなります。
相続のもめごとと言えば、「大富豪」とか、そんなのを考えそうですが、実際は、「普通の家庭」・・・たとえば家や土地を含めて5000万円以内、3000万円以内の遺産分割が、めちゃくちゃにもめます。特に財産が「土地・家屋だけ」の場合は大変です。
また、法定相続分が、5万や10万なら、「面倒くさいから放棄(実際に遺産放棄は10%くらいあります)」というのもあり得ますが、これが、30万・・50万・・100万・・200万・・となると、人間変わります。90万円でも、もめます。「法的にもらえるものなら、50万円でももらう!」となります。
もめ事を避けるには、遺言を書くことです。難しくありません。自筆で構いませんし、公正証書(公正証書役場)に出さなくて、家で保管していてもかまいません。何度書き直しても、日付の新しいものが有効になります。
兄弟姉妹には遺留分がないので、「相続させない」で済みますし、「奥さんに8割、子どもに2割」でも結構です。
ただ、法定遺留分というのがあり、例えば、「全額を市に寄付」は、遺留分減殺請求があると認められません。
遺留分は、例えば、妻1人、子ども2人の場合、通常は妻1/2、子ども1/2の相続になりますが、「愛人の○○に全額相続させる」と遺言に書いてあっても、妻1/4、子ども1/4は法定で最低の権利として認められるというものです。これ以外を「遺言」で書けばもめません。相談は無料で行いますので、ご連絡ください(笑)。
さて、嫡出子と非嫡出子ですが、次のようになっています。
民法第900条 法定相続分
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
非嫡出子は、嫡出子の1/2の相続分というものです。これが「憲法違反かどうか」です。
実際例では、次のようになります。
父母の間に3人の嫡出子X・Y・Zがいます。Yには嫡出子Cと非嫡出子D、Zには、子Eがあり、X・Yはすでに死亡しています。父が360万円の相続財産を残し、Zが相続を放棄した場合です。Dの法定相続分は次のようになります。

1 妻の法定相続分は、1/2、子どもは残りの1/2です。(900条1項)
2 Zが相続放棄なので、Eは代襲相続できません(887条2項)
3 X・Yが死んでいても、A・B・C・Dは代襲相続できます。(同)
4 非摘出子Dの相続分は、摘出子Cの1/2です。(900条4項ただし書き)
以上より、Dの相続分は、360×1/2×1/2×1/3で、30万円になります。

さて、この場合、360万の遺産ですが、これが1800万(現実的な数字です)だと、孫は、225万円、300万円、150万円となります。どうですか?それぞれに妻や子供の家族を抱えるとなると・・・もめます。1800万が「家+土地」だけだと、もっともめ事は複雑になります。分割できないからです。
で、嫡出子と、非嫡出子の差ですが、事例の場合は、60万と30万円の差になります。この差が違憲かどうかとなります。
Cが「養子」で、Dが「非嫡出子」でも、60万と30万になります。血のつながりがあっても30万、血のつながりがなくても60万になります・・・内心では、複雑化してきますね。
<フランスの場合>
このような差は、海外では、1960年代から80年代にかけて規制が改正・撤廃され、国連は、日本に対し、93年と04年に法的格差解消をするよう、勧告しています。日本でも96年に法改正が法相→政府に答申されましたが、「夫婦別姓」まで踏み込んでいたため、まとまりませんでした。
フランスの場合、子どもはすでに「夫婦間に生まれた」が前提ではなくなっています。
参考引用文献 読売H24.10.11

結婚と、事実婚の比率は、5対4で、事実婚は、2010年に44万組に上ります。新生児の比率も56%が婚外子になっています。
現大統領オランド氏も事実婚の元パートナーとの間に子供が4人、現在同居するパートナーは、離婚した夫との間に3人の子供がいます。
子供については「とにかく増やす」が国策です。
恋愛におおらかなフランスの場合、「自分の妻」であっても、いつ他人に口説かれるかわからないので、安心できません。ウソみたいな話です。
竹下節子「結婚に縛られず生まれる命」読売H19.5.9
…日本での夫の浮気相手というと、「水商売の女性」を連想することが多い。フランスではずばり「友人の奥さん」だ。家族ぐるみの交際は盛んだが、そこには男と女の競争原理が働く。男にとって相手が人妻だから母親だからという自制は働かないし、逆に自分の妻が常に女として見られている危機も管理しなくてはならない。男が女を「女」として認識しないところに子供は生まれない。
そういう競争原理の中に生きるフランスの男女の緊張や努力を「ご苦労なことだ」と見るか「うらやましい」と見るかは人によりけりだろう。
日本も、本当に「合計特殊出生率」を上げて少子化対策をしたいのなら、フランスのように「結婚」と「こども」を分けるということも考えられます。結婚に頼らなくても、国が積極的にこどもに補助金を出す制度です。
そもそも、「結婚」なるものも、明治時代になってから、欧米の制度を直輸入して取り入れたもので、江戸時代までの日本では、庶民の間では結婚なんてもともとないようなものですし(江戸の町では、男8割女2割の人口比率)、明治時代でも、旦那と愛人ばかりでした。
歴史をさかのぼると、光源氏の時代から、通い婚ばかりです。光源氏の最後の子供については、自分の子供ではないと知りつつ、それを言うと、その子の身分が下がるから言わなかったという話です。日本の歴史上では、今の常識とされている婚姻制度の方が、はるかに短かいのです。
参考文献 日経H25.2.28
法的に結婚していない事実婚は、日本でも増える傾向にあり、厚生労働省の人口動態調査によると、11年に非摘出子の出生は2万3千人で、約2.2%になります。
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