為替・貿易論 その2

<為替・貿易論に、トンデモが多い理由 その2>

ニッポン放送 『ザ・ボイス』 H26年7月8日 『ザ・フォーカス』

飯田泰之(明大)
「60代70代の人は、勉強したころは、貿易収支に意味があった、経常収支にも意味があった時代なんですけども、その中で、何で意味があったのか、何で黒字が良かったのかスポーンと忘れて、変動相場制なのに、赤字だって言われるし、悪い悪いって言われているところにロックインして、思い込んでしまっている」



 
真壁 昭夫(まかべ・あきお) 信州大学経済学部教授
1953年神奈川県生まれ。76年一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行入行。ロンドン大大学院修了。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向、みずほ総研主席 研究員などを経て、05年信州大学経済学部教授。

間違い部分は、赤にします。

http://diamond.jp/articles/-/40752

真壁


日本人の生活水準が高度経済成長前に逆戻り?
円安で加速する貿易赤字拡大の近未来的リスク考

 8月中旬、財務省が発表したわが国の貿易統計速報によると、今年7月のわが国の貿易収支は1兆240億円の赤字となった。これで、13ヵ月連続で貿易収支が赤字となったのである。

 赤字額としては過去3番目の高水準で、かつて多額の貿易黒字を減らすことに腐心した時代は“今は昔”のことになってしまった。

 貿易収支が赤字に陥った主な背景には、エネルギー資源や半導体関連の輸入が増加したこと、円安による輸入金額の膨張が輸出金額の増加を上回ったこと、そしてわが国の大手企業の海外進出に伴って、今までのように国内生産して輸出する形態から、海外生産したものを海外で販売する形態へと、経済構造の一部が変化していることがある。

貿易収支が赤字に陥る一方、わが国は多額の所得収支の黒字(海外から受けとる所得から、海外に支払う所得を差し引いた金額)を稼いでおり、海外との資金のやり取りでは受け取り超になっている。そのため、依然として国内に経済的な富が蓄積する構造にはなっている。

 しかし、2012年度の経常収支の黒字額は4兆2931億円と、前年度比43.6%の大幅減少であり、経常黒字額が過去最高であった2007年度の24兆7220億円の約6分の1程度まで落ち込んでいる。

 今後、貿易収支の悪化などによって経常収支が赤字になるようだと、わが国が蓄積して来た富が海外に流出することになる。最悪のケースでは、我々が今の生活水準を落とさざるを得なくなるかもしれない。

 かつて、わが国が多額の貿易黒字を米国などから強く批判され、貿易摩擦に苦しんだ経緯があった。その貿易黒字はいつの間にかなくなり、すでに貿易収支は大幅な赤字が定着している。

貿易赤字転落の主な理由は3つある。1つは、大震災に伴う原子力発電所の稼働停止によって、LNGを中心とした大量のエネルギー資源を輸入せざるを得なくなったことだ。わが国としては、電力発電のため、何とかしてLNGの絶対量を確保する必要がある。

 もともとわが国が輸入するLNGの価格は、原油価格と連動する仕組みが多く、相対的に高かった。それに輸入量の増加と、円安による円ベースでの輸入金額の増加が重なった。

 2つ目は、わが国企業のビジネスモデルの変化だ。かつては、多くの企業が国内で製造した製品を海外の市場に輸出するビジネスモデルをとっていた。しかし、人件費が相対的に高いことや、少子高齢化による国内市場の縮小、さらには円高や重い法人税負担などを勘案して、大手企業が海外展開を進めた。

 その結果、海外の生産拠点で生産した製品を海外市場で販売したり、わが国に逆輸入するケースが増えた。そうなると、どうしても輸出額は減少傾向を辿ることになる。

 3つ目は、一部の分野でわが国企業の競争力が低下したことだ。わが国の産業構造を振り返ると、今まで自動車、家電などの分野で強力な競争力を持っていた。それらの分野の企業が輸出でも存在感を示し、多額の外貨を稼いできた。それが、わが国の貿易黒字を生み出す原動力にもなっていた。

 現在でも自動車部門はトヨタを中心に、依然として世界トップクラスの業績を上げているものの、家電、特にスマートフォンやタブレットPCの分野では、米アップルや韓サムスンに大きく出遅れ、さらには中国企業にまで追い上げられる状況になっている。

今年7月の主要輸入品目の内訳を見ると、原油やLNGと並んで半導体等電子部品の増加が目立っている。1980年代、わが国が世界市場を席巻したIT関連部品や製品などの輸入が大幅に拡大しており、それが貿易赤字を増大する要因の1つになっている。この分野の主要商品として、スマートフォンやタブレットPCが考えられる。

 かつて世界市場に君臨したわが国の家電メーカーは、スマートフォンなどの分野で大きく出遅れた。イメージセンサーなど一部の重要部材などでは、今でも高いシェアを占めている分野があるものの、完成品に関しては、わが国企業のポジションはかなり心もとない。そうしてIT関連製品などを海外からに輸入に頼らざるを得なくなると、どうしても貿易収支は悪化する

 今のところ、海外からの配当や利息の受け取りなどが海外に支払う配当などを上回っているため、所得収支は黒字を維持している。足もとでは、所得収支の黒字額が、貿易収支とサービス収支の赤字の合計を上回っているため、経常収支の黒字は何とか維持できている

日本は「収入減、支出増」の家庭と同じ?
GNIの減少で国富が流出するリスク

 しかし、経常収支の黒字額は、貿易赤字の赤字幅の増大によって下落傾向を示している。今後、貿易赤字がさらに下落して経常収支が赤字に落ちこむと、わが国全体が海外から受け取るお金よりも、払うお金の方が大きくなる

家庭にたとえると、お父さんが稼いでくるお給料よりも、家族が使うお金の方が大きくなるため、今までの貯蓄を引き出して埋め合わせをすることになる。実際には、わが国が今まで蓄積してきた経済的な富(国富)を取り崩して、海外への支払いに充てなければならない。つまり、国富が海外に流出するのである

経常収支がマイナスになると、基本的には国民が受け取る所得が減少することになる。ここで、国民とわが国企業が受け取る所得の総額=国民総所得(GNI)をベースに考えよう。

GNIとは、GDPに日本の国民と企業が受け取る海外からの純所得(受け取る所得金額)から、支払う金額を差し引いた純受取額を加えたものだ。GNIには家計が受け取る所得金額だけではなく、企業が受け取る金額も含まれる。

 一般的には、企業が受け取る金額と我々個人が受け取る所得の割合は短期間に大きく変わらないことを前提にすると、GNIが増えると、その分だけ個人の所得が増加することになる。

経常収支の黒字幅まで減少すれば
生活レベルを落とさざるを得ない

 今のところ、わが国の経常収支はプラスを維持しているため、GNI(国民総所得)は増加傾向を辿っているはずだ。ところが、今後貿易赤字の拡大などの理由によってGNIが減少局面を迎えると、個人の所得も減少する可能性が高まる

所得水準が低下すると、我々庶民は現在の生活水準を維持することが難しくなる。実際に、家計部門の所得が減少すると、生活費を切り詰めるか、あるいは今までの貯蓄を取り崩して生活水準を維持するかのいずれかを、選択することになる。

 中長期的にGNIが減少傾向を辿る場合には、貯蓄を取り崩すことをいつまでも続けることはできない。ということは、結果的に支出を切り詰めて生活水準を下げざるを得ないことになる。かつての高度成長の前の生活に戻ることになる

 昔の慎ましい生活を体験したシニア層であれば、生活水準を下げることはできるかもしれない。しかし、豊かな生活レベルの中で育った若い人たちにとって、生活を切り詰めることは口で言うほど容易なことではないだろう。かなり大きな抵抗感があるはずだ。

それを避けるためには、わが国企業がかつての強力な競争力を復活させなければならない。それを現実のものにするには、アップルのように今までになかった新製品や新技術を開発することが必要だ。

官民一体となってそれを実現すべく、地道な努力を行う必要がある。我々も「怠けていては、現在の高い生活レベルを維持することが難しい」ことを理解すべきだ。



今後、貿易収支の悪化などによって経常収支が赤字になるようだと、わが国が蓄積して来た富が海外に流出することになる。最悪のケースでは、我々が今の生活水準を落とさざるを得なくなるかもしれない。

経済学を学ぶのは、『経済学者にだまされないようにするため By ロビンソン(英ケインジアンで、米ケインジアンを徹底的にたたいた人)』だそうです。


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

http://book.akahoshitakuya.com/b/4309246281

タイトルは「ミクロ・マクロ」となっているが、基本的にはマクロ経済学について具体的な事例から解説されている。「貿易収支が黒字であればいいというものではない」という第2ー3章あたりが一番目から鱗だった。企業の赤字と完全に混同してた。比較優位論のような実際高校で政治経済を選択することで学ぶ内容もあったが、正直、数年前にこんな濃い内容を勉強した記憶はない。もっと、政治経済科目に力を入れるべきでは?(ちなみにうちの高校では、専門の先生がおらず、倫理の先生がやってた)



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経済学を学ぶとはどういうことか

<経済学を学ぶとはどういうことか>

 デフレについて、また、日銀の金融政策について、お二人が解説しています。

読売H24.4.26

1人は経済学者、1人は銀行員から大学教授になった方です。

伊藤.jpg

真壁.jpg

1.

真壁昭夫 信州大学経済学部教授 H23.2.28 日経『VIEW POINT』
「日本には1500兆円を越す個人金融資産が蓄積している。それをうまく掘り起こせれば、国内需要を盛り上げるだろう」


 「ストックを使え」・・これは、絶対に出来ない話です(・・・ストック・・借金を増やせば、フローには回せますが)。これから食べる食事(フロー)に、昨日の夜食べてしまった(既に自分の体重に化けてしまっている)食事を回せと言っているようなものです。

 フロー(GDP)は、これから作るもの、ストック(体)は、フローを産むために使用するものです。

 
 余談ですが、この「ストック→フローは原理的に出来ない」ことを、後日、別な形で、必ず発表します。分かりやすくするために、分量は長くなりました。ご期待ください。

2.


 デフレの原因は、供給に比べて需要が足りない「デフレギャップ」にある。・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない。


 私は、かねてから、デフレについては、以下の2つの要因を指摘してきました。

(1)需要<供給 需給ギャップ 実物要因
(2)日銀の貨幣供給量 金融要因


(1)だけで説明するのは、おかしいし、(2)だけが要因でもありません。

 そのおかしさは、ワルラスという経済学者の一般理論で十分に説明できています。初歩も初歩、誰も崩せない(きちんと科学的に証明できている理論)イロハの話です。



 まず、財(モノ・サービス)の世界で30兆円の需給ギャップ=供給超過があります。そうすると一方、カネの世界では、その分だけ30兆円の需給ギャップ=需要超過がある事を示します。カネ>財(モノ・サービス)になっているのです。ですから、貨幣が重要で、財(モノ・サービス)に需要が回らないのです=デフレ。

財市場=貨幣市場

 財市場と、貨幣市場を同時に示す、「IS-LM」分析があります。ケインズ理論を、ヒックスという経済学者が簡潔に示したもので、経済学では、初歩の入門理論です。

 竹森俊平(慶大教授)『資本主義は嫌いですか』日本経済新聞社2008
P97~
 …ワルラスの考察にしたがって…両市場(筆者注:財市場と資産市場)で同時に需給均衡が満たされるようになるのだとすれば…答えは、超過需要が発生している「金融資産」が、超過供給の発生している「実物財」に対して高価になる相対価格の調整である。

…「金融資産」の価格上昇…「株式」と考えるなら…先進国の株式市場は好況で潤い…新興国についても…大幅な価格上昇を記録していたところがあった。
(筆者注:サブプライム危機前まで)

…「金融資産」を国債や社債のような「債権」と考えるなら…その価格上昇とは「金利」の低下を意味する。…「金融資産」の市場で超過需要の傾向があるならば、「金利」は低下傾向になる。…世界金利の低下傾向はこのように説明できる。

…もう一つの「実物財」の市場…「超過供給」が発生しているのだから、実物財の価格が低下しなければならない。すなわち「デフレ」の発生だ。


…「デフレ」もしくは「ディスインフレ」の傾向を、「金融資産」市場における「超過需要」の傾向の裏腹である「実物財」の市場における「超過供給」の傾向の産物と解釈するなら、何もかも辻褄が合う。要するに「世界的な低金利」と「世界的な低インフレ」とは、盾の両面だということである。


 そうすると、「貨幣が重要」という状態を解消すればよいことになります。貨幣の価値が下がる=インフレです。その為には、カネを供給すればよいのです。

ですから、日銀の金融政策も大変重要なのです。




 (1)財(モノ・サービス市場)と、(2)貨幣市場の均衡を扱う、「IS-LM理論」があります。経済学の初歩の初歩理論で、とりあえず、経済学を奥深く学ぼうと思えば、必ずまなばなければならない階段の1段目の理論です(次段階として、IS-LMを否定する理論を学ぶので、絶対に避けて通れない理論なのです)。

 この初歩中の初歩理論を学べば、

(1)需要<供給 需給ギャップ 実物要因
(2)日銀の貨幣供給量 金融要因

 において、デフレの要因は「(1)だけだ」あるいは、「(2)だけだ」などという話が出てくるはずがありません。両者は密接にかかわっているからです。


参照ください

流動性のわな その1
流動性のわな その2
流動性のわな その3
流動性のわな その4
金融政策(LM曲線シフト)の実際

3.

 さて、供給と需要の関係です。

三面等価ですから供給(生産)=需要(消費)になっています。

生産(GDP)=消費(GDE)

 生産したものが、全て消費されているのは、消費には、在庫が「投資」として含まれているからです。

生産(GDP)=消費(GDE)

Y=C+I+G+EX-IM

です。

輸入を移項すると、

Y+IM =C+I+G+EX

供給=需要
生産=消費


供給しているのは、

Y(国内総生産)+IM(輸入)です。

需要はC+I+G+EX(家計+企業+政府+輸出)です。

デフレの原因は、供給に比べて需要が足りない「デフレギャップ」にある。・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない


が正解なら、左辺多>右辺少です。

Y+IM >C+I+G+EX

です。

また、(1)需要<供給 需給ギャップ 実物要因を説明する際に、「デフレギャップは、消費者が消費をしないからだ」という、誤った説明がされることがあります。

GDP=国内総支出GDE
  =C消費(家計が主)+I投資(企業が主)+G(政府支出)+EX-IM純輸出(海外


 GDPを支えているのは、この4つの主体です。


デフレの原因は、供給に比べて需要が足りない「デフレギャップ」にある。・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない

 
Y+IM >C+I+G+EX

式において、「家計消費のCが伸びない、減っているからだ、それは企業が消費者の望む商品を供給していないからだ」という、先入観に基づく解説です。

 実際は、家計は消費を減らしてなんていません。

GDP C I G EX-IM


 家計消費は、いつも「順調」なのです。

・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない。

のではありません。GDP=GDE(支出)において、Cは順調で、その割合も増えています。家計は消費の優等生なのです。(だから、消費税は、確実な税収が見込まれると考えられます)

GDPに占める C 消費割合.jpg


 需給ギャップがあるとすれば、I(企業投資)の減少です。本当に、政府投資+企業投資が激減しています。

参照ください

投資拡大→GDP増

 ・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない。

 ではなく、「企業が投資していない」のが正解です。

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