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相関関係と因果関係は違う

<相関関係と、因果関係>


 相関関係と因果関係。ここをごちゃごちゃにして話す例がよく見られます。相関関係は因果関係ではありません。
 相関があるからといって、そこから因果関係を引っ張り出してはダメです。また、因果が成立するからといって、結果と原因をひっくり返してはダメです。

 きちんと整理しましょう。


 
 相関関係とは、「Xが増えればYも増える」です。「X増=Y増」「X減=Y減」です。例として私がよく挙げているのが、「輸出増=輸入増」です。

輸出 輸入 ロシア.jpg

輸出 輸入 ロシア 相関.jpg

例 気温とエアコンの販売台数(正相関)
  エコカー販売と、ガソリンスタンド客数(負相関)


 因果関係とは、「Xが増えたのが(原因)で、Yも増える(結果)」です。「X増→Y増」です。例えば、「X:来店客数が増えた(原因)」ので、「Y:売上が増えた(結果)」です。

 ここから、「売上を伸ばすには、来店客数を増やせばいい」と対策を講じることができます。
 ただし、「X(原因)→Y(結果)」の因果の場合、「Y(原因)→X(結果)」とひっくり返してはいけません。「来店客数を増やすには、売上を伸ばせばいい」とはなりません。

 「血が出る(結果)ためには、ぶつける(原因)、」のであって、「ぶつける(結果)ためには、血が出る(原因)、」のではありません。

例 シートベルト着用率と、乗用中の死亡率(負相関の因果関係)
           

 ところが、この両者、グラフにすると一緒に見えるので、「相関関係」から、「因果関係」を無理やり導き出してしまうということが、往々にして起こります。

小林慎哉『日本経済のデータ分析と経済予測』文眞堂2011
P82


相関図


 この部分を、整理していきましょう。

相関図
    

(1)相関関係  

 相関とは、「Xが増えればYも増える(片方が減れば片方も減る)」です。Y=Xとか、Y=2X+a  とか、中学校の一番最初にならう、比例グラフを思い出してください。

Y=X

比例関係 1


Y=2X+1

比例関係 2


 XとYにどのくらいの関係(相関)があるのかを相関係数といいます。

 相関係数rは、-1≦r≦1で、1(-1)に近づけば近づくほど、「完全相関」といいます。


鳥居泰彦『統計学』慶応大学出版2005 P254

高い相関

 だから、中学校の比例グラフは「完全相関」です。

 この相関関係は、rの値が低くなればなるほど、「相関関係は薄い」「相関はない」となります。


低い相関


(2)相関の具体例



こんな風に使われます。

齊藤淳 経済教室 「痛み緩和へ補償 透明に」日経H23.12.16

GDP 政府支出 相関


 …国内総生産(GDP)に占める輸出入の割合(貿易依存度)と政府支出の割合の間には、正の相関関係があることが指摘されてきた。貿易自由化により比較劣位にある国内産業が退場を迫られた場合に、構造調整を促すための安全網が必要となるためだ。




相関の具体例




 夫の年齢(X)と、妻の年齢(Y)です。夫の年齢と、妻の年齢は、ほぼ同じように変化することが分かります(直観的にわかると思います)。

「夫の年齢が増えると、妻の年齢も増える」
「夫の年齢増=妻の年齢増」です。

このことを、「夫の年齢と、妻の年齢は相関関係がある」といいます。

 ただし、この相関関係は「因果関係」ではありません

 夫の年齢が増加する(結果)のは、妻が原因ではないですね。逆に妻の結果は夫が原因ではありません。お互いに原因でも結果でもありません。

 ここをごちゃごちゃにすると、トンでも論にひた走ることになります。




(3)トンでも論の例
 

 ある、教員向け教育相談講習で、「トンでも」論に出会ったことがあります。

負の相関

 Yは、お菓子や炭酸飲料の摂取量です。Xは生徒の点数です。「お菓子や炭酸飲料の摂取量が増える」と「テストの点数が低くなる」というものです。

 肥満なのは、家に帰って、お菓子や炭酸飲料を過剰摂取しているからだそうです。つまり、親が共働きだったり、片親だったり、収入が低かったりして、親の目の届かない生活をすると、お菓子や炭酸飲料の摂取が増え、肥満度が高くなるのだそうです。

 だから、「お菓子や炭酸飲料の摂取量が増える(原因)」から、「テストの点数低くなる(結果)」だそうです。

 会場から、「そういえば、ウチの学校(底辺校)、肥満が多い」との声が出ました。

 これ、どう考えても「変」です。因果だとしたら、「テストの点数高くする」ためには、「お菓子や炭酸飲料の摂取量減らせ!」となります。

 こんなバカなことはありません。

テストの点数が低い子だから、お菓子や炭酸飲料を飲む生活をしているのかもしれません。

 単なる相関で、「因果」ではない例です。



藤本大成
「相関経済学の金利・インフレ率・経済成長率比例法則と金融不全時の金融財政拡大政策」
 


銀行貸出金利と、名目成長率です。

貸出金利 成長率


 確かに、「金利が高い状態では、経済成長率も高くなっている」という相関関係が見られます。

 さて、これを、因果関係にしてみますか?

 「経済成長率を高めるには(結果)、金利を高くしろ(原因)」

 どうですか?こんな話、大真面目に語られているのを、見たことがありませんか?



 続いて、インフレ率と成長率です。相関があります。

インフレ率 成長率


 では因果にしてみましょう。

 「成長率を上げるには(結果)、インフレにすればよい(原因)」

 ?



(4)因果関係



 これは「原因」があって、「結果」が生じるものです。ただ、相関関係と形は同じになります。


小林慎哉『日本経済のデータ分析と経済予測』文眞堂2011
P82

相関図


鳥居泰彦P251

休息 血圧


 10時間働く肉体労働者の、作業中の休息時間と、就寝前の血圧です。

「休息時間が長いほど、血圧は低くなる」
「休息時間が短いほど、血圧は高くなる」

という相関関係があることが分かります。

 ここから、「休息時間を長くする(原因)」と、「血圧が低くなる(結果)」という関係が分かります。原因(X)→結果(Y)です。XだからY。

 因果論は、「一方通行」になります。

「血圧を低くする(原因)」と「休息時間が長くなる(結果)」ということはあり得ません。

XだからYが成り立つ場合、YだからXは成り立たないのです。



世帯主の年収(X)と家族の消費(Y)

 「年収を増やす」と、「消費が増える」とは言えますが、「消費を増やす」と「年収が増える」にはなりません。



気温とエアコンの売れ行き

 「気温があがる」と「エアコンの売れ行き」伸びますが、「エアコンの売れ行き」を伸ばせば「気温が上がる」ということはありません。



CO2が増えると、温度が高くなる

 このような相関さえ、もうありません。


<追記 2010年GDP確報>

 2010年 GDP確報値が、内閣府より発表されました。

2010年 名目GDP 三面等価


 民主党政権になってから、(G-T:財政赤字)が突出していることが分かります。

税収 公債費.jpg
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わざとミスリードする新聞 日経

<追記>

 輸出も輸入も、このように推移しています。輸出が極端に落ち込んでいるわけではありません。

輸出 輸入 2011.jpg


<わざとミスリードする新聞 日経>

H23.12.9
貿易黒字 減少


 経常黒字が減った減った!大変だ!貿易黒字の減少がまずい!っていう、例の記事です。
1か月ごとの貿易統計は年に12回発表されますから、年に12回、「大変だ大変だ!」って、アホな記事を発信しています。

 貿易黒字資本赤字ですから、「資本赤字、10月62%減」「資本赤字が減少したことが奏功」と書かなければいけません。

9月 国際収支



10月 国際収支

9月→10月 国際収支

 ですから、記事はこう書いても、同じことです。

貿易黒字 減少 2


 貿易黒字が減ろうが、赤字が増えようが、我々のGDP(給与総額)には、全く関係ありません

 「オーストラリアも、カナダも、みな貿易赤字に転落!!!!しています。これらの国は、さぞかし、大変な経済的混乱になっていて、自殺者も激増しているかもしれません!これらの国を助けることは日本にはできないのでしょうか!!!!」

 なぜ、このような新聞記事が登場しないのでしょうか?簡単です。赤字だろうが黒字だろうが、これらの国は日本よりずっと豊かだからです。


世界経済のネタ帳

[世] 国際収支の推移(2008~2011年)の比較(日本、カナダ、オーストラリア)

[世] 一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(2008~2011年)の比較(日本、カナダ、オーストラリア)

 ったく、一人当たりGDPが、こんなに引き離されているのに、日経は「貿易黒字が減った!大変だ大変だ!!!」って、アヒルじゃあるまいし。

経常黒字減=広義資本収支赤字

経常黒字増=広義資本収支赤字

 「黒字が増えれば赤字が増え、赤字が減れば黒字が減る」のです。


くわしくは、
①ブログカテゴリ:貿易黒字はもうけの誤り 参照

②http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-538.html
日経が変わった?変われば良い事だが


 貿易黒字なんてどうでもよいのです。日経さん、ちゃんと勉強してくださいね。

<思い込み>


 成長率高=失業率下、成長率低=失業率上



出典:世界経済のネタ帳
[世] 失業率の推移(1980~2011年)の比較(日本、アメリカ)
 
 日本は、97年・98年のGDPマイナス成長時、08年09年のリーマンショック時に、失業率が急上昇しています。
日本の場合、GDP成長率と失業率の間には、相関関係があるとされています。 「オークンの法則」と言います。

オークン法則 長期


 確かに長期的には、相関がありそうです。短期的にはどうでしょうか。


成長率 失業率 2001~

成長率 失業率 2002年~

 「成長率が上がると失業率が下がる」ようです。ところが・・・。

成長率 失業率 1993~

成長率 失業率 1998~

 成長率が上がっても、失業率は下がらないときはあります。

 90年代は、バブル時の過大な投資の結果、「設備投資」「雇用」「債務」という3つの過剰を抱えた時代です。それらの返済に回った時代です。企業は、リストラを進め、人員整理を行っていました。体質をスリムにして、成長させていたんですね。

 また、オークン法則は、2000年代以降は、顕著には見えなくなっています。

オークン法則 短期00年以降


 先ほどの80年→10年と比較すると、その傾きが緩くなっています。この図だけを見ると、「成長率が高くなると失業率は低くなる」という相関は見られません。



 成長率高=倒産減 成長率低=倒産増。


成長率 倒産件数 92年~


 どうですか?成長率と、倒産件数に、有意な相関はなさそうです。2000年代はどうでしょうか?


成長率 倒産件数 00年~


 成長率高=倒産減 成長率低=倒産増・・・「思いたい」気持ちはわかりますが、これを主張するのは、相当苦しいです。
 「成長しようが、しまいが、倒産件数は一定で存在する」というのが、本当のところです。

③ おまけ

 輸出増=失業率減
 

輸出額 失業率


「輸出が伸びているときは、日本の景気がいい時だ、失業率も減るに違いない」と思いたいのは、やまやまですが、このブログをご覧になっている方なら、もう結果はお分かりのはずです。

 全く関係ありません。
 

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思い込み

<思い込み>

輸出増=輸入増

輸出が増えれば、輸入も増える、(逆だと輸入が減れば、輸出も減るか?)
 この現実を「認めたくない」人がいます。

①いわく、パキスタンはそうなっていない。
②輸出増だが、輸入は微増だ。
③デフレ国にとっては実証的に「輸入は悪で輸出は善だ」インフレ国では逆だ。

 以下、コメントです。


①パキスタンでは2008-2009での輸出入で、
輸出増・輸入減になっていますが、こういうのは何故おこるのでしょうか?

あと、中東の国が石油を売るだけなら、設備投資の為に新たに材料を仕入れてくる必要もなく、輸入増に必ずしもなるとは言えないと思います。




ロシア、サウジアラビア等の輸出・輸入の対GDP比データを見る限りでは資源を輸出する国は明らかに輸出の伸び方が大きいです。これは輸入した分をはるかに超える量の輸出があるということで、新たな材を輸入する必要も、無いということ。それは逆に輸出が伸びずに輸入が伸びている国があるということですよね。日本のように(通貨高の影響もあるが)輸出よりも輸入の額が大きな国はいっぱいあります。

なので、
実証的に輸出増=輸入増になっているかいないか、お調べ下さい。
→実証的に輸出増=輸入増とは限らない。

   
典型的な「輸入悪・輸出善」論ですね(私の発言)。
→デフレ国にとってはマイナスに決まっています実証的に。
>とにかく、「輸入が悪 輸出が善」というトンデモ論に染まっている限り、一生理解できませんよ(私の発言)。
→インフレ状況であれば常識的に輸入が善、輸出も善ですね。


 デフレ国では「輸入は悪」インフレ国では「輸入は善」だそうです。

 もう、こうなると、こちらから何を言っても、無駄です。

 挙げられた国です。以下は全てJETRO出典

輸出・輸入 パキスタン.jpg


 2009年は、パキスタンは輸出増だけど、輸入減です。「ほら、輸出増=輸入増では、ないではないか!」って、言う主張のようです。

 一ヶ月単位の短期や、1年単位の短期では、当然変動はありえます。世界全体で見たら、単年度では、「輸出増・輸入増」の国も、「輸出増・輸入減」も、「輸出減・輸入増」も、「輸入減・輸出減」の国もあるでしょう。
 私が言っているのは、「長期」の話です。

2009年は2008年におこったリーマン・ショックの影響で、GDP自体、輸出・輸入自体、世界中で激変しています。

輸出 輸入 アメリカ.jpg

輸出 輸入 オーストラリア.jpg


 アメリカや、オーストラリアも変動しています。

 輸出入額が、アメリカの1/200程度の「コートジボワール」だって、余波を受けています。

輸出 輸入 コートジボワール.jpg


 このような事情の下、「輸出減=輸入減とは言えない!」って言われても・・・。まあ、リーマン・ショックでおかしくなった数値の方が「正しい」、その後の回復はまた「バブル」復活で正しくない!って言われたら、もう返す言葉がないのですが。




ロシア、サウジアラビア等の輸出・輸入の対GDP比データを見る限りでは資源を輸出する国は明らかに輸出の伸び方が大きいです。これは輸入した分をはるかに超える量の輸出があるということで、新たな材を輸入する必要も、無いということ。それは逆に輸出が伸びずに輸入が伸びている国があるということですよね。日本のように(通貨高の影響もあるが)輸出よりも輸入の額が大きな国はいっぱいあります。


 輸出の伸びは輸入より大きい!だから「輸出増=輸入増とは言えないではないか!」

輸出 輸入 サウジアラビア.jpg

輸出 輸入 ロシア.jpg


 サウジは輸入超過国、ロシアは輸出超過国ですね。2009年、リーマン・ショックの影響はでているようです。
 いずれにしても、「輸出増=輸入増」という、相関関係になっているのは、見て分かると思います。ロシアの「輸出額と輸入額」のプロットです。

輸出 輸入 ロシア 相関.jpg

 そもそも、輸出・輸入は、小さな企業の「輸出(生産):輸入(消費)」の積み重ねです。

1 企業が輸出(財・サービスをその企業の外に売る)するのには、輸入(財サービスを、他の企業から買ってくる)しなければなりません。

 そうすると、反論が来ます。「いや、企業が生産性をアップさせて生産量を増やせば、輸入(消費)を増やさずに輸出(生産)をアップすることが可能だ、だから輸出(生産)増=輸入(消費)増にはならない!」って。


2企業が財・サービスの輸出(生産)を増やすには、輸入(消費)してくれる相手企業、消費者がいないと、成り立ちません。在庫積んで、「ほら生産増だ!」っていうバカな企業はありません。「買ってくれる(消費してくれる=輸入してくれる)」企業、消費者がいないと、一方的に生産性上げても、どうしようもありません。


 世界のGDPが伸びるということは、

1つ1つの企業の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、その市の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、その県の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、その国の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、世界の輸出(生産)増・輸入(消費)増



 もちろん、個々の企業・市・県・国で、輸出増だけど輸入減などはありえますよ。ですが、ミクロで差異はあるものの、マクロで見ると、「輸出が増えれば輸入も増える」という相関関係にあることは分かると思います。

 日本のGDPが増えている場合、輸出(生産)だけ増えて、輸入(消費)は増えないということは、原理的にありえません。GDP(生産)はGDE(消費)の別名だからです。

<思い込み2>

 「そう思いたい、そうなるはずだ」と思うのは結構ですが、実証的に違うことはたくさんあります。

 その一つが、

円高になる(1ドル=100円→80円:25%上昇)

輸出企業には打撃
(200万円の車=2万ドル→2万5000ドルに)

値上がりで売れなくなる

輸出減になる


という、説得力のありそうな、因果論です。

 まあ、新聞見出しなどで、盛んに「円高不況」とか、「円高で輸出企業に打撃」と踊っていますから。こうして、「円高→輸出減」と日本人の頭にインプットされます。

 検証してみましょう。

為替相場 輸出.jpg


 なんだか、長期的には、円高なのに、輸出増?のようです。

もう少し詳しく見てみましょう。

為替相場 輸出 2.jpg


 95年1月の1ドル=99.75円→98年8月の144.67円の円安期です。

すごいですね。綺麗に「円安→輸出増」になっています。

 では。円高期はどうでしょうか?

為替相場 輸出3.jpg


円高になっているのに、輸出は伸びています。

 もっとも、「リーマン・ショック後の回復期→(震災直前の2月まで)だから、参考にならない」という話もあるでしょう。それ以外の時期を見てみましょう。

為替相場 輸出4.jpg

 日本経済は、2002年1月を底として、08年2月まで、73か月間にわたる戦後最長の景気拡大期を迎えることになりました。その前半期です。単純に「円高→輸出減」にはなっていないことが分かります。

 戦後最長の景気拡大期全体です。

為替相場 輸出5.jpg


 やはり、「円高だから、輸入減」にはなっていません。

 円相場・輸出に、相関があるかどうか、見てみましょう。

為替相場 輸出 相関.jpg


 「円安になると、輸出が伸びる」「円高になると輸出が減る」という相関は、全然ありません(前述の、ロシアの「輸出額・輸入額」の相関と比べてみて下さい)。

 相関すらないのに、

円高になる(1ドル=100円→80円:25%上昇)

輸出企業には打撃
(200万円の車=2万ドル→2万5000ドルに)

値上がりで売れなくなる

輸出減になる


という、因果論を、実証するのは困難です。

 ただし、今回は、「名目為替相場」について検証したものです。世間に流布する数値や、新聞の見出しは、「名目値」だからです。

「実質為替相場」購買力平価」を基にすると、結果は違うかもしれません。そこまで、データが取れないので、検証していません。

 細かい方は、「『○○を前提にして、円高→輸出減とは言えない』と言わないとダメだ」と指摘します。経済学は全て、「○○を一定にして」とか、「○○を前提に」できているからだそうです。

 今回の元ネタは、「円高で輸出減になるに決まっている」という、140文字のツイッターに「そうではないよ」と指摘したレベル、「一般論」レベルの話です。

<追記>

 またまた、「デフレだから円高でも輸出は伸びる云々」のコメント(思い込み)が来ました。

 それでは、インフレ時(名目GDP>実質GDP)時代、73年の変動為替相場制移行から、85年のいわゆるバブル前のデータをアップしておきます。

 やはり 円高→輸出減ではないですね。なんだか、ただ、「穴さがし」したいだけのようです。

73年 為替 輸出

為替 輸出 プロット


theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

思い込み

<思い込み>

輸出増=輸入増

輸出が増えれば、輸入も増える、(逆だと輸入が減れば、輸出も減るか?)
 この現実を「認めたくない」人がいます。

①いわく、パキスタンはそうなっていない。
②輸出増だが、輸入は微増だ。
③デフレ国にとっては実証的に「輸入は悪で輸出は善だ」インフレ国では逆だ。

 以下、コメントです。


①パキスタンでは2008-2009での輸出入で、
輸出増・輸入減になっていますが、こういうのは何故おこるのでしょうか?

あと、中東の国が石油を売るだけなら、設備投資の為に新たに材料を仕入れてくる必要もなく、輸入増に必ずしもなるとは言えないと思います。




ロシア、サウジアラビア等の輸出・輸入の対GDP比データを見る限りでは資源を輸出する国は明らかに輸出の伸び方が大きいです。これは輸入した分をはるかに超える量の輸出があるということで、新たな材を輸入する必要も、無いということ。それは逆に輸出が伸びずに輸入が伸びている国があるということですよね。日本のように(通貨高の影響もあるが)輸出よりも輸入の額が大きな国はいっぱいあります。

なので、
実証的に輸出増=輸入増になっているかいないか、お調べ下さい。
→実証的に輸出増=輸入増とは限らない。

   
典型的な「輸入悪・輸出善」論ですね(私の発言)。
→デフレ国にとってはマイナスに決まっています実証的に。
>とにかく、「輸入が悪 輸出が善」というトンデモ論に染まっている限り、一生理解できませんよ(私の発言)。
→インフレ状況であれば常識的に輸入が善、輸出も善ですね。


 デフレ国では「輸入は悪」インフレ国では「輸入は善」だそうです。

 もう、こうなると、こちらから何を言っても、無駄です。

 挙げられた国です。以下は全てJETRO出典

輸出・輸入 パキスタン.jpg


 2009年は、パキスタンは輸出増だけど、輸入減です。「ほら、輸出増=輸入増では、ないではないか!」って、言う主張のようです。

 一ヶ月単位の短期や、1年単位の短期では、当然変動はありえます。世界全体で見たら、単年度では、「輸出増・輸入増」の国も、「輸出増・輸入減」も、「輸出減・輸入増」も、「輸入減・輸出減」の国もあるでしょう。
 私が言っているのは、「長期」の話です。

2009年は2008年におこったリーマン・ショックの影響で、GDP自体、輸出・輸入自体、世界中で激変しています。

輸出 輸入 アメリカ.jpg

輸出 輸入 オーストラリア.jpg


 アメリカや、オーストラリアも変動しています。

 輸出入額が、アメリカの1/200程度の「コートジボワール」だって、余波を受けています。

輸出 輸入 コートジボワール.jpg


 このような事情の下、「輸出減=輸入減とは言えない!」って言われても・・・。まあ、リーマン・ショックでおかしくなった数値の方が「正しい」、その後の回復はまた「バブル」復活で正しくない!って言われたら、もう返す言葉がないのですが。




ロシア、サウジアラビア等の輸出・輸入の対GDP比データを見る限りでは資源を輸出する国は明らかに輸出の伸び方が大きいです。これは輸入した分をはるかに超える量の輸出があるということで、新たな材を輸入する必要も、無いということ。それは逆に輸出が伸びずに輸入が伸びている国があるということですよね。日本のように(通貨高の影響もあるが)輸出よりも輸入の額が大きな国はいっぱいあります。


 輸出の伸びは輸入より大きい!だから「輸出増=輸入増とは言えないではないか!」

輸出 輸入 サウジアラビア.jpg

輸出 輸入 ロシア.jpg


 サウジは輸入超過国、ロシアは輸出超過国ですね。2009年、リーマン・ショックの影響はでているようです。
 いずれにしても、「輸出増=輸入増」という、相関関係になっているのは、見て分かると思います。ロシアの「輸出額と輸入額」のプロットです。

輸出 輸入 ロシア 相関.jpg

 そもそも、輸出・輸入は、小さな企業の「輸出(生産):輸入(消費)」の積み重ねです。

1 企業が輸出(財・サービスをその企業の外に売る)するのには、輸入(財サービスを、他の企業から買ってくる)しなければなりません。

 そうすると、反論が来ます。「いや、企業が生産性をアップさせて生産量を増やせば、輸入(消費)を増やさずに輸出(生産)をアップすることが可能だ、だから輸出(生産)増=輸入(消費)増にはならない!」って。


2企業が財・サービスの輸出(生産)を増やすには、輸入(消費)してくれる相手企業、消費者がいないと、成り立ちません。在庫積んで、「ほら生産増だ!」っていうバカな企業はありません。「買ってくれる(消費してくれる=輸入してくれる)」企業、消費者がいないと、一方的に生産性上げても、どうしようもありません。


 世界のGDPが伸びるということは、

1つ1つの企業の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、その市の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、その県の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、その国の輸出(生産)増・輸入(消費)増

合計が、世界の輸出(生産)増・輸入(消費)増



 もちろん、個々の企業・市・県・国で、輸出増だけど輸入減などはありえますよ。ですが、ミクロで差異はあるものの、マクロで見ると、「輸出が増えれば輸入も増える」という相関関係にあることは分かると思います。

 日本のGDPが増えている場合、輸出(生産)だけ増えて、輸入(消費)は増えないということは、原理的にありえません。GDP(生産)はGDE(消費)の別名だからです。

<思い込み2>

 「そう思いたい、そうなるはずだ」と思うのは結構ですが、実証的に違うことはたくさんあります。

 その一つが、

円高になる(1ドル=100円→80円:25%上昇)

輸出企業には打撃
(200万円の車=2万ドル→2万5000ドルに)

値上がりで売れなくなる

輸出減になる


という、説得力のありそうな、因果論です。

 まあ、新聞見出しなどで、盛んに「円高不況」とか、「円高で輸出企業に打撃」と踊っていますから。こうして、「円高→輸出減」と日本人の頭にインプットされます。

 検証してみましょう。

為替相場 輸出.jpg


 なんだか、長期的には、円高なのに、輸出増?のようです。

もう少し詳しく見てみましょう。

為替相場 輸出 2.jpg


 95年1月の1ドル=99.75円→98年8月の144.67円の円安期です。

すごいですね。綺麗に「円安→輸出増」になっています。

 では。円高期はどうでしょうか?

為替相場 輸出3.jpg


円高になっているのに、輸出は伸びています。

 もっとも、「リーマン・ショック後の回復期→(震災直前の2月まで)だから、参考にならない」という話もあるでしょう。それ以外の時期を見てみましょう。

為替相場 輸出4.jpg

 日本経済は、2002年1月を底として、08年2月まで、73か月間にわたる戦後最長の景気拡大期を迎えることになりました。その前半期です。単純に「円高→輸出減」にはなっていないことが分かります。

 戦後最長の景気拡大期全体です。

為替相場 輸出5.jpg


 やはり、「円高だから、輸入減」にはなっていません。

 円相場・輸出に、相関があるかどうか、見てみましょう。

為替相場 輸出 相関.jpg


 「円安になると、輸出が伸びる」「円高になると輸出が減る」という相関は、全然ありません(前述の、ロシアの「輸出額・輸入額」の相関と比べてみて下さい)。

 相関すらないのに、

円高になる(1ドル=100円→80円:25%上昇)

輸出企業には打撃
(200万円の車=2万ドル→2万5000ドルに)

値上がりで売れなくなる

輸出減になる


という、因果論を、実証するのは困難です。

 ただし、今回は、「名目為替相場」について検証したものです。世間に流布する数値や、新聞の見出しは、「名目値」だからです。

「実質為替相場」購買力平価」を基にすると、結果は違うかもしれません。そこまで、データが取れないので、検証していません。

 細かい方は、「『○○を前提にして、円高→輸出減とは言えない』と言わないとダメだ」と指摘します。経済学は全て、「○○を一定にして」とか、「○○を前提に」できているからだそうです。

 今回の元ネタは、「円高で輸出減になるに決まっている」という、140文字のツイッターに「そうではないよ」と指摘したレベル、「一般論」レベルの話です。

<追記>

 またまた、「デフレだから円高でも輸出は伸びる云々」のコメント(思い込み)が来ました。

 それでは、インフレ時(名目GDP>実質GDP)時代、73年の変動為替相場制移行から、85年のいわゆるバブル前のデータをアップしておきます。

 やはり 円高→輸出減ではないですね。なんだか、ただ、「穴さがし」したいだけのようです。

73年 為替 輸出

為替 輸出 プロット


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