ポツダム宣言は、「無条件降伏」ではない

東京書籍『政治・経済』H20.2.10 p24
1945年(昭和20)、日本は無条件降伏をせまるポツダム宣言を受諾し、連合国に降伏した。

帝国書院『高校生の新現代社会』H20.2.10 p100
1945(昭和20)年、8月14日、日本はポツダム宣言を受諾して、アメリカなどに無条件降伏しました。

帝国書院『アクセス現代社会2009』H21.2.25 p155
1945年、ドイツ・ベルリン郊外のポツダムで行われた連合国の首脳会談において、アメリカ・イギリス・中国(のちにソ連が加わる)の連名で発せられた全13項目からなる共同宣言であり、日本に無条件降伏を迫るものである。
 「無条件降伏」はゴシック体で書かれています。

<ポツダム宣言=有条件降伏文書>

ポツダム宣言の全文です。(ひらがな版) 出典:下記HP
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/potudamusenngenn.htm#hiraganabunn

1 吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート、ブリテン」国総理大臣は吾等の数億の国民を代表し協議の上 日本国に対し今次の戦争を終結するの機会を与ふることに意見一致せり

2 合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は西方より自国の陸軍及空軍に依る数倍の増強を受け日本国に 対し最後的打撃を加ふるの態勢を整へたり 右軍事力は日本国が抵抗を終止するに至るまで同国に対し戦争を遂行す るの一切の聯合国の決意に依り支持せられ且鼓舞(こぶ)せられ居(お)るものなり

3 蹶起(けっき)せる世界の自由なる人民の力に対する「ドイツ」国の無益且無意義なる抵抗の結果は日本国国民に 対する先例を極めて明白に示すものなり 現在日本国に対し集結しつつある力は抵抗する「ナチス」に対し適用せら れたる場合に於て全「ドイツ」国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃(こうはい)に帰せしめたる力に比し 測り知れざる程度に強大なるものなり 吾等の決意に支持せらるる吾等の軍事力の最高度の使用は日本国軍隊の不可 避且完全なる壊滅を意味すべく又同様必然的に日本国本土の完全なる破滅を意味すべし

4 無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の淵に陥れたる我儘(わがまま)なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続 き統御(とうぎょ)せらるべきカ又は理性の経路を日本国が履(ふ)むべきかを日本国がけっていすべき時期は到来 せり

5 吾等の条件は左(以下)の如(ごとし)し 
 吾等は右条件より離脱することなかるべし 右に代る条件存在せず吾等は遅延を認むるを得ず

6 吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐(くちく)せらるるに至る迄は平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざる ことを主張するものなるを以て日本国国民を欺瞞(ぎまん)し之をして世界征服の挙に出ずるの過誤(かご)を犯さ しめたる者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず

7 右の如き新秩序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が破砕(はさい)せられたることの確証あるに至る迄は聯合 国の指定すべき日本国領域内の諸地点は吾等の茲(ここ)に指示する基本的目的の達成を確保する為占領せらるべし

8 「カイロ」宣言の条項は履行せらるべく又日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に 局限せらるべし

9 日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらる べし

10 吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも吾 等の俘虜(ふりょ)を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし 日本国政府は日 本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙(しょうがい)を除去すべし 言論、宗教及思 想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし

11 日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし 但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は此の限に在らず 右目的の為原料の入手(其の 支配とは之を区別す)を許可さるべし 日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし

12 前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せら るるに於ては聯合国の占領軍は直に日本国より撤収(てっしゅう)せらるべし

13 吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる 保障を提供せんことを同政府に対し要求す 右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅(かいめつ)あるのみとす

条件は、次の通りです。

1.軍国主義の除去、
2.日本国領土の占領、
3.カイロ宣言の条項の履行、および本州、北海道、九州、四国および連合国が決定する諸小島への日本の主権の制   限、
4.日本国軍隊の完全な武装解除、
5.戦争犯罪人に対する厳重な処罰、ならびに民主主義の確立、
6.賠償の実施と平和産業の確保。

 このように、ポツダム宣言は「条件を挙げた」降伏勧告です。

<無条件降伏の真相とは>

 無条件降伏は、13条に、「全日本国軍隊の無条件降伏」と書かれています。軍隊は、まさに無条件で降伏しました。
 帝国海軍、帝国陸軍は、即時武装解除されます。海軍の艦船、航空機などは、没収、破壊されました。そして、全員がクビになりました。「無条件降伏」ですから文句なしです。

 さて、この降伏を日本は受け入れたのですが、その後、ソ連は捕虜をシベリア抑留し、北方領土は事実上占領を続行されます。
 連合国軍総司令部(GHQ)は絶対で、日本は「憲法」も改正させられます。こんなことは、ポツダム宣言には書かれていません。宣言受け入れ後の占領は、有無をいわさぬ「無条件」でした。事実上、無条件で占領されたと言えるでしょう。

<教科書出版社>

「日本は無条件降伏した」の訂正について、ある教科書会社とやりとりした結果です。

 改訂前の教科書『政経』においては,「日本政府はポツダム宣言を受諾して,連合国に無条件降伏した。」としていた箇所を,改訂版教科書『政経』p.○○において,「日本政府はポツダム宣言を受諾して,連合国に降伏した。」とし「無条件」との表現を外した件について。

ポツダム宣言第13条
「吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し…」この13条では「無条件降伏」の主語が「全日本国軍隊」であり,これに対して『政経』の該当文章の主語が「日本政府」であることから,この文章では「無条件」を外した方が適切と判断いたしました。

 以上につきまして,執筆者○○先生の見解である「日本政府の要求した条件が連合国側に受け入れられたとは考えにくいことから,実質的に無条件降伏と言えるのではないか」という考え方と矛盾するとは考えていないのですが,以上の記述から確かなのは「日本国軍が無条件降伏」したことだ,という認識から,改訂版のように改めさせていただいた次第です。
 ただ,事実として記述を訂正したわけですから,改訂版と比べて以前の『政経』の記述が,より適切ではなかったと判断した,と捉えられても仕方のないことと考えております。


 このように、 「無条件」を外した会社もあります(指摘して、変更に至ったのは、ほかにも数社あります)。

 一方、帝国書院『アクセス現代社会2009』は、「日本に無条件降伏を迫るものである。」とする記述を、変更しない方針だそうです。理由は、「事実上無条件だから」というものです。

 帝国書院が、「無条件降伏」をいつまで掲載するのか、注目しています。
スポンサーサイト

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

資料集の間違い(13) 帝国書院『アクセス現代社会2009』

<農業は聖域>

浅川芳裕(月刊「農業経営者」副編集長)『民主所得補償は日本農業を滅ぼす』週刊文春
2009.9.3
(注:番号は筆者が記入)

…国際社会に共通する食糧安全保障の考え方は3点ある。
① 国民が健康な生活を送るための最低限の栄養を備えているか。
②貧困層が買える価格で供給できているか。
③不慮の災害時でも食料を安全に供給できるか。

将来食料が足りなくなる、どうしよう」という漠然たる不安を前提として議論をしている先進国は日本だけだ。

 今やメジャーになった「自給率」という言葉もまやかしだ。…農水省が定義した「国内で供給される食料のうち国産でどの程度まかなえているか」を示す指標だ。一人一日当たりの国産供給カロリーを供給カロリーで割って算出するが、実は世界でこの指標を使っているのは日本だけ、という事実は知られていない

…このカロリーベース自給率を1%あげるため…農水省は巨額の予算をかけて「自給率キャンペーン」を繰り広げてきた

 筆者はこの問題を指摘し続け、農水省内の特命チームすら「自給率は指標として意味がない」と指摘するようになったが、「食料がなくなったら困るから自給率をあげてほしい」という国民の声は消えない。与野党問わず、農村票を文字通り「票田」として確保する政策のために、食料不安を煽ってきた成果といえる…。


 農水省キャンペーンを、資料集はそのまま掲載します。

帝国書院『アクセス現代社会2009』p105~106 p257~258
…世界の人口増加や発展途上国の所得上昇などにより、世界的な食糧不足が懸念されている中、日本が今後どうやって自国の食糧をまかなってゆくか、食糧安全保障の政策がいっそう重要になってくる。…不測の事態が発生して食料輸入がすべて途絶えた とすると…穀物自給率は…日本は先進国中かなり低い。…バイオ燃料向けの穀物需要の増大で、とうもろこしなどの価格が高騰している。…食糧安全保障の観点からも、自給率の向上や輸入先の確保など適切な政策が求められる。 


 私が、このブログで指摘したように、 「自給率UP」には、全く意味がないことがお分かりでしょうか。それでも、「自給率」にこだわるのであれば、「生産額自給率」は、65%(平成20年農水省データ)です。日本産の農・漁業産品に対して支払われた額です。十分に「高い」です・・・・。・・・・でも、どちらにも、本当は意味がありません

<EUの補償制度と、民主党案の補償制度>

浅川芳裕(同)
 EUでは、農地の面積あたりで計算して補償がなされ、1ヘクタール当たり日本円で5万円ほどだ。10ヘクタールの農地を持つ農家でも保証金は年間50万円…。
 …民主党案では、補償は生産コストに対してなされる。日本で小麦を生産する…コストは1ヘクタールで約60万だが、国際価格では約6万円の売り上げにしかならない。…この差額分、54万円の赤字を丸々補填するのである。


 日経 H21.8.6
…経済協力開発機構(OECD)によると、日本の農業補助金は農家総収入の49%に上り、欧州連合(27%)、米国(10%)に比べて高い。…「補助金漬け」…


 そうまでして生産した国産小麦の品質はどうなのでしょう?

浅川芳裕(同)
 国内産小麦の品質が外国産に比べて低いことは、農水省と農業団体も公式に認めている。…飲食業界関係者が本音を明かした。「小麦はパスタやうどんなど麺類に加工するが、たとえ外国産小麦の半値でも国内産は使いたくない讃岐うどんでさえ95%がオーストラリア産小麦です」
 
 長年にわたり、コメの代わりに小麦や大豆を作るように国が指導し、転作奨励金を累計七兆円も使った結果がこれである。補償制度というもの…。


 農水省の予算は、毎年1.5兆円程度です。それが、リーマン・ショック後の経済対策で、さらに1兆円の補正予算を得ました。どこに使うか、おわかりでしょう。「ばらまき」しか、道はないのです。

浅川芳裕(同) 
世界では、小麦や大豆、トウモロコシなどの主要農作物の生産量は飛躍的に増えている事実をご存じだろうか。…国内生産の6割は、日本の全農家のうちわずか約7%の「自立した農家」によるものだ


<農家は、利益をねらう> 
 その農家性善説に対し、衝撃的なレポートがあります。

神門義久『平成検地で農地行政刷新』日本経済新聞H21.8.27(グラフも)
 一般に、農地所有者というと、「米作を中心に生計をなす昔ながらの純朴な農家」をイメージしがちである。遊休農地も、担い手不足や農産物価格の低迷のために泣く泣く耕作放棄していると思いがちである。残念ながら、それらの印象は、現実とかけ離れている

 日本に稲作農家は200万戸以上あるが、稲作所得を主な収益源にしている農家は8万戸にすぎない。残りの圧倒的多数は…細々と耕作を続けるものの、真の狙いは農外転用などによる「濡(ぬ)れ手で粟(あわ)」の収入であり、いわば「偽装農家」といっても過言ではない。さらに、元農家の子息で、農地を相続したものの、都会暮らしですっかり耕作意欲を失った「土地持ち非農家」も120万戸ある。
…巨額の農業補助金で整形された農地は、住宅地や商業施設の建設の絶好の候補地である。また、産業廃棄物処理場が慢性的に不足しており、不正な投棄の対象としても農地が狙われている。
…参入規制や担い手不足が日本農業を停滞させているのではない。農家であれ、企業であれ、非営農目的での農地の所有や利用がまん延していることこそが真の問題である。

神門義久『平成検地で農地行政刷新』日本経済新聞H21.8.27

 農業は聖域であり、既得権益を守る業界体質や、官僚制の弊害など、あらゆる問題が山積しています。

資料集の間違い(13) 帝国書院『アクセス現代社会2009』

帝国書院『アクセス現代社会2009』p105~106 p257~258

…世界の人口増加や発展途上国の所得上昇などにより、世界的な食糧不足が懸念されている中、日本が今後どうやって自国の食糧をまかなってゆくか、食糧安全保障の政策がいっそう重要になってくる。
不測の事態が発生して食料輸入がすべて途絶えた とすると…穀物自給率は…日本は先進国中かなり低い。…バイオ燃料向けの穀物需要の増大で、とうもろこしなどの価格が高騰している。…食糧安全保障の観点からも、自給率の向上や輸入先の確保など適切な政策が求められる。
 


日本人のカロリーベースでの食糧自給率が低い(2006年39%)。いざというときに、食糧が輸入されないと、大変なことになる。だから、自給率を高めよう
 簡単に言えば、ジャーナリズムは商売のため、農水省・農協は既得権益を守るために、「危機だ」とあおるわけです。ジャーナリズムや、農林水産省・農協のキャンペーンではなく、教科書・資料集は、学問的に正しいことを、載せなければいけないはずです。経済学(農業経済)は、それらを検証するのが仕事なのです。


 さて、「将来、食糧危機が起こる」というのを前提にした、「カロリー自給率が低い」ですが、本当に「食糧危機」は起こるのでしょうか。結論から言うと、「起こらなかったし、これからも起きない」ということになります。

以下、引用・参考文献 川島博之『食糧危機をあおってはいけない』文藝春秋 2009 

p193…たとえばFAOはもともと「世界の食糧の生産を増やして飢餓を無くそう」という趣旨で、第二次大戦後まもなく国連傘下に設立された団体です。…当然報告書にしても…「食糧は余っていますよ」とは書かず…ところが、大学の先生たちはそんな責任はありませんから「食糧なんて余ってるよ」と本音ベースで話してくれるわけです。

P212 農林水産省「不測の事態」
レベル2 国民が最低限度必要とする熱量の供給が困難となるおそれがある場合(一人一日当たり供給熱量が2000キロカロリーを下回ると予測される場合)
…要するに終戦直後を除いて、過去に例がないわけです。

P221 FAOの統計がそろい始めた1961年以来、世界的に大きく食糧生産が落ち込んだ記録はありません。第二次大戦後の63年間、「世界的な食糧不足が起きてどの輸出国も穀物も他の食糧も売ってくれない」という事態が起きたことは一度もないのです。

P210 仮に本当に食糧危機が起き、食糧価格が高騰したとしても、現代の日本には全国民に充分な食糧を確保する資力があります。…現在の一人当たり年間消費量は(米)60キロほどですから…金額は2万4千円ほど。…時給が千円として…1日8時間働くとして、3日分に過ぎません。…1日に必要なカロリー…すべてをお米から得ようとすると…12日働けば1年間食べていける

P104-105
…「世界の食糧生産がこれ以上伸びない」という説は全く見当が外れています。…世界の対部分の地域ではまだ生産力をめいっぱいに利用していません。…学者が学者向けに書いているような本…要約すれば「農地と穀物生産力は世界人口が90億人以上になっても全く心配が無い」ということです。


 農産品の問題点は、「生産量を増やすと価格が下がる」ことにあります。「価格×量」=売り上げで、農業者所得になります。農産物の場合、高価格の商品をつくるのが難しいのです。小麦も、コメも、牛乳も、キャベツも、「昨年のものに比べて、今年のものが美味しいから」と、値段を上げることが出来ません。工業製品・サービス商品とは根本的に違うのです。
 
 ですから、「生産量を増やすと価格が下がる」のです。量=まさに人口で、これは急増しませんし、何より、「今年はコメ・小麦がたくさん取れたから、たくさん食べよう」とはなりません。ですから、量が増えたら、間引く(毎年出来たてのキャベツやレタスがトラクターで廃棄されている映像はおなじみです)し、取れすぎないように、生産調整(減反)します。

『世界穀物生産今年は3%減』日本経済新聞 H21.6.5
国連食糧農業機関(FAO)は…2009年の世界の食料見通しで、同年の穀物生産量が前年比3%減の22億1880万トンになると予測した。昨年秋の金融危機などから穀物価格が急反落し、採算悪化に見舞われた生産者が作付を抑えたため。この結果世界全体の穀物在庫は前年比1.4%減の5億2090万トンになる見通し。…価格の下落によって09年の世界の食料輸入額は前年比22%減の7891億ドルに減少する見通し


 また、食糧不足による「飢餓」は、日本には起こりません

参考文献藤田弘夫『都市の論理』中公新書1993 
都市は、田舎が飢餓状況にあっても、飢えないのです。なぜなら、農産物=商品ですから、生産業者は「より高く買ってくれるところ」に、売ろうとします。田舎で周りの人が飢餓状況にあっても、農産物を、それらの人に安く提供はしません
  江戸時代、江戸三大飢饉・四大飢饉と言われる、大きな飢饉が起こりました。東北地方ではまさに「人相食む状態」になりました。しかし、江戸では、コメの買占めなどによるコメ価格の高騰が起きましたが、基本的に飢えで死亡してはいないのです。都市は、「穀物をより高く買う力」があり、それが農産物をひきつけるのです。
 現在、「日本の世界での地位」は、江戸期での「日本の江戸」に相当します。世界のGDP(国民所得GDI)の9%を生み出す日本は、いざとなったら世界中の食糧を集める力があります

『農地争奪踊るマネー』日本経済新聞 H21.6.5
 …サウジ企業が政府の後押しを受けて一斉に海外の農地確保に動き出している。…農耕可能地が限られ、人口は2030年には現在の2倍以上となる5300万人に膨れ上がる。水を大量消費して小麦などの自給を目指す戦略を転換。海外に自前農場を確保し、農産物を輸入する方針を明確にし始めた。…ここ数年の国や地域を超えた主な農地取引の57事例…その取得面積は明らかなものだけで2200万ヘクタール。日本の農地の4倍にあたる。


 牛肉200キロを生産するために、トウモロコシ2.2㌧、水200㌧が必要です。輸入すれば、これらを負担するのは、外国になります。貴重な水資源を費やして、国産牛を増やす必要があるのでしょうか

 「穀物自給率は…日本は先進国中かなり低い」のはそうなのですが、たとえば、フランスは1950年代の緑の革命(化学肥料:窒素投入)により、穀物生産は7倍に増えました。
肥料効果
川島博之「前掲書」
  その間の人口は1.4倍に過ぎません。小麦が余って余って、WTOでも「小麦買え!!」と主張する国です。そもそも、欧米は、もともと肉食で、食生活に変化がありません。日本は、食が欧米化し、カロリーベースの自給率が低下(=食の欧米化)したのです
無題1
図 週刊ダイヤモンド

 自給率を上げるのは簡単です。もうからない(価格の安い)小麦や、大豆や、動物性油、植物性油を作ればよいのです。でもだれが赤字になる作物を作るのでしょうか。農産物=価格のつく商品なのです。


世界穀物生産今年は3%減』日本経済新聞 H21.6.5
「大豆の単位面積当たり収量は7~11%増える」米種子大手モンサントは米国の農家が今年から植え始めた第2世代と呼ぶ種子の効用を説明する。…30年の単収を07年の2倍に引き上げる目標と言う。

資料集の間違い(12) 帝国書院『アクセス現代社会2009』

帝国書院の資料集で検証してみましょう。
帝国書院『アクセス現代社会2009』 P90 三面等価の原則が取り上げられています。
三面等価 資料集

 しかし、大切なのは、表面ではなく、その中身ISバランスです。三面等価の図を見て下さい。これを載せないから、いつまでたっても、間違い記述が出てくるのです。
三面等価
      (S-I)   = (G-T)  +  (EX-IM)

    貯蓄超過  =財政赤字 + 経常黒字


  国民が貯蓄したSが、①企業投資Iであり、②政府消費・投資(G-T)であり、③(EX-IM)経常(貿易)黒字なのです。
と同時に、①企業Iへの貸付であり、②公債(G-T)への貸付であり、③(EX-IM)海外への貸付なのです。
だから、①企業投資I=国民の貸付、②公債(G-T)=国民の貸付、③(EX-IM)経常(貿易)黒字=国民の海外への貸付なのです。

これが、マクロ経済学上、最も大切な「ISバランス」式です。

 そうすると、②公債=国民の財産、③貿易黒字=資本収支赤字(海外への資本移転)となります。「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」「国債は国の借金が、根本的に成り立たないのがわかります。
国民が、所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と財政赤字と、経常(貿易)黒字は必ず発生する のです。
三面等価の図を見ましょう。
三面等価

<国債は政府の借金=国民の財産>

この借入金を買っているのは誰でしょう?それは我々1人1人の国民なのです。我々が預貯金をしたり、生命保険金を支払ったりしたお金が、国債の購入に当てられています。しかも、国債の金利は、銀行や郵貯、保険会社の利益(GDPに算入)です。

  約668兆円の国債のうち、95.4%=約637兆円は、我々日本人が持っているのです(海外の4.6%を除く 2006年3月末現在)。簡単に言えば、約1500兆円に及ぶ、日本人の個人資産の約42%は国債なのです。
帝国書院『アクセス現代社会2009』P134 家計の金融資産残高の推移
カラー0004
家計→金融機関→国債購入なのです。

 この原理をわかっていないので、同資料集では、このように説明されます。P126『国債乱発の問題点』
①財政破綻! 後世代の国民へ返済のツケを残す。
③インフレ発生! 国債の償還のために通貨を増発することで、インフレーションが発生する。

①についてです。借金(元金)を返してもらう,あるいは,利息を受け取る世代も,やはり孫の世代,将来世代なのです。その利息は日本のGDP(国民所得)になります「後世代の国民へ返済のツケを残す」は「後世代の国民へ収入の原資を残す」ことになります。

③についてです。国債の購入費は、その年度のGDI(GNI)=フローでまかなわれています。国債の借換え債についても、同様です。国債は充分に消化されています。
  また、「償還のために通貨を増発」とありますが、これも間違いです。
  日銀のバランスシート(平成21年5月20日現在)を見てみましょう。資産の部に、国債が65兆2268億円分あります。一方、負債の部に、発行銀行券残高が75兆,7394億円とあります。日銀は、国債を買い取り、ベースマネーを供給しています(買いオペ)。国債と市中通貨(マネーストック)をやり取りしているだけです。なぜ、「通貨を増発」しなければならないのでしょうか。
  日銀法第2条、日銀の目的は「物価の安定」です。物価の安定=通貨の安定です。「通貨を増発する・インフレーション発生」と、この法律は全く正反対のことを述べています。
 
 資料集が、間違っていることが、お分かりでしょう。
  さらに、同書では、「日本の財政を月収40万円の家計に置き換えるという、典型的なあやまり の説明をします。
「借金は18万円」「借金残高1800万円」「月々の収入では家計を維持できず、借金にたよって生活していることになる」p124としています。
 仕方が無いので、政府の借金を、「家計」に置き換えて、無理やり説明してみましょう。 18万借金をしているのも家計」「18万貸し出しているのも家計」「借金残高1800万円」「資産残高1800万円」という、わけのわからない説明文になってしまいます。

山崎元『なぜ必ず儲かる話は儲からないのか』プレジデント2009.5.18号
…日本人が日本人から借りて、日本国内で支出している。一家に喩えると、夫が妻から借金をしてこどもに小遣いを上げているような状況です。

 このように、間違って説明してしまうのは、三面等価といいながら、「GDP国民総生産=GDI国民総所得=GDE国民総支出」その中身を説明していない からです。

強調文S-I=(G-T)+(EX-IM)という、貯蓄投資バランス式=ISバランス式頭に入っていないから、「政府にカネを貸しているのは、国民」「公債原資=国民の預貯金」を説明できないのです。

 それを高校生が学ばないので、誤解した大人になってしまうのです。そしてそのような大人が、「借金で破産する?」などと、教科書や資料集に書いてしまいます。

岩村充 『貨幣の経済学』集英社 2008 p153 
「国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えて良いのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行してもそれが理由で国が倒産することはありえ (下線部筆者)」ないのです。

 同書では,「国債は政府の株式」に例えられています。また、国債は通貨制度のアンカー(昔の金本位制度における金)だと喝破しています。

 消費税を7%上げれば、(全部で12%の税率)基礎的財政収支は黒字になり、まあったく問題ないのです。(このことについては、後日「新聞を解説」で説明します)

資料集の間違い(11) 帝国書院『アクセス現代社会2009』

資料集の間違い 帝国書院『アクセス現代社会2009』
  枝葉末節にこだわるのはいいのですが、典型的に「木を見て森を見ず」という資料集が出来上がります。全体を貫く、「経済学」という背骨が無いのです。「経済現象」を並べただけなので、それを教える先生も、教えられる生徒も、そのような教育を受けて大人になった出版社の編集者も、「経済の全体像」がわかっていません
  だから、「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」「国債は国の借金」「(アメリカの)双子の赤字で不況」などと、論理的に成り立たない表現が出てきます
私が指摘すると、どの出版社も、その表現を「ちょこちょこ」っと訂正するのですが、根本のところが直っていないので、いつまでたっても、論理的に成り立たない表現が、次から次へと出てくる のです。
 その理由のひとつとして、「大学教授が教科書・資料集を書いていない」ことがあげられます。
経済教育ネットワークHP 新井明『教育系学生はなぜ経済がきらいか―ある社会科教育法講義における「論争」からー』にこのように書かれています。

…大学教員側もはじめてきちんと高校の教科書を読んだという感想を発言していたし、日本の世論がなぜ市場経済のメリットよりもマイナスに傾くのか、その理由が教科書の記述にあることがはじめて分かったという感想も述べていた(注)。
(注)講師の一人であった大竹文雄大阪大学経済研究所長は、日本の教科書をあらためて読んでみて、市場メカニズムが資源の最適配分の構造を持つとは書いてあるが、どうしてそれが言えるのか、また、最適配分が社会的にどんな意味を持つのかを きちんと書いている教科書は一つもなく、すぐに独占や寡占の問題、さらには市場の失敗の論に行ってしまう。このような教科書で教えられたら、市場経済のメリットはほとんど理解されないで、市場の限界だけを頭に入れてしまう高校生が増える だろうなということが良く理解できた。


経済学を知らない人(高校の先生)が、経済現象を語っているのです
小塩隆『高校生のための経済学入門』ちくま新書2007p14~
にも、このような記述があります。

…「政治・経済」の教科書や資料集を見せてもらった…そこに書いてある経済や経済学の説明にまったく魅力を感じません…中身が断片的…ここ数年の経済ニュースを適当に散りばめ…経済や経済学に興味を持たせるような仕組みはほとんど存在しないようです。

帝国書院の資料集で検証してみましょう。
P90 三面等価の原則が取り上げられています。
三面等価 資料集
 しかし、大切なのは、表面ではなく、その中身ISバランスです。三面等価の図を見て下さい。
三面等価

 これを載せないから、いつまでたっても、間違い記述が出てくるのです。

(S-I) = (G-T) + (EX-IM)

貯蓄超過= 財政赤字 +経常黒字


 国民が貯蓄したSが、①企業投資Iであり、②政府消費・投資(G-T)であり、③(EX-IM)経常(貿易)黒字なのです。
と同時に、①企業Iへの貸付であり、②公債(G-T)への貸付であり、③(EX-IM)海外への貸付なのです。
だから、①企業投資I=国民の貸付、②公債(G-T)=国民の貸付、③(EX-IM)経常(貿易)黒字=国民の海外への貸付なのです。

これが、マクロ経済学上、最も大切な「ISバランス」式です。

 そうすると、②公債=国民の財産③貿易黒字=資本収支赤字(海外への資本移転)となります。「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」「国債は国の借金」が、根本的に成り立たないのがわかります。

  国民が、所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字と、経常(貿易)黒字は必ず発生するのです。

 ここが理解できないので、次のような記述になります。
アメリカの『双子の赤字』による景気後退が世界経済に混乱を与えるp94」「財政赤字と貿易赤字という『双子の赤字』を抱え、特に対日貿易赤字は突出p238」「 『双子の赤字』といい、アメリカ経済を表すことばとしてたびたび用いられるp239

 こんなことを書くから、『双子の赤字』は「悪いこと」としか理解できなくなります。これは全くの間違い です。「景気後退」どころか、「双子の赤字を抱え、アメリカ経済は未曽有の経済成長(GDP増=国民所得GDI増)をしていた」のです。「双子の赤字」は、経済成長とは無関係なのです。

(S-I) = (G-T) + (EX-IM)
貯蓄超過= 財政赤字 + 経常黒字
 ゼロ  =  プラス + マイナス
マイナス1= プラス1 + マイナス2

双子の赤字」とは、こうなるだけです。それは、レーガン政権下、クリントン政権前半、昨年の金融危機以前も、いつも成立していました。しかし、その間、アメリカは日本を突き放してものすごく経済成長(GDP増=国民所得GDI増)している」のです。
東京書籍 資料集『最新ダイナミックワイド 現代社会 』2007 p20アメリカ貿易赤字

アメリカGDP・貿易赤字推移(単位億ドル)データ出典JETRO
アメリカGDP推移・貿易赤字


 ポ-ル・クルーグマン『経済政策を売り歩く人々』ちくま学芸文庫2009p223
財政赤字は
一般に想像されているような怪物では決してない のであるp244」

GDPは、次のように算出されます。
①労働力×②資本×③労働生産性=GDP(=国民所得GDI)
さいころをイメージして下さい。経済成長はこのさいころを大きくすることです。
「双子の赤字」と、サイコロは、どこに関連があるのでしょうか?逆に「貿易黒字」はこのさいころのどこに関係があるのでしょうか?

「双子の赤字」も、「貿易黒字」も、サイコロの表面図であり、「サイコロ」を大きくする要因ではない のです。結果として「双子の赤字」・「貿易黒字」になるだけのことです。

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

01月 | 2017年02月 | 03月
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 - - - -


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

Author:菅原晃
図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学図解 使えるマクロ経済学
(2014/10/11)
菅原 晃

商品詳細を見る


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学
(2013/09/10)
菅原 晃

商品詳細を見る


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格

高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門Ⅱ 発売です!

高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門Ⅱ

DLmarketで購入


目次はカテゴリ一番上『著書』を見て下さい。


注 コメントする方へ

このブログでは、ご意見・ご感想(価値観)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ