デフレ=スパイラル?
<マクロ経済学のミクロ的基礎づけ 教科書編 その2>
<大学レベルと、世間知の乖離(かいり)>

<大学の経済学の様子>
大学生の入門編や、例えば文学部の生徒向けに経済学を講義する場合、入門編のマクロ経済学の教科書が使われます。
ためしに、書店の経済学のコーナーを除いてみてください。入門編教科書・入門編経済書は、ズラーっと並んでいます。
ですが、これらの教科書は、いわゆる「どマクロ」で、IS-LM分析程度までしか扱われていないことが分かると思います。入門の入門です。
IS-LMは、今まで見てきたように、「価格が硬直的」な世界を前提にしたモデルです。ですから、価格が持続的に下落する状態「デフレ」に適用させることができません。
余談ですが、このデフレについて、さらに、めちゃくちゃなことが、主張されています。 「デフレ=スパイラル」というものです。注)いちばん最後を参照ください。
また、Y=C+I+G(閉鎖経済)を考えた場合、Gの支出を増やせば、Yはどんどん増えることになります(乗数効果もプラス)。Gを2倍3倍・・・に増やせば、不況(潜在GDPと現在GDPとの乖離)は、理論上あり得なくなります。さらに、時間の経過による、累積債務の問題を扱うことはできません。
未だにIS-LMが全盛なのは、公務員試験や、中小企業診断士などの試験で、出題されるからです。簡単な連立方程式ですので、出題者も問題を作りやすい→教科書・参考書もそれに沿って作られる(売るため)→出題者も作りやすい・・・となっているからです。
さらに、このモデルは、大学の講義時間の制約下、教員にも生徒にも「分かり易い」ということも、理由の一つです。政策実践を理解するにも、分かり易いし、入門編としても取り扱いやすいのです。
大学の定期試験も作りやすい、出題しやすいので、テスト対策の「サルでもわかる?経済学入門書?」も多数出版されることになります。
何度も言いますが、間違いではないものの、真の経済学を学ぶために必要な「玄関」みたいなモデルです。経済学のカン所、「完璧な経済学(モデル)」はないし、モデルが発展すればするほど、難しくなるということです。

DSGE(動学的一般均衡モデル)
だから、上記に出てくる歴史的経緯から、「IS-LM」モデルだけの教科書:例えばサミュエルソンの教科書は、一世を風靡したものの、今では大学の図書館で埃をかぶっています。
同じく、マネタリストや、新しい古典派の理論による「教科書」も、今では「?」となっていることが、お分かりになると思います。
日本の、60歳代70歳代80歳代の方が書いた教科書や本なんて、悲惨なものです。マルクス経済学世代が、未だに大学の教授で残っています。もちろん、彼らの頭の中の枠組み(カテゴリー)では、現在の最新のモデルは「理解しようにも、理解できない」領域になっています。
そうすると、竹中・白川(日銀総裁で、フリードマンに師事)吉野直行世代の本・考え方も・・・・白川さんがなぜ、「デフレは貨幣政策ではなく、構造改革により解決するものだ」と主張し続けるのか、吉野直行(慶大)が「『国債を、家計に例えると』という風に解説するようになったのは、私の進言」というのも、なんとなく理解できそうですよね。吉野先生には、ISバランス論の質問にも答えてもらえなかったのですが・・・
<上級教科書>
今、大学の講義レベルで使われている、DSGE(動学的一般均衡モデル)の教科書は、マンキュー・スティグリッツ・ローマー(ニューケインジアン)などの、教科書です。日本人が書いた教科書では、齋藤誠・岩本康志・大田總一・柴田彰久のマクロ経済学があります。
上級と言っても、マンキューは本当に親切に書かれています(個人的には一番のおすすめです)。スティグリッツは、私は持っていませんが、有名です。ローマーは、最新版(2010年)をお勧めします。
日本では、私とはちょっと見解が違うのですが、齋藤誠版があります。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E7%AC%AC2%E7%89%88-II%E5%BF%9C%E7%94%A8%E7%AF%87-N%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC/dp/4492313346/ref=sr_1_9?ie=UTF8&qid=1307326581&sr=8-9

マンキューマクロ経済学(第2版)II応用篇 [単行本]
N・グレゴリー・マンキュー
(著), 足立 英之 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%84%E5%85%A5%E9%96%80%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E7%AC%AC3%E7%89%88-J-%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%84/dp/4492313486/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1307326920&sr=1-1

スティグリッツ入門経済学 <第3版> [単行本]
J.E.スティグリッツ (著), C.E.ウォルシュ (著), 藪下 史郎 (翻訳), 秋山 太郎 (翻訳), 蟻川 靖浩 (翻訳), 大阿久 博 (翻訳), 木立 力 (翻訳), 清野 一治 (翻訳), 宮田 亮 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%8A%E7%B4%9A%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E3%83%87%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%89-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC/dp/4535554935/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1307327216&sr=8-2

上級マクロ経済学 [単行本]
デビッド ローマー (著), 堀 雅博 (翻訳), 岩成 博夫 (翻訳), 南條 隆 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-New-Liberal-Arts-Selection/dp/4641053723/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1307327638&sr=1-2

マクロ経済学 (New Liberal Arts Selection) [単行本(ソフトカバー)]
齊藤 誠 (著), 岩本 康志
(著), 太田 聰一
(著), 柴田 章久 (著)
これらの教科書は、「マクロ経済学のミクロ的基礎づけ」に基づいて書かれています。
ソロー成長モデル、ラムゼーモデル、RBG(リアル・ビジネス・サイクル)モデル、新成長モデルなどがふんだんに扱われています。
これらの教科書は、「長期分析」と「短期分析」に分けて説明しています。この「長期」「短期」は、昔の新古典派の「短期」「長期」とは違い、「統合した」モデルです。
RBC(リアル・ビジネス・サイクル)モデルの登場により、経済成長と、経済循環(景気の変動)を分けるのではなく、経済成長モデルをベースとし、経済循環を述べる理論が標準となったことが分かる教科書です。

例えば、このように、長期分析と、短期分析にそれぞれ適した理論を用い、説明しています。現在の経済学のスタンダードになっています。
ちなみに、今の学生は、「新しい古典派」も「ケインズ経済学」も「聞いたことがない」人たちです。教科書がそうなっているからです。
この事実を知るだけで、「世代間のカテゴリー」が全然違うことが分かります。隔世の感というものです。世代による理解の仕方(カントの言うUnderstanding=悟性)が全然違うのです。
さらに、今の30代の学者さんは、最先端(院生レベル)を走っているのです。
http://www.amazon.co.jp/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E2%80%95%E5%8B%95%E5%AD%A6%E7%9A%84%E4%B8%80%E8%88%AC%E5%9D%87%E8%A1%A1%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E5%85%A5%E9%96%80-%E5%8A%A0%E8%97%A4-%E6%B6%BC/dp/4492313702/ref=cm_cr_pr_product_top

現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門 [単行本]
加藤 涼 (著)
学部生レベルと、大学院生レベルでは、もう質的にも、量的にも明らかに差が付きすぎています。これら最先端モデルについて、まだ、一般的なレベルで説明した入門本や、教科書はありません(私の知る範囲ですので、事実ではないかもしれないです)。
今の30代の研究者の方々が、教科書を書いた時、それが、新しい経済学が一般に普及する時代だと思われます。ただし、それらの方が「経済政策」に影響を及ぼす世代になるには、まだまだ時間がかかります。
デフレは「構造改革で克服するもの」・・・残念ながら、未だにこの考え方しかできない世代が、言論や政策の中枢にどっかと腰を据えているのが現状です。
理論の中身ではなく、「年功序列タテ社会」による実践の弊害は、こんなところにもあるのです。

注)
この「デフレ=スパイラル」という言葉は、高校の教科書・資料集・参考書・用語集などに、当然のように、出てきます。
文英堂『理解しやすい政治・経済』2010
しかし1990年代の日本経済には、デフレと不況が悪循環するデフレ=スパイラル(筆者注 太字で赤字)とよばれる現象が見られるようになった。これはデフレで物価が下落して一方で、企業の利益の減少→人員整理(リストラ)、給与の削減→労働者の所得の減少という形で、需要が回復せず、さらなる売上げの減少が、また所得の減少を招いて、需要の減少と物価下落の連鎖が断ち切れない状態をいう。
こんなもの、経済学(モデル)では、示すことさえできない、「トンでも論」です。
(1)デフレで物価が下落
↓
(2)企業の利益の減少
↓
(3)給与削減
↓
(4)所得減少
↓
(5)需要減少
↓
(6)デフレで物価下落→(1)へ
これを、大学初心者レベル「どマクロ」で説明しようとします。

通常は、需給曲線はこのように描かれますが、デフ=レスパイラルの場合、 「物価が下がり、需要(量)が減少する」のですから、需要曲線は、右上がりになります。通常は、「物価が下がると、需要(量)が増える」です。
また、供給曲線は、「物価は下落する」ので、強い右上がりになります。「物価が下落しにくい=価格が硬直的」なら、水平に近くなりますが、逆ですね。

さて、ここで、「需要不足」だから、総需要拡大政策を採用します。財政出動です。政府の財政出動により、需要曲線は、右にシフトします。

そうすると、物価も下落し、GDP(量)も下落するという、「トンでも」状態になることがわかります。
「デフレ=スパイラル」の定義通りに、高校・大学初心者レベルで分析すると、財政出動は、デフレをさらにすすめ、GDP減(不況になる)状態を加速することになるのです。リーマン・ショック以後の、各国政府による財政出動は、「やってはいけない最低政策」だったことになります。
「デフレ=スパイラル」論なるものが、経済学的なモデルのない「トンでも論」だということが分かります。
と言うことは、大学センター入試試験には、絶対に出ないので、安心して下さい。
<大学レベルと、世間知の乖離(かいり)>

<大学の経済学の様子>
大学生の入門編や、例えば文学部の生徒向けに経済学を講義する場合、入門編のマクロ経済学の教科書が使われます。
ためしに、書店の経済学のコーナーを除いてみてください。入門編教科書・入門編経済書は、ズラーっと並んでいます。
ですが、これらの教科書は、いわゆる「どマクロ」で、IS-LM分析程度までしか扱われていないことが分かると思います。入門の入門です。
IS-LMは、今まで見てきたように、「価格が硬直的」な世界を前提にしたモデルです。ですから、価格が持続的に下落する状態「デフレ」に適用させることができません。
余談ですが、このデフレについて、さらに、めちゃくちゃなことが、主張されています。 「デフレ=スパイラル」というものです。注)いちばん最後を参照ください。
また、Y=C+I+G(閉鎖経済)を考えた場合、Gの支出を増やせば、Yはどんどん増えることになります(乗数効果もプラス)。Gを2倍3倍・・・に増やせば、不況(潜在GDPと現在GDPとの乖離)は、理論上あり得なくなります。さらに、時間の経過による、累積債務の問題を扱うことはできません。
未だにIS-LMが全盛なのは、公務員試験や、中小企業診断士などの試験で、出題されるからです。簡単な連立方程式ですので、出題者も問題を作りやすい→教科書・参考書もそれに沿って作られる(売るため)→出題者も作りやすい・・・となっているからです。
さらに、このモデルは、大学の講義時間の制約下、教員にも生徒にも「分かり易い」ということも、理由の一つです。政策実践を理解するにも、分かり易いし、入門編としても取り扱いやすいのです。
大学の定期試験も作りやすい、出題しやすいので、テスト対策の「サルでもわかる?経済学入門書?」も多数出版されることになります。
何度も言いますが、間違いではないものの、真の経済学を学ぶために必要な「玄関」みたいなモデルです。経済学のカン所、「完璧な経済学(モデル)」はないし、モデルが発展すればするほど、難しくなるということです。

DSGE(動学的一般均衡モデル)
だから、上記に出てくる歴史的経緯から、「IS-LM」モデルだけの教科書:例えばサミュエルソンの教科書は、一世を風靡したものの、今では大学の図書館で埃をかぶっています。
同じく、マネタリストや、新しい古典派の理論による「教科書」も、今では「?」となっていることが、お分かりになると思います。
日本の、60歳代70歳代80歳代の方が書いた教科書や本なんて、悲惨なものです。マルクス経済学世代が、未だに大学の教授で残っています。もちろん、彼らの頭の中の枠組み(カテゴリー)では、現在の最新のモデルは「理解しようにも、理解できない」領域になっています。
そうすると、竹中・白川(日銀総裁で、フリードマンに師事)吉野直行世代の本・考え方も・・・・白川さんがなぜ、「デフレは貨幣政策ではなく、構造改革により解決するものだ」と主張し続けるのか、吉野直行(慶大)が「『国債を、家計に例えると』という風に解説するようになったのは、私の進言」というのも、なんとなく理解できそうですよね。吉野先生には、ISバランス論の質問にも答えてもらえなかったのですが・・・
<上級教科書>
今、大学の講義レベルで使われている、DSGE(動学的一般均衡モデル)の教科書は、マンキュー・スティグリッツ・ローマー(ニューケインジアン)などの、教科書です。日本人が書いた教科書では、齋藤誠・岩本康志・大田總一・柴田彰久のマクロ経済学があります。
上級と言っても、マンキューは本当に親切に書かれています(個人的には一番のおすすめです)。スティグリッツは、私は持っていませんが、有名です。ローマーは、最新版(2010年)をお勧めします。
日本では、私とはちょっと見解が違うのですが、齋藤誠版があります。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E7%AC%AC2%E7%89%88-II%E5%BF%9C%E7%94%A8%E7%AF%87-N%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC/dp/4492313346/ref=sr_1_9?ie=UTF8&qid=1307326581&sr=8-9

マンキューマクロ経済学(第2版)II応用篇 [単行本]
N・グレゴリー・マンキュー
(著), 足立 英之 (翻訳)
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スティグリッツ入門経済学 <第3版> [単行本]
J.E.スティグリッツ (著), C.E.ウォルシュ (著), 藪下 史郎 (翻訳), 秋山 太郎 (翻訳), 蟻川 靖浩 (翻訳), 大阿久 博 (翻訳), 木立 力 (翻訳), 清野 一治 (翻訳), 宮田 亮 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%8A%E7%B4%9A%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E3%83%87%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%89-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC/dp/4535554935/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1307327216&sr=8-2

上級マクロ経済学 [単行本]
デビッド ローマー (著), 堀 雅博 (翻訳), 岩成 博夫 (翻訳), 南條 隆 (翻訳)
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マクロ経済学 (New Liberal Arts Selection) [単行本(ソフトカバー)]
齊藤 誠 (著), 岩本 康志
(著), 太田 聰一
(著), 柴田 章久 (著)
これらの教科書は、「マクロ経済学のミクロ的基礎づけ」に基づいて書かれています。
ソロー成長モデル、ラムゼーモデル、RBG(リアル・ビジネス・サイクル)モデル、新成長モデルなどがふんだんに扱われています。
これらの教科書は、「長期分析」と「短期分析」に分けて説明しています。この「長期」「短期」は、昔の新古典派の「短期」「長期」とは違い、「統合した」モデルです。
RBC(リアル・ビジネス・サイクル)モデルの登場により、経済成長と、経済循環(景気の変動)を分けるのではなく、経済成長モデルをベースとし、経済循環を述べる理論が標準となったことが分かる教科書です。

例えば、このように、長期分析と、短期分析にそれぞれ適した理論を用い、説明しています。現在の経済学のスタンダードになっています。
ちなみに、今の学生は、「新しい古典派」も「ケインズ経済学」も「聞いたことがない」人たちです。教科書がそうなっているからです。
この事実を知るだけで、「世代間のカテゴリー」が全然違うことが分かります。隔世の感というものです。世代による理解の仕方(カントの言うUnderstanding=悟性)が全然違うのです。
さらに、今の30代の学者さんは、最先端(院生レベル)を走っているのです。
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現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門 [単行本]
加藤 涼 (著)
学部生レベルと、大学院生レベルでは、もう質的にも、量的にも明らかに差が付きすぎています。これら最先端モデルについて、まだ、一般的なレベルで説明した入門本や、教科書はありません(私の知る範囲ですので、事実ではないかもしれないです)。
今の30代の研究者の方々が、教科書を書いた時、それが、新しい経済学が一般に普及する時代だと思われます。ただし、それらの方が「経済政策」に影響を及ぼす世代になるには、まだまだ時間がかかります。
デフレは「構造改革で克服するもの」・・・残念ながら、未だにこの考え方しかできない世代が、言論や政策の中枢にどっかと腰を据えているのが現状です。
理論の中身ではなく、「年功序列タテ社会」による実践の弊害は、こんなところにもあるのです。

注)
この「デフレ=スパイラル」という言葉は、高校の教科書・資料集・参考書・用語集などに、当然のように、出てきます。
文英堂『理解しやすい政治・経済』2010
しかし1990年代の日本経済には、デフレと不況が悪循環するデフレ=スパイラル(筆者注 太字で赤字)とよばれる現象が見られるようになった。これはデフレで物価が下落して一方で、企業の利益の減少→人員整理(リストラ)、給与の削減→労働者の所得の減少という形で、需要が回復せず、さらなる売上げの減少が、また所得の減少を招いて、需要の減少と物価下落の連鎖が断ち切れない状態をいう。
こんなもの、経済学(モデル)では、示すことさえできない、「トンでも論」です。
(1)デフレで物価が下落
↓
(2)企業の利益の減少
↓
(3)給与削減
↓
(4)所得減少
↓
(5)需要減少
↓
(6)デフレで物価下落→(1)へ
これを、大学初心者レベル「どマクロ」で説明しようとします。

通常は、需給曲線はこのように描かれますが、デフ=レスパイラルの場合、 「物価が下がり、需要(量)が減少する」のですから、需要曲線は、右上がりになります。通常は、「物価が下がると、需要(量)が増える」です。
また、供給曲線は、「物価は下落する」ので、強い右上がりになります。「物価が下落しにくい=価格が硬直的」なら、水平に近くなりますが、逆ですね。

さて、ここで、「需要不足」だから、総需要拡大政策を採用します。財政出動です。政府の財政出動により、需要曲線は、右にシフトします。

そうすると、物価も下落し、GDP(量)も下落するという、「トンでも」状態になることがわかります。
「デフレ=スパイラル」の定義通りに、高校・大学初心者レベルで分析すると、財政出動は、デフレをさらにすすめ、GDP減(不況になる)状態を加速することになるのです。リーマン・ショック以後の、各国政府による財政出動は、「やってはいけない最低政策」だったことになります。
「デフレ=スパイラル」論なるものが、経済学的なモデルのない「トンでも論」だということが分かります。
と言うことは、大学センター入試試験には、絶対に出ないので、安心して下さい。
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