藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21
では、藻谷浩介さんからの、コメントについて解説します。
2010年7月15日 藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21にいただいたコメントです。(数字は筆者挿入です)
そんなことはわかってますが
わかってますよ。ですが、対外債権が積みあがっていることすら知らない人が余りに多いので、このように書いているのです。問題は①内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと②国内投資も増えないということですよね。その原因は、あなた方の言っているコンベンショナルなマクロ経済学で解けるのですか? ③日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると? あなたは、7章と8章をどう読んだのか? そんなことはとっくに知ってたのですか?④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか? 「自分は経済学を知っている、こいつは勉強していない」、そんなつまらない矮小なプライドでモノをいうなってんですよ。経済学なんてどうでもいいのです。枠組みはどうでもいい。⑤対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! なんとかしようと考えないのか? あんたみたいなあたまでっかちしかいなくなったから、自慢できることが実践ではなくて理論だけだから、日本はだめになるのだ。くやしかったら、自分の実践を少しでも語ってみろ。⑥対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。 ⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。そういうことです。
言い直します。それだけ理解力があるのであれば、実践力もあるはずだ。早く正道に戻ってください。
④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。
「資産が腐る」のに、「財産(資産)でも残せ」というのは、矛盾しています。それはさておき、ストック(資産)についてです。
「三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない」のではなく、 「三面等価は意味がある」が、「資産は別に、どうでもよい」ということになります。
ここで、原則を確認しておきましょう。私たちの経済成長や、所得はGDPで測ります。大切なのは、「資産=ストック」ではなくて「フロー=GDP」です。
皆さんが、年収500万で、資産(貯金、生命保険、マンション=ストック)が1000万あったとします。資産なんて皆さんの毎日・毎月・毎年の生活に意味がないことがわかるでしょう。必要なのは、毎月の給料や、ボーナス(GDP=GDI=国内総所得)です。それらが減になったら、資産=ストックが1000万あったって、毎月の生活は大変な事態になります。
直観的には「資産を消費に回せ=貯金を生活費に回せ」なんていう状態になったら、その人の生活が、とんでもない事態になっていることが想像できるはずです。
フローGDP←国内総生産=国内総所得(簡単にいえば、われわれの給与総額)
ストック 金融資産、国富。
極論すれば、経済成長も、所得も、景気も、フロー(GDP)が大切なのであり、ストックなんて、どうでもよいのです。
注)GDPや、経済成長にとってという意味です。ストックは、GDPを産み出す元手であり、金融資産が増えれば(たとえば持っている株が値上がりすれば)財布のひもが緩むという資産効果はあります。
<フローとストック>
そもそも、フローとストックとは、何でしょうか。

このように、毎年毎年のGDP(われわれの所得)のうち、投資Iに回った部分が、ストックになります。「非金融資産」+「金融資産」です。このうち、「非金融資産」+「金融資産の、海外資産(対外純資産)」を加えたものが、「国富」です。ストックの代表的な指標です。
とうほう『政治・経済資料 2010』p201 グラフも
ストック・・・ある時点における、家計、企業、政府などが保有する資産・負債の合計。生産の元手になる。


次の年のGDPを産む、元手になります。
企業にとっては、フローとストックは、次のようになります。

実際の数値です。
会社は,利益を上げるためにビジネスを行っています。もちろん,損が発生する場合もあります。ある期間(3ヶ月とか,1年間etc)に,どれだけ費用をかけ,どれだけ利益(損益)が発生したかを示すのが,損益計算書です。

上表の場合,純利益は,90億円の黒字となります。

まとめると、次のようになります。

さて、一国、あるいは企業の経済指標のうち、経済をはかるものさしになっているのは、①フローでしょうか、②ストックでしょうか。答えは、前者①フローです。
経済成長とは、対前年度のGDP増加率で測ります。GDP=GDI国内総所得なので、簡単に言えば、われわれの給与の総額を意味します。
毎年毎年の給与総額をいかにして増やすか、あるいは維持するかが大切なのであって、ストックが増えるのは、その結果なのです。
企業も同じです。いくらストックがあっても、毎年毎年生産を続けなければ、その企業は倒産してしまいます。ここでも、企業の総生産=総所得です。
だから、藻谷さんも、フロー(GDP)を重視しています。
藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21 p230
P172
…不可避の人口減少…の…中で、GDPを成長させる(あるいは一定に保つ)ためには、国民一人一人の一時間当たりの生産水準と消費水準をどんどんあげていかなくてはなりませんね。
その通りです。
P173
…一人当たりの消費水準がすでに高くしかも人口が減っている日本のような国での、一人当たりではなく総額としての経済成長というものが以下に困難か、よくおわかりいただけると思うのです。
これもその通りです。
P177
GDPも同じでして、「…個人所得や個人消費、企業業績を何とか支え向上させていこうとする努力の先に、GDPの維持ないし成長がある」のです。
その通りです。そして、GDPや、GDPの増加率=経済成長が大切だといいます。
P158
日本の産業は、付加価値額を上げる方向に、人減らしではなく商品単価向上に向け努力すべきなのです。
そうです。付加価値額+付加価値額+付加価値額・・・・の合計がGDPだからです。
P177
では日本経済は何を目標にすべきなのでしょうか。
…①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
②…個人所得の総額を維持し増やそう
③…個人消費の総額を維持し増やそう
この①②③が目標になります。もちろんこれらが実現できれば結果として経済成長率も改善しますので、これら目標は経済成長率に関する日本の国際公約とも矛盾しないものです。
なのに、
④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。
と、GDPの三面等価(総生産=総所得=総支出)を否定します。
P144
…江戸時代の商売人は…「金は天下の回り物」と言って…自分が使ったお金は誰かのもうけに回り、その儲けた誰かがまたお金を使ってくれることで自分の儲けに戻ってくる。お互いにお金を使いあうことで経済は元気になる。そういう貨幣経済の基本を、江戸時代の日本人も、付加価値の定義を考えた西洋人も体得していたのです。
この、お金が回ることをフロー、つまりGDPといいます。
GDPは「付加価値」の合計です。自分のお金が誰かの儲けで、そのもうけが自分の儲けになる。これを三面等価と言います。「三面等価は意味がない」ではなく、「三面等価は『金は天下の回り物』」のことです。
ここで、「資産が腐る」と藻谷さんがいうのは、何を意味しているかを説明します。
P220
…高齢者富裕層が死蔵している貯金のいささかでも若い相続人の手に渡って消費に回せれば、その分企業の売上が増え、まじめに働いている若者にも給料という形で分配されます。
P206
ターゲットは、繰り返しますが、1400兆円の多くを死蔵している高齢富裕層です。
P161
「高齢者から高齢者への相続で死蔵され続ける貯蓄」
P162
…高齢者は…将来健康を損なった場合…に備えてお金をためておくのです。…流動性が極めて乏しいということも申し上げました。…どのような健康状態で何歳まで生きるか不確実である以上、死ぬ瞬間までは貯蓄を目先の快適や健康維持のために使い切ってしまうわけにはいかないのです。
P163
…人体にたとえますと…摂取した栄養(筆者注:所得=フローのこと)のかなりの部分は皮下脂肪や内臓脂肪になって貯まっている(筆者注:貯蓄=ストックのこと)だけで…大量の脂肪を身につけたまま、そのうち別の病気で寿命が尽きる運命か・・・・とまあこういう状態…。
要するに、藻谷さんの言う、「資産が腐る」とは、「金融資産(ストック)=家計の金融資産約1400兆円が、消費(GDP:フロー)に回らず死蔵している」ということです。
ですが、「ストック(金融資産)」は「フロー」に回りません。順番は、「フロー」⇒「ストック」です。 「ストック」はすでに「使われてしまったカネ=著者の言う『資産が腐る』」ことなのです。原因はフロー、結果がストックなのです。
三面等価の図を見てみましょう。

このように、その年の総生産=総所得(給与総額)は、その年のフローのカネでまかなわれています。その年の貯蓄Sが、公債(G-T)に回り、企業に回り(I:株式、社債、借入金)、外国(EX-IM:海外投資=海外資産)に回り、それが、ストックとして著者の言う1400兆円の家計資産になります。すでに「使われてしまったカネ」なのです。
また、消費Cに使われている部分を見て下さい。このカネは、「その年の総生産額」から出ているカネです。その年の総所得(給与総額)から出ています。どこにも「過去のストック」が使われる余地がありません。
注)ケインズ理論を理解する時にでてくる、45度線分析の「基礎消費」は、ここでは難しいので、除外します。
p168
「三面等価の呪縛」
「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気の議論でありますが…・結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。こういう現実を、 「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。
どう説明するも何も、S貯蓄は次の年以降に「循環」させようがありません。すでにその年に「循環」してしまっているからです。総生産=総所得として。
皆さんが、年収500万で、資産(貯金、生命保険、マンション=ストック)が1000万あったとします。資産なんて皆さんの毎日・毎月・毎年の生活に意味がないことがわかるでしょう。必要なのは、毎月の給料や、ボーナス(GDP=GDI=国内総所得)です。それらが減になったら、資産=ストックが1000万あったって、毎月の生活は大変な事態になります。
「資産を消費に回せ=貯金を生活費に回せ」なんていう状態になったら、その人の生活が、とんでもない事態になっていることが想像できるはずです。
ちょっと、経済学的な説明には、なっていないかもしれませんね。導入としては、直観的なレベルにし、次回の説明に続きます。「ストックの1400兆円」を、「フローの消費」に回せについてです。
<追記>
三面等価の図を見てみましょう。

この図を、よーく見て下さい。
総生産=総消費です。総分配は、「消費+貯蓄+税金」です。
総生産物(GDP)が分配「消費と税と貯蓄」になり、その貯蓄Sが、企業の投資I、政府の投資と消費G、外国の消費と投資EX-IMに回っています。つまり、Sは、私たち消費者に代わり、企業・政府・外国が、代わってモノ・サービスを消費していることです。
そうすると、「モノ(サービス)=カネ」ということが分かります。「カネ」はどこにあるか?そう、すでに消費(投資)されてしまった、「モノ(サービス)」の中にあるのです。
ポイントは、私たちの「貯蓄S」は、すでに、総生産物(モノ・サービス)の購入に充てられているということです。
「カネ」はどこにあるのか。答えは、「計算上あるだけで、実体は無い」のです。
2010年7月15日 藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21にいただいたコメントです。(数字は筆者挿入です)
そんなことはわかってますが
わかってますよ。ですが、対外債権が積みあがっていることすら知らない人が余りに多いので、このように書いているのです。問題は①内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと②国内投資も増えないということですよね。その原因は、あなた方の言っているコンベンショナルなマクロ経済学で解けるのですか? ③日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると? あなたは、7章と8章をどう読んだのか? そんなことはとっくに知ってたのですか?④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか? 「自分は経済学を知っている、こいつは勉強していない」、そんなつまらない矮小なプライドでモノをいうなってんですよ。経済学なんてどうでもいいのです。枠組みはどうでもいい。⑤対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! なんとかしようと考えないのか? あんたみたいなあたまでっかちしかいなくなったから、自慢できることが実践ではなくて理論だけだから、日本はだめになるのだ。くやしかったら、自分の実践を少しでも語ってみろ。⑥対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。 ⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。そういうことです。
言い直します。それだけ理解力があるのであれば、実践力もあるはずだ。早く正道に戻ってください。
④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。
「資産が腐る」のに、「財産(資産)でも残せ」というのは、矛盾しています。それはさておき、ストック(資産)についてです。
「三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない」のではなく、 「三面等価は意味がある」が、「資産は別に、どうでもよい」ということになります。
ここで、原則を確認しておきましょう。私たちの経済成長や、所得はGDPで測ります。大切なのは、「資産=ストック」ではなくて「フロー=GDP」です。
皆さんが、年収500万で、資産(貯金、生命保険、マンション=ストック)が1000万あったとします。資産なんて皆さんの毎日・毎月・毎年の生活に意味がないことがわかるでしょう。必要なのは、毎月の給料や、ボーナス(GDP=GDI=国内総所得)です。それらが減になったら、資産=ストックが1000万あったって、毎月の生活は大変な事態になります。
直観的には「資産を消費に回せ=貯金を生活費に回せ」なんていう状態になったら、その人の生活が、とんでもない事態になっていることが想像できるはずです。
フローGDP←国内総生産=国内総所得(簡単にいえば、われわれの給与総額)
ストック 金融資産、国富。
極論すれば、経済成長も、所得も、景気も、フロー(GDP)が大切なのであり、ストックなんて、どうでもよいのです。
注)GDPや、経済成長にとってという意味です。ストックは、GDPを産み出す元手であり、金融資産が増えれば(たとえば持っている株が値上がりすれば)財布のひもが緩むという資産効果はあります。
<フローとストック>
そもそも、フローとストックとは、何でしょうか。

このように、毎年毎年のGDP(われわれの所得)のうち、投資Iに回った部分が、ストックになります。「非金融資産」+「金融資産」です。このうち、「非金融資産」+「金融資産の、海外資産(対外純資産)」を加えたものが、「国富」です。ストックの代表的な指標です。
とうほう『政治・経済資料 2010』p201 グラフも
ストック・・・ある時点における、家計、企業、政府などが保有する資産・負債の合計。生産の元手になる。


次の年のGDPを産む、元手になります。
企業にとっては、フローとストックは、次のようになります。

実際の数値です。
会社は,利益を上げるためにビジネスを行っています。もちろん,損が発生する場合もあります。ある期間(3ヶ月とか,1年間etc)に,どれだけ費用をかけ,どれだけ利益(損益)が発生したかを示すのが,損益計算書です。

上表の場合,純利益は,90億円の黒字となります。

まとめると、次のようになります。

さて、一国、あるいは企業の経済指標のうち、経済をはかるものさしになっているのは、①フローでしょうか、②ストックでしょうか。答えは、前者①フローです。
経済成長とは、対前年度のGDP増加率で測ります。GDP=GDI国内総所得なので、簡単に言えば、われわれの給与の総額を意味します。
毎年毎年の給与総額をいかにして増やすか、あるいは維持するかが大切なのであって、ストックが増えるのは、その結果なのです。
企業も同じです。いくらストックがあっても、毎年毎年生産を続けなければ、その企業は倒産してしまいます。ここでも、企業の総生産=総所得です。
だから、藻谷さんも、フロー(GDP)を重視しています。
藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21 p230
P172
…不可避の人口減少…の…中で、GDPを成長させる(あるいは一定に保つ)ためには、国民一人一人の一時間当たりの生産水準と消費水準をどんどんあげていかなくてはなりませんね。
その通りです。
P173
…一人当たりの消費水準がすでに高くしかも人口が減っている日本のような国での、一人当たりではなく総額としての経済成長というものが以下に困難か、よくおわかりいただけると思うのです。
これもその通りです。
P177
GDPも同じでして、「…個人所得や個人消費、企業業績を何とか支え向上させていこうとする努力の先に、GDPの維持ないし成長がある」のです。
その通りです。そして、GDPや、GDPの増加率=経済成長が大切だといいます。
P158
日本の産業は、付加価値額を上げる方向に、人減らしではなく商品単価向上に向け努力すべきなのです。
そうです。付加価値額+付加価値額+付加価値額・・・・の合計がGDPだからです。
P177
では日本経済は何を目標にすべきなのでしょうか。
…①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
②…個人所得の総額を維持し増やそう
③…個人消費の総額を維持し増やそう
この①②③が目標になります。もちろんこれらが実現できれば結果として経済成長率も改善しますので、これら目標は経済成長率に関する日本の国際公約とも矛盾しないものです。
なのに、
④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。
と、GDPの三面等価(総生産=総所得=総支出)を否定します。
P144
…江戸時代の商売人は…「金は天下の回り物」と言って…自分が使ったお金は誰かのもうけに回り、その儲けた誰かがまたお金を使ってくれることで自分の儲けに戻ってくる。お互いにお金を使いあうことで経済は元気になる。そういう貨幣経済の基本を、江戸時代の日本人も、付加価値の定義を考えた西洋人も体得していたのです。
この、お金が回ることをフロー、つまりGDPといいます。
GDPは「付加価値」の合計です。自分のお金が誰かの儲けで、そのもうけが自分の儲けになる。これを三面等価と言います。「三面等価は意味がない」ではなく、「三面等価は『金は天下の回り物』」のことです。
ここで、「資産が腐る」と藻谷さんがいうのは、何を意味しているかを説明します。
P220
…高齢者富裕層が死蔵している貯金のいささかでも若い相続人の手に渡って消費に回せれば、その分企業の売上が増え、まじめに働いている若者にも給料という形で分配されます。
P206
ターゲットは、繰り返しますが、1400兆円の多くを死蔵している高齢富裕層です。
P161
「高齢者から高齢者への相続で死蔵され続ける貯蓄」
P162
…高齢者は…将来健康を損なった場合…に備えてお金をためておくのです。…流動性が極めて乏しいということも申し上げました。…どのような健康状態で何歳まで生きるか不確実である以上、死ぬ瞬間までは貯蓄を目先の快適や健康維持のために使い切ってしまうわけにはいかないのです。
P163
…人体にたとえますと…摂取した栄養(筆者注:所得=フローのこと)のかなりの部分は皮下脂肪や内臓脂肪になって貯まっている(筆者注:貯蓄=ストックのこと)だけで…大量の脂肪を身につけたまま、そのうち別の病気で寿命が尽きる運命か・・・・とまあこういう状態…。
要するに、藻谷さんの言う、「資産が腐る」とは、「金融資産(ストック)=家計の金融資産約1400兆円が、消費(GDP:フロー)に回らず死蔵している」ということです。
ですが、「ストック(金融資産)」は「フロー」に回りません。順番は、「フロー」⇒「ストック」です。 「ストック」はすでに「使われてしまったカネ=著者の言う『資産が腐る』」ことなのです。原因はフロー、結果がストックなのです。
三面等価の図を見てみましょう。

このように、その年の総生産=総所得(給与総額)は、その年のフローのカネでまかなわれています。その年の貯蓄Sが、公債(G-T)に回り、企業に回り(I:株式、社債、借入金)、外国(EX-IM:海外投資=海外資産)に回り、それが、ストックとして著者の言う1400兆円の家計資産になります。すでに「使われてしまったカネ」なのです。
また、消費Cに使われている部分を見て下さい。このカネは、「その年の総生産額」から出ているカネです。その年の総所得(給与総額)から出ています。どこにも「過去のストック」が使われる余地がありません。
注)ケインズ理論を理解する時にでてくる、45度線分析の「基礎消費」は、ここでは難しいので、除外します。
p168
「三面等価の呪縛」
「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気の議論でありますが…・結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。こういう現実を、 「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。
どう説明するも何も、S貯蓄は次の年以降に「循環」させようがありません。すでにその年に「循環」してしまっているからです。総生産=総所得として。
皆さんが、年収500万で、資産(貯金、生命保険、マンション=ストック)が1000万あったとします。資産なんて皆さんの毎日・毎月・毎年の生活に意味がないことがわかるでしょう。必要なのは、毎月の給料や、ボーナス(GDP=GDI=国内総所得)です。それらが減になったら、資産=ストックが1000万あったって、毎月の生活は大変な事態になります。
「資産を消費に回せ=貯金を生活費に回せ」なんていう状態になったら、その人の生活が、とんでもない事態になっていることが想像できるはずです。
ちょっと、経済学的な説明には、なっていないかもしれませんね。導入としては、直観的なレベルにし、次回の説明に続きます。「ストックの1400兆円」を、「フローの消費」に回せについてです。
<追記>
三面等価の図を見てみましょう。

この図を、よーく見て下さい。
総生産=総消費です。総分配は、「消費+貯蓄+税金」です。
総生産物(GDP)が分配「消費と税と貯蓄」になり、その貯蓄Sが、企業の投資I、政府の投資と消費G、外国の消費と投資EX-IMに回っています。つまり、Sは、私たち消費者に代わり、企業・政府・外国が、代わってモノ・サービスを消費していることです。
そうすると、「モノ(サービス)=カネ」ということが分かります。「カネ」はどこにあるか?そう、すでに消費(投資)されてしまった、「モノ(サービス)」の中にあるのです。
ポイントは、私たちの「貯蓄S」は、すでに、総生産物(モノ・サービス)の購入に充てられているということです。
「カネ」はどこにあるのか。答えは、「計算上あるだけで、実体は無い」のです。
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