藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21

では、藻谷浩介さんからの、コメントについて解説します。

2010年7月15日 藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21にいただいたコメントです。(数字は筆者挿入です)

そんなことはわかってますが

 わかってますよ。ですが、対外債権が積みあがっていることすら知らない人が余りに多いので、このように書いているのです。問題は①内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと②国内投資も増えないということですよね。その原因は、あなた方の言っているコンベンショナルなマクロ経済学で解けるのですか? ③日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると? あなたは、7章と8章をどう読んだのか? そんなことはとっくに知ってたのですか?④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか? 「自分は経済学を知っている、こいつは勉強していない」、そんなつまらない矮小なプライドでモノをいうなってんですよ。経済学なんてどうでもいいのです。枠組みはどうでもいい。⑤対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! なんとかしようと考えないのか? あんたみたいなあたまでっかちしかいなくなったから、自慢できることが実践ではなくて理論だけだから、日本はだめになるのだ。くやしかったら、自分の実践を少しでも語ってみろ。⑥対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。 ⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。そういうことです。
言い直します。それだけ理解力があるのであれば、実践力もあるはずだ。早く正道に戻ってください。



④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。


 「資産が腐る」のに、「財産(資産)でも残せ」というのは、矛盾しています。それはさておき、ストック(資産)についてです。

「三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない」のではなく、 「三面等価は意味がある」が、「資産は別に、どうでもよい」ということになります。
 
 ここで、原則を確認しておきましょう。私たちの経済成長や、所得はGDPで測ります。大切なのは、「資産=ストック」ではなくて「フロー=GDP」です。

 皆さんが、年収500万で、資産(貯金、生命保険、マンション=ストック)が1000万あったとします。資産なんて皆さんの毎日・毎月・毎年の生活に意味がないことがわかるでしょう。必要なのは、毎月の給料や、ボーナス(GDP=GDI=国内総所得)です。それらが減になったら、資産=ストックが1000万あったって、毎月の生活は大変な事態になります。

 直観的には「資産を消費に回せ=貯金を生活費に回せ」なんていう状態になったら、その人の生活が、とんでもない事態になっていることが想像できるはずです。

フローGDP←国内総生産=国内総所得(簡単にいえば、われわれの給与総額)
ストック 金融資産、国富。


 極論すれば、経済成長も、所得も、景気も、フロー(GDP)が大切なのであり、ストックなんて、どうでもよいのです。
 
注)GDPや、経済成長にとってという意味です。ストックは、GDPを産み出す元手であり、金融資産が増えれば(たとえば持っている株が値上がりすれば)財布のひもが緩むという資産効果はあります。

<フローとストック>

 そもそも、フローとストックとは、何でしょうか。

フロー ストック.jpg

このように、毎年毎年のGDP(われわれの所得)のうち、投資Iに回った部分が、ストックになります。「非金融資産」+「金融資産」です。このうち、「非金融資産」+「金融資産の、海外資産(対外純資産)」を加えたものが、「国富」です。ストックの代表的な指標です。

とうほう『政治・経済資料 2010』p201 グラフも
 ストック・・・ある時点における、家計、企業、政府などが保有する資産・負債の合計。生産の元手になる。

フローとストックのイメージ図.jpg



2007年 ストック.jpg

 次の年のGDPを産む、元手になります。

企業にとっては、フローとストックは、次のようになります。

フロー ストック 企業.jpg

 実際の数値です。

 会社は,利益を上げるためにビジネスを行っています。もちろん,損が発生する場合もあります。ある期間(3ヶ月とか,1年間etc)に,どれだけ費用をかけ,どれだけ利益(損益)が発生したかを示すのが,損益計算書です。

損益決算書.jpg

上表の場合,純利益は,90億円の黒字となります。

貸借対照表.jpg

 まとめると、次のようになります。

フローとストック まとめ.jpg

 さて、一国、あるいは企業の経済指標のうち、経済をはかるものさしになっているのは、①フローでしょうか、②ストックでしょうか。答えは、前者①フローです。

 経済成長とは、対前年度のGDP増加率で測ります。GDP=GDI国内総所得なので、簡単に言えば、われわれの給与の総額を意味します。
 毎年毎年の給与総額をいかにして増やすか、あるいは維持するかが大切なのであって、ストックが増えるのは、その結果なのです。

 企業も同じです。いくらストックがあっても、毎年毎年生産を続けなければ、その企業は倒産してしまいます。ここでも、企業の総生産=総所得です。

 だから、藻谷さんも、フロー(GDP)を重視しています。

藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21 p230
P172
…不可避の人口減少…の…中で、GDPを成長させる(あるいは一定に保つ)ためには、国民一人一人の一時間当たりの生産水準と消費水準をどんどんあげていかなくてはなりませんね。


 その通りです。

P173
 …一人当たりの消費水準がすでに高くしかも人口が減っている日本のような国での、一人当たりではなく総額としての経済成長というものが以下に困難か、よくおわかりいただけると思うのです。


 これもその通りです。

P177
 GDPも同じでして、「…個人所得や個人消費、企業業績を何とか支え向上させていこうとする努力の先に、GDPの維持ないし成長がある」のです。


 その通りです。そして、GDPや、GDPの増加率=経済成長が大切だといいます

P158
日本の産業は、付加価値額を上げる方向に、人減らしではなく商品単価向上に向け努力すべきなのです。


 そうです。付加価値額+付加価値額+付加価値額・・・・の合計がGDPだからです。

P177
 では日本経済は何を目標にすべきなのでしょうか。
…①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
 ②…個人所得の総額を維持し増やそう
 ③…個人消費の総額を維持し増やそう
 この①②③が目標になります。もちろんこれらが実現できれば結果として経済成長率も改善しますので、これら目標は経済成長率に関する日本の国際公約とも矛盾しないものです。


なのに、

④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。


 と、GDPの三面等価(総生産=総所得=総支出)を否定します。

P144
…江戸時代の商売人は…「金は天下の回り物」と言って…自分が使ったお金は誰かのもうけに回り、その儲けた誰かがまたお金を使ってくれることで自分の儲けに戻ってくる。お互いにお金を使いあうことで経済は元気になる。そういう貨幣経済の基本を、江戸時代の日本人も、付加価値の定義を考えた西洋人も体得していたのです。


 この、お金が回ることをフロー、つまりGDPといいます。
 GDPは「付加価値」の合計です。自分のお金が誰かの儲けで、そのもうけが自分の儲けになる。これを三面等価と言います。「三面等価は意味がない」ではなく、「三面等価は『金は天下の回り物』」のことです。



ここで、「資産が腐る」と藻谷さんがいうのは、何を意味しているかを説明します。

P220
 …高齢者富裕層が死蔵している貯金のいささかでも若い相続人の手に渡って消費に回せれば、その分企業の売上が増え、まじめに働いている若者にも給料という形で分配されます。

P206
 ターゲットは、繰り返しますが、1400兆円の多くを死蔵している高齢富裕層です。

P161
「高齢者から高齢者への相続で死蔵され続ける貯蓄

P162
 …高齢者は…将来健康を損なった場合…に備えてお金をためておくのです。…流動性が極めて乏しいということも申し上げました。…どのような健康状態で何歳まで生きるか不確実である以上、死ぬ瞬間までは貯蓄を目先の快適や健康維持のために使い切ってしまうわけにはいかないのです。

P163
 …人体にたとえますと…摂取した栄養(筆者注:所得=フローのこと)のかなりの部分は皮下脂肪や内臓脂肪になって貯まっている(筆者注:貯蓄=ストックのこと)だけで…大量の脂肪を身につけたまま、そのうち別の病気で寿命が尽きる運命か・・・・とまあこういう状態…。


 要するに、藻谷さんの言う、「資産が腐る」とは、「金融資産(ストック)=家計の金融資産約1400兆円が、消費(GDP:フロー)に回らず死蔵している」ということです。

 ですが、「ストック(金融資産)」は「フロー」に回りません。順番は、「フロー」⇒「ストック」です。 「ストック」はすでに「使われてしまったカネ=著者の言う『資産が腐る』」ことなのです。原因はフロー、結果がストックなのです。

三面等価の図を見てみましょう。

三面等価 2008

 このように、その年の総生産=総所得(給与総額)は、その年のフローのカネでまかなわれています。その年の貯蓄Sが、公債(G-T)に回り、企業に回り(I:株式、社債、借入金)、外国(EX-IM:海外投資=海外資産)に回り、それが、ストックとして著者の言う1400兆円の家計資産になります。すでに「使われてしまったカネ」なのです。

 また、消費Cに使われている部分を見て下さい。このカネは、「その年の総生産額」から出ているカネです。その年の総所得(給与総額)から出ています。どこにも「過去のストック」が使われる余地がありません。

注)ケインズ理論を理解する時にでてくる、45度線分析の「基礎消費」は、ここでは難しいので、除外します。


 p168
「三面等価の呪縛」
 「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気の議論でありますが…・結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。こういう現実を、 「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。


 どう説明するも何も、S貯蓄は次の年以降に「循環」させようがありません。すでにその年に「循環」してしまっているからです。総生産=総所得として。

 皆さんが、年収500万で、資産(貯金、生命保険、マンション=ストック)が1000万あったとします。資産なんて皆さんの毎日・毎月・毎年の生活に意味がないことがわかるでしょう。必要なのは、毎月の給料や、ボーナス(GDP=GDI=国内総所得)です。それらが減になったら、資産=ストックが1000万あったって、毎月の生活は大変な事態になります。
 「資産を消費に回せ=貯金を生活費に回せ」なんていう状態になったら、その人の生活が、とんでもない事態になっていることが想像できるはずです。

 ちょっと、経済学的な説明には、なっていないかもしれませんね。導入としては、直観的なレベルにし、次回の説明に続きます。「ストックの1400兆円」を、「フローの消費」に回せについてです。

<追記>

三面等価の図を見てみましょう。

三面等価 2008

 この図を、よーく見て下さい。

 総生産=総消費です。総分配は、「消費+貯蓄+税金」です。

 総生産物(GDP)が分配「消費と税と貯蓄」になり、その貯蓄Sが、企業の投資I、政府の投資と消費G、外国の消費と投資EX-IMに回っています。つまり、Sは、私たち消費者に代わり、企業・政府・外国が、代わってモノ・サービスを消費していることです。

 そうすると、「モノ(サービス)=カネ」ということが分かります。「カネ」はどこにあるか?そう、すでに消費(投資)されてしまった、「モノ(サービス)」の中にあるのです。

 ポイントは、私たちの「貯蓄S」は、すでに、総生産物(モノ・サービス)の購入に充てられているということです。

「カネ」はどこにあるのか。答えは、「計算上あるだけで、実体は無い」のです。
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藻谷浩介 その9『デフレの正体』角川oneテーマ21

藻谷浩介 その9『デフレの正体』角川oneテーマ21

 著者は、GDPの構成要素の一つ、内需を増やす方策を述べます。

p264
「内需を維持しつつ同時に生産性も高めていける」という、日本の歴史はじまって以来の大チャンスなのです。


その一方、その指標である、GDPの三面等価を否定します。

p168「三面等価の呪縛」
 「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気の議論でありますが…結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。こういう現実を、「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。

P168
…消費者人口の減少→供給能力過剰→在庫積み上がりと価格競争激化→…(在庫が腐る)という現象です。

P169
…製造業や小売業、不動産業などの場合、「在庫の増加」自体は…「投資」の一種として説明されます。…「在庫投資が増えた…」ということで前向きに処理されるわけです。…ということは、売れようが売れまいが在庫を積み増しながら生産を続ければ、GDPは増え続けるわけです。…「三面等価というのは発生ベースの話であって、その後に起きる在庫処分などは知ったことではない」ということであれば、この式は「常に正しい」どころか、時価会計の時代にはそぐわない、実質的には意味のないものになってしまいます。


 この点について、検証します。長いですがよろしくお願いします。

<GDPとは何か>

拙著:『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』より

 GDPは国内総生産(Gross Domestic Product)のことです。ある一定期間に,国内で生産されたすべてのモノ・サービスの付加価値の総額です。教科書・資料集では,このように説明されています。
  
GDPの計算 帝国書院資料集『アクセス現代社会2008』 2008年 p87
 GDP 帝国書院資料集『アクセス現代社会2008』 2008年 p87

 上の図で,農家は100万円分の生産,製粉業者は130万円分の生産,パン屋は200万円分の生産をしていますので,総生産は,430万円になりそうです。しかし,製粉業者は,原材料として,100万円分の小麦を仕入れています(中間生産物と言います)ので,実際のもうけ(付加価値と言います)は130-100=30万円になります。同じように,パン屋の場合は,200-130=70万円になります。ですから,農家100万円+製粉業者30万円+パン屋70万円,合計200万円が,この国のGDP(国内総生産)になります。付加価値とは、もうけのことです。儲けの合計がGDPです

<GDPは,給料の総額>
 
 なぜ,「GDP」が大事なのでしょうか。「別に,少しくらい減ってもかまわないのでは?」と言う声が聞こえてきそうです。あるいは,「GDPって増えなくてもいいんじゃない?」とか。

 実は,こだわるのには,理由があります。それは,「GDPは,我々の給料の総額」だからです。
 皆さんは,これからの日本は少子高齢化で人口が減るので,「自分の給料(アルバイト代)が減ってもかまわない」と自信を持って言えるでしょうか?たぶん,簡単には言えないと思います。「GDPあるいは,1人あたりGDPが減る」ということは,「我々の給料」が減るということです。

 「GDPが増えない(成長率0%)」ということは,「日本人の所得が,全体では増えない」ということです。そうなると,決まった「GDP」の範囲内で,「誰かの所得が増えれば,誰かの所得が減る」という,ゼロサム・ゲーム(勝つか負けるか)をずーっと続けていくことになります

 高度経済成長時代に,「所得倍増計画」というのがありました。実際に我々日本人の所得は,倍増,3倍増になり,世界第2位の経済大国になりました。海外旅行でも,パソコンでも,携帯電話でも,何でも購入することが出来ます。家庭用TVは1人に1台とも言われています。好きなときに,回転寿司を食べられるようになりました。やはり豊かになったのは間違いありません。

 「GDP(国内総生産)が増える」=「我々の所得(給料)が増える」ことなのです。このことを示すのが, 「GDPの三面等価」です。
桐原書店 教科書『新政治経済改訂版』H19 p114
桐原書店 教科書『新政治経済改訂版』H19 p114

 三面等価とは,「GDP」を,①生産,②分配,③支出の,どの面から見ても同じであり,①生産=②分配=③支出になるというものです。
 
 ラーメン屋さんを考えてみましょう。ラーメン屋さんの1ヶ月の売上げが,100万円だったとします。麺や具などの原料費(中間生産物)が50万円だったとすると,このラーメン屋さんの「GDP」(①生産)は50万円になります。
 ラーメン屋さんは,その中から,アルバイト代や,お店の家賃,銀行にお金を借りているなら利息,税金,そのほかを払い,残った額がラーメン屋さんに溜(た)まり(留保(りゅうほ))ます。これらを②分配と言います。これらの総額は,50万円になります。
 一方,ラーメン屋さんの1ヶ月の売上げ「GDP」は,お客さんが払ってくれた額です。これを③支出面から見た「GDP」と言います。お客さんが払った額は50万円です。お客さんは,実際には100万円払っていますが,総売上-中間生産物(この場合麺や具などの原料費)=もうけ(付加価値)になりますので,50万円が「GDP」でしたね。

 このように,「GDP」50万円は,①生産,②分配,③支出の,どの面から見ても同じになります。

GDP=①総生産
   =②分配(所得)=GDI(国内総所得)
   =③支出(購入)=GDE(国内総支出)
三面等価 資料集
帝国書院『アクセス現代社会2009』 P90 三面等価の原則 
 ですので,この表のように,GDP(国内総生産)=GDI (国内総所得)=GDE(国内総支出)ということになります。

 このように,「GDPの三面等価」の原則から,「GDP(国内総生産)」=「我々の所得GDI (給料)」だということが分かります。ですから,「GDPあるいは,1人あたりGDPが減る」ということは,「我々の給料」が減るということです。日本は,これから総人口が減ります。「GDP」は減るか,増えても微増でしょう。ですので,大切なのは,「GDP」を全人口数で割った,「1人あたりGDP」です。1人あたりの「GDP」が今のままであれば,「我々の所得」も今のままを維持できることになります。

<GDPは付加価値の総額>

藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21 p230
P177
 GDPも同じでして、「…個人所得や個人消費、企業業績を何とか支え向上させていこうとする努力の先に、GDPの維持ないし成長がある」のです。

P158
 日本の産業は、付加価値額を上げる方向に、人減らしではなく商品単価向上に向け努力すべきなのです。


そうです。付加価値額+付加価値額+付加価値額・・・・の合計がGDPだからです。

P145
 以下の産業を…付加価値額の高い順に…並べてみてください。
①自動車(部品を除いて完成車組み立ての大企業のみとする)
②エレクトロニクス
③建設
④食品製造
⑤小売(百貨店、スーパー、専門チェーン、通販など)
⑥繊維・化学・鉄鋼
⑦サービス(飲食業や宿泊業、清掃業、コンサルティングサービスなど)
 もしかして皆さん、並んでいる順だと…感じませんでしたか?それは逆です。⑦のサービスが一番付加価値率が高くて半分近くもあり、①の自動車が一番低くて2割を切っています。…このクイズに正解する人は本当に少ないです。


 筆者は「日本はモノづくりの国だ(サービス業)ではない」と誤解しているので、クイズにしてみたのでしょう。

P67
…では「モノは売れていないが、サービスの売上はどんどん伸びている」というような事態が起きているのでしょうか。旅行産業を見ても外食産業を見ても、残念ながらまったくそんなことはありません。それにそもそも「日本はモノづくりの国」でありまして、国内でモノが売れないところへ輸出(=外国へのモノの売上)まで急落して皆さんが困っているのです。

P152
…車や住宅、電気製品といった、消費者一人当たりが買う量が限定されているような商品が日本経済の中心的な存在となってきたのでなければ、極端なことを言えば日本の主産業が…国際金融のように顧客の頭数と売上に関係ないようなものばかりであれば、私が言っているようなGDPの縮小は起きなかった…。ハーレーダビッドソンのオートバイだのフェラーリだのも…一種の芸術品なので、日本での売上はむしろ増えています。そういう産業が発達して日本経済の中核をなしていれば良かったのですが


 オートバイ国内販売台数は、1980年代の1割になりました。自動車生産台数も、ピーク時の7割です。

<日本の主産業はサービス業>

とうほう『政治・経済資料2010』p232-233
日本の就業割合の変化.jpg
産業別就業者構成比.jpg


 日本は、サービス業の国です。家計支出においても、サービスへの支出が増加し続けているのです。

<三面等価の否定>


p168
「三面等価の呪縛」
 「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気の議論でありますが…結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。こういう現実を、「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。

P168
…消費者人口の減少→供給能力過剰→在庫積み上がりと価格競争激化→…(在庫が腐る)という現象です。

P169
…製造業や小売業、不動産業などの場合、「在庫の増加」自体は…「投資」の一種として説明されます。…「在庫投資が増えた…」ということで前向きに処理されるわけです。…ということは、売れようが売れまいが在庫を積み増しながら生産を続ければ、GDPは増え続けるわけです。…「三面等価というのは発生ベースの話であって、その後に起きる在庫処分などは知ったことではない」ということであれば、この式は「常に正しい」どころか、時価会計の時代にはそぐわない、実質的には意味のないものになってしまいます。


 在庫処分は、GDPの三面等価式(フロー)ではなく国富(ストック)で処理されます。ですから、在庫が腐ると、国富が減るのです。GDPの三面等価とは関係ありません

注)このGDP(フロー)と国富(ストック)については、後日、詳しく説明いたします。

とうほう『政治・経済資料2010』p232-233
日本の国富.jpg

 その年の在庫投資は、三面等価式で、投資(I)に入ります。
三面等価 2008

「在庫投資が増えた…」ということで前向きに処理されるわけです。売れようが売れまいが在庫を積み増しながら生産を続ければ、GDPは増え続ける
についてです。

 そもそも、在庫投資のGDPにしめる割合は1%以下なので、GDPにはたいして影響しません

投資総額と在庫.jpg

在庫には、①仕入れた原材料段階のもの、それを加工した②製品になった段階のものの、2つがあります。また、「意図した在庫」と「意図せざる在庫」があります。前者は売上を予想して企業が増減させた在庫、後者は企業の予想が外れた売れ残り在庫です。 GDP統計上、両者は区別できません

 企業は在庫を積み上げることはしません。最小の負担で、最大の利潤をあげることが目的だからです。

 トヨタの「カンバン」方式は、在庫を極小にする試みです。また、一昨年のリーマン・ショック以降、派遣労働者の契約打ち切り、いわゆる派遣切りが問題になりました。これは、企業が在庫調整を進めた結果です。

在庫積み上がりと価格競争激化→…(在庫が腐る)

として、価格を下げるのではなく、在庫を生かすために、数量を調節するのです。いすづ自動車が派遣切りをしたのは、「車」を安く売るのを防ぎ、数量を調整したからです。在庫を生産し続け、結果としてGDPがアップすることはありません

 この、在庫の増減は、景気の予測をするうえで、重要な指標とされています。「最大利潤」を目的にした企業が、「売れようが売れまいが在庫を積み増しながら生産を続ければ、GDPは増え続ける。ですがその在庫を処分せざるを得なくなって評価損が発生したら?…営業余剰が減少するのでGDPも減るのではないでしょうかp169」という行動はとりません。

<サービスは時間に制約されない>

p172~
 人口の減少は、国民が経済活動に使える時間の総合計=人口×365日×24時間(これを国民総時間と仮称…)の減少でもあります。…その中で消費に回す時間をこれ以上増やせるのか。…それは従来よりも高価なものを消費してもらうことによってしか達成できませんね。…高価な車やヨット…でもそれには乗る時間が必要です。高価なステージ…やっぱり時間が必要だ。
 …より高い商品やサービスの購入につぎ込み続け、しかも買った後には使わない、という状況を想定しない限り、「消費の対時間生産性」がいつまでも伸び続けるというのは想像できません。
 一つの打開戦略は…日本の商品がフランス、イタリア、スイスに対抗できるようなブランドを獲得…価値の高い商品をなるべく消費することです。…ですがすべての商品がそうなれるというわけではありません。
…ぜひこの「時間の経済学」を考え直し、そして、国民総時間の減少という制約を日本は乗り越えられるのか、という私の問いに答えを出してください。


 確かに、モノを使うことは、時間に制約されます。ですが、サービスは、同時間に複数のサービスを同時に使うことが可能です。ここに成長の鍵があります。

 たとえば、TVを見ながらパソコンを使い、携帯電話を使うことは、日本の日常生活で当たり前になりました。電気代、通信費の増大です。エアコンも同時に使用します。パソコンのクリック一つで、買い物に行く時間を節約します。宅配サービスが代行しています。

 電車に乗りながら(交通サービス)、携帯やPC、IPADを使う、英会話教材を使うのも同じです。
 また、コンサートに出かけてサービスを消費する間に、ベビーシッターや、掃除代行サービスを使用することが可能です。

 さらに、寝ている間でも、24時間安心の、セキュリティーサービスを使用することが可能になりました。寝ていても、消費活動が可能なのです。これも新たなサービスです。
 私たちが預けた、カネは、24時間、世界中を駆け巡っています。金融業は、最大のサービス業です。

 IT革命は、時間の節約という、革命を起こしたのです。日本は「サービス業」の伸びている国なのです。

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