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AKモデル

<成長するには?>

 さて、ソロー・モデルでは、日本の現状は「定常状態」でした。日本はこのまま、GDPは成長しないのでしょうか?
 
 ソロー・モデルには前提がありました。

 GDPは, ①労働力(人口),②資本ストック,③技術力(生産性)をかけあわせたものです。

GDP 三要素

 今、①の労働力、③の技術力(生産性)を、一定とします。③の技術力とは、生産性のことです。例えば、運搬を手作業でやっていたところに、トラックを導入すると、生産性は向上します。パソコンに新しいソフトを入れて、今まで1時間かかっていたものが、30分でできるようになるのも、生産性の向上です。

 だとしたら、生産性の向上とは、「労働者の数を増やす」ことと、同じとも考えられます。
パソコンで、1時間かかっていたものが、30分でできるようになったら、労働者を1人から2人に増やしたこと、トラックを導入し、仕事量が10倍になったら、労働者を1人から10人にしたのと同じことと考えられます。

 ①労働力×②資本ストック×③技術力のうち、①と③は同じものと考えると、GDPは③&②です。
ソロー・モデルでは、この③を固定して考えました。そうすると、「定常状態」であると推測されました。

 では、③すなわち、①労働力③技術力(生産性)が変化すると考えるとどうなるのでしょうか?

<AKモデル>

 人的資本③は成長すると考えると、経済成長も可能だと考えられます。これはAKモデルというものです。

A:比率×K:資本ストック=生産量Y 

 AKモデルでは、限界生産力の低減を仮定しません。なぜなら、③人的資本は、低減しないと考えることも出来るからです。

中谷巌『痛快経済学2』集英社2004 p199
人的資本.jpg

 形式知は、「機械化が可能」です。しかし、暗黙知は「過去からの蓄積」なので、簡単に会得することは難しく、また「低減しない」と考えることも出来ます。大リーグ、イチロー選手のセンスも、他の人にはまねできません。「暗黙知=プロの技術」は、価値が高いことが分かります。

 この「暗黙知」が人的資本というものです。

 ソロー・モデルは「外の要因で経済成長が決まる」と考えるのに対し、AKモデルでは、「中の要因(人的資本や知識資本、物的資本をまとめる)で経済成長が可能」と考えます。

<成長の要因>

 まず,①労働量です。日本は,少子化・高齢化が進んでいます。現在のままでは,明らかに「減る」ことは,間違いありません。15才から,64才までを生産年齢人口と言いますが,今後その実数も,人口に占める割合も,大変な勢いで低下していきます。

 帝国書院『アクセス現代社会2008』 2008年 p50
人口減

 経済産業研究所 日本産業生産性(JIP)データベース
GDP成長率 寄与度.jpg

 労働人口は実際に減少し、そのGDP成長率に占める割合はマイナスで、足を引っ張っている状態です。①労働量は、相当厳しい状態にあります。

 そうなると、③技術力(生産性/TFP)が、今後の日本の経済成長にとって、大変重要な要素ということになります。

 技術力の寄与度は、①労働②資本に比べて、その度合いが大きい=影響力が強いのです。

齊藤誠他『マクロ経済学』有斐閣2010 p315

寄与度.jpg

 戦後復興期のかなりの部分が、③技術力によるものです。日本の場合は、9%を超える成長率のうち、4割を超えています。一方、60年~90年の成長率6.81%に対し、寄与度は1.96%に低下しています。③技術力が、成長率に直結しています。

 p316
 高度経済成長局面についても成長鈍化局面についても先進国の成長率は技術進捗の度合いに大きく左右されている

 
のです。

 以上のように得た、技術進捗の様子と、人口動態から、今後の成長見通しを得ることができます。

内閣府 『中長期の道ゆきを考えるための機械的試算』(平成21年6月23日)
潜在成長率.jpg

 インフレを考慮して、実質経済成長率を見ます。日本の成長率は1%程度で推移しそうです。
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ソローモデル

<均斉成長の前提>

「均斉成長」とは、以下ののように考えます。

GDPは次の3つの要素で構成されます。

① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)

 GDPは, ①労働力(人口),②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。

GDP 三要素

 今、①の労働力、③の技術力(生産性)を、一定とします。③の技術力とは、生産性のことです。例えば、運搬を手作業でやっていたところに、トラックを導入すると、生産性は向上します。パソコンに新しいソフトを入れて、今まで1時間かかっていたものが、30分でできるようになるのも、生産性の向上です。

 だとしたら、生産性の向上とは、「労働者の数を増やす」ことと、同じとも考えられます。パソコンで、1時間かかっていたものが、30分でできるようになったら、労働者を1人から2人に増やしたこと、トラックを導入し、仕事量が10倍になったら、労働者を1人から10人にしたのと同じことと考えられます。

 ①労働力×②資本ストック×③技術力のうち、①と③は同じものと考えると、GDPは③&②です。

 このモデルで、経済成長を考えてみます。


<資本の限界生産力は低減する> 

 資本について、別な見方・考え方を示します。ソロー・モデルと言います。

 労働者の数が一定で、資本だけを増やすと、資本が増えることによる、生産量増大(限界生産力)(限界:資本や労働者を10万円分増やした時に、どのくらい生産量が増加するか)は、低下します。

 ①労働力×②資本ストック×③技術力のうち、①と③は同じものと考えると、GDPは③&②です。この③を固定して考えます。

 例えば、2人で、1台の機械(パソコン)を使用している場合です。

1
   
 ここに、パソコンを資本投資します。1年に1台増やします。

2

 どうでしょうか、2人で1台を使っていた時より、生産性がアップし、結果的にY(生産量)が増えることが分かると思います。
 ところが、ここからさらに1台・2台とパソコンを増やしていくとどうなるでしょうか。

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 それは確かに、パソコンが増えると働いている人はうれしいかもしれませんが、増えても、だんだん使いこなせなくなってきます。1人で、2台・3台のパソコンを持っていても使いこなせません。

4

 もうこうなると、完全に使いこなせません。最初の2人で1台のパソコンから、1台増えたとき(これは効率アップ!)に比べ、7台から8台に増えたときの1台は、ほとんど、効率アップになっていないことが分かります。増やせば増やすほど、効率アップの値は小さくなります。パソコンの能力を引き出せなくなっているのです。

5

 これは、パソコンの量(資本)を一定にして、人を増やしても同じです。

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 これなら、最初の2人で1台のパソコン状態と、変わらなくなってしまいます。増やせばよいというわけではありません。

 このように、限界生産力(限界:資本を10万円分増やした時に、どのくらい生産量が増加するか)は、低下します。

 中谷巌『ニューマクロ経済学』日本評論社 2007 p259
ソローモデル.jpg

<定常状態>

 このように、効率は悪くなっていくのですが、ここで、さらに厄介な問題が生じます。それは、パソコンは古くなる(減耗する)のです。

7


 5年でパソコンがダメ(減耗)になる場合、毎年、1台を増やしても、毎年1台が廃棄になります。

8

 毎年1台ずつパソコンは増えますが、5年目以降は、毎年1台ずつ廃棄します。5台で資本の量は変わらなくなります。定常状態です

 1人に1台だった時に比べ、5台ですから、5倍のY生産ができるわけではありません(限界生産力)低下
 とりあえず、Yは、2倍に増えたとしましょう。Yが2倍に増えたのですから、S貯蓄I投資も2倍になったと仮定します。そうすると、1年に2台のパソコンを投資することになります。

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 投資が2倍に増えても、同じです。10台になったところで、定常状態になるのです。Yの生産力は、増えないのに、固定資本の減耗は、毎年一定の割合です。

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 資本の蓄積が進む(日本)と、すべての投資が、設備の維持・更新に充てられる(減価償却)「定常状態」すなわち、GDPが伸びない状態になると考えられています。

固定資本減耗/投資額.jpg



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