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臨時寄稿 池田信夫

<臨時寄稿 池田信夫>



http://blogos.com/article/86150/

• 池田信夫
• 2014年05月10日 12:15
供給力が下がってデフレは終わった

・・・潜在成長率という概念だ。これは日本経済の供給力の増加率を示すもので、成長率がこれより高いとインフレになり、低いとデフレになる。上の図のように2000年代には潜在成長率は0.8%まで下がり、今は0%ぐらいまで下がったのではないか、というのが早川氏の見立てだ。潜在GDPは複雑な推計なので断定的なことはいえないが、今の人手不足はGDPが潜在GDPとほぼ一致したことを示唆している。

昨年の実質成長率は(公共事業を除いて)ほぼゼロなので、これは潜在GDPが下がって実質GDPと一致したということだ。つまり日本経済は供給力を減らしてデフレを脱却したのだ。この大きな原因はエネルギー価格の上昇で、ここ3年で20%ぐらい上がり、潜在GDPを下げた。デフレ脱却が政権の目標ならめでたいことだが、それで何が解決したのだろうか。

株式市場はちょっと明るくなったが、元に戻ってしまった。失業率も実質GDPも、リーマン・ショックの前に戻っただけだ。上場企業は増益にわいているが、中小の景気動向指数はマイナスだ。しかし人手不足がひどくなってきたので、これから名目賃金が上がるだろう。

そうすると物価も上がるので、日銀の目標2%は(コアCPIでは)達成できる可能性がある。しかし今のコアコア0.7%でGDPギャップがほぼゼロなのだから、これ以上インフレになると、供給不足になってGDPが下がる。これは石油危機のときのようなスタグフレーションである。

もう一つのリスクは、長期金利が上がることだ。今までは日銀のリフレ政策を市場が信じていないので長期金利は0.6%程度で落ち着いているが、本当に2%のインフレが起こると思ったら、金利は上がるだろう。邦銀は200兆円以上の国債を保有しているので、金利が1%上がるだけで15兆円ぐらいの評価損を抱える。

これは短期的には、日銀がどんどん国債を買って金融抑圧を続ければ防げる。日銀の金庫には現金が86兆円もあるので、日銀が国債を全部買い占めることもできるが、最後はどこかで限界が来る。日銀がこれ以上バランスシートをふくらませると、ハードランディング以外の出口はなくなる。

株式市場の「期待」をふくらませて回復を早めたのは黒田総裁の功績だが、GDPは期待どおり上がらなかった。潜在GDPが下がってデフレは終わったのだ。これから起こりうるシナリオは、石油危機のような供給ショックによる大インフレか、バブル崩壊のような金融危機だ。黒田氏はそろそろ「デフレ脱却宣言」を出し、出口戦略を考えてはどうだろうか。



1.供給力を減らしてデフレを脱却したのだ。

GDPは、供給GDP=需要GDEです。供給を減らしたのなら、GDPは減になります。現実は、GDP増です。

2.株式市場はちょっと明るくなったが、元に戻ってしまった。失業率も実質GDPも、リーマン・ショックの前に戻っただけだ。

株式は、日経平均8000円台が、15000円を超え、最近は14000円台です。元にもどってなんかいません。

リーマンショック前は、失われた20年といわれる中で、唯一成長した時期です。

1.で、現状に納得している(GDPは伸びない?、潜在成長率低いと言っているのにも関わらず).

3.これ以上インフレになると、供給不足になってGDPが下がる。これは石油危機のときのようなスタグフレーションである。

スタグフレーション(70年代・石油ショックから、80年代初頭)は、ショック(GDP減)失業率増に対し、当時のケインジアン政策では、さらに需要拡大政策を採用したので(それしか、理論としてはなかった)、インフレが増大し、低成長しか実現できなかったというものです。

 供給不足&「供給<需要」です。

ケインジアンIS-LMでは、物価は考慮されておらず、ケインジアンが頼りにしたのは、フィリプス曲線(インフレと失業のトレードオフ)という、理論でもなんでもない、単なる実証グラフ(過去、こういうことが見られた)でした。

 だから、ケインジアン政策では、不況(失業増)に対し、総需要管理政策=需要拡大しか、方法がなかったのです。当然、インフレを招きます。

 だから、ケインジアンは、サミュエルソンを含め、スタグフレーションになすすべがなく、学術的に、政策的に、失脚したのです。



4.日銀がこれ以上バランスシートをふくらませると、ハードランディング以外の出口はなくなる。

 いいえ、単に、今買った国債を保有している・・理念以降は、無理やり購入しない・・だけで十分です。

 

5.GDPは期待どおり上がらなかった。潜在GDPが下がってデフレは終わったのだ。これから起こりうるシナリオは、石油危機のような供給ショックによる大インフレか、バブル崩壊のような金融危機だ。

 GDPは、上がりました。供給ショック??石油価格や、輸入価格の高騰????今、昨年より円安なのに、これ以上、円安が進まないと(それも、十パーセント単位か?)、輸入価格の高騰は起き得ません。



「長期金利は0.6%程度で落ち着いているが、本当に2%のインフレが起こると思ったら、金利は上がるだろう。邦銀は200兆円以上の国債を保有しているので、金利が1%上がるだけで15兆円ぐらいの評価損を抱える。」

 4月の日銀レポート,自己資本の毀損にはならない、他の利益>損益になると書いています。

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臨時寄稿 小学生にまで虚偽情報を流す池田信夫某 

<臨時寄稿 池田信夫 >

 間違っているところは、赤字にしました。

http://blogos.com/article/84972/

池田信夫

2014年04月21日 19:38

貿易赤字って悪いことなの?

日本の2013年度の貿易赤字は13兆7488億円と、史上最大を記録しました。「赤字」というとなんか悪いことみたいですが、これって悪いことなんでしょうか? 毎日新聞の中村秀明さんは「貿易赤字は自然なことだから原発を止めてもいい」といっています。

貿易収支というのは、輸出から輸入を引いたものです。それが赤字になったということは、輸入のほうが輸出より多いというだけで、それ自体はいいことでも悪いことでもありません。輸入できるのは、それを買うお金が日本の会社にあるんだから、問題ではありません。しかし国全体としては、外国からの借金(資本収支の黒字)が増えることになります。

借金も、それ自体は問題ではありません。借金をしていない会社は、日本にほとんどないでしょう。しかし借金を返せないと、大変なことになります。毎日新聞株式会社は1977年に借金が返せなくなって倒産し、「株式会社毎日新聞」という新しい会社として出直しました。まぁ倒産も大した問題ではないといえばないので、毎日新聞の人は平気なのでしょう。

日本も今のように経常収支(貿易収支+所得収支)が赤字になると、国全体として借金がふえます。日本は外国に資産(対外純資産)を300兆円もっているので、これも今のところは返せます。しかし日本政府の借金は1100兆円を超え、あと100兆円ふえると国内の貯金(個人金融資産)をすべて食いつぶします。

そのとき海外に資産をもっている人が、危なくなった国債を買ってくれると考えるのはお人好しですが、かりに買ってくれたとしても、毎年50兆円も財政赤字が出ているので、300兆円の海外資産は6年で食いつぶしてしまいます。

それでも日本銀行が国債を無限に買い続ければ消化できますが、国債のリスクが大きくなるので長期金利が上がるでしょう。金利が上がると、日銀や他の銀行のもっている国債の値打ちが下がります。これはちょっとむずかしいのですが、こういうことです:

いま日銀が金利1%で額面100円の10年物国債を買ったとしましょう。そうすると1年間でもらえる金利は1円ですから10年間で10円で、10年後には元利合計で110円返してもらえます。ここで国債の金利が2%上がると、新しく発行される国債の金利は3%になるので、10年で130円返してもらえます。

しかし金利が上がってから今もっている1%の国債を市場で売っても、他の銀行は100円では買ってくれません。新しく出た国債のほうが金利が高いからです。10年間でもらえるお金を同じにするためには、今の国債で10年間にもらえる元利合計と新しい国債の元利合計が同じになる必要があります。この関係は(残存期間をどっちも10年とすると)次のようになります。

 市場価格/100円=110円/130円

これを計算すると、今もっている国債の市場価格は約85円になります。つまり金利が2%上がると、国債の価格は15%ぐらい下がるのです。日銀は今150兆円以上の国債をもっているので、金利が2%上がると、24兆円ぐらい評価損が出ます(実際の数字もこれに近い)。銀行も国債を200兆円ぐらいもっているので、地方銀行や信用金庫がたくさんつぶれるでしょう。

でも日銀はお札を印刷できるので、いくら損しても平気です。安倍さんのいう「輪転機ぐるぐる」も必要ありません。日銀の金庫には86兆円もお札があるので、それをばらまけば損はいくらでも埋められるのです。でも世の中にお札があふれると、すごいインフレになるでしょう。

つまり貿易赤字も経常赤字も悪いことではないのですが、借金が返せなくなると金利が上がって銀行がつぶれ、インフレになるのです。これで政府の借金はチャラになるかもしれませんが、ペイオフ(預金の切り捨て)が行なわれると、みなさんの貯金もなくなってしまいます。いつそうなるかはわかりませんが、たぶんみなさんが大人になるまではもたないでしょう



この記事を、「参考として紹介している、下記記事]

教科書的な「貿易赤字は問題ではない」はなぜ当てはまらないのか
岡山大学経済学部・准教授

釣 雅雄

1. いまの貿易赤字の問題点

通常の状態では貿易赤字そのものは問題ではありません。

たとえば銀行はモノ作りをしていませんが,別に金融サービスを提供しています。同じように国全体で考えると,金融業が盛んな国は,モノづくりが少なくても海外投資を活発にしているでしょう。この場合,モノはあまり生産していないので輸入する必要があり,大きな貿易赤字になるはずです。

この貿易赤字は問題でしょうか?

この国は金融業が盛んなので,海外投資からの収入が所得収支を黒字にします。経常収支は主に貿易収支と所得収支からなりますので,この国では,所得収支の黒字と貿易赤字が相殺されます。米国がこのような国の代表です。所得収支の黒字が十分大きければ,貿易赤字にもかかわらず経常収支は黒字になります。(※所得収支における受取りは,日本の企業などが海外投資した金融資産からの収入です。直接投資からの配当金のほか,海外株式の配当金,債券利子などがあります。日本の場合は米国債などからの債券利子の割合が多く,証券投資収益の債券利子が所得収支の半分弱程度を占めています。)

貿易収支が赤字か黒字かは,通常はその国の産業構造を反映しているに過ぎません。現代の世界経済では金融の方が稼ぎが大きいようにみえるので,日本や米国のように貿易赤字と所得収支黒字の組み合わせはむしろ望ましいかもしれないのです。

2. なぜ貿易赤字が縮小しないのか

問題は,円安により輸出が増加して国内景気も改善すると見込んだことです。そうならないため,逆に状況が悪化したのです。

その後,円安になるものの輸出量が伸びず,エネルギー輸入額が増加して貿易赤字が拡大しました。円安により円建ての輸出額は増えます。けれども,量が増えなければ国内生産量は増えないので,投資も人手も必要ありません。昨年度の人手不足や景気回復は,もっぱら財政政策や消費税増税の影響です。


http://agora-web.jp/archives/1591736.html



米国が経常黒字? 貿易収支が悪化?

http://agora-web.jp/archives/1572537.html

このように,この1年,外国人が株式を中心に日本の金融資産を購入してきたため,そこからの収益が海外へと流れています。その流出によって相殺されて,大幅な円安にもかかわらず所得収支がそれほど増えていないと考えられます。

したがって,所得収支も円安により同じように増加するはずです。図を見ると確かにこの1年で増えていますが,貿易収支と比べると所得収支の拡大はごく小さいものです。

なぜでしょうか?それは,経常収支の反対側にある資本収支にその原因を見いだせます。

表は,2012年度上期(4~9月)以降,半年ごとの国際収支状況の一部を示しています。前述の通り,貿易赤字が拡大する一方で,所得収支の増え方はそうでもありません。

そして,下段に資本収支があります。(現在の統計での)資本収支は,マイナスのとき資金が(純額で)海外へ流れていることになります。(なお,誤差もありますが,表で外貨準備と資本収支の合計額は,経常収支とプラスとマイナスが逆で等しくなります。)

影響ははっきりしないのですが,いずれにしても,今回の経常収支の赤字は,直接投資のような長期資金によるものではなく,株や短期国債という短期資金の流入が影響しています。経常収支は黒字が良い,赤字が悪いというものではありません。赤字は,海外から日本への積極的な投資によるものかもしれないからです。しかし現状は,円安で株高という名目的な動きへの反応です。状況が変化した時に,日本の財政が耐えられるかどうかが問題です。

とはいえ,これはどうにかできるものではありませんので,私は貿易赤字解消の必要性に迫られると考えています。

「貿易だけではない経常収支赤字の要因
釣 雅雄 岡山大学経済学部・准教授」



国際収支が複式簿記で書かれているのに、資本収支(資金流入):現在「金融収支」→経常収支に影響していると、

正しいのは、こちら

クリック

エコノミストのウソ 経常黒字・赤字論

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臨時投稿 池田信夫

<臨時投稿 池田信夫>

http://blogos.com/article/83758/

池田信夫
2014年04月04日 11:07
追加緩和は「二度目の偽薬」

アベノミクスの効果も切れ、消費増税に対応して「追加緩和」を求める声が高まってきた。しかし心理的なサプライズ効果は一度きりである。大きく落ち込んでいた株価を「正常化」したことは評価に値するが、それ以外の実体経済の指標は何一つ改善していない



読売H26.4.4
黒田日銀 成果.jpg

指標は伸びています。

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池田信夫記事

<池田信夫記事>

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51877899.html

池田信夫ブログ

2013年11月11日17:59


「『還暦』が早くやってきた日本経済」

財務省の発表した9月の経常収支は、季節調整後で1252億円の赤字になった。これは統計の連続性のある1996年以降で最大である。

経常収支 推移

図を見れば明らかなように、日本の貿易収支は2011年から赤字になり、所得収支がそれを補う形になっている。しかし原発の停止による燃料輸入の増加などで、貿易赤字が急速に拡大した。原発停止は向こう10年近く続くので、短期的な要因ではない。日本は今後ずっと経常赤字になるおそれが強い

経常赤字そのものは、人間が年をとると若いときの貯金を食いつぶして借金で生活するようなもので、必ずしも悪いことではない。問題はその借金が維持できるかどうかだ。マクロ経済的には「輸出-輸入=貯蓄-投資」だから、

 経常黒字=貯蓄超過-財政赤字

家計貯蓄率は高齢化によって間もなくマイナスになる見通しなので、財政赤字が拡大すると経常収支もマイナスになるのは当然だ。もともと2020年ごろには赤字になると予想されていたが、原発停止で思ったより早く「還暦」が来たようなものだ。

経常赤字は長期的には円安要因なので、1ドル=100円以上のレートが定着するだろう。円安は貿易赤字を減らす効果があるが、所得収支も減る。今後、日本が所得収支で食っていくとすれば、円安は成長率のマイナス要因になる。最大の問題は財政だ。上の式から

 財政赤字=貯蓄超過-経常黒字

だから、貯蓄が減ると財政赤字をファイナンスすることが困難になる。今のペースで政府債務(1000兆円)が拡大すると、あと10年ぐらいで個人金融資産(1500兆円)を食いつぶすが、その前に長期金利が上がり始めるだろう。「それでも対外純資産が300兆円あるから大丈夫だ」というおめでたい人がいるが、こういう状況で起こるのは資本逃避であり、対外資産が返ってくるはずがない。

普通はこういう事態に対応するのが中央銀行の役割だが、そのころ日銀は「異次元緩和」で200兆円以上の国債を買っているので、金利上昇を防ぐことは困難だ。むしろ評価損を避けるためには国債を徐々に減額する出口戦略が必要だが、黒田総裁は国会で何も答えられない。彼はまだ錯覚しているようだが、もう日本は「貿易立国」ではないのだから、円安は長期的にはマイナスなのだ。

今後、経常赤字(貯蓄不足)が定着すると、必要なのは円安政策ではなく、海外からの直接投資を増やすために円の価値を高める政策だ。アメリカのように財政赤字が大きくても、海外からの投資が大きければ維持可能だが、国内の債権者が95%だと喜んでいる「井の中の蛙」の日本国債は、経常赤字時代には維持できない。

14日に発表される7~9月期のGDP速報値は、年率1.6%程度と補正予算で水ぶくれした今年前半から半減する見通しだ。アベノミクスのお祭りは終わり、金利上昇=国債暴落のテールリスクだけが蓄積される…





 結局、対外資産、経常収支について、検証していきましょう。

(1)全体像

 経常収支は、下記の国際収支表(会計表)の、左側部分です。「モノ・サービスの輸出入」である、①貿易サービス収支、「海外資産-対外負債=対外純資産(外国株・外国債・外国土地・外国」からの収益である②所得収支、「海外への資金援助や、出資金」である③経常移転収支から、なります。

2012年 国際収支

 日本は黒字です。2012年は、4兆8,237億円の黒字でしたから、その分同額の外国資産が増えたことになります。ドル資産、ユーロ資産などです。日本の円と外国資産の交換ですから、円→外国資産となり、帳簿上「赤字」になります。国際収支表の、右側「広義資本(カネ)収支」は4兆8,237億円の赤字になります。

 つまり、経常黒字が増えれば、広義資本(カネ)収支の赤字も増えます。その分、海外資産の増加になるわけです。

 経常黒字=資本赤字
 
 経常赤字=資本黒字 


 この、経常黒字は、GNP(GNI)では、次のようになります(年度と年の違いに注意)。

2012年度 GNI

 「経常収支黒字!」と、大きく扱われますが、日本全体のGNI(GNP)490兆円では、わずか1.03%に過ぎないことを、頭に入れてください。

 この経常収支黒字は、「対外資産(海外資産)=資本赤字」になります。日本の持つ、海外資産(資本赤字)と、海外が日本国内に持つ対内資産(資本黒字)は、次のようになっています。

対外資産 負債 残高

 この、青色と赤色の差が、「対外純資産」と呼ばれるものです。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130528/fnc13052810090003-n1.htm

対外純資産、過去最大の296兆円 2位中国の2倍、22年連続「世界一の債権国」

2013.5.28 10:05

財務省が28日発表した平成24年末の対外資産負債残高によると、日本の企業や政府、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産は前年末比11・6%増の296兆3150億円で、21年末の268兆2460億円を上回り、過去最大となった。増加は2年連続。



 日本は、世界一の「対外純資産」保持国です。毎年毎年、「経常黒字=資本赤字」を積み重ねてきたからです。

経常収支→対外純資産

 この「対外純資産」は、日本の「金融資産」「金融負債」では、次のようになります。

金融資産 負債 残高

 海外資産ですから、赤字=金融負債になります。余談ですが、家計の持つ金融資産(預貯金、公的保険、民間保険、株や社債、国債)の保有高は、1590兆円、およそ1600兆円になりました。

 さて、この金融資産=負債(ストック)は、毎年毎年の、フローの「貯蓄S」の積み重ねです。GNI(GNP)の表では、次のようになります。

三面等価 汎用.jpg

 2012年の数値は、速報・確報とも未発表なので、2005年の表です。

三面等価 数値入り.jpg

 我々の貯蓄(家計の1軒1軒、我々一人一人、企業の1軒1軒=S)=資産が、政府の債務(国債・地方債)、企業の債務(株や社債)、海外主体の負債(海外国債や、海外の株・社債)に回っています。「資産額=負債額」と、同額になっていることが分かります。

 この毎年のフロー(GNI:GNP)の「資産=負債」が積み重なって、ストック「日本全体の金融資産=負債」になっているのです。

三面等価 汎用.jpg
            ↓

金融資産 負債 残高

 フローGNI(GNP)「資産」S=I企業+(G-T政府)+(EX-IM海外)「負債」

                    ↓ 毎年の積み重ね

 ストック  「金融資産」= 企業・家計・政府・海外(対外純資産)「金融負債」

 と、なるのです。

 余談ですが、このストックは、2度と使えないカネのことです。毎年毎年、企業・家計・政府・海外に貸し出され(国債・社債・株・住宅ローンetc)、すでに皆さんのマンションや、企業の工場・機械・店舗・広告・社用車・食材、道路、港湾、電信柱、海外の工場、土地、店舗etcに化けてしまっています。眠ってなんかいないのです。

 ですから、マスコミに登場する、「眠っている家計資産1590兆円を『投資に回して有効活用しろ』」とか、「1%(16兆円)を消費に回せば、GDPが増える」などは、「不可能なこと」を言っているのです。

 つまり、「経常黒字=資本赤字」=海外資産増=我々の貯蓄Sから供給されており、その累積が、「対外純資産」であり、ストック「金融資産=金融負債」になっているのです。その基礎の上で、池田信夫某の言っている間違いを検証しましょう。

(2)経常黒字を得(もうけ)と考えている、典型的な間違い

日本の貿易収支は2011年から赤字になり、所得収支がそれを補う

経常赤字になるおそれが強い


 補うとは、「損害や罪などの埋め合わせをする。『欠損を―・う』GOO辞書」ですから、所得収支が貿易収支の損を埋め合わせているという表現になります。貿易収支は損害と考えていることが分かります。

 「おそれ」とは、「よくないことが起こるかもしれないという心配。懸念。『自殺の―がある』同」ですから、経常赤字はよくないことと考えていることが分かりますね。

 ということは、企業の決算の様に、「赤字=損」「黒字は得」と考えていることが分かりますね。

2012年 国際収支 2

 ですが、国際収支表において、経常収支黒字は資本赤字ですから、黒字が増えれば、赤字も増える、黒字が減れば、赤字も増えるという関係になっています。

 過去記事の中から、貿易(経常)黒字=広義資本赤字なので、「貿易(経常)黒字が増えると、赤字も増える」ことを記述しておきます。

9月 国際収支



10月 国際収支

9月→10月 国際収支

 経常黒字=もうけ、経常赤字=損ではないのです。

マクロ経済的には「輸出-輸入=貯蓄-投資」だから、

 経常黒字=貯蓄超過-財政赤字

・・・上の式から

 財政赤字=貯蓄超過-経常黒字


 依然として「黒字は得、赤字は損」のようです。

 企業の黒・赤字はブラッBlack・レッドRedと言うのに対し、国際収支の黒・赤字は、サープラスa trade surplus・ディフィシットa trade deficitですから、単語からして違います。   

伊藤元重(東大教授)編著『貿易黒字の誤解-日本経済のどこが問題か-』 東洋経済新報社1994 
 p27 

 黒字はどこにいったのかといえば,「海外への資産の蓄積になった」という答えになる。



櫻川昌哉『経済を動かす単純な論理』光文社2009 
p178
 
 貯蓄率が国家の間で異なっていれば、経常収支の不均衡が長期にわたって続くということはありえるのです。経常収支赤字国が持続的な経済成長をすれば、黒字国から赤字国へ資金は流れ、経常収支の赤字も持続できます。…実際にアメリカは、過去30年間、経常収支の赤字を継続してきましたが、大きな問題は生じていません。



高増明他『経済学者に騙されないための経済学入門』ナカニシヤ出版2005 
p20

…豊かさというのは、いろいろな財を消費して満足を得ることです。けっして、輸出が輸入より大きいことが豊かではないのです。…対外債務(筆者注:経常、貿易赤字=資本収支黒字)というのは、住宅ローンとは違って返済しなければいけないものではありません。対外債務というのは、たんに外国の企業が自国の土地や株を買ったということです。けっして日本人が(筆者注:外国が)外国からお金を借りてそれを毎月返済しなければならないということではないのです。 



竹中平蔵『経済古典は役に立つ』光文社新書2010
P37

…『貿易によるイングランドの財宝』という有名な本を書いたトマス・マンによれば、重商主義とは、「貿易黒字を出すことが富を築くことである。貿易にあたっては、外国製品の購入以上に国産品を海外で販売することを旨とすべきである」という考え方だ。つまり、ひとことで言えば、重商主義とは、貿易黒字至上主義だと考えればいい。 

P58
…そして重商主義に対する決定的批判として、人々は生産者の利益ではなくて、消費者の利益のために労働していると主張する。「消費こそがすべての生産の唯一の目的であり、生産者の利益は消費者の利益をはかるために必要な範囲でのみ配慮されるべきである」…と。

 ところが「重商主義では、消費者の利益はほぼつねに生産者の利益のために犠牲にされている。そして消費ではなく生産こそがすべての産業と商業の最終的な目的だと考えられているかのようである」 …と、アダム・スミスは批判するのである。



 経済学をバカにする人は、200年も前に、崩れることのない理論を書いた、アダム・スミスをバカにするつもりなのでしょうか?


(3)海外資産で食う?


今後、日本が所得収支で食っていくとすれば

 所得収支が黒字なので、「儲け=得」だから、それで「食べられる=所得」になっていると考えていることが分かりますね。

2012年 国際収支


 この所得収支ですが、結局「海外資産=ドル資産、ユーロ資産etc」になるだけです。日海外資産で「食べられる」わけではないのです。この所得収支を含む経常収支は、

岩田規久男『国際金融入門』岩波新書 1995 p44

「日本人の生活そのものが豊かになることを,必ずしも意味しない」



のです。

 ただ単に、ドル札やユーロ札持っていても仕方ないので、外貨準備(政府が持つドルやユーロ)は、アメリカ国債、社債、株などに投資されるわけです。

 経常収支黒字=資本赤字=海外資産増なので、外貨準備も必然的に増えるのです。「日本が設けた黒字で、アメリカの財政赤字をファイナンスする」「日本はアメリカに貢いでいる」「アメリカは円高にして、米国債返済時に日本に損をさせる」わけではないのです。仕方ない=必然なのです。

 だから、「外貨準備を取り崩せ」など、できないのです。政府が売っても、日本全体で持つ「外貨」は変わらない=ただ単に持ち主が「政府→民間」になるだけなのです。


高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010

 p83~ 
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。

…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。


 ↑
実際は、下記のようになります。

中谷巌 「入門マクロ経済学 第5版」日本評論社 2007 p155

 経常収支が黒字であった場合、外国から受け取った外貨は、外国の債券を購入したり、外国に工場を建てるなど、対外投資に使われる(使われなかったぶんは外貨準備の増加となる)。これが資本収支の赤字になる。



(4)個人金融資産と国債が並ぶと大変だ!!

貯蓄が減ると財政赤字をファイナンスすることが困難になる。今のペースで政府債務(1000兆円)が拡大すると、あと10年ぐらいで個人金融資産(1500兆円)を食いつぶす

>『週刊現代2011年2月26日号 森永卓郎VS 池田信夫』p176~179

「その日本人が国債を持っていれば大丈夫」という話に根拠がまったくない。…国債を買える余力はあと3年ぐらいで尽きる。日本人の個人金融資産と国債残高が実質的に並んでしまうからです。



 完全に、「個人金融資産1500兆円=国債限度額」みたいな話になっていますよね。並ぶと「危機だ!」です。実際には、全く関係ありません。

金融資産 負債 残高

 政府の負債(国債等)1126兆円、家計金融資産1590兆円です。しかし、負債を購入(貯蓄Sを供給)しているのは、家計だけではなく、企業(845兆円)もあります。家計と企業の資金提供(S 預貯金、債券購入、株購入、保険料etc)は、下記のようになっています。

三面等価 汎用.jpg

この貯蓄Sと、借りた方I・(G-T)・(EX-IM)です。
         ↓
資金循環統計 H25 第2四半期速報



 家計金融資産1590兆円と国債額が同額になっても、問題が生じるわけではないのです。

 また、金融負債額=金融資産額ですので、国債という負債が増えれば増えるほど、国民資産も同額で増えます。
 


(5)対外資産が返るとか返らないとか・・・

だから、貯蓄が減ると財政赤字をファイナンスすることが困難になる。今のペースで政府債務(1000兆円)が拡大すると、あと10年ぐらいで個人金融資産(1500兆円)を食いつぶすが、その前に長期金利が上がり始めるだろう。「それでも対外純資産が300兆円あるから大丈夫だ」というおめでたい人がいるが、こういう状況で起こるのは資本逃避であり、対外資産が返ってくるはずがない


 対外資産は、「ストック→(貸した方)株や国債や社債、銀行預金=(借りた方)積みあがった実物資産(土地や建物、店舗、看板、社用車、椅子、机、電気器具etc)」ですから、「返るとか、返らない」とか言っていること自体?です。

「日本国債を買うために、海外資産を取り崩せばいい」という考えに、「日本国債の信認が落ちたときには、逆に資本が海外逃避(ドル買い円売り)になる」から、「海外資産は返らない」と言っているでしょう?

 そもそも論ですが、大前提として、海外資産はストックなので、「返る・返らない」の対象外だということです。
 
 対外純資産=青グラフ-赤グラフですが、これを、青グラフを売って、減らせるというものではありません。

対外資産 負債 残高

 じゃあ、日本の会社は、何のために海外進出M&Aをしているのですかという話です。外食産業、スーパーなどの小売り産業、製薬会社、飲料品メーカー、自動車会社など、みな海外進出しています。これを、売り払う?

 米国債100兆円超も日本は、海外資産として持っていますが、日本はそれを購入するのに、短期証券100兆円超を発行していますので、米国債を売る→短期国債を償還する→金融機関に現金が入る→じゃあ運用は?という話です。運用できないので、短期証券買っているのに、それを現金で返されて・・・

『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』p79政府 バランスシート

短期証券⇔外国債

経常収支 資本収支 2.jpg
経常収支 資本収支 4.jpg


 しかも、米国債を「政府所有→民間所有」にするだけで、日本の持つ海外資産が減るわけではありません。

「国際収支」記述です。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51879031.html

2013年11月22日12:04

『日銀にも日本経済にも出口はない』

・・・しかし円安は本物である。日本経済はまもなく経常収支が赤字になり、恒常的に資金が流出超になるので、長期的には1ドル=120円ぐらいまで行ってもおかしくない。テーパリングでアメリカの金利が上がり始めると円はさらに売られ、日本の長期金利が上がるのも時間の問題だろう。




経常収支黒字資本収支赤字(日本の海外投資>海外の日本投資)
経常収支赤字資本収支黒字(日本の海外投資<海外の日本投資)

ですから、「経常収支赤字になると、日本に恒常的に資金が流入」するのです。

「日本経済はまもなく経常収支が赤字になり、恒常的に資金が流出超になる」と、正反対です。

クリック

「貨幣数量説は死んだ」

http://blogos.com/article/72861/

2013年11月03日01:56

「貨幣数量説は死んだ」

・・・菅原某は、自分が高校に入り直したほうがいい。



 

http://brain-library.com/web/book/detail/mbj-20032-120488425-001-001

「高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学」

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genre : 学校・教育

現実否定・

ご連絡

タケシタシンジ(とお読みするのでしょうか)さんから、当記事にメールを頂きましたが、文字化けしていて、回答できません。すみませんが、コメント欄に、連絡いただけますでしょうか。

<現実は否定>

すいません。池田信夫ネタです。


http://blogos.com/article/67011/?axis=g:0

池田信夫 2013年07月25日 16:12

量的緩和で実質金利は下がるのか

細かい話で恐縮だが、きのう山崎元氏からコメントをいただいたので、少し補足しておく。問題は彼のダイヤモンドオンラインのこういう記述だ(テクニカル)。

アベノミクスの中核である金融緩和政策は、(1)期待実質金利を引き下げることによって、(2)円安と資産価格の上昇に働きかけ、これらの効果をもって(3)投資と消費を喚起して、(4)景気回復と雇用の改善につなげて、その後に(5)賃金も上がってインフレ予想が定着する、という波及経路で効果をもたらす。

まず「期待実質金利」という言葉は経済学にないが、これは実質金利(名目金利-予想インフレ率)のことだろう。量的緩和で、実質金利は下がるのだろうか。ケインズも述べたように、実質金利は均衡状態では資本の限界効率(資本収益率)で決まるので、中央銀行が動かすことはできない。

ただ不均衡状態では、中銀が実質金利を操作できる場合がある。その一つが自然利子率がマイナスになって名目金利がゼロに貼りつく流動性の罠である。この場合、中銀がインフレ予想を起こすことができれば実質金利は下がるが、ゼロ金利では現金と短期債券が完全代替的になるため、日銀がいくら量的緩和をしてもインフレは起こらず、したがってインフレ予想も起こらない。これが2000年代の量的緩和で証明された事実である。

したがって山崎氏のいう「期待実質金利」は長期金利のことだろうが、これはゼロではないので均衡に近いと思われ、黒田総裁も認めたように日銀は操作できない。異次元緩和では、逆に長期金利は上がってしまった。

いずれにせよ中銀が操作できるのは名目金利だけで、実質金利(自然利子率)は実体経済で決まるというのが、現代マクロ経済学の標準的な理解である。現状ではBEIも下がっており、日銀が「金融抑圧」で長期金利の上昇を抑えているので、むしろ(リスクプレミアムを加えた)実質金利は上がっていると考えたほうがいいのではないか




<まず、簡単な方>


いずれにせよ中銀が操作できるのは名目金利だけで、実質金利(自然利子率)は実体経済で決まるというのが、現代マクロ経済学の標準的な理解である。現状ではBEIも下がっており、日銀が「金融抑圧」で長期金利の上昇を抑えているので、むしろ(リスクプレミアムを加えた)実質金利は上がっていると考えたほうがいいのではないか。



事実は、実質金利は、マイナスになっているようです。

読売H24.6.20「黒田総裁 物価上昇に自信」
 企業や家計の活動に大きな影響を与えるのは実質金利とされる。黒田総裁は、「実質金利は一部ではマイナスになっている」とも述べた。「量的・質的緩和」が、予想物価上昇率を引き上げているとの見方だ。


 こんな話は、理論的にも示されています。現在では、スタンダードです。

浅田統一郎『マクロ経済学基礎講義 第2版』中央経済社H17
P89・154
…人々の物価予想に働きかけることによって、流動性のワナのもとでも金融政策が有効になり得る、という理論がクルーグマンによって提唱されている。…中央銀行が、伝統的な金融政策にこだわることなく金融政策を運営すると宣言し…実質利子率はマイナスになり、投資は刺激される。



<難しい方>


したがって山崎氏のいう「期待実質金利」は長期金利のことだろうが、これはゼロではないので均衡に近いと思われ、黒田総裁も認めたように日銀は操作できない。異次元緩和では、逆に長期金利は上がってしまった



 さて、「長期金利は日銀は操作できない」についてです。

①日銀は、短期金利(コール市場 オーバーナイトもの)を「直接」操作できます。

 短期金利(コール市場 オーバーナイトもの)についてです。

 銀行の金庫には、カネがありません。預かった預金は、貸し出しや、投資に使われます。だから、金庫は空っぽです。
 しかし、銀行は、口座開設者の、電気代振込みだとか、企業の決済だとかで、カネを別な銀行に振り込まなければなりません。

 で、この時、その金融機関では「足りないカネ」を、他の金融機関から融資を受けます。

それが「呼べば答えるコール市場で、オーバーナイト(一夜限りの、担保なしの貸し借り)」なのです。

 実際には、銀行間で、資金のやり取りは毎日行われています。このときの金利が「短期金利」です。

 で、日銀は、政策金利(短期金利)を、2013年5月現在、0.3%にしています。

 実際は、銀行間で、これより低いレートで貸し出されており、どこの金融機関も融通してくれなくなったとき(懐かしいですが、1997年北海道拓殖銀行の倒産は、これが原因です)、日銀が、最後の貸し手として、0.3%で貸し出すわけです。

 だから、0.3%は、「コール市場で、オーバーナイト」の上限金利なのです。ですから「短期金利」は、日銀が直接コントロールできます。

②日銀は、長期金利を、直接にコントロールできない?

 長期金利の目安は、10年物国債です。国債は市場で自由に売買されます。

金利上昇とは、どういうことか、見てみましょう。

国債価格下落=金利上昇

 上の図で、額面100万円の国債が発売されたとします。この国債には、「○○%の利率をつけます」と、財務省がアナウンスします。

 
 証券会社は、その利率と、市場動向を考慮し、応札価格(買ってもよい価格)を決め、日銀ネットに数字を打ち込みます。

 「表面利率20%・100億円(表面価格)」の国債は、1年後に利息を含め、「120億円」返ってきます。この1年後に「120億円」返ってくる国債を、いくらで買うかを、オークションするわけです。

 この「120億円返ってくる国債」を、「110億円(取引価格)」で落札すると、実際の利率は「9.09%=利息10億円」となります。

 この取引価格が高くなると、金利は低くなります。つまり、国債の人気が高いと、取引価格は高くなり、実際の利率は低くなるということになります。

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/jp10yt.html
長期金利 推移

10年もの金利は赤で示されています。2013年 08月 01日 終値: 0.795%です。


 このように、日銀は、直接「長期金利」をコントロールできないのですが、実際には、「短期金利操作」で、「長期金利」に影響を及ぼすことができます。

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P121 長期金利と短期金利

中央銀行が対策の対象とするのは銀行間の取引市場である短期金利です。つまり、日銀が行う政策運営の基本は、公開市場操作や公定歩合による貸し出しによって市中銀行の手持ち現金(流動性ポジション)に働きかけ、そのことによってインターバンク市場に代表される短期金融市場の需給と金利に影響を及ぼすことをめざしているのです。

一方、…現在の(実現している)短期金利と将来の(予想)短期金利と平均値であるという側面があります。

というのはもしも長期金利が短期金利よりも高かったとしましょう。この場合投資家は短期で資金を運用し、満期が到来するたびに同じ借り入れを何度も更新すれば、結局、短期金利で運用する方が長期金利で運用するよりも有利になるはずです。そこで資金に対する需要は長期金利資金から短期資金へとシフトします。このような調整(これを裁定と呼んでいます)が続けば早晩短期金利は上昇し、長期金利は低下をはじめるはずです。

…反対に短期金利が長期金利よりも高かったとすれば、今度は資金需要が短期金利から長期資金へとシフトを起こすはずです。こうしたメカニズムが作用する結果、長期金利と短期金利は互いに接近し、最終的に両者が市場参加者の金利予想からなる、長短金利の関係に符合するように裁定が行き着くものと考えられます。

このような裁定メカニズムが作用するのを受けて、中央銀行は必要に応じて国債に代表される公開市場に介入して、債券の売買に働きかけていけば、長期金融市場の需給にある程度は影響を与えることは可能だともいえましょう。

また中央銀行は、介入を通じて当局者の強い意志を示すことで、結果として市場関係者の行動や予想に少なからず影響を及ぼすことが考えられます。(アナウンスメント効果)

この点に関する政策の有効性の判断は、日銀に対するインフレターゲッティングの導入、国債管理政策への要求などに繋がっていることが理解できるはずです。





したがって山崎氏のいう「期待実質金利」は長期金利のことだろうが、これはゼロではないので均衡に近いと思われ、黒田総裁も認めたように日銀は操作できない。異次元緩和では、逆に長期金利は上がってしまった。

 ↓
 これは、事実としては、違うのです。

http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20130728#p1

飯田康之 economics]消費増税と長期金利

消費増税を3%で断行か,引き上げ幅を細かく刻むか,先送りかがいよいよ当面の経済政策の分水嶺になっている.以前から書いているように,今回の話題とはちょっと別の観点から僕は刻む派だ.

・・・消費増税を先送りにすると追加措置なしなら長期金利は上がるよ.断行すれば...まぁ多少は下がるかも(現時点で低すぎて低下余地に乏しいが).でもそれは増税が必要だという議論には全然つながらないんだ.長期金利と短期金利の関係を考えなきゃ.

不確実性・手数料なしなら今後5年間短期金利が0なら5年モノの金利は0になる(もちろん現実はこんな理想状態ではないので,流動性プレミア分長期金利は高くなる傾向).

長期金利は将来短期金利がどうなるかで決まる.短期金利はコントロール可能*1.すると,現在の状況での長期金利は「中央銀行がいつごろ"そろそろ短期金利上げるぞ"と決断するか」その時期(への予想)にかかっている.

(*1:日銀の人も偉い経済学者の人たちも「日本銀行がコントロールできるのは短期金利だけだ!」って繰り返してたんだからこれは前提でよいよね?)

現在の日本・日銀の政策姿勢において,それは「いつ2%インフレを達成するかの予想」と同じ事だ.

増税を先送りにすれば,近い将来に2%のインフレ率を達成し,ゼロ金利解除を行う条件が整う可能性は高くなるだろう.これを見越して長期金利は上昇する.一方,増税は景気回復の芽を摘むのは間違いない.2%インフレ達成の時期が遠のくのだから長期金利には下押し圧力になる.*2.

(*2:ちなみに,「消費増税は経済成長に影響しない」的な話はかならず注意して読むこと.長期的(将来のいつの日にか到達する定常状態)での成長に影響しないという話をしているだけで,数年の景気に影響しないとは言っていないモノが多い(そりゃそうだ))


消費増税が先送りされたら必ず金利は上がる.米国を見ていてもわかるようにそれはかなり景気がよくなってからの話だ.要は本格的に金融引き締めが必要になり,それが実際の政策スケジュールに上るようになってからの話.

もしこの金利上昇を避けたければ,日本銀行は,現在の異次元緩和の解除条件に雇用や名目成長率などを加えて(要は解除条件を厳しくして),それにコミットすればよい.ゼロ金利が長期化するならその将来予想で決まる長期金利は上がりにくくなる.

財政破綻懸念で長期金利上昇って言う人がいるけど,それはちがう.日本の国債危機は(それがあるとしても)文字通りのデフォルトの形はとらない*3.現状で起きうる金利上昇は短期金利動向の将来予想の変化によるものだ.だから問題ないとは言わないけど,問題の構造を理解しないで騒いでいる人(新聞記者とか……)がどうも多いようなので.

(*3:だからハイパー論が出てきたわけで)



<PS>

 迷走につぐ迷走で、業績不振なのだから、責任を取るのは当然です。一つの時代(モデル)の終わりです。

日経 H25.8.27
日経 H25.8.27.jpg

PS

北海道の求人の様子です。やはり、雇用のミスマッチが生じています。

北海道新聞H25.8.30
北海道求人


PS2

 NAFTA(自由貿易協定)後の、メキシコの様子です。

北海道新聞H25.8.30
メキシコ 経済成長

農業は200万人減少し、車生産は、20年前の3倍で、世界第8位の生産国に・・・GDPは2倍に・・・

これが、貿易の利益「比較生産費」です。低生産性職→高生産性職に移動します。メキシコは、この20年(NAFTA)で、確実に豊かになったことが分かります。

農業従事者にも、高生産性の職が提供されたことを示します。

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