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豊かさって、何だろう

<豊かさって、なんだろう>

http://blogos.com/article/88201/

Chikirin 2014年06月11日 00:00

仕事と家庭の両立なんて、目指すのやめたらどう?

先日テレビで、二人の子供を持つ夫婦で、女性側が関西に単身赴任してる例が取り上げられていました。

母親の勤める会社には、育児や介護のために転勤を数年間猶予する仕組みもあるのですが、この女性は、「その制度は子供が学校に行き始め、いろいろ相談にのってあげたいタイミングで使いたい」と考え

子供が小さい今はあえてその制度を利用しないと決めたとのこと。ちなみに、子供は 2歳と 5歳くらいでした。

また、今回の転勤により女性は、出産後、働く時間を抑えるために就いていた内勤の仕事から(花形の)営業に戻れており、転勤を避けなかったことでキャリアアップにもつながったとのこと。

一方の男性(父親)は、東京で二人の子育てをしながら働いているのですが、「会社には申し訳ないと思うけど、残業はしないという働き方をさせてもらっている」と。もちろん保育所を利用してます。

夫曰く、「大変だけれど、妻が子育てのために仕事をセーブしているのは申し訳なかった。だから今は自分がサポートしたい」とのこと。すんばらしいですね。

また、母親は毎週末、関西から東京に戻ってきてるほか、毎朝、インターネットを使って、子供&夫といっしょに(画面の向こうで同時に)朝ご飯を食べている。

と紹介されてました。

これ、まとめるとこんな感じ↓です。


・女性も男性も、正社員として働いている

・女性が働く会社では、女性にもキャリアアップの機会が与えられている。

・同時に、本人が望むなら、介護や育児のために転勤を数年猶予する制度もある。

・加えて、これも本人が望むなら、内勤の仕事に異動し、仕事をセーブしながら働くという選択肢も選べる。

・男性の会社も、子育てのために一切残業しない働き方を認めてくれている。

・男性はイクメンどころではなく、平日は自分ひとりで二人の子供を育て、家事をこなすだけの覚悟をもっている。

・夫婦、子供とも健康で、親の介護などの問題はまだ発生していない(ようでした)

つまり夫婦ふたりとも、勤める会社にも能力にも健康にも恵まれ、見事、

「仕事と家庭の両立に成功してる」

わけです。

で、あたしの質問は、「みんなホントにこんな生活がしたいの? これが理想?」 ってことです。

就活中の女子ってすぐに「仕事と家庭の両立は可能ですか?」みたいな質問をするけど、そういう子達って、こういう生活に憧れてるの?

ちょっぴり想像力のある人ならわかるはず。こういう生活が、どれだけ大変か。

月曜から金曜日までバリバリと仕事をこなし、金曜の夜に新幹線に飛び乗り、月曜の早朝に東京駅に向かう。

そのためには洗濯や掃除などすべての家事を、平日、仕事が終わった後に片付ける必要がある。関西の家は「寝るだけ」の家でしょう。

しかも、せっかく数年間、違う地域に住んでいるのに、その地の文化を経験するために使われる週末はひとつもない。       
ふたりともおそらく、自分の趣味に使う時間はほぼ皆無だろうし、それどころか、自分たちの健康を維持するための十分な睡眠時間だって、確保できてない可能性が高い。

年老いていく自分の親と時間を共有したり、友人達との時間や、自らの新しい可能性や視野を開くであろう社会的な試みに参加したりする時間も、ほぼとれないでしょう。みんなが疲弊し、余裕がなくなってしまってる家庭だってあるはず。

コレが本当に、みんなが求めてる「家庭と仕事の両立」? 

ゴールを間違えてたら、苦労してそこに到達しても、誰も幸せになれない。だからよく確認してね。これが、この二人のしている生活が、みんなの理想なの?

政府は、みんながこういう生活をできるように、

・企業に育児休暇や介護休暇の制度を整備するように求め、

・男性に育児や家事を積極的に分担するように求め、

・女性にもキャリアアップの機会を与え、男性には、残業のない仕事のやりかたを求め、

・保育所を整備しようとしてるの?

長期の海外出張や転勤は断り、たとえ緊急かつ重要でも夕方に始まるミーティングには出席せず、大事な顧客との関係を深められる機会であっても、会食には一切でない。

それでも仕事において、自分が納得できる成果を上げ続けられる人なんて、男性であれ女性であれ、相当に仕事のできる人だけだよ。

たとえ 10時から 16時までの時短で働いていたとしても、夫が“そこそこ”のイクメンであったとしても、子供二人育てながら週に 5日、正社員で働く女性の忙しさ(てか、テンパってる度合い)は生半可なモノじゃない。



 リカードの比較生産費説は、特化し、互いに交換した方が、自給自足(何でもかんでも自分で行う)より、豊かになるというものです。

 専業主婦がいた時代(アメリカの黄金の60年代・・「奥さまは魔女」のTV時代、日本の高度経済成長期の時代)は、豊かさを実感した時代です。

 女性が仕事と育児を両立し、男性もイクメンで家事に参加し・・・これ、「分業」ではなく、「何でもかんでも自給自足」する生活です。

 これが、本当に「豊か」な時代なのでしょうか?女性が、働かなくても、旦那の収入で、食べていけた時代・・これが豊かな時代だったのでは?

 本当に、皆さん、何かを捨てて(何かを選ぶということは、何かを捨てるということ:トレード・オフ)、忙しく、働きたいのですか?

 こんな社会が、私たちが「豊かさ」を求めて、描いてきた、夢の世界だったのですか?

「ドラえもん」の、未来の人々、何でもロボットにさせて、楽しそうに暮らしています。
「ウォーリー」の未来の人々、楽をしすぎて、みんな超ファットでした・・・ああはなりたくないけれど・・

アメリカでは、高学歴の、キャリアを持てる女性が、家庭に回帰しています。

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本当に豊かな時代とは、マルクスが描いた、次のような社会では?

エンゲルスとの共著『ドイツ・イデオロギー』岩波書店 廣松渉訳

共産主義社会においては…私は今日はこれを、明日はあれをし、朝は狩りをし午後は漁をし、夕方には家畜を追い、そして午後には批判をする-猟師、漁夫、牧人あるいは批判家になることなく、私の好きなようにそうすることができるようになるのである。



 マルクスが批判した当時の社会は、子どもが、こき使われた時代でした。

1832年 サミュエル=クールスンの英国児童労働実態調査委員会での証言

・朝3時には工場に行き、夜の10時~10時半まで働く
・19時間の間に、朝食に15分、昼食に30分、飲料に15分の休憩時間
・休憩時間に、機械の掃除をすることもある
・5分遅刻すると、賃金を1/4カットされる。



 忙しくて、忙しくて、休む時間が取れない・・仕事と家庭の両立・・これが、本当に豊かな社会なのですか?

女性教諭 部活動 労働

「【508冊目】高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学」  読書部

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学
菅原 晃 著  河出書房新社

まず感じたのが、とても丁寧だということ。三面等価、国際収支表、貿易黒字(赤字)等々のロジックについてどうしてそうなるのかをしっかり説明されています。診断士の経済学のテキストではさらりと飛ばしてしまうところを100ページくらいかけて書いてありますので、サブテキストとして使ってもよいかもしれません。
ただ著者が断っているように、経済学の基本的なところに絞っているためすべてをカバーしているわけではありません。またタイトルはマクロ・ミクロ経済学となっていますが、ほとんどがマクロ経済学の話です。

経済学の話になるといろいろな考えをお持ちの方が多いので、好き嫌いは当然分かれるところですが、リフレ政策やアベノミクスが好きな人にはお勧めでしょう。

最後に。
著者が高校教師で「高校生からわかる」というタイトルがついていますが、ちょっとでも経済学をかじった生徒でないと理解するのは難しいかなと思いました。


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<マルクスで教える経済 その2>

シノドス ジャーナル( SYNODOS JOURNAL )
http://synodos.livedoor.biz/

に、『人口減少デフレ論の問題点 菅原晃』が連載中(2010.10.8~)です。

合わせてご覧ください。


<マルクスで教える経済 その2>

久保田貢 編、『ジュニアのための貧困問題入門』平和文化社2010.10.8
本

山本政俊著 第3話『生きること、働くことと憲法』P73

「…なぜ景気変動が起こるのか説明しよう。

 工場や機械、土地や建物など、ものを生産するための生産手段をもっている資本家。生産手段をもたないために、自らの労働を労働力として売ることで生活する労働者。この二つの階級が対立しているのが、資本主義社会の特徴です。

 資本家は、『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせるこの時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。

 資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」

「どんどんものを生産して、作りすぎる」

「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。そして、資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」

長時間、働かせる

「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う」

「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。

 そして、資本家は、いつでもだれでもクビにできる失業、半失業の労働者の大群をつくります。これを産業予備軍といいます。このことによって資本家は『あ、そう。この労働条件がいやなら、もっと安い賃金で働く人はいくらでもいるからね』と労働者を脅すことができるのです。低賃金は剰余価値を増やし、利潤をあげるからね」


<資本家と労働者とは?>

 工場や機械、土地や建物など、ものを生産するための生産手段をもっている資本家。生産手段をもたないために、自らの労働を労働力として売ることで生活する労働者。この二つの階級が対立しているのが、資本主義社会の特徴です。 


資本家=生産手段(土地や建物など)を持つ

労働者=生産手段を持たない、労働力を売る
 

 資本主義社会では、この2つの層が対立しているというのですが・・・

 以下、次の書籍を参考に、資本家・労働者について見てみます。

稲盛和夫 『アメーバ経営』日経ビジネス文庫 2010

 稲盛和夫(78歳)は、現在JAL の再生に取り組んでいる、京セラ創立者です。その再生プランの中で、「アメーバ経営」という経営方法を導入しました。

「アメーバ経営」というのは、京セラの人たちが、経営学も、組織論も何も知らない中で、独自に作り上げた経営システムです。今では、日本中にその哲学が広く浸透しているシステムです。

 目的は3つ「市場に直結した部門別採算制度の確立・経営者意識を持つ人材の育成・全員参加経営の実現」です。詳しい内容は、とても説明しきれませんが、JALの再生を任された最大の理由の一つです。

京セラは、1959年(昭和34年)設立です。稲盛さんが、7名の同志とともに、創業した会社です。

p 21創業資金を私が出したわけではなく、私の技術を世に問う場として支援してくださる方々の資金的な援助により設立された会社であった。

 その設立2年目に、高卒の新入社員10名と、労使対立を経験します。当時の様子です。

p29当時はまだ労使対立が激しく、労働争議も頻発している時代であり、物事を「資本家対労働者」という対立構造でしか考えようとしない風潮があった。

P48~
 戦前の反動もあり、戦後の一時期、社会主義的な勢力が一挙に勢いを増し、労働争議が頻発するようになった。
…特に京都では革新勢力が強く…労働者は、自らの権利のみを主張して、経営者の悩みや苦しみにはあまり理解を示さなかった。また、経営者のなかにも、戦前からの古い体質が残っており、労働者を道具としか見ない者が少なからずいた。…第二次世界大戦が終わり、こうした労使間の対立がますます激しくなってきた京都の地で、私は会社を創業した。
 

 このような時代背景のある時です。

P23
 創業2年目に高校を卒業したばかりの新入社員を10年ほど採用し、1年間程働いてもらったときのことである。…たった1年間働いただけで「将来を保証してもらわなければ辞める」と言い出したのだ。
…「自分だけが経営者としてうまくいけばいい、というような考えは毛頭持っていない。この会社に入ってきたみんなが本当によかったと思うようにしたい」と繰り返した。しかし、血気盛んな若者たちは「資本家とか経営者というのは、そういう調子のいいことを言ってわれわれをだます」と受け付けない。


 そこで、稲盛は考えます。

p 25
「そもそも私は技術者としての夢を実現するために会社を起こしたのだが、いざ会社を創業してみると、社員は自分の一生を託して入社してくる。だから会社には私の夢の実現以上に大切な目的がある。その目的とは従業員やその家族の生活を守り、その幸せを目指すことなのだ。私が先頭に立って従業員の幸せを目指すことが、私の運命なのだ」

 そこで私は京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めた。

 これにより…従業員は京セラを「自分の会社」と思い、あたかも自分が経営者であるかのように懸命に働いてくれるようになった。その頃から私と従業員の関係は、経営者と労働者という間柄ではなく、同じ目的のために努力を惜しまない同志となり、全従業員の間に真の仲間意識が生まれるようになった。


 これは、1960年(昭和35年)ころの話・・・今から50年前です。確かに当時は、労使対立の時代だったのかもしれません。

 現在、「労使対立」をしている会社はあります。ですが、下記に示すような、「経営者=資本家」という構図はありません。経営者も労働者の一人です。


 工場や機械、土地や建物など、ものを生産するための生産手段をもっている資本家。生産手段をもたないために、自らの労働を労働力として売ることで生活する労働者。この二つの階級が対立しているのが、資本主義社会の特徴です。 


資本家=生産手段(土地や建物など)を持つ

労働者=生産手段を持たない、労働力を売る
 


 そして、稲盛は、労働者にも経営者の視点を持ってもらおうとしました。

P 55
 アメーバ経営では、会社を小集団に分け、リーダーが中心となりメンバー全員が経営に参加する。…会社の情報をできるだけ開示することで、全従業員が自主的に経営に参加する土壌ができ上がり全員参加経営が可能となる。

 全従業員が積極的に経営に参加し、それぞれの立場で自らの役割と責任を自主的に果たそうとすれば、従業員はもはや単なる労働者ではなく、ともに働くパートナーとなり、経営者としての意識を持つようになる。
…全従業員が、会社の発展のために力を合わせて経営に参加し、生きがいや達成感を持って働くことができる。「全員参加経営」を実現する。これがアメーバ経営を行う第三の目的である。
 

 資本主義社会をとらえる枠組みは、すっかり変化したのです。


 そして、資本家は、いつでもだれでもクビにできる失業、半失業の労働者の大群をつくります。これを産業予備軍といいます。このことによって資本家は『あ、そう。この労働条件がいやなら、もっと安い賃金で働く人はいくらでもいるからね』と労働者を脅すことができるのです。低賃金は剰余価値を増やし、利潤をあげるからね」

労働者をクビにすれば、GDI(所得)=GDE(支出)も減ります。社会全体の雇用を減らして、資本家が『剰余価値=利潤』をもうけることは、不可能です。

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

<マルクスで教える経済 その1>

シノドス ジャーナル( SYNODOS JOURNAL )
http://synodos.livedoor.biz/

に、『人口減少デフレ論の問題点 菅原晃』が連載中(2010.10.8~)です。

合わせてご覧ください。


<マルクスで教える経済 その1>

久保田貢 編、『ジュニアのための貧困問題入門』平和文化社2010.10.8

本


山本政俊著 第3話『生きること、働くことと憲法』P73

「…なぜ景気変動が起こるのか説明しよう。

 工場や機械、土地や建物など、ものを生産するための生産手段をもっている資本家。生産手段をもたないために、自らの労働を労働力として売ることで生活する労働者。この二つの階級が対立しているのが、資本主義社会の特徴です。

 資本家は、『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせるこの時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。

 資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」

「どんどんものを生産して、作りすぎる」

「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。そして、資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」

長時間、働かせる

「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う」

「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。

 そして、資本家は、いつでもだれでもクビにできる失業、半失業の労働者の大群をつくります。これを産業予備軍といいます。このことによって資本家は『あ、そう。この労働条件がいやなら、もっと安い賃金で働く人はいくらでもいるからね』と労働者を脅すことができるのです。低賃金は剰余価値を増やし、利潤をあげるからね」


 この、最新の本(2010.10.8発行)は、「マルクス経済学」をもとに、中・高校生に経済を解説しています。

 別にそれでも構わないのですが、その内容が、現代の経済実態とはかけ離れているので、解説します。

<成り立つ?>

 そもそも、上記の文が矛盾しています。

「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。」 

 そのとおりです。


 金子貞吉(元中央大教授)『ストック経済―日本経済の成熟化-』
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaneko/Letzt/zemikai.pdf

人々が買う前に,企業はつくるのです。…売れると想定してつくっており,このように企業の生産量は実際の需要ではなくて,予想した需要を前提とするので,需給は一致しません。これが市場経済の宿命です。

 そして,生産した後で,事後的に生産は需要にあうように調整されるのです。そこで過剰に生産されていると,売れ残りが出て,翌年にそれを持ちこむので,加速的に生産調整をせざるをえなくなります。この現象が不況です。
 

 このように市場経済はいつも不安定であり,無政府性ともいわれています。  

 過剰生産→在庫調整→不況というサイクルになります。ですが、上記に出てくる「資本家」は、それでも生産をやめないようです。

「資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」

長時間、働かせる

「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う
「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。」
 

 生産量を上げるためにこき使う→これが剰余価値・利潤だというのですが・・・「過剰生産がなければ、剰余価値=利潤が上がらない」「過剰生産すると不況になる・・・」

 これでは、「不況になるために利潤を儲ける」という、現実には存在しえないことになってしまいます。

「資本家は、 『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせるこの時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をする」 

 これを図示してみます。

労働 価値.jpg

 これは、GDPの理論そのものです。GDP(総生産)=GDI(所得総額)=付加価値(新たに作った価値)だからです。

GDP 等価.jpg

 生産されたモノ・サービスは 所得以上には消費されません。モノ・サービスが余ったら、資本家の所得にもなりえません。

ところが、さらに、資本家は「剰余価値=利潤」を上乗せしようとするそうです。ただ働き(サービス残業)のことのようです。

 必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。<この本の説明>
剰余価値.jpg

「資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」
「どんどんものを生産して、作りすぎる
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。」


 「この剰余価値を生産するために、生産のための生産をする」のがここでいう「資本主義経済」のようですから、必ず需給バランスが崩れます

GDP 需給ギャップ.jpg

 「モノやサービス」を作れば作るだけ(そうしないと、剰余価値=利潤が生まれない)、不況に向かって突き進むということになります。これが「資本主義」だそうです。

 この本を解説すると、このような解釈になります。

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

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