藻谷浩介『デフレの正体』に打ち止め 日本政策投資銀行 (20)

 明けましておめでとうございます
次回更新は、1月10日以降になります。

<藻谷浩介『デフレの正体』に打ち止め>


引用:藻谷浩介『人口が減れば需要が減るのは当然』VOICE12月号 PHP


藻谷浩介氏、 検証してゆきましょう。

(2)私の主張するデフレは、マクロではなく、ミクロのデフレだ。

P76
「主として現役世代を対象とした内需対応の商品・サービスの供給過剰に伴う値崩れ」、貨幣現象としての「デフレ」ではなく、ミクロ経済学上の需給バランスの崩壊こそ、金融緩和が効かない物価下落の正体だ。
 


 また、自説への「人口減少がデフレの原因であるとのトンでも説」という批判に対して、

P77
…「いま起きているのはマクロ経済学上のデフレではなくて、ミクロ経済学上の現象、すなわちや家電、住宅など、主として現役世代にしか消費されない商品の、生産年齢人口=消費者の頭数の減少に伴う値崩れだ」と指摘しているのだから…まったく的外れだ。
 

 と、批判をかわしています。そして、理論(経済学)を批判します。

P76
…いまとは前提条件の違う時代に確立された経済理論を、安易に演繹…思考過程を省力化しようとする態度…。現役世代が減り高齢者が激増している…という日本の現実…変数化して(筆者注:実態が変化しているのに)しまっているのに、そこに理論が対応できていないのだ。


 そもそも、デフレーション(物価下落)とは「マクロ」経済学上の問題で、彼の主張する「ミクロ」の問題ではありません。ここからして、 「トンでも論」であることは間違いないのですが、とりあえず百歩(理論上は百万歩?)ゆずって、彼の主張に沿って、その論理を検証しましょう。


<マクロとミクロ(マイクロ)とは>

 マクロとは、大きく、全体的に見ることです。

嶋村絋輝 横山将義 『ミクロ経済学』ナツメ社2006 図も

マクロとミクロ.jpg

P18
 経済全体の集計量、たとえば生産、所得、雇用、消費、投資、利子率、物価、国際収支、為替レートなどに注目して経済全体の活動はどんな水準に決まるのか…


一方、ミクロ(マイクロ)とは、詳細に見ることです。

p18
 …個々の家計や企業は、どのような行動をとるのか、…財・サービスの価格や数量はいかに決定されるのか…
 


 「デフレーション」は、マクロの「物価」問題ですが、ミクロでも「価格」は扱われています。藻谷さんは、 「デフレーション」を、後者の「価格」問題だと、定義しているようです。

<藻谷氏の理解の構図>

 清水書院 新政治・経済 p93 平成21年 三版.
需給曲線 清水書院 新政治・経済 p93 平成21年 三版.jpg

 需給曲線です。需要・供給曲線は,経済学ではおなじみのモデルです。単純なようですが,奥が深い理論です。ミクロ経済学では,この図を使って,私たち一人ひとりの消費行動から,政府による規制や課税,市場の独占や寡占,果ては国際貿易まで,説明します。

需給曲線.jpg

 N.グレゴリー.マンキュー『マンキュー経済学Ⅰミクロ編』東洋経済2004 で取り上げられている、アイスクリームの需要と供給について、考察します。

 ある年、冷夏で、海に行く人も激減しました。アイスクリームは、需要が落ち込みました。

需給曲線 需要減.jpg

 なんと、 「需要」が減って、価格が下落したではありませんか! 「デフレ?」です!

 もっと長期、 「少子高齢化」でも結構です。高齢者が増え、子供の数が減ります。藻谷氏の言う、人口動態の変化です。おそらく、「アイスクリームの需要は減る」と考えられます。そうすると、おそらく、「アイスクリーム価格」は下がります

 別に、アイスクリームでなくとも結構です。藻谷氏の言う、「クルマ(デフレの正体p53)」でも「少年漫画(同p55)」でもいいです。「生産年齢人口」の減少・「少子化」により、「需要」が減るので、価格が下落します。

 『デフレの正体』p184
…ベビーブーマーが高齢者になって退職する一方で、子供が少ないために生産年齢人口どんどん減っており、車は全自動ラインでロボットがどんどん製造できるのですが、肝心の車を買う消費者の頭数が減ってしまい…結果としてメーカーには大量の在庫が積みあがり、仕方ないので、折々に採算割れ価格で叩き売って処分され…国の主要産業である車産業の製品価格が低迷を続ける事態(筆者注:藻谷氏のいうデフレ?)には何ら変わりがありません。

 …車だけではなく、住宅でも、電気製品でも、建設業でも、不動産業でも…需要の減少というミクロ要因に悩んでいる日本の状況


<注>
 このミクロの需給曲線は、ある一つの商品(アイス)を扱った、「部分均衡」論で説明してきました。実際には、世の中に、たくさんの商品があふれています。冷夏でアイスが売れなかったら、逆に「夏のおでん」が売れる可能性があります。食べ物だけではなく、アイスのカップや、衣服や、エアコンなどの電化製品、それらを構成するさまざまな素材に、たった一つの商品の値段が、波及します。

 これら、全ての財・サービス(おそらく何万、何百万種)の均衡価格と均衡量を扱うのが、「一般均衡」論です。
ブログカテゴリー ワルラス 一般均衡理論 参照


需給曲線.jpg

 一般均衡論でも、上図は成立します。


 需要が減ると、「価格が下がる」、これが、藻谷氏のいうデフレです。

<ミクロのデフレ論は、成立しない>

 さて、これが氏の頭の中にある「デフレの構図」です。ですが、この「価格下落」は、ある前提に立って構成されています。その前提が崩れると、崩壊します。その前提とは、「生産量の固定」すなわち、「生産(供給曲線)は動かない」というものです。
 
『人口が減れば需要が減るのは当然』VOICE12月号 PHP

p76
…九〇年代後半…生産年齢人口は減少に転じ…就業者数全体も減少することが避けられなかった。…現役世代の消費が減退する。
 他方で企業側の供給力は…自動化・IT化の流れの中でいっこうに減っていかない。…クルマや家電、不動産など、主として現役世代を対象とした商品・サービスには供給過剰感が生まれ、価格は下がる

p76
…生産年齢人口が供給ではなく需要を減らす普遍的に見られている現象…担い手が激減している国内農業の分野でもコメの需給などにまったく同じことが起きている。

『経済大国ニッポン陽はまた昇る:緊急座談会』週刊文春2010.12.16号
P134
 ところが、ロボット化やIT化のおかげで生産力は一向に減らない。…供給過剰が値崩れを呼び、内需の縮小は止めようがありません。

 『デフレの正体』p184
…ベビーブーマーが高齢者になって退職する一方で、子供が少ないために生産年齢人口どんどん減っており、車は全自動ラインでロボットがどんどん製造できるのですが、肝心の車を買う消費者の頭数が減ってしまい…結果としてメーカーには大量の在庫が積みあがり、仕方ないので、折々に採算割れ価格で叩き売って処分され…国の主要産業である車産業の製品価格が低迷を続ける事態(筆者注:藻谷氏のいうデフレ?)には何ら変わりがありません。

 このように、氏の説では、 「生産力=供給力」は動かないというのが大前提です。「需要は変化するが、供給は変わらない」という神話への固執に、変化はありません。

 では、検証します。氏が例に挙げる、車業界です。

出典:時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_eco_car-newsales-japan2009
『2009年の国内新車販売、38年ぶり300万台割れ=軽含め500万台届かず』

新車販売台数の推移.jpg

 この販売台数は、ピーク(90年=597万5089台)の半分にも満たない水準です。

 クルマは、まだましな方です。オートバイ(全台数)は、なんとピークの1/3しか売れていません(93年125万4254台→09年38万777台)。
二輪車 販売台数.jpg

さて、この「需要減」に対し、生産者側:メーカーは、「供給量維持=価格下落」で対抗するのでしょうか。そんな馬鹿なことはしません

 トヨタの代表的なモデル、クラウン ロイヤルヤルサルーンの歴代新車価格です。

クラウン 価格 推移.jpg

 新車価格は、上がっています。定価を下げて、需要減に対抗しません需要減には、供給減で対応するのです。要するに、生産台数を減らすのです。

藻谷モデル(需要減のみ)
需給曲線 需要減.jpg
    ↓
トヨタモデル(需要減に、生産減で対応)

需給曲線 供給減.jpg

 メーカーは、毎年毎年、需要予測をもとに、「生産台数」を計画します。来年のトヨタの国内生産予定は310万台です。

 日経H22.12.22 図も
トヨタ生産台数.jpg

 トヨタ自動車は2011年の国内生産計画を310万台と、10年実績見込み(328万台)比で5%減に設定した。…11年の生産台数は、ピーク時(07年、422万台)から3割落ち込む。

 供給能力はあるのですが、量を減らすのです。

日経H22.10.30『10月新車販売2割減 補助金切れ直撃』
 

 エコカー補助金の終了による、需要激減で、新車販売に急ブレーキがかかりました。

 ホンダは9月、系列販売店での総受注が約4割減った。トヨタも…4割強の受注減だったという。 

 これに対処する為に、メーカー側は、

先行き悪化懸念から、ホンダは「年間の国内生産を100万台弱から97万5千台に引き下げる」…トヨタも国内で年内2~3割の減産を予定するなど、生産への影響も出始めている。

 と、供給減で対応します。

 藻谷さんの言う、

「他方で企業側の供給力は…自動化・IT化の流れの中でいっこうに減っていかない。…クルマや家電、不動産など、主として現役世代を対象とした商品・サービスには供給過剰感が生まれ、価格は下がる
「国の主要産業である車産業の製品価格が低迷を続ける事態には何ら変わりがありません」
 

 などということは、現実には「起きない」のです。
 トヨタを見ても分かるように、供給力は、「台数を作ろうと思えばある」のですが、「供給量」を減らして、需要減に対応するのです。価格ダウンではなく、数量ダウンを選択するのです。


 「いま起きているのはマクロ経済学上のデフレではなくて、ミクロ経済学上の現象、すなわち車や家電、住宅など、主として現役世代にしか消費されない商品の、生産年齢人口=消費者の頭数の減少に伴う値崩れだ」 など、新経済理論なるもので、説明すればするほど、自らの首を絞める結果になっています。

 彼が「私は無精者で、経済書やビジネス書は本当に数冊しか読んだことがないのですがp125『デフレの正体』」と述べている通りです。

 p168
「三面等価の呪縛」
 「常に正しい」三面等価式を持ち出すとは、何やら神聖不可侵な雰囲気の議論でありますが…現実を、「常に正しい」三面等価式ではどう説明するのでしょうか。
 などと、批判する前に、きちんと、「経済学」を勉強しましょう。

三面等価 2008

 図を見たら、一目瞭然です。

 生産なくして消費は無い、実体経済(国富)なくして、富は創れません。経済学は徹底して「総生産=総消費」=「供給量=消費量」です。 「供給量を固定して考える、新藻谷理論」など、現実に「ありえない」のです。


<追記>

『人口が減れば需要が減るのは当然』VOICE12月号 PHP
P76
 取り立ててウォンツがない日本の高齢者の消費性向は米国などに比べて著しく低く、彼らの所得は消費に回らない。

『経済大国ニッポン陽はまた昇る:緊急座談会』週刊文春2010.12.16号
P135
 日本の高齢者にはお金に不自由しない層が少なからずいます。でも使わない。モノに興味がなく…


 「高齢者は消費しない」の間違いは、ブログ 2010-08-10 カテゴリ 藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行で指摘したとおりです。

<追記2>

1月31日放送 0:15 - 2:05 NHK総合NHKスペシャル2011 ニッポンの生きる道
 再放送ですか、藻谷氏が出演していました。

 相変わらず、「中国や韓国には貿易黒字だから勝っている、でもフランス、イタリア、スイスには貿易赤字だから負けている」と言っていました。また、リーマンショック前までの輸出額のフィリップを出して説明し、「輸出額はこんなに伸びている」、「日本は勝てる」と持論を展開していました。さらに、「SY=数字読まない」現象についても、批判していました。

http://www.binet-owari.jp/topics/3kai/motani.htmに、藻谷氏のプロフィールが掲載されています。彼の信条も披露されています。

ものを考える際の信条

① 統計数字と実例から帰納した仮説を、経営理論からの演繹と照合しつつ論じる
② 常識は疑い、慣用句は用いず、先入観は排し、反証のある社会通念には従わない
③ 権力欲、他人/他国に対する優越感/劣等感、学歴/学術/技術信仰に左右されない
④ 議論・発言の中で臆さず自説を示し、指摘された誤りは悪びれずすぐ修正する



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藻谷浩介その15  『デフレの正体』角川oneテーマ21

藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21

 前回、2010-08-08 カテゴリ:藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行において、マネーストック(旧マネー・サプライ)について、検証しました。今回は、マネーストックとインフレ・デフレについて、検証します。

マネタリーベース・マネーストック.jpg

注)マネタリーベースは,流通現金+日銀当座預金。日銀は,この合計額を直接コントロールでき,マネーストックに影響を及ぼす。
 マネーストックM3は,一般法人,個人,公共団体(除く国/金融機関)が保有する通貨量。「信用創造(準備預金以外の貸し出し)」によって,マネタリーベースの何倍もの通貨量が創造される。


 さて、このように、貨幣は膨張するのですが、このマネーストックと、インフレの関係を見てみましょう。

<インフレと、マネーストック(旧マネーサプライ)の問題>

 注)2008年より、マネーサプライは、マネーストックと名称が変更になった。

 マネー・サプライの状況です。

中谷巌『入門マクロ経済学 第5版』日本評論社2007 p193
マネーサプライ伸び率.jpg


(1)狂乱物価 1973~

 この時代のインフレは、狂乱物価(きょうらんぶっか)と言われました。1974年の消費者物価指数は、対前年比、23%上昇したのです。

 契機になったのは、1973年10月6日に勃発した第四次中東戦争に端を発した第一次オイルショックです。
OPEC、OAPEC という石油輸出諸国が、石油の卸値を30%、(最終的には石油価格は4倍)に引き上げたのです。

グラフ出典 引用・参考資料 ウィキペディア 『オイルショック』

 このインフレに対し、日銀は、金融引き締めをします。「インフレーション抑制のために公定歩合の引き上げが行われ、企業の設備投資などを抑制する政策がとられた。結果1974年(昭和49年)は-1.2%という戦後初めてのマイナス成長を経験し、高度経済成長がここに終焉を迎えた。」ということになりました。

オイルショック 公定歩合.jpg

 公定歩合とは、現在の「短期コールレート」に対応する、日銀の市中金融機関への貸し出しレートでした。この金利を高めれば、市中への貨幣の流通は少なくなり、結果として景気過熱(インフレーション)を抑え込むことになります。そのかわり、急速に縮小した貨幣経済により、GNP(当時)は前年比マイナス1.2%と大変な落ち込みになりました。

以下参考文献 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社2009 p68~79

 この狂乱物価に対する、日銀の当時の分析は、「金融機関が貸し出ししすぎたから」で、日銀の責任はないとするものでした。これに対し、小宮隆太郎(東大教授)が、「ばか言うな、日銀が、金融機関に貸し出したからだろう」と猛烈に反発しました。

 今風にいえば、「マネタリーベースを大きくして、マネー・ストック」を増やしたのは、日銀の責任だろう」というものです。当然、経済学的には、小宮先生が正しいのですが、日銀は頑として認めません。今も昔もおそらくこれからもです。…同書では、日銀は「官僚機構…つまり東大法学部だから」としています。閑話休題

 マネタリー・ベース(M1)と、マネー・サプライ(M2)の伸び率です。同書p70

狂乱物価 マネーサプライ.jpg

 前年比20%超の増です。こうなると、貨幣量だけがジャブジャブ市場にあふれることになるので、「インフレ」になるのは当たり前です。

 で、なぜ、こんなに、マネタリー・ベース(M1)と、マネー・サプライ(M2)が伸びてしまったのでしょうか。それは、当時の1ドル=360円、308円の固定相場制にあるのです。

 ブレトン・ウッズ、スミソニアン体制下(1ドル=360円、1ドル=308円の固定相場制)、日本や西ドイツは、大変なインフレ状態になってしまいました。日本の場合、1973年には「狂乱物価」とも呼ばれました。「固定相場制」を維持しようとすると、「貿易黒字」国は、インフレ状態になってしまうのです。

 貿易黒字の持続的な拡大→マルクや円はマルク高・円高に(日本・西独には、円とマルクでの支払になるため、ドルを売って、円・マルクを求める動きが活発化→円高・マルク高に)

 ところが、ブレトン・ウッズ、スミソニアン体制下、日本と西独は、固定相場を維持しなければなりません。日本の場合、1ドル=360(308)円の上下1%以内に固定するというものです。

 円が、360円の1%(356.3円)を上回って円高になったとします。これを防止するために、中央銀行(日銀)は、円売り・ドル買いを実施します(西独の場合マルク売り・ドル買い)。その結果、両国のマネーサプライ(貨幣量)が増大します。高度成長期(完全雇用状態に近い)にマネーサプライ(貨幣量)が増加すると、モノ・サービスの生産量<貨幣量となり、インフレになってしまうのです。

参考文献 岩田規久男『国際金融入門』岩波新書2009 p208~

 日本は、1973年の2月14日から、変動相場制に移行するのですが、2月1日~9日の間に、日銀は、11~12億ドルのドル買い介入をしました。これは、当時の東京市場での9割を占める額です。
 ヨーロッパでも1973年3月2日には、固定相場制をやめるのですが、西独の中央銀行は3月1日午前中だけで、20億ドル、1日で25~27億ドルのドル買い介入をしました。未だかつてない、そして将来もないと言われた介入額です。

 これらの為替介入の結果、両国は「自国の貨幣供給量が管理不可能なほど増大する(同書p208」結果になってしまったのです。 「狂乱物価」です。

 また、これらの現象を、経済学では、非対称性問題(N-1問題)といいます。Nは各国、1はアメリカです。

 アメリカが拡張的なケインズ政策採用するとします。金融緩和です。マネーサプライ増(ドル増)です。ドル供給が増えると、ドルが安くなります。固定相場制なので、各国中央銀行はドル買いをします。日本はドル買い・円売りです。円のマネーサプライ(供給量)は増えます。結果、モノ・サービスの生産量<貨幣量となり、インフレになってしまうのです。

 ということは、(N-1)国は、「アメリカと同じインフレ率を維持しなければならない」ということになります。実際に、アメリカ国内のインフレは、世界的に波及したのです。

 ただし、アメリカのケインズ政策採用=アメリカのみならず、世界経済全体の拡張政策となりました。
 
 ところが、オイルショックにより、世界は「国民総生産減」になります。不況です。不況下でも、インフレ(物価高)です。不況下のインフレ=スタグフレーションを迎えたのです。

(2)バブル経済期 1986~

プラザ合意による円高→円高による輸出不振→それに対応するための、金融緩和です。

 1985年プラザ合意とは、「ドル高是正のための、各国中央銀行の協調介入」のことです。アメリカのドルは、すべての外貨に対し、暴落しました。円が、$=240円から、2年で$125円になりました。

プラザ合意 円高.jpg

 この急激(本当に急激です)な円高で、輸出企業は壊滅すると恐れられました。日銀は、輸出不振による経済成長下落を防ぐため、段階的に公定歩合を引き下げます。

これにより、マネタリー・ベース(M1)と、マネー・サプライ(M2)はまた拡大します。
 
前掲図
マネーサプライ伸び率.jpg

 これは、グラフにすると、若干増にしか見えませんが、%なので、前年比、10%以上、13%(1987年)も、「カネ」量が増えていることになります。

(2)部分です。ですが、GDPデフレーター(物価上昇率)は、(1)当時に比べて、上昇していませんね。おカネは、実物資産ではなく、ストック(土地・株)に回ったのです。『バブル経済』です。

 ストック(土地は国富=ストック、株は英語でストックといいます)にカネがジャブジャブ回りました。実物経済ではないので、単に「株価や地価が上がったから、将来も上がる」という投機行動にもとづくものです。

 この、株売買(キャピタルゲイン=売買益)、土地売買というのは、架空のもうけのことです。安く買って、高く売れば、その人にとっては「もうけ」ですが、社会全体でみると、「買った人」からお金が回っているだけです。カネがぐるぐる回っているだけで、「架空」に過ぎません。「将来株(土地)は上がるだろう」という人と、「株(土地)は下がるだろう」という人の間での賭けなので、「投機」なのです。

 貨幣供給量が増えても、「ストック」に回れば、「物価が上昇する」ことはないことがわかります。

「架空取引」なので、あっという間にしぼんでしまいました。

(3)世界大恐慌も、マネーサプライによるもの

 この金融政策(マネーサプライ増減)の大失敗例として、世界大恐慌(一応、1929年の株暴落が始まりとされるもの)があります。

 参考・引用文献、グラフ 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社2009 p148~

とうほう『政治・経済資料2010』P179 
大恐慌 GDP.jpg

 1932年のGNPは、1929年からマイナス30%、33年は33%と落ち込みました。

 32年に、4人に一人が失業という状態です。デフレは8%に達しました。

 このような大不況の原因について、「需要不足」によるものか、「貨幣不足」によるものか、激しい論争が繰り広げられましたが、現在では、決着がついています。「貨幣不足」によるものです。

 大恐慌は1929年ではなく、それ以前の、金本位制に復帰して以降というのが、経済学による理解です。金本位制は、限られた量の金が、通貨発行のアンカーになるので、通貨供給量が不足するのです。株価下落は、その結果なのです。

岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社2009 p149
 現在では、経済学界の通説は、貨幣現象説を支持している。
 
参考:ニューズ・ウイーク 2009.11.4 p64
 
 フリードマンは、1929年以降の大恐慌についても、ケインジアンの考える「有効需要の不足」ではなく、FRB(アメリカの中央銀行に相当)が通貨供給を絞ってしまい、銀行が連鎖倒産したことを証明しました。
 この教訓はリーマン・ショック以降の、金融システムの維持に生かされ、FRBは、大量のマネー・サプライ(通貨供給量)を準備しました。バーナンキFRB議長の、恐慌に関する研究では「フリードマンは正しい」とされています。

<デフレの原因>

 さて、(1)(2)(3)から、マネーストック(マネーサプライ)が、インフレ・デフレに影響していることがわかりました。(1)では、インフレの原因は、マネーサプライだということがわかります。たとえ、(2)のように、膨張した通貨量が、実物経済に回らなくとも、資産(株・土地)インフレを起こすことが分かります。(3)では、恐慌が、大恐慌になったのは、通貨供給量の問題だったことが分かります。

注)2006年までの、日本の量的緩和が、デフレ解消に結びつかなかったのは、「徹底していない&期間が短い」からです。ブログ2010-08-03記事参照。  

藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21
P268
「経済を動かしているのは…現役世代の数の増減だ」。この本の要旨を一言でいえばそうなりましょう。…「生産年齢人口の減少と高齢者の激増」という日本の現実…。

P99
 所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増P102
 …高齢者だった。彼らは特に買いたいモノ、買わなければならないモノがない

P135
 「昔ほど車を買わない、そもそも以前ほどモノを買わない、最近余り本や雑誌を読まない、モノを送らなくなったし車にも乗っていない、近頃あまり肉や脂を食べないし酒量も減った、水も昔ほど使っていない」ということです。これは正に退職後の高齢者世帯の消費行動そのものではありませんか。

P142
「生産年齢人口の波」の減少局面に突入した日本。定年退職者の増加→就業者数の減少によって内需は構造的な縮小を始めました。


 これが、藻谷氏の主張する「デフレの正体」です。モノに対する「需要不足」という、経済学ではすでに、否定された論拠の上に立っていることが分かります。

 でも、彼が主張する「高齢者はモノを買わない」も事実は違います。高齢者こそ、「車」を買っているのです。

日経2010.8.7 
2009 自動車保有率.jpg

 日本全体で、マイカー保有率(世帯当たり)は、2004年に比べ、2009年時点で2.2%減りました。ですが、高齢者は逆に車の保有を増やしています。特に地方では、「交通手段として必須」だからです。

 彼の論理、デフレが「需要不足」なら、インフレは「需要超過」です。狂乱物価は「狂乱的な生産年齢人口増」となりますが、そんな事実はありません

 「世界恐慌」下のデフレは、「生産年齢人口」が余っているのに起こりました。


<追記2:高齢者市場>

 実は、日本の消費市場に占める高齢者(世帯主が60歳以上で2人以上世帯)の割合は、09年ですでに4割に達しています。高齢者は消費の主役なのです。

平成22年度 『経済財政白書』の分析です。高齢者が、消費を押し上げていることが示されています。

 高齢者が押上げに寄与する個人消費

高齢者 消費.jpg


 第一に、60歳以上の高齢者世帯による個人消費の押上げ寄与は非常に大きい。すなわち、2003年以降、おおむね一貫して60歳以上世帯が個人消費にプラスの寄与をしており、かつ、個人消費に対するプラス寄与のほとんどはこの世代による。例外はリーマンショック後の急激な消費の落ち込みのときだが、そのときもマイナス寄与は小さかった。2009年後半以降の個人消費の持ち直しも高齢者がけん引している。


 消費の主役は、高齢者です。

・・・第二に、世帯数の推移を見ると、予想されるように、60歳以上の世帯数のみが一貫して増加しており、他の年齢層の世帯は減少している。すなわち、60歳以上の世帯数が持続的に増加していることが、その分だけ同年齢層の消費を押し上げ続け、これが個人消費の変動における寄与の大きさにつながったといえるだろう。

 第三に、ここでの年齢別の3区分によれば、35~59歳の世帯の一世帯当たり消費が一か月約35万円と最も高いが、60歳以上の世帯がこれに次ぎ、34歳以下の世帯が最も低い。したがって、若年世帯が減少し、高齢者世帯が増加するだけで、平均的な世帯当たり消費はむしろ増加する。


 この高齢者市場は、今後も拡大の一途です。

 参考・引用文献 長沢光太郎『豊かな加齢支える産業 世界に先駆け育成を』日経H22.8.6 グラフも

2010年現在、日本の75歳以上人口は1400万人である。これが20年後の2030年には2300万人へと900万人の増加が予想されている。


 三菱総合研究所の調べによると、高齢者がもっとも困っている健康上の問題は、「腰・肩・ひざの痛み」「視力」で、これらにはそれぞれ18万円、13万円支出しても良いと考えています。潜在需要は8兆円となるそうです。
 そうすると、健康支援サービスや、機能補完器具、ロボットなどの商品が、今後確実に売れてゆくことになります。

 さらに、部屋や浴室の段差、階段などの高低差の解消に5.8兆円の潜在需要があります。また、高齢者の「スポーツ観戦・観劇・美術鑑賞」などの余暇活動も、年間7.2兆円消費され、プラス潜在需要は4兆円とされています。他にも衣料品2.4兆円など、高齢者市場は、年率3%で成長し、2020年には100兆円を超えることが予想されるのです。

 これらの市場は、今まで「存在しなかった市場」です。「新商品・新サービス」が次々とでてくることが予想されます。

 なぜ、これらの市場を拡大することが有望かというと、これが、日本の武器になるからです。日本の高齢者の絶対数は、確実に増加するのですが、実は、中国やインドの高齢者絶対数増加は、日本の比ではありません。まさに、「爆発的に増加」するのです。

アジア65歳以上人口.jpg

 そうすると、日本で先行開発された「健康支援サービスや、機能補完器具、ロボットなどの商品」は、アジア市場を席巻できることになります。


<追記>

質問をいただきました。1929年(?)の世界大恐慌の原因についてです。

岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社2009 p149
大恐慌 貨幣減少.jpg

(1)金融引き締め
 ↓
(2)1929年株価暴落
 ↓
(3)さらなる金融引き締め
 ↓
(4)1930年代の大恐慌

という流れになります。

1929年以前に、株価急騰のために、金融引き締めを行っていたのです。


同書p150
「FRBは一九二七年後半から金融引き締めを開始したが、それは当時の株価急騰を抑えようとしたからであった。度重なる利上げは二九年秋の株価大暴落をもたらし、以後、アメリカ経済は烈しい資産デフレとデフレに陥り、不況に転落した。アメリカが不況に転落しても、FRBは貨幣の減少を放置する政策を採った。この金融政策が、単なる不況で済んだはずのアメリカ経済を大不況に陥らせた原因であった」
となります。

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藻谷浩介その14 『デフレの正体』角川oneテーマ21

では、藻谷浩介さんからの、コメントについて解説します。

2010年7月15日 藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21にいただいたコメントです。(数字は筆者挿入です)

そんなことはわかってますが

 わかってますよ。ですが、対外債権が積みあがっていることすら知らない人が余りに多いので、このように書いているのです。問題は①内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと②国内投資も増えないということですよね。その原因は、あなた方の言っているコンベンショナルなマクロ経済学で解けるのですか? ③日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると? あなたは、7章と8章をどう読んだのか? そんなことはとっくに知ってたのですか?④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか? 「自分は経済学を知っている、こいつは勉強していない」、そんなつまらない矮小なプライドでモノをいうなってんですよ。経済学なんてどうでもいいのです。枠組みはどうでもいい。⑤対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! なんとかしようと考えないのか? あんたみたいなあたまでっかちしかいなくなったから、自慢できることが実践ではなくて理論だけだから、日本はだめになるのだ。くやしかったら、自分の実践を少しでも語ってみろ。⑥対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。 ⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。そういうことです。
言い直します。それだけ理解力があるのであれば、実践力もあるはずだ。早く正道に戻ってください。



④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか?
⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。


<1400兆円の金融資産とは>

 みなさん誤解していますが、この1400兆円の金融資産なるものは、実際には「存在しない」、単に帳簿上の話です。帳簿上存在しますが、「実態は無い」ものです。ここを解説します。

 三面等価の図を見て下さい。
三面等価 2008

 S部分が、(G-T)+(I)+(EX-IM)です。これは貯蓄から回りますが、同時に、生産財です。つまり、総生産(実物)のうち、消費に回らない部分を、政府・企業・外国が購入しているのです。ですから、すべて実態のある(形のある)財です。

 生産財(GDP)=消費+投資です。

 投資は、施設・設備です。工場、機械、住宅、店舗のイスやテーブル、公共投資(道路・港・ダムなど)です。鉄や砂、木やコンクリなど、実物財です。これが、次回の生産(GDP)を産み出す原資です。

 生産財(GDP)をすべて消費(C)に使ってしまったら、次年度、生産が出来ません。コメをすべて消費しないで、「もみ」として残すのは古来から当たり前です。この「もみ」が投資なのです。「投資」は拡大再生産には、絶対に必要なものです。

 この「投資」が、「国富」になります。実態として、われわれの財産です。

GDP 消費+投資.jpg

とうほう『政治・経済資料 2010』p201 グラフも
 ストック・・・ある時点における、家計、企業、政府などが保有する資産・負債の合計。生産の元手になる。

フローとストックのイメージ図.jpg

 で、この投資部分は、政府(G-T)+企業(I)+外国(EX-IM)が購入しています。だから、(EX-IM)海外資産が、国富に入るのです。「対外純資産」です。

消費+投資(政府・企業・外国).jpg

とうほう『政治・経済資料 2010』p201
2007年 ストック.jpg

 ここから、わけの分からなくなってくる、金融資産について説明します。

 この投資(I)ですが、(S)貯蓄から、充当されます。カネです。消費に回らなかったカネが、(S)→(I)に利用されるのです。
三面等価 2008

GDP 消費+投資(貯蓄).jpg

で、この貯蓄(S)が、勝手に自己増殖し始めるのです。

「信用創造」です。
貯蓄→金融市場→金融機関.jpg

清水書院『資料 政治・経済2010』p248
信用創造の仕組み.jpg

 預金者→銀行→企業→銀行→企業→銀行→企業・・・となるうちに、最初の預金額の何倍もの預金が創造されます。式で言うと、『1/(C) Cは預金準備率 』となります。

 現在の預金準備率は、0.01%なので、計算上、銀行は100万円を日銀に積立て金として当座に預け入れるだけで10,000倍の100億円(正確には99億9900万円)、帳簿上存在しますが、「実態は無い」お金を、個人や企業に貸し付けることが可能になります。

信用創造

 こんな風に、債権・債務が自己増殖し、実態の無い帳簿上の「金融資産」が創られます。

 金融機関が企業に資金を貸し出すと、金融機関に債権が、企業側に債務が計上されます。年金保険料も、生命保険会社の保険料も、家計の資産(債権)ですが、政府や保険会社の債務(負債)になります。これを繰り返すと、金融資産(債権)も増えますが、金融負債(債務)も増えます。コインの裏表です。同じことを、重複計算しているので、実際の富(実物資産=国富)は増えていないのです。

とうほう『政治・経済資料 2010』p201
 国内の金融資産は、国内に借り手と貸し手が存在し、債権(資産)と、債務(負債)が相殺されるため含まない


 金融資産が国富に入らないのは、このためです。

 さて、この「信用創造」の結果、実際の現金(マネタリー・ベース)は92.9兆円なのに、市中の通貨量(マネー・ストック)は、1055.6兆円にもなっています。(09年10月現在)

マネタリーベース・マネーストック.jpg

注)マネタリーベースは,流通現金+日銀当座預金。日銀は,この合計額を直接コントロールでき,マネーストックに影響を及ぼす。
 マネーストックM3は,一般法人,個人,公共団体(除く国/金融機関)が保有する通貨量。「信用創造(準備預金以外の貸し出し)」によって,マネタリーベースの何倍もの通貨量が創造される。


 この、自己増殖によって、実物資産である「国富」よりも、金融資産の伸びが大きくなるのです。

清水書院『2010 資料政治・経済』p230 
国民資産(ストック)の推移

GDP→消費+投資(貯蓄) 貯蓄の肥大化.jpg

 世界の金融資産の伸びも、同じです。実体経済に比べ、肥大化しています。世界の金融資産は,総額167兆ドル(1京5030兆円)に達します。実体経済(世界全体のGDP48兆ドル)の3.5倍です。しかも,その成長率は2006年までの11年間で年平均9.1%,世界の実体経済(GDP)成長率の5.7%を大きく上回っています。

世界金融資産 残高.jpg
   
 「カネ」が、実物経済に回らずに、金融資産の運用に回りました。これが金融資産だけを膨張させてきた、現代の「金融資本主義」なのです。

 ところが、実体が無いので、しぼむ時には、一気にしぼみます。サブプライムローン問題や、リーマン・ショックで、金融資産が、がたがたになりました。

不良債権化.jpg

 どこか、1箇所で支払いが滞る(不良債権化)と、そのあとが、がたがたになります。企業は、現金で支払いするのではなく、当座預金や、小切手、手形で支払います。モノを買っても、支払いは後日というのが企業取引では当たり前です。われわれが、クレジット・カードでモノを買うときもそうです。モノの取引と、カネの取引の分離です。

 もし、約束した期日までに、「当座預金や、小切手、手形」で決済されないと、そのあとの資金の流れが、がたがたになります。

 わが国の土地の「不良債権」、アメリカの「サブプライム・ローン」「リーマン・ショック」というのは、このように引き起こされました。だから、「リーマン・ショック」後、FRBバーナンキ議長は「金融機関がつぶれると,全ファイナンシャルシステムが壊れる」と言って、金融機関に、公的資本を注入したのです。

 主要国政府は2008年10月10日,日米欧(G7)財務相・中央銀行総裁会議で,公的資金による金融機関への資本注入(銀行の自己資本増強)を決定します。13日,英国が大手3銀行に資本注入することを発表しました。そして,14日,アメリカ政府が25兆円を金融機関に資本注入することを発表しました。

 世界中で,銀行の自己資本に公的資金を投入し,連携して金融システム崩壊を防ごうとしているのです。どんな手段であっても金融システムを壊さないという決意の表れです。
 日本でも、「住専」や「竹中プラン」のときに、公的資金が投入されました。それは、この様な理由によるものです。

 ですから、金融資産は、「バブル」のようなもので、実体が無いから、一気にしぼむのです。

金融資産 家計・企業・政府.jpg

 この金融資産が、「家計の金融資産1400兆円」なるものの、実態です。

<資産=負債>

国家 バランスシート.jpg

「カネ」はどこにあるのか。答えは、「計算上あるだけで、実体は無い」のです。

 どうですか?上の表が幻に見えてきましたか? そうなったとしたら、「経済学」的に見ていることになります。
 
 生産なくして消費は無い、実体経済(国富)なくして、富は創れません。経済学は徹底して「総生産=総消費」です。富は、肥大化した「金融」の中には、無いのです。

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藻谷浩介その10 『デフレの正体』角川oneテーマ21

 では、藻谷浩介さんからの、コメントについて解説します。

2010年7月15日 藻谷浩介その1 『デフレの正体』角川oneテーマ21にいただいたコメントです。(数字は筆者挿入です)

そんなことはわかってますが

 わかってますよ。ですが、対外債権が積みあがっていることすら知らない人が余りに多いので、このように書いているのです。問題は①内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと②国内投資も増えないということですよね。その原因は、あなた方の言っているコンベンショナルなマクロ経済学で解けるのですか? ③日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると? あなたは、7章と8章をどう読んだのか? そんなことはとっくに知ってたのですか?④三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか? 「自分は経済学を知っている、こいつは勉強していない」、そんなつまらない矮小なプライドでモノをいうなってんですよ。経済学なんてどうでもいいのです。枠組みはどうでもいい。⑤対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! なんとかしようと考えないのか? あんたみたいなあたまでっかちしかいなくなったから、自慢できることが実践ではなくて理論だけだから、日本はだめになるのだ。くやしかったら、自分の実践を少しでも語ってみろ。⑥対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。 ⑦あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。そういうことです。
言い直します。それだけ理解力があるのであれば、実践力もあるはずだ。早く正道に戻ってください。


①内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと国内投資も増えない

内需.jpg

 内需は、傾向的には増えています(リーマン・ショック後は確定値がないため不明)。

②国内投資も増えない

投資.jpg

 2000年のピークに比べると、増えてないですね。ただ、 「内需が減少する一方のために増えない」のではありませんね。内需増に伴い、投資(I)も増加しています。

⑤対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! 
⑥対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。


 対外資産は、日本国内には還流しません。「対外資産の増加を国内に少しでも還元」することは、出来ません
 ですから、
対外資産から,外国の持つ日本国内資産を引いた,純資産は,平成20年末現在,225兆5,080億円に上ります。やはり,世界一の対外債権国です。
対外資産

 このように,「貿易黒字はどこへいったのか」の答えは,「海外の資産になった」です。このことは,「日本人の生活そのものが豊かになることを,必ずしも意味しない(岩田規久男(学習院大学教授) 『国際金融入門』岩波新書 1995 p44)」のです。

となります。

次回は、 ③日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると?についてです。続く

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藻谷浩介 その8『デフレの正体』角川oneテーマ21

藻谷浩介 その8『デフレの正体』角川oneテーマ21

 この本について、日経『大機小機』H22.7.16は次のように批判しています。

 最近、デフレの正体は人口動態だという議論…少子高齢化が生産年齢の減少をもたらし…構造的な供給過剰につながるために商品・サービスの単価下落につながっているという。

 すぐに不思議に思うのは、なぜ生産年齢人口の減少は、供給ではなく需要を減らすのかということだ。…高齢者には欲しいものがないと想定…しかし…証明することは難しいので、この程度の「説明」では説得力が乏しい。

 さらに不思議なのは、きちんとしたデータ分析の裏付けに乏しいことだ。少子高齢化と生産年齢人口の減少はほぼ世界じゅうで起きている。中国、韓国、北東アジア…韓国の高齢化のスピードは日本を上回っている。…世界中がデフレに向かっていなければならないだろう。先進国でデフレが起きているのは日本だけだ。…(OECD)諸国について…消費者物価上昇率と人口増加率、高齢化率の変化の関係を見てもほとんど相関は見られない

…不思議なことに経済学やマクロ経済学を否定する人は、自分の議論は論理的で実証的だと考える。だとしたらなぜ…日本の高齢者だけが欲しいものがなくなるのだろうか。…供給の不足以上に需要の不足をもたらすのだろうか
…人口動態…と…日本のデフレを結びつけるのは無理がある


<デフレは日本だけ>

 この『大機小機』で挙げられている論点についてです。 「デフレ」は先進国では日本だけに起こっている現象です。「生産年齢人口が減り、高齢者が増え、買うものがなくなった」では、論証になりません。

 各国の高齢化率(65歳以上の全人口に占める割合)は、日本だけが突出して高い(高かった)わけではありません。2010年(推計値)によれば、日本の高齢化率は、各国を上回るようになりましたが、1990年はグラフのすべての国、2000年は、イタリアの方が、その率は高いのです。

グラフ出典 岩田克彦 労働政策研究・研究機構客員研究員『欧州の高齢者雇用対策と日本』

各国高齢化比率.jpg


グラフ数字出典 
http://www.pref.kumamoto.jp/sec_img/0024/200601105522018.pdf#search='全国の高齢化の現状と推移'

高齢化率 推移.jpg

 これらの国の、1990年~2010年(推計値)の、インフレ率、GDPデフレーター率です。

グラフ 世界経済ネタ帳

インフレ率推移.jpg

[世] [画像] - GDPデフレーターの推移(1990~2010年)の比較(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、イタリア)

 このように、同じように高齢者比率が増加しているにもかかわらず、日本だけがデフレなのは、なぜなのでしょうか?

藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21

P99
 所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増

P102
 …高齢者だった。彼らは特に買いたいモノ、買わなければならないモノがない

P135
 「昔ほど車を買わない、そもそも以前ほどモノを買わない、最近余り本や雑誌を読まない、モノを送らなくなったし車にも乗っていない、近頃あまり肉や脂を食べないし酒量も減った、水も昔ほど使っていない」ということです。これは正に退職後の高齢者世帯の消費行動そのものではありませんか。

P142
…「生産年齢人口の波」の減少局面に突入した日本。定年退職者の増加→就業者数の減少によって内需は構造的な縮小を始めました。



 しかも、55歳~64歳の男性就業率は、これらの国の中ではダントツに高いです。

グラフ出典 岩田克彦 労働政策研究・研究機構客員研究員『欧州の高齢者雇用対策と日本』

高齢男性 就業率.jpg

 フランスなど、「早く退職させろ」と、公務員がストライキする国です。理由は、年金額が、現役時代の6~7割、保障されているからです。以下記事参照

newsdigest.fr/newsfr/index.php?...&task=view&id=979&Itemid=7
sukuramu.at.webry.info/201005/article_5.html
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100624-00000871-reu-bus_all


 日本の高齢者だけが、よく働き、「モノ」を買わない人種ということになります。

藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21
P268
「経済を動かしているのは…現役世代の数の増減だ」。この本の要旨を一言でいえばそうなりましょう。…「生産年齢人口の減少と高齢者の激増」という日本の現実…。


 これが、藻谷氏の主張する「デフレの正体」です。

 では、本当の「デフレの正体」とは何か。供給>需要による、需給ギャップと、日銀の金融政策にあります。

2010-05-09記事 ブログ カテゴリ「デフレとは(6)」参照

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