ポツダム宣言は、「無条件降伏」ではない
東京書籍『政治・経済』H20.2.10 p24
1945年(昭和20)、日本は無条件降伏をせまるポツダム宣言を受諾し、連合国に降伏した。
帝国書院『高校生の新現代社会』H20.2.10 p100
1945(昭和20)年、8月14日、日本はポツダム宣言を受諾して、アメリカなどに無条件降伏しました。
帝国書院『アクセス現代社会2009』H21.2.25 p155
1945年、ドイツ・ベルリン郊外のポツダムで行われた連合国の首脳会談において、アメリカ・イギリス・中国(のちにソ連が加わる)の連名で発せられた全13項目からなる共同宣言であり、日本に無条件降伏を迫るものである。 「無条件降伏」はゴシック体で書かれています。
<ポツダム宣言=有条件降伏文書>
ポツダム宣言の全文です。(ひらがな版) 出典:下記HP
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/potudamusenngenn.htm#hiraganabunn
1 吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート、ブリテン」国総理大臣は吾等の数億の国民を代表し協議の上 日本国に対し今次の戦争を終結するの機会を与ふることに意見一致せり
2 合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は西方より自国の陸軍及空軍に依る数倍の増強を受け日本国に 対し最後的打撃を加ふるの態勢を整へたり 右軍事力は日本国が抵抗を終止するに至るまで同国に対し戦争を遂行す るの一切の聯合国の決意に依り支持せられ且鼓舞(こぶ)せられ居(お)るものなり
3 蹶起(けっき)せる世界の自由なる人民の力に対する「ドイツ」国の無益且無意義なる抵抗の結果は日本国国民に 対する先例を極めて明白に示すものなり 現在日本国に対し集結しつつある力は抵抗する「ナチス」に対し適用せら れたる場合に於て全「ドイツ」国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃(こうはい)に帰せしめたる力に比し 測り知れざる程度に強大なるものなり 吾等の決意に支持せらるる吾等の軍事力の最高度の使用は日本国軍隊の不可 避且完全なる壊滅を意味すべく又同様必然的に日本国本土の完全なる破滅を意味すべし
4 無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の淵に陥れたる我儘(わがまま)なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続 き統御(とうぎょ)せらるべきカ又は理性の経路を日本国が履(ふ)むべきかを日本国がけっていすべき時期は到来 せり
5 吾等の条件は左(以下)の如(ごとし)し
吾等は右条件より離脱することなかるべし 右に代る条件存在せず吾等は遅延を認むるを得ず
6 吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐(くちく)せらるるに至る迄は平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざる ことを主張するものなるを以て日本国国民を欺瞞(ぎまん)し之をして世界征服の挙に出ずるの過誤(かご)を犯さ しめたる者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず
7 右の如き新秩序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が破砕(はさい)せられたることの確証あるに至る迄は聯合 国の指定すべき日本国領域内の諸地点は吾等の茲(ここ)に指示する基本的目的の達成を確保する為占領せらるべし
8 「カイロ」宣言の条項は履行せらるべく又日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に 局限せらるべし
9 日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらる べし
10 吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも吾 等の俘虜(ふりょ)を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし 日本国政府は日 本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙(しょうがい)を除去すべし 言論、宗教及思 想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし
11 日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし 但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は此の限に在らず 右目的の為原料の入手(其の 支配とは之を区別す)を許可さるべし 日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし
12 前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せら るるに於ては聯合国の占領軍は直に日本国より撤収(てっしゅう)せらるべし
13 吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる 保障を提供せんことを同政府に対し要求す 右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅(かいめつ)あるのみとす
条件は、次の通りです。
1.軍国主義の除去、
2.日本国領土の占領、
3.カイロ宣言の条項の履行、および本州、北海道、九州、四国および連合国が決定する諸小島への日本の主権の制 限、
4.日本国軍隊の完全な武装解除、
5.戦争犯罪人に対する厳重な処罰、ならびに民主主義の確立、
6.賠償の実施と平和産業の確保。
このように、ポツダム宣言は「条件を挙げた」降伏勧告です。
<無条件降伏の真相とは>
無条件降伏は、13条に、「全日本国軍隊の無条件降伏」と書かれています。軍隊は、まさに無条件で降伏しました。
帝国海軍、帝国陸軍は、即時武装解除されます。海軍の艦船、航空機などは、没収、破壊されました。そして、全員がクビになりました。「無条件降伏」ですから文句なしです。
さて、この降伏を日本は受け入れたのですが、その後、ソ連は捕虜をシベリア抑留し、北方領土は事実上占領を続行されます。
連合国軍総司令部(GHQ)は絶対で、日本は「憲法」も改正させられます。こんなことは、ポツダム宣言には書かれていません。宣言受け入れ後の占領は、有無をいわさぬ「無条件」でした。事実上、無条件で占領されたと言えるでしょう。
<教科書出版社>
「日本は無条件降伏した」の訂正について、ある教科書会社とやりとりした結果です。
改訂前の教科書『政経』においては,「日本政府はポツダム宣言を受諾して,連合国に無条件降伏した。」としていた箇所を,改訂版教科書『政経』p.○○において,「日本政府はポツダム宣言を受諾して,連合国に降伏した。」とし「無条件」との表現を外した件について。
ポツダム宣言第13条
「吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し…」この13条では「無条件降伏」の主語が「全日本国軍隊」であり,これに対して『政経』の該当文章の主語が「日本政府」であることから,この文章では「無条件」を外した方が適切と判断いたしました。
以上につきまして,執筆者○○先生の見解である「日本政府の要求した条件が連合国側に受け入れられたとは考えにくいことから,実質的に無条件降伏と言えるのではないか」という考え方と矛盾するとは考えていないのですが,以上の記述から確かなのは「日本国軍が無条件降伏」したことだ,という認識から,改訂版のように改めさせていただいた次第です。
ただ,事実として記述を訂正したわけですから,改訂版と比べて以前の『政経』の記述が,より適切ではなかったと判断した,と捉えられても仕方のないことと考えております。
このように、 「無条件」を外した会社もあります(指摘して、変更に至ったのは、ほかにも数社あります)。
一方、帝国書院『アクセス現代社会2009』は、「日本に無条件降伏を迫るものである。」とする記述を、変更しない方針だそうです。理由は、「事実上無条件だから」というものです。
帝国書院が、「無条件降伏」をいつまで掲載するのか、注目しています。
1945年(昭和20)、日本は無条件降伏をせまるポツダム宣言を受諾し、連合国に降伏した。
帝国書院『高校生の新現代社会』H20.2.10 p100
1945(昭和20)年、8月14日、日本はポツダム宣言を受諾して、アメリカなどに無条件降伏しました。
帝国書院『アクセス現代社会2009』H21.2.25 p155
1945年、ドイツ・ベルリン郊外のポツダムで行われた連合国の首脳会談において、アメリカ・イギリス・中国(のちにソ連が加わる)の連名で発せられた全13項目からなる共同宣言であり、日本に無条件降伏を迫るものである。 「無条件降伏」はゴシック体で書かれています。
<ポツダム宣言=有条件降伏文書>
ポツダム宣言の全文です。(ひらがな版) 出典:下記HP
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/potudamusenngenn.htm#hiraganabunn
1 吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート、ブリテン」国総理大臣は吾等の数億の国民を代表し協議の上 日本国に対し今次の戦争を終結するの機会を与ふることに意見一致せり
2 合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は西方より自国の陸軍及空軍に依る数倍の増強を受け日本国に 対し最後的打撃を加ふるの態勢を整へたり 右軍事力は日本国が抵抗を終止するに至るまで同国に対し戦争を遂行す るの一切の聯合国の決意に依り支持せられ且鼓舞(こぶ)せられ居(お)るものなり
3 蹶起(けっき)せる世界の自由なる人民の力に対する「ドイツ」国の無益且無意義なる抵抗の結果は日本国国民に 対する先例を極めて明白に示すものなり 現在日本国に対し集結しつつある力は抵抗する「ナチス」に対し適用せら れたる場合に於て全「ドイツ」国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃(こうはい)に帰せしめたる力に比し 測り知れざる程度に強大なるものなり 吾等の決意に支持せらるる吾等の軍事力の最高度の使用は日本国軍隊の不可 避且完全なる壊滅を意味すべく又同様必然的に日本国本土の完全なる破滅を意味すべし
4 無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の淵に陥れたる我儘(わがまま)なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続 き統御(とうぎょ)せらるべきカ又は理性の経路を日本国が履(ふ)むべきかを日本国がけっていすべき時期は到来 せり
5 吾等の条件は左(以下)の如(ごとし)し
吾等は右条件より離脱することなかるべし 右に代る条件存在せず吾等は遅延を認むるを得ず
6 吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐(くちく)せらるるに至る迄は平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざる ことを主張するものなるを以て日本国国民を欺瞞(ぎまん)し之をして世界征服の挙に出ずるの過誤(かご)を犯さ しめたる者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず
7 右の如き新秩序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が破砕(はさい)せられたることの確証あるに至る迄は聯合 国の指定すべき日本国領域内の諸地点は吾等の茲(ここ)に指示する基本的目的の達成を確保する為占領せらるべし
8 「カイロ」宣言の条項は履行せらるべく又日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に 局限せらるべし
9 日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらる べし
10 吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも吾 等の俘虜(ふりょ)を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし 日本国政府は日 本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙(しょうがい)を除去すべし 言論、宗教及思 想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし
11 日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし 但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は此の限に在らず 右目的の為原料の入手(其の 支配とは之を区別す)を許可さるべし 日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし
12 前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せら るるに於ては聯合国の占領軍は直に日本国より撤収(てっしゅう)せらるべし
13 吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる 保障を提供せんことを同政府に対し要求す 右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅(かいめつ)あるのみとす
条件は、次の通りです。
1.軍国主義の除去、
2.日本国領土の占領、
3.カイロ宣言の条項の履行、および本州、北海道、九州、四国および連合国が決定する諸小島への日本の主権の制 限、
4.日本国軍隊の完全な武装解除、
5.戦争犯罪人に対する厳重な処罰、ならびに民主主義の確立、
6.賠償の実施と平和産業の確保。
このように、ポツダム宣言は「条件を挙げた」降伏勧告です。
<無条件降伏の真相とは>
無条件降伏は、13条に、「全日本国軍隊の無条件降伏」と書かれています。軍隊は、まさに無条件で降伏しました。
帝国海軍、帝国陸軍は、即時武装解除されます。海軍の艦船、航空機などは、没収、破壊されました。そして、全員がクビになりました。「無条件降伏」ですから文句なしです。
さて、この降伏を日本は受け入れたのですが、その後、ソ連は捕虜をシベリア抑留し、北方領土は事実上占領を続行されます。
連合国軍総司令部(GHQ)は絶対で、日本は「憲法」も改正させられます。こんなことは、ポツダム宣言には書かれていません。宣言受け入れ後の占領は、有無をいわさぬ「無条件」でした。事実上、無条件で占領されたと言えるでしょう。
<教科書出版社>
「日本は無条件降伏した」の訂正について、ある教科書会社とやりとりした結果です。
改訂前の教科書『政経』においては,「日本政府はポツダム宣言を受諾して,連合国に無条件降伏した。」としていた箇所を,改訂版教科書『政経』p.○○において,「日本政府はポツダム宣言を受諾して,連合国に降伏した。」とし「無条件」との表現を外した件について。
ポツダム宣言第13条
「吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し…」この13条では「無条件降伏」の主語が「全日本国軍隊」であり,これに対して『政経』の該当文章の主語が「日本政府」であることから,この文章では「無条件」を外した方が適切と判断いたしました。
以上につきまして,執筆者○○先生の見解である「日本政府の要求した条件が連合国側に受け入れられたとは考えにくいことから,実質的に無条件降伏と言えるのではないか」という考え方と矛盾するとは考えていないのですが,以上の記述から確かなのは「日本国軍が無条件降伏」したことだ,という認識から,改訂版のように改めさせていただいた次第です。
ただ,事実として記述を訂正したわけですから,改訂版と比べて以前の『政経』の記述が,より適切ではなかったと判断した,と捉えられても仕方のないことと考えております。
このように、 「無条件」を外した会社もあります(指摘して、変更に至ったのは、ほかにも数社あります)。
一方、帝国書院『アクセス現代社会2009』は、「日本に無条件降伏を迫るものである。」とする記述を、変更しない方針だそうです。理由は、「事実上無条件だから」というものです。
帝国書院が、「無条件降伏」をいつまで掲載するのか、注目しています。
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