絶対的権力者 検察

日経H23.4.16 『初の一部可視化実施』
 東京地検特捜部が取り調べの録音・録画(可視化)を初めて実施したことが15日、関係者の話で分かった。…取り調べの全過程を録音する「全面可視化」ではなく、供述の確認やっ調書の読み聞かせなど一部を記録するとみられる。
…元厚生労働省局長の無罪が確定した郵便料金不正事件を受け、最高検は特捜部が3月18日以降に容疑者を逮捕した事件で取り調べの録音・録画を試行する方針を公表。
 検察の取り調べの、一部可視化が試行されました。

 この、可視化実験の契機となったのは、下記の2つの事件です。

(1)捜査で押収した証拠品のフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、証拠隠滅罪に問われた   大阪地検特捜部の元主任検事、前田恒彦被告(43)に対し、懲役1年6月(求刑・懲役2年)の実刑判決。

(2)郵便不正を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改ざんに関連した犯人隠避事件。最高検に逮捕された  大阪地検の前特捜部長・大坪弘道(57)、前副部長・佐賀元明(49)両容疑者。

 これら、前田元検事、佐賀容疑者は、村木さんの事件でも密室での取り調べが強く批判されたなどとして、取り調べの全過程を録音録画する「全面可視化」を求め、佐賀容疑者は、最高検に文書で申し入れました。

http://www.youtube.com/watch?v=4xYhjvDITW8
You Tube元大阪地検副部長づら佐賀取り調べ可視化を要求
 

 なぜ、元検事が可視化を求めたのでしょうか。

 想定した筋立てに沿って取調べを行い、否認する容疑者の声には耳を貸さず、否認には、長期の勾留や保釈をちらつかせ、筋立てどおりの供述を取り、起訴する。それには、密室での取調べが不可欠。 

 自分たちが行ってきたやり方を、「自分が容疑者となる取り調べに、適用されたくない」という、考えからなのでしょう。

 そもそも、日本の検察は、むちゃくちゃな「独裁的権力保持者」です。捜査権・ 逮捕権・起訴権・控訴提起権、すべて持っています。ほとんど、万能です。権力分立ではなく、権力集中です。

三権分立.jpg
 本来であれば、上図のような権力の「抑制と均衡」が望ましいはずです。ですが実態は、

検察権利.jpg
こうなっています。

 特捜部でおなじみのように、検察は「逮捕・取調べ」権を持っています。そして、「起訴するかどうか」の権利を、独占して持っています(検察審査会は除く)。

 検察官は英語でpublic prosecutorといいます。文字通りの意味は「公の訴追者」です。警察以外にも、国税庁や税関など捜査機関はいくつもありますが、裁判所に対し、「この刑事事件の審理を願います」という「起訴(訴追)」ができるのは、日本では検察だけです。であるならば、わざわざ「公」をつける必要はありません。

 実は、世界では「公」ではなく私人の起訴が当たり前なのです。「私人の起訴者private prosecutorがない国は、日本と韓国だけです。実際、英米法の国だけではなく、日本が刑事司法制度を習った大陸法のドイツも私人起訴を認める国です。いわく、「もし私人起訴が認められないとしたら、検察が不起訴にした場合、どうやって救済されるのか。」これは日本(韓国)以外では当たり前の疑問なのです。一般の人が、起訴をできるのが、当たり前なのです。

 不起訴事件は完全に闇の中に葬り去られるので、報道されることもありません。凶悪犯罪だけでも、検察は年間1724件も不起訴にしています(平成14年版 犯罪白書)。殺人事件に限っても、検察庁処理人員1386人中、家裁送致69人、起訴は788人。残り529人が不起訴処分です(平成9年 同)。

 被害者側、遺族がどんなに悔しい思いをしても、起訴するかしないかは、検察が決めるのです。

 しかも、事実上の「裁判権」を握っているのも、「検察」です。起訴されて裁判で無罪判決が出るのは、最近では、文字通り0件(『平成14年版・犯罪白書』)です。世に言う99%の有罪率なのです。有罪かどうか、検察官が決めているといっても過言ではありません。過去の判例に基づき、 「確実に有罪判決が出る事例」しか、起訴しないからです。

<警察の要求する司法取引> 

 警察は、「可視化」の流れに対して、「自白が得にくくなる」として、司法取引などの導入を検討しています。
 司法取引は、アメリカの警察・検察のテレビドラマ、映画でおなじみですが、「罪を認める代わりに、刑を軽くする」というものです。例えば、組織犯罪で、犯罪を命令した確信犯に迫る為に、下っ端のものを逮捕し、「自供をすれば、免責にする」というような事例があります。
 大きな犯罪を裁く為に、小さな犯罪の刑を軽くするものです。真相を求め、潔癖さを追究するる、日本人にはなじまないかもしれませんが、世界の大勢は導入済みです。
 加えて、容疑者のDNA強制採取や、通信傍受(今は、薬物や銃器犯罪などの組織犯罪に限定)の拡充も検討されています。

 北海道新聞H23.4.8
司法取引.jpg
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新聞を解説(59) 冤罪

11月4日23時38分配信 毎日新聞

 女性に抱きついたなどとして強制わいせつ未遂罪に問われた北海道中標津町の自営業、谷内保男さん(45)を逆転無罪とした札幌高裁判決(10月22日)について、札幌高検は4日、上告を断念した。…谷内さんの無罪が確定する。
 谷内さんは08年、電気温水器の修理の依頼を受け訪れた中標津町内の女性(当時21歳)宅で、女性に抱きつき、暴行しようとしたなどとして逮捕、起訴された。谷内さんは一貫して無罪を主張。1審・釧路地裁は懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡したが、2審・札幌高裁は「女性の証言の信用性に重大な疑問がある」として無罪を言い渡した。
 谷内さんは「当たり前のことでうれしいという気持ちはない。家族や支援者の支えがあってここまで来られた。冤罪(えんざい)をなくすため、警察、検察は捜査を尽くしてほしい」と話した。

『卓上四季』北海道新聞 H21.11.7

 再審が始まった足利事件と並ぶ冤罪に、7年前に富山県氷見市で起きた連続女性暴行事件がある。タクシー運転手をしていた柳原博(42)さんが犯人として逮捕された。…懲役3年の刑で服役…その後真犯人が捕まり、再審で無罪となった。…密室での長時間にわたる聴取。いくら否認しても聞いてくれない。精神的にも肉体的にも限界となり、何を言ってもダメだ、とあきらめたという。


 冤罪事件です。どの事件も、「検察(警察?)」の強引な取り調べがあったことが分かっています。起訴をすれば、必ず有罪に持ち込む、持ち込まなければならないというのが、今までの検察の在り方でした。

 今回の東京地検特捜部による、小沢幹事長の聴取についてです。
東京地検特捜部を、『巨悪を追求する』正義の組織と見ては、権力分立の観点から、見あやまります。

検察 ①起訴する権利を独占的に持つ(有罪かどうかを、検察が判断する)
    ②捜査権を持つ (本来は警察のもの)


 

菅原晃「司法制度改革における、裁判員制度導入の経緯と行方」(H16)より抜粋

 日本人の「お上は間違わない」思想により、日本の検察は、恐ろしく肥大化した権力を保持する。それも検察官出身の代議士ですら「世界一」と認めざるをえない権限を持つにいたったのである(起訴権の独占と捜査権保持)。その上で、起訴されて裁判で無罪判決が出るのは、最近では、文字通り0件(『平成14年版・犯罪白書』)である。世に言う99%の有罪率である。有罪かどうか、検察官が決めているといっても過言ではない。

 検察官は英語でpublic prosecutor。文字通りの意味は「公の訴追者」である。警察以外にも、国税庁や税関など捜査機関はいくつもあるが、裁判所に対し、「この刑事事件の審理を願います」という「起訴(訴追)」ができるのは、日本では検察だけである。であるならば、わざわざ「公」をつける必要はない。

 実は、世界では「公」ではなく私人の起訴が当たり前なのである。「私人の起訴者private prosecutorがない国は、日本と韓国だけだ。実際、英米法の国だけではなく、日本が刑事司法制度を習った大陸法のドイツも私人起訴を認める国である。いわく、「もし私人起訴が認められないとしたら、検察が不起訴にした場合、どうやって救済されるのか。」これは日本(韓国)以外では当たり前の疑問なのだ。

 不起訴事件は完全に闇の中に葬り去られるので、報道されることもない。凶悪犯罪だけでも、検察は年間1724件も不起訴にしている(平成14年版 犯罪白書)。殺人事件に限っても、検察庁処理人員1386人中、家裁送致69人、起訴は788人。残り529人が不起訴処分である(平成9年 同)。

 加えて、「起訴しても無罪になりそうなので不起訴」に加え、起訴を猶予する権限も検察だけにある。これを、「起訴便宜主義」と言うが、これは、日本が刑事司法制度をならったドイツにはなく、わが国が独自に始めたものである(刑事訴訟法第248条)。証拠がそろっていて起訴すれば有罪が取れる場合でも、種々の事情を考慮して起訴をしない。種々の事情とは「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況(刑事訴訟法248条)」である。前科なし、若・老年、軽微な罪、被害弁償・・・などが起訴猶予になる主因子である。日本では、毎年刑法犯の約3分の1がこの起訴猶予処分にされる。

 前述のように日本の有罪率は99%である。検察は(確実に)有罪になる罪しか起訴しない。逆に言えば、裁判所が「無罪」とするおそれのある事件は起訴しないのである。傷害致死でも起訴猶予にするということは、傷害致死が「有罪にならない」ことを、裁判所が判例で示しており、検察が起訴をする・しないの決定は、その判例のガイドラインにそうものと解釈できる。

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