<お知らせ:12月14日より、3週間入院します。13日以降の、記事の更新は、来年になります>日経21年11月21日
『ドル離れ、円高一段と』
…円相場が1ドル86円29銭まで急上昇…14年4ヶ月ぶりの高値をつけた。米国の超低金利政策の長期化観測で、ドルの先安感が広がる中、ドル売りの受け皿として、円に資金が流れ込んだ。
円高が加速したのは、ドルの先安感が一段と強まったためだ。これまで、オーストラリアなどの高金利通貨や金融などの商品がドル売りの受け皿になっていたが…低金利の円にも一気に流れ込んだ。
『警鐘放置なら市場不信任』
…だが、円にも買われる理由がある。米金利の低下で日本の短期金利の方が高くなってしまったことだ。しかも、デフレを放置してきた結果、「日本は物価変動を加味した実質金利が割高となった」
『ドル全面安の危機には協調して対応を』
…円がこのまま上昇するようなら、日本は円売り・ドル買いの介入をためらうべきではない。
日経21年11月28日『為替介入、遠い国際協調』
…円高ドル安の根本的な原因は「経済の低迷を背景とした米長期金利の低下」…「仮に介入してもかつてのような効果は期待できない」との見方もある。国際決済銀行(BIS)によると、世界の外国為替市場の1日平均の取引高は、直近データの07年で92年の約3.6倍に膨らんだ。
日経21年11月21日『経済全体には打撃 円高 GDP を下押し』
円高は輸出産業に悪影響をもたらし、取引を下押しする。ただ一方で、輸入品は値下がりするため、原燃料を輸入に頼る企業や個人にはメリットもある。日本経済は…立場によって影響も異なる。
第一生命経済研究所の永浜主席エコノミストによると…今年度の国内総生産成長率を0.3ポイント押し下げる。…輸出産業や関連産業への悪影響が大きいためだ。… 一方、輸入価格が下がることのメリットもある。例えば原料を輸入に頼る電力会社や航空会社は円高で燃料の購入費が安くなり収益にプラスに働く。海外のブランド品やワインなどの値段が安くなり、消費者にはメリットもある。…輸入品ばかり売れるようになれば、国内メーカーの経営が苦しくなったり、工場の空洞化が進んだりして、結局は日本経済に悪影響が及ぶ。<円高で輸出に打撃?> まあ、確かにそうなのですが、皆さん、日本の貿易黒字(輸出-輸入)が、日本のGDP(国内総生産=GDI)に占める割合は、ご存知でしょうか。答
2007年で、1.67%です。
数字出典 内閣府HP http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h19-kaku/21annual-report-j2.html
「(1)国内総生産勘定(生産側及び支出側)」 内需98.33% 外需1.67% この数字のどこが、「貿易立国?」なんでしょう?
「
日本経済は、輸出で成り立っている」→「
円高だ」→「輸出企業は大打撃だ」→「
日本経済危機だ」
こんな、
新聞記事みたいなことは、起こらないのです。
実際の数値グラフです。出典は同じ 実質国内総生産の値を使用

この棒グラフで、
上のほうで、かぶさっているように見える赤いフタ。これが、
「貿易立国?の正体=貿易黒字」です。
こんな数値で、「貿易摩擦」とか、「貿易立国?」とか、「外需に依存する日本経済」とか、どうして主張できるのか、さっぱり理解できません。 円高が影響を及ぼすのは、この赤いフタ部分のみです。
この赤いフタ部分だけを抽出すると、下記のグラフになります。「
日本は8兆円もの黒字を出している!」となります。
比較対象がないから、大きな数字に見えますが、
「貿易黒字=1.67%」という割合は、
体重60キロの人にとって、1002グラム相当です。無理すれば、2日で、ダイエットできる数値です。
このような数字は、日本経済にとってほとんど「誤差」に均しく、この
貿易黒字を「減らせ」だの、「内需拡大を」だのと言っているのは、体重60キロの人の100グラムについて、「あーだこーだ」と言っているに過ぎません。
日本は、巨大な「内需」の国なのです。
外国と比較してみましょう。輸出額のGDPに対する比率です。数字が大きいほど、「貿易立国?」となります。
2007年 輸出額/GDP比率 データ出典 JETRO 内閣府HPアメリカ 日本 イギリス ロシア 中国 韓国 ドイツ
8.4 15.5 15.7 27.3 36.0 38.3 39.8

日本よりも、工業製品を輸出していないこと確実!なイギリスでさえ、日本の比率より上です。真の
「貿易立国?」なるものは、
中国や韓国や、ドイツですね。
高度成長期の「内需・外需」
高度成長期も同じです。日本は
、「内需拡大」したのです。「赤いふた=貿易黒字」どころか、1961年と1963年は、「貿易赤字」です。しかし、GNP(当時)は拡大しています。簡単に言うと、
われわれの給与は「貿易赤字」の年も拡大しているのです。
貿易黒字・赤字と経済成長は、無関係なのです。
<輸出増(減)=輸入増(減)> 日本の貿易黒字を、%で示すと、誤差の範囲程度の大きさになるのは、
輸出増=輸入増だからです。
日本の
輸出額は、87兆5047億円(2007年)です。これは、巨額です。日本のGDP比率、15.5%は、額でみるとやはり、途方もない金額です。この業界は間違いなく円高=輸出減=不利です。
ところが、このブログ
「リカード比較生産費説 14」で明らかにしたように、
輸出増=輸入増なのです。輸出するためには、日本の労働者と、資本(カネ)を、輸出業にシフトしなければいけません。 その労働者・資本(カネ)は、どこから持ってくるのでしょう?それは、比較劣位産業からです。
「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出が増えると、輸入が増えるという、相関関係になっていることがわかります。この、
輸入業界は、「円高」のメリットを享受します。
「一方、輸入価格が下がることのメリットもある。例えば原料を輸入に頼る電力会社や航空会社は円高で燃料の購入費が安くなり収益にプラスに働く。海外のブランド品やワインなどの値段が安くなり、消費者にはメリットもある。」
日本の
輸入額は、61兆2216億円(2007年)です。これも、巨額です。日本のGDP比率、13.1%は、額でみるとこのように、途方もない金額です。この業界は間違いなく
円高=輸入増=有利です。
1ドル100円から、1ドル85円になったとします。15%の円高です。輸入業界は、61兆2216億円だった輸入額が、52兆384億円しかかからなくなります(単純計算)。
9兆1832億円も、得します。
一方、輸出業界は、87兆,5047億円が、74兆3790億円に減ります(単純計算)。
13兆1257億円、損します。
その結果、輸出額-輸入額=純輸出額は、3兆9425億円分目減り、すなわち影響を受けることになります。(13兆1257億円-9兆1832億円)
純輸出額3兆9425億円は、2007年のGDP、560兆,8164億円の0.7%に相当します。
60キロの体重の人に例えたら、420グラムです。
しかも、
貿易黒字=資本収支赤字=海外投資額ですから、今まで
100万ドル=1兆円で、購入できた土地や株式や社債が、100万ドル=8500億円で購入できます。ですから、
円高で、1ドル=100円から、85円になったとしても、ドル建て海外資産(量)は、同じです。
結論 純輸出入差額(貿易黒字)
1ドル=100円時 1ドル=85円時
26兆2831億円 22兆3406億円 15%減
↓ ↓
ドル建て海外資産額=同じ純輸出入差額=貿易黒字額=資本収支赤字=海外投資額 貿易黒字額は、海外資産であり、
日本人の生活を直ちに豊かにするものではありません。
日経H21.12.7「企業に北風より太陽」
…急激な円高は企業の輸出競争力を損なう。国内経済のデフレ圧力にもなりかねない。 新聞は、危機をあおるように書きます。
「円高は、日本経済にとってまずい!」は、根拠のない神話です。
theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育