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日銀理論

<日銀理論>

(1)


日本経済は11年度後半より緩やかな回復経路へ=白川日銀総裁
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPJAPAN-21465820110601
[東京 1日 ロイター] 

 日銀の白川方明総裁は1日、日銀金融研究所主催の国際コンファランスであいさつし、東日本大震災によるサプライチェーン(供給体制)の寸断、電力不足など供給面での制約要因は「企業努力により当初に予想されたより早く緩和されつつある」との見方を示した。
 …また、かつてシカゴ大で講義を受けたミルトン・フリードマン教授による「インフレはいつ、いかなる場合も、貨幣的現象である」との主張に言及。貨幣量の変化が長期的に物価上昇率に影響を与えるのであれば、デフレも貨幣的現象であり、中央銀行が巨額の資金供給で物価水準を引き上げることが可能、とする一方、「それは近年の日米での経験と整合しない」と指摘。デフレは貨幣的現象であるよりも、高齢化や労働人口の減少など経済の基礎的条件の構造的要因に起因するとの自説を示し、「マネタリーベースの大幅な拡大は、相応のマネーストック拡充や物価上昇をもたらさなかった」と結論づけた。

 日経H22.12.11
日銀総裁写真

白川 日銀総裁.jpg



(2)

http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/882.html
白川総裁、国家破産を示唆する

慎重な発言の日銀・白川総裁が、国家破産を匂わせる発言をしている。
以下は、本日のロイターからの抜粋である。

◆日銀の白川方明総裁は28日、都内で開かれた日本金融学会で講演し、財政悪化に警鐘を鳴らすと「オオカミ少年」のように受け取られるが、政府の支払い能力に対する信認は突如低下し長期金利が急騰する可能性がある、と強調した。

…◆また、「財政赤字の拡大や日銀の独立性が尊重されていないと感じられる出来事が起こると、最終的に激しいインフレが生じるだろうと考える傾向が生まれる」、「はっきりしていることは、予想は非連続的に変化するということ」と指摘。「欧州周辺国のソブリン・リスク問題にみられるように、財政の維持可能性に対する信認が低下すると、財政と金融システム、実体経済の三者の間で負の相乗作用が生じ、経済活動にも悪影響が及ぶ」と述べた。

◆ 日銀が国債の買い入れを行う際、銀行券の発行残高を上限とする、いわゆる日銀券ルールについて、「時として、そうしたルールを設けることに対する批判が聞かれるが、仮に、これだけ多額の国債を買い入れている中央銀行が、その買い入れに当たっての基本原則も明らかにせずに行動すると、不確実性が増大し、リスクプレミアムが発生することから、その分長期国債金利が上昇する」と説明。 例えば「ギリシャやアイルランドの中央銀行が突然国債買いオペを大規模にはじめると状況は更に悪化する」と述べた。


 「国債の日銀引き受けはできない、デフレは金融政策ではなく、構造改革(実態経済)で克服すべし」という、考え方を吐露しています。彼はなんと 「フリードマン」に教わっていたのですね。
 デフレは、金融政策では解決しないのでしょうか?


<経済学の原理>


 …かつてシカゴ大で講義を受けたミルトン・フリードマン教授による「インフレはいつ、いかなる場合も、貨幣的現象である」との主張に言及。貨幣量の変化が長期的に物価上昇率に影響を与えるのであれば、デフレも貨幣的現象であり、中央銀行が巨額の資金供給で物価水準を引き上げることが可能、とする一方、「それは近年の日米での経験と整合しない」と指摘。デフレは貨幣的現象であるよりも、高齢化や労働人口の減少など経済の基礎的条件の構造的要因に起因するとの自説を示し…

マンキューの「経済学の10大原理」の1つです。

『マンキュー経済学Ⅰミクロ編』 東洋経済新報社 2004 P18
 
第9原理:政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する

…インフレは何によって引き起こされるのだろうか。大幅で持続的なインフレについては、そのほとんどが同じ原因によって発生することが明らかになっている。それは貨幣供給量の増大である。政府がその国の貨幣供給量を大幅に増やすと、貨幣の価値は下落する。1920年代初期のドイツにおいて、物価が1か月ごとに3倍になっていたころ、貨幣供給量も毎月3倍に増えていた。それほど劇的ではないにせよ、アメリカ経済の歴史も同様な結論を示している。1970年代の高インフレは貨幣供給量の急激な増大につれて起こっており、1990年代の低インフレは貨幣供給量のゆるやかな増大に伴っているのである。
 

 「インフレ=貨幣供給量増大によるもの」は共通理解(原理)ですよね。インフレはそうなのですが、「デフレ=貨幣供給量低下によるもの」ではないのでしょうか?

 経済学では、「インフレは金融政策によるもの、デフレは実体経済によるもの」という理論があるのでしょうか? ものすごく高等な理論の世界では、原理になっているのでしょうか?

 日銀審議委員の1人、宮尾龍蔵氏は、かつて(2002年ごろ)、「デフレ=構造的要因」として、金融緩和では解決できないことを主張していました。

http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/academic/newsletter/column/pdf/column002.pdf#search='デフレ 貨幣'

 ですが、審議委員に就任した際のインタビューでは、「当時はそうだったが今後は違う」と、やんわりと否定しています。

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0407&f=business_0407_093.shtml

 「私がこれまでの色々な著作あるいは論文等で申し上げてきたことは、1990年代末から2000年代初頭にかけての、日本が本当に苦しく、いわゆるデフレスパイラルと言われたような、あるいは資産デフレが非常に深刻であったり、不良債権問題の解決の出口がみえない、そういった時の評価です。その当時は、金融政策で何かするというよりも、問題の根源は例えば不良債権問題であったり、様々な構造調整が重要であるというように認識していました。その当時の経済状況のもとでは、そうした評価をしていたということには変わりありません。
  ただし、これからまた同じかというと、その前提が、もしかして違うかもしれません。具体的に申し上げると、例えば金融システムの問題に関しては、欧米先進各国は現在、かつての日本のように非常に傷んでいるようですが、日本は、相対的にはそれほど問題が深刻ではないと思います。今後は政策効果について、データや情報の収集等を通じて見極めていきたいと思っています」
 

 どうして審議委員に採用されたか?理由は明らかです。

 世界の、日本の経済学者は、どのような立場をとっているのでしょうか。

http://www.asyura2.com/0510/hasan43/msg/152.html

…リフレ派を「日本経済の長期低迷からの脱出に関して、決定的に重要なのは金融政策であるとする立場」と定義しておくことにする。

 まずは、学界である。学界といってもいろいろなレベルがあるので、最初に「世界の学界」を見てみよう。…端的に言って、数多くのノーベル賞受賞者を含む第一線のマクロ経済学者の中で、上の意味でのリフレ派に属していないのは、思いつくところでごく一人とか二人にすぎない。逆にいえば、それ以外のすべてはリフレ派である。

 上記『エコノミスト・ミシュラン』では、そうした海外リフレ派経済学者の代表として、ポール・クルーグマン、ベン・バーナンキ、ジョセフ・スティグリッツ、ケネス・ロゴフ、アラン・ブラインダー、ラルス・スヴェンソン、バリー・アイケングリーンらに言及している。しかしながら、これらは氷山の一角にすぎない。特筆すべきは、故ジェームズ・トービンとミルトン・フリードマンあるいはロバート・ルーカスといった、現代マクロ経済学の各潮流を代表する長年の論敵同士さえもが、この局面では「リフレ派」に含まれてしまうという事実である。その意味では、リフレ派の立場は、世界の学界レベルではすでに十分すぎるほどの合意を得られたものなのであって、完全に「決着済み」なのである。

 その海外の専門家にとって、日本の金融政策論議がいかに奇々怪々なものかは、現在はアメリカFRBの理事を務めるベン・バーナンキが、日銀の金融政策決定会合での議論(毎回英文でも公表されている)を評して、「中原伸之氏(前日銀審議委員)の発言を除いてすべてジャンク」と述べたことからも窺える。…このレベルにくると、反リフレ派は、具体的な反論もできずに、「他人の議論の援用ではなく自分の頭で考えるべきだ」とか、「日本の風土にあった経済学でないとだめだ」といった怨嗟の抗弁をわずかに試みるのみで、はたから見ても惨めである。

 しかしながら、学界といっても、国内に眼を移すと、様相は若干異なってくる。アカデミックなマクロ経済学者の中にも、反リフレ派の大物や中堅を何人かは見い出すことができる。

 とはいえ、ここでもまだ、状況はまったく絶望的ではない。『エコノミスト・ミシュラン』の「エコノミスト主張別マップ」を見れば明らかなように、リフレ派の中には、岩田規久男、原田泰、深尾光洋、伊藤隆敏、伊藤元重、星岳雄、浜田宏一、竹森俊平、岩井克人、清滝信宏、新保生二、宮尾尊弘といった、海外にもよく名を知られた、日本の代表的マクロ経済学者、エコノミストが網羅されている。この顔ぶれを見れば、リフレ派には、日本を代表するマクロ経済学者の相当部分が含まれているといっても、決して言い過ぎにはならないであろう。

 しかし、専門家の世界をもう少し拡げて、『エコノミスト・ミシュラン』の主な論評対象である経済論壇までをも含めると、勢力分布は大幅に変わってくる。そこでも まだ、上記のようなリフレ派の経済学者およびエコノミストの発言は、きわめて活発 である。しかし、野口悠紀雄、榊原英資、木村剛、小林慶一郎、金子勝、斎藤精一 郎、池尾和人といった各氏らに代表される反リフレ派あるいは構造改革派陣営と比較 すれば、その露出の度合いは著しく狭まる


 足し算でいうと、「リフレ派>反リフレ派」となり、リフレ派は正しいのです。と、量で真偽判定できないのですが・・・。
 世界的なスタンダードはリフレのようです。

<実証・批判>


…かつてシカゴ大で講義を受けたミルトン・フリードマン教授による「インフレはいつ、いかなる場合も、貨幣的現象である」との主張に言及。貨幣量の変化が長期的に物価上昇率に影響を与えるのであれば、デフレも貨幣的現象であり、中央銀行が巨額の資金供給で物価水準を引き上げることが可能、とする一方、「それは近年の日米での経験と整合しない」と指摘。デフレは貨幣的現象であるよりも、高齢化や労働人口の減少など経済の基礎的条件の構造的要因に起因するとの自説を示し…

 日銀白川総裁は、2002年の論文で、貨幣供給が物価水準に影響を与えなかったことを述べています。

 マネタリー・ベースの拡大に対する、典型的な批判は、 「マネタリーベースを拡大しても、マネーストックは拡大しなかったので、効果がない」というものです。日銀をはじめ、色々なところで述べられています。

http://agora-web.jp/archives/1030418.html
日銀がお金を刷れば問題は解決するのか? - 藤沢数希 グラフも

 一部の経済学者は、日銀が大量にお金を刷れば日本経済はよくなると唱えている。いわゆるリフレーション理論である。そして、彼らの矛先は常に日銀批判に向く。日本経済がデフレに苦しみ、過去20年間、世界の経済成長に取り残された主因は日銀が過度に金融を引き締めたためだというのだ。よって、日銀がもっと大量にお金を刷れば、デフレが解決し、日本経済は再び成長軌道に乗ることになる。本当だろうか?


 まず、マネタリー・ベースと、マネーサプライの関係です。両者を1対1と考えることはできません。単純にマネタリー・ベースが増えれば、マネーサプライ(貨幣供給量)も増え、物価が上がるというのを、単純な貨幣数量説と言います。

 ですが、このような説を、現在でも「単純」に信じている人はいませんし、実証的にも成立しません

日経H22.9.9

『マネーストック2.1%増』
日銀が発表した8月の注)マネーストック…M3の平均残高は、前年同月比2.1%増の1079兆4000億円となった。…伸び率は…13か月連続で2%台を記録した。


注)
マネタリーベースは、流通現金+日銀当座預金。日銀は、この合計額を直接コントロールでき、マネーストックに影響を及ぼす。
 マネーストックM3は、一般法人、個人、公共団体(除く国/金融機関)が保有する通貨量。「信用創造(準備預金以外の貸し出し)」によって、マネタリーベースの何倍もの通貨量が創造される。


2009年10月→2010年8月

マネタリーベース  2010年8月 98兆3,995億円
マネーストック         1,079.4兆円 前年同月比2.1%増


マネーストック 変化.jpg

 まあ、図のように、増えることは増えるのですが、単純に1対1で増えるとか、マネタリーベース増→マネーストック増という、因果関係が完全にあるわけではありません。もちろん、「増える(減ることはない)」のは事実なので、日銀はマネタリーベースをコントロールするのです。

マネタリー・ベースとマネーストック

 ですが、「マネタリーベース増→マネーストック増→デフレ脱却になっていないじゃないか」と見ることもできます。「だから、金融政策で、マネタリーベースを増やしても、効果はない=金融政策無効論」です。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51669057.html
2011年01月22日 15:59 池田信夫 貨幣数量説について*


マネーストックと 消費者物価指数

注)マネタリー・ベースを増やしても、銀行が貸し出しを増やさないかぎり、マネー・サプライは増えないという説もあります。日銀が供給しても、当座預金に「ブタ積み」になり、市中に出回らないとするものです。
 ですが、貸し出しが増えなくても、銀行が、「社債」や「株」や、企業や個人の持つ「債券(国債など)」を購入しても、その分、普通預金・当座預金が増えることになり、「マネーサプライ」は増えるのです。


<なぜ、金融緩和なのか>

 このように、単純な貨幣数量説(30年以上前に終わった話です)を支持して、リフレ派は金融緩和を訴えているわけではありません。
 では、なぜ、マネタリー・ベースの拡大を、リフレ派は唱えるのでしょうか。それは、目標が、「将来にかけての貨幣供給の予想」にあるからです。つまり、「予想インフレ率」に影響を及ぼすと考えているからです。

 マネタリー・ベースが増加し続ける(日銀が金融緩和をし続ける)と予測されれば、将来貨幣供給は増えると予想され、インフレを予測することになります。

フィッシャー方程式

実質金利=名目金利-(予想)インフレ率
 0%  =10%-10%


岩田規久男 『デフレと超円高』講談社現代新書 p139金融緩和 予想インフレ率

 このように、日銀の量的緩和政策の維持(米国も同様)は、予想インフレ率を引き上げ、逆に解除は引き下げたのです。


岩田 p213・144

 多くの人が誤解しているが、マネタリー・ベースの持続的な拡大によるデフレ脱却は、中央銀行がばら撒いた貨幣を民間がモノやサービスに使うことから始まるのではなく、自分が持っている貨幣を…使って株式を買ったり、外貨預金をしたり…することから始まるのである。

 量的緩和は…「モノの購入に使われる結果、物価を引き上げる」のではなく、為替相場や株価に影響を与えることから、その効果を発揮し始めるのである。


金融緩和継続
  ↓
予想インフレ率に影響
     ↓   ↓
①為替相場 ②株式市場
     ↓      ↓
 円安・輸出増  資産効果
 

まさに、アメリカのQE2は、この効果を狙ったものです。

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-104.html
デフレ脱却と言う結果 量的緩和の効果 アメリカ 2011-03-08 記事参照

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-109.html
量的緩和の効果 アメリカ2011-03-08記事参照
 

 そのために、恐ろしいほどの金融緩和をしています。

読売『米6000億ドル緩和策功罪』H23.6.19

 米連邦準備制度理事会(FRB)は2010年11月に導入した6000億ドル(約48兆円)の国債を買い入れる「量的緩和策の第2弾(QE2)」…。

 「緩和策は予想以上の成功だった」。バーナンキFRB議長は…4月27日の記者会見でlこう自賛した。
 政策は主に二つの効果を狙ったものだ。…長期金利は下がり…幅広い金利の低下が期待できる。
…さらに資金が株式や社債などに振り向けられることで株高が消費を活性化させる効果も見込んだ
…NYSEユーロネクストに上場する株式の時価総額(4月末、米国分のみ)は…10年8月末から23.5%増えた。小売売上高は…10ヶ月連続でプラスで、個人消費の持ち直しが鮮明だ。…デフレ懸念は払拭された。


岩田P153 

金融緩和 量 日本 アメリカ

アメリカ マネタリーベース.jpg

 各国も同様です。その結果、各国通貨に対して「円だけが『超円高』」になっています。

各国 マネタリー・ベース 推移
出典: http://blogs.yahoo.co.jp/suzukieisaku1/17114313.html のグラフを改

マネタリー・ベース推移.jpg

 岩田P162
金融緩和 超円高


岩田 P167
 世界広しといえども、中央銀行の中で、金融政策でデフレを止められないと主張するのは、日銀だけである。
 




読売H23.6.25 『失われた10年 今は日銀に同情』

バーナンキ

…議長は「中央銀行に断固とした決意があれば、デフレに対し、多少なりのことは常にできる」とも強調した。…日銀とは一味違うとも言いたげに聞こえた

白川日銀総裁
中央銀行が巨額の資金供給で物価水準を引き上げることが可能、とする一方、それは近年の日米での経験と整合しない


なんで、事実に目を背けてまで換言すれば、嘘を言ってまで )、金融緩和を避けるのでしょうか?

theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済

日銀は、円高を阻止できない?

<日銀は、円高を阻止できない?>

 引用 池田氏ブログ
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51690628.html
2011年03月21日 23:14 経済 円高の謎


 池田氏が、円高について語っています。

…だから岩田規久男氏氏などが「円高の原因はデフレだ」というのは、2000年代については正しいが、90年代の円高はデフレでは説明できない。…90年代前半の名目レートの動きは実質実効レートの動きとほとんど一致しており、物価上昇率の差の影響はほとんどないからだ。武者陵司氏の指摘するように、むしろ円高が90年代のデフレの原因だった。…

…いずれにせよ、この円高を日銀が阻止することはできない。…日銀は2009年から一貫してマネタリーベースを増やしているが、為替は逆に円高(ドル安)になっている。これはゼロ金利状態では日銀がマネーストックをコントロールできず、したがって物価も為替もコントロールできないからだ。だから「非不胎化介入」も不胎化介入と同じである。「日銀が何もできないというのはけしからん!」などと怒ってみても、できないものはしょうがない。…
 

 円高というのは、相対的(相手がある)なものです。ですから、「日銀には何も出来ない」というのは、「日銀」のみが、「円高・円安」をコントロールする主体の場合には成立します。

 ですが、「円高=ドル安」「円安=ドル高」のこと(外国為替をドルで代表表記)なので、主体は、「日本」「日銀」だけではありません。

 近年の円高の要因は、円の量<ドルの量だったことは、すでに実証されています。

当ブログ 2010-12-24  カテゴリ:日銀 金融政策
『P・クルーグマン 「日銀総裁を銃殺すべし」』
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-109.html参照。


 どうしても「量的緩和」いわゆる「リフレ政策」を否定したいようですが、事実は、はっきりと「円高要因」を示しています。ためにする議論になってはいませんか?

<それよりも>

池田氏ツイート その1

http://twitter.com/ikedanob/status/47520416402649088
 客観的事実と価値判断を混同して「けしからん!」とか怒る人がいるが、 福島第一原発の周囲は放射能汚染されているので、今後1万年ぐらい人は住めなくなるでしょう。 チェルノブイリの周囲30kmは今も人が住めない。



 今回の震災「原発事故」について、このように不安をあおるのは、池田氏の発信力を考えると・・・。しかも、「無責任な推測は非常に有害」とご自分で言っているのに・・・

池田氏ツイート その2

http://twitter.com/ikedanob/status/47824135879000064
「最悪の事態を想定する」ことと「最悪の事態が起こったとふれ回る」ことは違う。ただでさえパニックが起こっているのに、それを増幅するようなデマはやめるべきだ。事実を報道するのはいいが、無責任な「推測」は非常に有害


 同じ人が書いた文章とは思えません。


<追記:結果的に、量的緩和実行>

 日銀当座預金残高が、過去最高となりました。日銀は資金供給を更に続ける予定です。

読売 H23.3.23(図も)

日銀当座預金 過去最高

『長め資金に需要殺到 日銀供給、計92兆円に』
…貸出期間が1ヶ月~6ヶ月のオペは…日銀の供給予定額を超える希望が殺到した。…長めの資金を早めに確保しようとする金融機関の動きは当面収まらないとみられ…資金の大量供給といった対応が日銀には求められそうだ。


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genre : 政治・経済

「復興国債」緊急発行方針 10兆円超、日銀引き受け

「復興国債」緊急発行方針 10兆円超、日銀引き受け
産経新聞 3月18日(金)7時57分配信

 東日本大震災を受け、政府は、復旧・復興のための補正予算編成に向け、主要財源として日銀が全額を直接引き受ける「震災復興国債」を緊急発行する方針を固めた。複数の政府筋が明らかにした。発行額は10兆円を超す見通し。日銀や与党と早急に調整に入り、野党も含めた合意を目指す。

 政府は、震災復興対策の新たな財源確保を目指し、平成23年度予算案で計上した子ども手当や高速道路無料化などの財源を全額充当することを検討したが、3兆3千億円程度にしかならず、有効な対策は打てないと判断。新規国債発行も検討されたが、国債を市場に大量流通させれば財政事情が悪化する上、国債の格付けが下がり長期金利の上昇をもたらす危険性がある。

 このため、震災復興国債を日銀に引き受けさせる案が急浮上。日銀による国債引き受けは財政法5条で禁止されているが、同条のただし書きに「特別の事由がある場合において国会の議決を経た金額の範囲内ではこの限りでない」と規定されており、今回の震災は「特別な事由」にあたると判断した。

 日銀は日銀法で独立性を担保されており、難色を示す可能性もあるが、与野党に政府の関与を強める日銀法改正の動きがあることから最終的に引き受けに応じるとみられている。


 この政策が採用されたら、結果的に、日銀の「リフレ」政策が加速する事になります。

日経H23.3.18『日銀当座預金30兆円を突破』
・・・約5年ぶりに30兆円を突破した。…2006年3月まで続いた量的緩和政策の当時と同じ水準になっている。

読売H23.3.18『日銀15.7兆円供給』
・・・大量資金供給は4日連続となり・・・資金総額は約71兆円に達した。


 この効果(or効果ナシ)については、3ヶ月~6ヶ月もあれば出てくるので、検証が可能です。実験というものが出来ない経済学では、大変貴重な実証機会になります。

theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済

量的緩和の効果 アメリカ

<量的緩和の効果 アメリカ>

日経H22.11.5『米緩和策 機動性を重視 日本のデフレ教訓』グラフも

 米連邦準備理事会(FRB)が米経済の長期低迷を避けるため、量的緩和の第2弾に乗り出した。2011年6月末までに6000億ドル(49兆円弱)の長期国債を追加購入する。10年越しのデフレに悩む日本の教訓も踏まえ、機動的な対応を重視した格好だ。

日本型デフレの阻止に向けた第一歩。バーナンキFRB 議長はそう考えているはずだ」。…日本のデフレが始まったのは98年度からといわれる。日銀は99年2月にゼロ金利政策を採用。同政策の解除を経て,01年3月に量的緩和を投入した。…デフレから量的緩和まで3年近くを費やしたことになる。

FRB は日銀を反面教師として研究やシミュレーションを続けてきた。そこから学んだのが 「金融緩和が足りずに失敗するリスクよりもやりすぎて失敗するリスクの方が小さい」という教訓だ。中央銀行の関係者は、「FRB は日本の経験から予防的な緩和の必要性を痛感していたと証言する。政策対応が後手に回り、政府や市場に催促されがちだった日銀とは対照的といえる。

アメリカ 金融緩和.jpg

アメリカ マネタリーベース.jpg

<結果 デフレ脱却>

日経H23.3.2『量的緩和を随時点検』 図・グラフも

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は1日、上院銀行員会で金融政策について証言した。
…米経済は2010年10月~12月期の実質国内総生産 (GDP) が前期比年率2.8%増となり、昨年春以降の踊り場を出している。
バーナンキ議長は米経済がデフレに陥るリスクについて「無視できる程小さくなった」と指摘、量的緩和策を導入する要因の一つだった、デフレ懸念は遠のいている
アメリカ 金融政策 GDP推移.jpg

アメリカ 日本 GDP

日経H23.3.5『米失業率改善8.9%』
…失業率は市場予測の平均(約9.1%)よりも良い結果となった。非農業部門の雇用者数も予測(約18万5000人増)を小幅に上回った。雇用者数の増加幅は、昨秋以降、雇用改善の目安となる10万人をおおむね上回るペースで推移している。


 アメリカは、デフレ脱却に量的緩和で成功しました。翻って日本です。相変わらず、経済学者がグダグダ、言っています。アメリカを見たら、結果は明らかなのにです。

H22.10.31 東京大学教授 福田慎一『脱デフレ金融政策は有効か』
…バブル崩壊から20年が過ぎようとしているにもかかわらず、依然として明るい展望が見えてこない日本経済がそうした状況を打開するには、国民の痛みを覚悟して経済構造を抜本的に改革していくことが最も重要なのは論をまたないが、それには政策的な支援も不可欠であることを改めて明記したい。


 このように、20年もグダグダ言っている間に、アメリカは3年で解決してしまいました。

H22.10.31 東京大学教授 福田慎一『脱デフレ金融政策は有効か』

…デフレは日本経済の構造的な問題が原因だとする主張も有力だ。東京大学教授の岩本康志(週刊ダイヤモンド10月23日号)は生産性の上昇伴う持続的な経済成長が実現されない限り、本格的なデフレからの脱却は難しいと指摘。有効な施策は政府が構想問題を解決すべく、市場経済の活力を引き出すような制度改革環境整備に前進することだと述べている。

 一橋大学教授の斎藤誠氏(週間ダイヤモンドを10月9日号)は、金融政策がどんな形態を取ろうとも「魔法の杖」になることはないと強調している。同氏が指摘する通り長期にわたる日本経済の低迷が長期金融緩和など小手先のマクロ政策で簡単に解決すると考えるのは、幻想だろう。
 

 こんな悠長なことを、まだ述べています。長期的(完全雇用状態)にはともかく、今述べる話ではないことがおわかりだと思います。こんな風に、相手の論を一応尊重して、あいまいに、あいまいに事を進めようとするから、20年もかかっています。
 さらに、今のデフレはたいしたことはないという人までいる始末です。

…東京大学の教授の大瀧正幸氏(世界11月号)は、昭和恐慌勃発時に最初の2年間で物価が約20%も下落していたことを指摘。それに比べると、近年の消費者物価はほぼ横ばいで推移していると見るべきだと論じている。

 この人たちは、アメリカの成功という現実を見ても、まだ「構造改革が重要」と述べるつもりなのでしょうか?答えは出ているではないですか。

…バーナンキ議長は米経済がデフレに陥るリスクについて「無視できる程小さくなった」と指摘、量的緩和策を導入する要因の一つだった、デフレ懸念は遠のいている。 

 論じるまでもありません。

カリフォルニア大学サンディエゴ校教授の星岳雄氏(週間ダイヤモンド10月2日号)は日本経済は明らかにデフレに陥っているとし、それから脱却するためには、日銀が一層の金融緩和に踏み込むべきだと力説している。とりわけ金利が実質的にゼロという「流動性の罠」のもとでは、大胆な非伝統的な金融政策を検討・実行する必要があると訴えている。 

 これで、アメリカは成功しました。

…FRB は日銀を反面教師として研究やシミュレーションを続けてきた。そこから学んだのが「金融緩和が足りずに失敗するリスクよりもやりすぎて失敗するリスクの方が小さい」という教訓だ。

 こんなこと、「失敗をしない」という、官僚思考の日銀には、100年かかっても、出来そうもありません

 一応、福田氏は言います。

…オーソドックスな政策は日銀が望ましいと考える、インフレ率の目標値を引き上げることではないか。
デフレからの脱却を目指し明示的な目標を設けたことは過去にないが、現在の数値(平均1%)は余りに保守的で、デフレファイターとしての立場を十分に伝えきれていない。日銀があと1~2%目標を引き上げてもおかしくない

…現在の日本の置かれた状況を総合的に考えると、金融政策にさらにもう少し踏ん張ってもらうしかないと多くの人が考えるのもやむを得ない。日銀は保守的なスタンスを封印してさらに非伝統的政策を実行する決断力が期待されているのではないか。
 

 ですが、断言はしません。両論併記です。「決断力が期待されている」のは論壇もです。

…依然として明るい展望が見えてこない日本経済。そうした状況を打開するには国民が痛みを覚悟し、経済構造を抜本的に改革していくことは最も重要なのは論を待たないが、それには政策的な支援も不可欠であることを改めて明記したい。 

 論壇で決断できないのに、日銀に期待するのは無理でしょう。日本は、何事も断行できない国のようです。小さな組織から、果てはマクロ政策まで。明治維新とか、敗戦とか、がらがらポンをしないと、何にも出来ないんでしょうか。「隗より始めよ(かいよりはじめよ)」とはいかないのでしょうか。

<事実に目を背ける、経済学者?>

池田信夫.jpg


池田信夫提供:池田信夫/アゴラ

2011年03月03日10時55分
 
 1ツイート.かつてはネット上で一部の学生に人気のあったリフレも最近はすっかり下火になって、「量的緩和で株価が上がる」とかいうオカルト的な(因果関係の証明できない)話しか論拠がなくなったようだ。ただ世の中にはデフレが諸悪の根源であるかのように騒ぐ人がまだいるので、問題を整理しておこう。
私のブログ記事でも書いたように、ゆるやかな(予想できる)デフレには大きな弊害はない。よくいわれるデフレの弊害としては、次のようなものがある:

•実質賃金が上がって企業収益を圧迫する:これは岩田規久男氏が証明したように、事実ではない。2000年代に日本の実質賃金は下がっている。

•実質債務が増えて企業経営が苦しくなる:これも岩田氏が示すように、事実ではない。企業は借り換えで実質金利を下げることができ、事実下がっている。

•円高になって輸出産業が困る:デフレによる円高は実質実効為替レートに影響せず、長期的な国際競争力は変わらない。

•自然利子率がマイナスになって「意図せざる金融引き締め」が行なわれる:これはありうるが、金融政策で是正することはむずかしい

他方、デフレのメリットとしては次のようなものがある:

•価格の低下で実質所得が上がる:これはユニクロ型デフレというような問題ではなく、実質資産も増えるので消費は増える(ピグー効果)。

•円高で原材料が安くなる:通貨が強くなると交易条件が改善することが多い(ここ数年の円高局面でもそうだった)。これは素材産業や内需型企業にとってプラスである。

 要するにデフレは、輸出企業から内需企業と家計への所得移転なのだ。輸出企業はこの問題を海外移転で乗り切ろうとするので、残された内需型企業がデフレのメリットを生かさず、消費者が金を使わないことが不況の原因である。この解決策は簡単ではないが、ユニクロのようにデフレや円高のメリットを生かすサービス業がもっと出てくることが重要だ。

 長期的には貨幣は中立だというのが、経済学の鉄則である。貨幣は物と物を仲介するだけで、それ自体に価値はないので、貨幣を増やしても減らしても実体経済は変わらない。金融政策が意味をもつのは、価格の硬直性や貨幣錯覚の生じる短期の問題だけである。実体経済を改善しないで、日銀だけで問題を解決することはできない。


 ですから、長期は完全雇用に近い状態(価格が伸縮)で、元気の良い時、短期は、価格ではなく、量で調整する状態(リーマンショック以後に如実)。

 ご本人は「ユニクロ型デフレ」主張者。
<参照:論語(経済学)読みの論語(経済学)知らず 池田信夫 その1 23年2月18日記事>


 支離滅裂・・・。

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P・クルーグマン 「日銀総裁を銃殺すべし」

 引用・出典 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/994

独占インタビュー ノーベル賞経済学者 P・クルーグマン 「間違いだらけの日本経済 考え方がダメ」
2010年08月20日(金) 週刊現代 経済の死角


クルーグマン.jpg
教鞭をとるプリンストン大学(ニュージャージー州)の研究室で取材を行った 〔PHOTO〕サミア・カーン(クルーグマン教授・以下同) ノーベル経済学賞受賞者、ポール・クルーグマンが「日銀総裁を銃殺すべし」と述べています。

-「日本の不況の原因は、マクロ経済学がやるべきだと説いていることを実行しないことにある」、要するに、日本の経済に対する考え方が間違っている-からだそうです。

クルーグマン 

我々は中央銀行の独立性をずいぶん擁護してきました。しかし今や、この独立した中央銀行が、失敗による面目失墜を恐れるあまり、自国経済のためになることすら、やらない存在となっていることが不況の大きな原因なのです。

 中央銀行の独立性への介入に関しては、もはやあれこれ躊躇すべきではありません。日本のGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割った値。経済全体の物価動向を示す)は、ここ13年間、下がりっ放しです。それなのに今、日銀が重い腰をあげないというなら、(その責任者たる総裁は)銃殺に処すべきです。

 緩やかなインフレを拒否し、銀行のバランスシート保護を優先しようとする日銀の考え方は、まったく正気とは思えません。私はハイパーインフレを発生させろなどと主張してはいない。年に数%の緩やかなインフレを目標に据え、就職できない若者たちの人生を救えと言っているのです。


<クルーグマンの主張する日銀政策の間違い> 

要するに、彼の主張は、日銀は、「長期国債」などの金融資産を買い取り、市場に「円」の供給量を増やせということです。市場に円の供給量が増えれば、「円の価値が下落=円安・インフレになる」というものです。 

ですが、日銀は、徹底して「責任回避」です。その結果、脱デフレも、円安も実現できていません。ゼロ金利の中で、金融政策は「未知の領域」に踏み込まざるを得ません。金利をこれ以上下げられず、「マイナス金利」さえ、論壇に登場する昨今です。

 日経H22.12.11
日銀総裁インタビュー『脱デフレ、成長力底上げを』

白川 日銀総裁.jpg

 総裁はデフレ長期化の原因について、「…成長率の低下にある」と指摘…「実体的な問題に取り組まない限り…デフレも是正されない」…「日銀が成長力自体をあげていく手段は限られる」と指摘。
 「…強力な金融緩和を進めている。ただ、デフレが先行して改善することはない…」
 

 政府と日銀が、目標を共有して「デフレ脱却を」という考え方に対しても「十分な意思疎通を図っており、経済・物価情勢に関する認識は政府と大きな違いはない」と、十分連携していると言います。

 実際には、経済金融部長:新実傑「政府と日銀が目線をそろえてマクロ政策を運営する状況とは程遠い…政治は日銀に円高回避やデフレ克服の責任を押し付け、日銀が批判に押されて金融政策で対応するという構図が続いてきた」のにもかかわらずです。「強力な金融緩和を進めている」とは言えません。

 その結果、日本はせっかくの景気浮揚のチャンスを失ってしまいました

当ブログH22.8.28記事より
<日銀流理論とは>

参考・引用文献
岩田規久男 学習院大学『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009 第3章

日銀は、徹底して、 「デフレ」対策に及び腰です。それは「日銀流理論」と小宮隆太郎が名づけた、日銀の責任を問われると、 「それは日銀にはどうしようもない外部の経済活動によって引き起こされたものであるp82」という責任回避するための理論に依拠しているからです。

 この理論を、技術的に言うと、
「日銀当座預金や日銀券の増減は民間の銀行の貸し出しの増減の結果として起こるものであって、日銀が直接統制に訴えることなしには、日銀当座預金と日銀券の残高を金融政策によって操作することはできないp76」というものです。

‘73年ごろの狂乱物価に対する、日銀の当時の分析は、「金融機関が貸しだししすぎたから」で、日銀の責任はないとするものでした。これに対し、小宮山隆太郎(東大教授)が、「ばか言うな、日銀が、金融機関に貸しだしたからだろう」と猛烈に反発しました。

 今風にいえば、「マネタリーベースを大きくして、マネー・ストック」を増やしたのは、日銀の責任だろう」というものです。当然、経済学的には、小宮山先生が正しいのですが、日銀は頑として認めません。今も昔もおそらくこれからもです。…同書では、日銀は「官僚機構…つまり東大法学部だから」としています。

「…日銀金融研究所が発表する文書・論文で、日銀の金融政策に誤りがあったことを認めたり、その可能性を指摘したりするものは見たことがない。日銀の金融政策には誤りがなく、不都合なことが起きたならば、それは日銀の影響の及ばぬところにあるというのが、大体の結論であるp83」

 1990年代後半からの「ゼロ金利」導入も「いやいやp102」ですし、2000年8月には「解除p114」し、また「デフレ」になってしまいます。

 2001年3月半ばからの「量的緩和」についても白川現総裁は当時「実体経済に与える影響については否定的p51」でした。

 「正統派の経済学(新古典派経済学とニューケインジアン・エコノミクス)軽視は日銀…の特徴p36」なのです。

<ドル安(ユーロ安)>

 なぜ、ドルやユーロ安なのでしょう?

読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
米連邦準備制度理事会(FRB)はリーマン・ショック後の2008年12月から事実上のゼロ金利政策を続け、さらに1兆7500億ドルに上る、住宅ローン担保証券(MBS)や国債などを購入することで、市場に大規模な資金を供給する量的緩和策にも踏み切った。欧州中央銀行( ECB) も金融機関が希望する基金を担保の範囲で全額供給する、「無制限オペ」を続けている


岩田規久男『日本銀行は信用できるか』2009 講談社新書 P43グラフ
中央銀行 資産失業率 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009.jpg

 このグラフの中央銀行の資産増加=民間からの国債買い取りなど=市中への金融緩和(量的緩和)→経済危機からの脱出のための積極的政策です。
 なぜ、「デフレに悩むのは日本だけ」か、一目瞭然です。日銀だけが、「量的緩和」を行っていないのです。

 このように、ドルもユーロも、大規模な金融緩和政策を続けています。そうすると、円の量<ドル・ユーロ・ポンドの量となってしまいます。

各国 マネタリー・ベース 推移
出典: http://blogs.yahoo.co.jp/suzukieisaku1/17114313.html のグラフを改

マネタリー・ベース推移.jpg

『米金融緩和の長期化』日経H22.8.25

 …米マネタリーベース(資金供給量)は08年9月のリーマン・ショック以降に急増。08年8月の8千億ドル台から09年11月には2兆ドルに拡大した。
米国の資金供給拡大.jpg

イメージ マネタリー・ベース推移.jpg

注)マネタリー・ベースについては、ブログ記事2010-08-10 藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行 参照

 市場に、ドルや、ユーロや、ポンドが供給される一方、円の量は変わっていません。これを見ても円高・ドル安になるのが分かると思います。

<円高の実態>

出典ヤフーファイナンス

為替(YAHOO ファイナンス).jpg
 
 この「量緩和→通貨安」は、実証的に明らかになっています。

日経 本多祐三 関西大『通貨の量、為替に影響』H22.12.11 図も

 …急激な円高が進んだ背景には、米国の大幅な金融緩和がある。11月初旬…米連邦公開市場委員会は追加金融緩和策を決定した。…日銀は10月5日に5兆円規模の追加金融緩和策を公表…だが、米国のこれまでの金融緩和策の規模は日本よりも相対的に大きかった。このことが、円高・ドル安につながっている。

 …10月5日の追加緩和策決定まで、日銀は信用・量的緩和の導入にも消極的だった。こうした日米の金融政策のスタンスの違いが、円高を加速させることになった。
 

 下のグラフは、日本のマネタリー・ベースを米国のベースマネー(日本のマネタリー・ベース)で割った数値と、為替レートの相関を示した図です。

円高 マネタリーベース.jpg
…FRB(筆者注:米連邦準備理事会・日本の日銀に相当)が当該期間に大胆に金融を緩和し、ベースマネーを急増させた。…各点が右から左方向に移動するにつれて、各点は下方に移動した。つまり円高・ドル安が進行したことが分かる。円に対してドルの通貨量が相対的に増加するとともに、円高・ドル安が進んだのである。

 …円高は、デフレの大きな要因になっているデフレから脱却するためには、日銀の更なる金融緩和が必要である。その結果として為替レートが円安に振れたとしても(筆者注:通貨安競争なるもの)、それは正当防衛とも言うべきことで、海外からなんら非難されるべきことではない。


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