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臨時投稿 高校 政治・経済 経済分野の学習指導要領は、すごい内容であることについて

<臨時投稿 高校 政治・経済 経済分野の学習指導要領は、すごい内容であることについて>

>GDP の三面等価は、学習指導要領で必須項目です。

知りませんでした。高校で教えられた記憶がありません。
恐らく先生もよくわからないから教えない・教えられないということなのでしょうね。



 上記のようなコメントをいただいたので、高校学習指導要領の政治・経済科目で、経済について、どのような範囲を扱い、どのようなことを学ばせるかについて、紹介します。

 すごい内容です。経済学が網羅され(政治経済は、『主体的に考える』現代社会と違い、『客観的に考察する』こと、つまり、学問的に経済を理解することに主眼が置かれています。

 この要領は、「大学の先生」によって書かれています。本質を的確にまとめています。しかし、この要領にのっとって、実際に教科書を書くのは「高校の先生」ですから、トンでも論になるのです。要するに、経済学を知らない先生が、教科書を執筆するから、教科書がトンでも論になるのです。

 東大の吉川洋、執筆者に名を連ねています(清水書院)し、教科書執筆人には、必ず一橋などの先生が名を連ねています。しかし、あくまでも監修(というか、最近のSTAP細胞をめぐる騒動のように、名前だけ貸している、中身は性善説に基づいているので、検証しない)なので、現場の先生が、自分が習ったトンでも経済論をそのまま継承して執筆しているので、トンでも論になっているというものです。

 まともに、書けば、恐ろしく高度な内容になります。書き方は、ふざけていますので、ご了承願います(笑い)。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/07/22/1282000_4.pdf#search='%E9%AB%98%E6%A0%A1+%E5%AD%A6%E7%BF%92%E6%8C%87%E5%B0%8E%E8%A6%81%E9%A0%98+%E6%94%BF%E6%B2%BB%E7%B5%8C%E6%B8%88'

「経済活動の意義」については,経済活動は分業と交換に基づき人間生活の維持・向上のために行われるものであり,いずれの社会でも,「何をどれだけ」,「どのような方法で」,「誰のために」生産すべきか,生産された財やサービスをどのように社会の構成員に分配し,いかに消費するかという経済的選択の問題を解決しなければならないことを理解させる。その際に,希少性の制約の下では,個人も社会も何かを選択すると別の何かをあきらめなければならない事実に着目させ,費用と便益との比較を通して理解させる。

また,経済問題の解決の方法の違いによって市場経済や計画経済などがあることを理解させる。

「国民経済における家計,企業,政府の役割」については,家計,企業,政府が現代の経済における主要な経済主体であり,これら経済主体間の相互関係が国民経済を構成していることを理解させる。さらに,これら経済主体の相互間における財・サービス,貨幣の流れは海外ともかかわっていることに気付かせる。

家計の役割については,家計は所得の制約の中で消費や貯蓄を行い,労働を企業に供給している こと,消費と貯蓄が企業の生産や投資と密接に関連していること,所得の変化に伴って消費の内容や水準が変化することを理解させる。また,物価の変動など国民経済の動きや,貿易や為替など国際経済の動向も家計の行動に影響を与えることに気付かせる。

企業の役割については,企業が家計や他の企業から提供された土地,労働,資本といった生産要素を結合し生産活動を行うことを理解させる。また,現代の企業の多くは株式会社の形態をとっていること,企業は,生産性を高め,法令を遵守しながら利潤を追求するばかりでなく,雇用の促進や技術の開発などを通して経済社会の進展に寄与するとともに,環境保全や文化の向上などにも貢献する社会的責任を負っていることを理解させる。
政府の役割については,現代の政府は,家計や企業の経済活動にゆだねることの困難な部門を引き受けていること,資源の配分,景気変動の調整,所得や資産分配の不平等を是正するなどの役割を果たしていることを理解させる。また,政府の経済政策は,経済的な自由の保障,効率と公正の確保,成長と安定の追求などを目指して行われるが,これらの目標は相互に対立することがあり,その調整が今日大きな課題であることに気付かせる。



 この部分、

いずれの社会でも,「何をどれだけ」,「どのような方法で」,「誰のために」生産すべきか,生産された財やサービスをどのように社会の構成員に分配し,いかに消費するかという経済的選択の問題を解決しなければならないことを理解させる。その際に,希少性の制約の下では,個人も社会も何かを選択すると別の何かをあきらめなければならない事実に着目させ,費用と便益との比較を通して理解させる。




 が、三面等価です。生産されたものは、分配され、消費されるか・・・GDP(総生産)=GDI(総分配)=GDE(総支出)です。

 しかも、そのあと、家計・企業・政府それに、貿易、消費、貯蓄、投資…

C、I、G、EX、IM、S、三面等価のおなじみの用語がフル登場でしょう?

 しかも、人間には、時間という制約があり、何かを選択したら、何かをあきらめる=トレード・オフ・・・だから、特化して、最大限生産して、交換するのが一番効率的(比較優位)だということも示されているでしょう?


「市場経済の機能と限界」については,市場とは経済社会における需要と供給をつなぐ取引の場であることを理解させるとともに,商品市場,金融市場,労働市場など様々な種類の市場があることに気付かせる。また,完全競争の前提のもとでは,それぞれの市場において形成される価格を誘因として,生産が調整されたり,資本や労働などの生産要素が国内外に移動したりするなど,経済的資源が効率的に配分される仕組みをもっていることを理解させる。




「商品市場,金融市場,労働市場を扱う」、まさに、ケインズ経済学や、古典派経済学で扱っているものでしょう?

「総需要曲線は、IS-LMから導出できるが、総供給曲線は、導出できない!」なんてやっている、経済学そのものです。

 価格と生産調整だから、「消費量<生産量だから、価格が下がってデフレ(藻谷浩介某)」なんて、アホだと分かるでしょう?企業は、価格ではなくて、「生産調整」するって、分かるじゃないですか。

 (完全市場では)市場メカニズムによって、資源の効率的配分がなされていることもかかれているでしょう。

その際,価格メカニズムの考え方を具体的な価格変動の事例を取り上げながら考察させる。
また,市場の競争性が維持されている場合においても,公共財の提供がされにくいことや環境破壊など市場の失敗があることを理解させる。さらに今日多くの市場では,企業の巨大化により寡占化が進んで,価格メカニズムが理論どおりには十分に働かなくなっている面があることにも気付かせ,独占禁止政策など,自由で公正な競争を維持するための政府による適切な政策が必要になっていることについて触れ,それらの対策について理解させる。



 しかし、一方、完全市場など存在しないので、政府が調整することが必要なこと、完全市場においては、利己的な個人が自分の利益を追求すれば、最適な状態になるのに、ならない・・・環境破壊も触れているでしょう?

 これ、ゲーム理論のことです。利己的な個人が私的利益を追求すれば(これが自由市場)、とんでもないことになる場合を示したのが、ゲーム理論です。

 共有地の悲劇、だれでも利己的に資源を取れば(マグロ市場や、環境問題)、望ましい均衡ではなくて、結果的に自分たちの利益を失ってしまうことがあるでしょう。だから、利己ではなく、協力して、資源を管理したほうが、自分たちの利益を守ることがある(利己的な市場がまずい場合)ことが示されているでしょう。

 環境も、中国のように、どんどん経済規模を拡大させれば(中国の利己)、中国にとっては善いけど、世界全体にとっては、将来的にまずい・・・だから、利己ではなく協力したほうが良い・・・これ、市場規制、ゲーム理論です。

 防衛もそうです。利己的に軍事費増やせばいいのですが、一番いいのは、軍縮でしょう。それが、実は一番コストがかからない。

その際,「公害防止と環境保全」(内容の取扱い)を外部不経済の視点から扱うとともに,「消費者に関する問題」(内容の取扱い)については,家計,企業,政府間の情報格差という情報の非対称性の観点から消費者保護の重要性を扱うだけではなく,消費者の自立支援の観点から指導することに留意することが大切である。また,例えば,製品事故,薬害問題などを扱い,行政や企業の責任にも触れるようにする。




 非対称性、ここでも、市場メカニズムが働かないことが、示されているでしょう。就職も、企業のことを完全に知らない学生と、学生のことを完全に知らない企業が、とりあえず、その時点での最大限の情報を基に就職・採用しますが、結局「間違っていた・・・転職・解雇」など、ごろごろしているでしょう。結婚なんか、人生なんか、この「情報の非対称性の連続」でしょう。でも、そこにカネはからみ(経済活動はあり)、でも、完全市場なんかない・・・

 だから、正直言うと、ルーカスなどの、「人間は完全情報を持ち、経験を重ねれば、合理的に判断する」なんて、じゃあお前、「海外旅行したことがあんのか!」と突っ込みを入れたくなります。

 英語以外の表記の国で、「経験を重ねれば、合理的に行動(移動)できるか?」という話です。

 外国人旅行者が、日本の移動手段を、ネットや、旅行ガイドでいっくら調べても、完全情報なんてないし、行ってみなけりゃわからないし、時間も費用も、快適さも、一番自分にとって都合の良い移動手段を獲得できるまで、何年、「経験すればいいんだ!?」っていう話。ルーカス、アホか。

何十年勉強すれば、ネイティブと同じように、「タイ文化すべて理解するのか」という話です。そんなもの無理、人間は、完全情報も持たないし、永遠に100%合理的判断なんかできっこないです。ケインズが言ったように「未来のことは分からない」、これで終わりの話!

 学習指導要領は、経済学のエッセンスなんです(笑い)。

「物価の動き」については,物価の変動を計測するための指標には消費者物価指数や企業物価指数があることを理解させた上で,我が国の物価の動向について考察させ,インフレーションやデフレーションなど物価の変動が国内的要因によって生じるばかりでなく,国際的な要因に基づく場合もあることに気付かせる。また,インフレーションは国民の所得や富の格差を拡大すること,デフレーションは景気後退や不況と結び付いて国民生活に影響を与えることを理解させ,物価の安定は政府や中央銀行の政策の重要な目標の一つであることを理解させる。




 インフレ、デフレの説明も、完璧でしょう? なぜ、物価を安定させるのが、重要なのかの説明も、これ以外にないというほど、簡潔にして、的を射ています。

「経済成長と景気変動」については,経済活動の目的が国民福祉の向上にあり,その実現のためには経済成長と景気や物価の安定が不可欠であり,政府による適切な経済政策が重要となっていることに気付かせる。なお,経済成長と景気変動を測る指標には,国民所得,鉱工業生産,失業率,物価指数などがあることを理解させ,それらの指標の特色を理解させた上で,景気変動の要因と経済の状態を,統計資料を用いて考察させるようにする。また,我が国の経済成長と景気変動の要因とそれぞれの時期における政府の対応を検討させるなどの工夫も必要である。

「財政の仕組みと働き及び租税の意義と役割」については,財政とは政府による経済活動であることを理解させた上で,現代経済における有効需要政策の意味と役割及びその問題点について理解させるとともに,財政政策が,資源配分の調整,所得や資産の再分配,経済の安定化を行って国民福祉の向上に寄与する目的で行われていることに気付かせる。その際,投入された費用に対してそれから得られた効果を比較しながら最適な政策を選択していく必要があることを理解させる。

さらに財政活動を行うには原資が必要であることに気付かせ,租税や国債など財源の調達方法やそれぞれの問題点を理解させるとともに,限られた財源をいかに配分すれば国民福祉が向上するかを考察させ,適切な財政運営が重要な課題であることに気付かせる。なお,財政は国だけでなく地方公共団体も行っていることに気付かせ,両者の役割分担や連携の在り方について考察させる。

租税に関しては,税制度の基本を理解させるとともに,国民生活における租税の意義と役割,公平で適切な負担の在り方について考察させる。その際,国民が納税の義務を果たすとともに,納税者としてその使途について関心をもつことが大切であることを理解させる。



税金も国債もメリットと、デメリットがあると、書いてあるでしょう?国債で破綻するなど、書いていないでしょう(笑い)。

「金融の仕組みと働き」については,金融とは経済主体間の資金の融通であることを理解させ,資金の需給が金融市場における金利の変化や,株式市場と債券市場の動向などによって調節されることを,銀行,証券会社など各種金融機関の役割や間接金融,直接金融の意義と併せて理解させる。




 金利、株式・債券市場(市場の裏表)も書いてます。

また,金融市場における金利の動向が通貨供給量の変化に波及し,消費や貯蓄,投資行動に影響したり,物価や株価,さらには景気の変動に大きな役割を果たしたりすることを理解させ,その関連において中央銀行の金融政策について触れる。




 すごいでしょう。金利と通貨量(マネタリズムと、ケインズ理論)、消費C・貯蓄S・投資I、物価P、株価(ストック)、景気変動(サイクル)・・・経済学のエッセンスの総登場です。

なお,「金融の仕組みと働き」については,「金融に関する環境の変化にも触れること」(内容の取扱い)とあるように,金融業務の自由化や金利の自由化に伴う金融に関する経済環境の変化による国民経済や,家計,企業への影響について理解させることが大切である。

さらに,金融機関の倒産などにより金融市場の信頼性が著しく損なわれると,大規模な信用収縮が起き,資金の流れが滞ってしまい,経済活動に大きな影響を与えることに気付かせる必要がある。また,クレジットやローンなど日常生活の中での金融の役割,貸し手及び借り手の自己責任の原則や契約の重要性について,大項目(1)アと関連させて具体的に理解させるようにする。その際,多重債務問題にも触れるようにする。





 なんで、リーマン・ショック時に、信用収縮を起こさないために、FRBバーナンキ議長が、証券会社にまで、資本注入したかが書かれているでしょう?「こんな仕事は、中銀の仕事ではない。だけど、やらないと全金融システムが壊れる」って彼が言ったことば、そのものです。

「現代経済の特質について把握させ」については,現代経済の特質を様々な観点から取り上げる。そのため,例えば,現代経済が完全な市場経済でも計画経済でもなく,両者の特色をあわせもった混合経済で運営されているという特質を経済体制の国際比較を通して気付かせた上で,同じ市場経済に基づく経済でも国や地域によって独自の歴史や文化の背景をもち,タイプが異なっていることを理解させ,現代経済の特質を把握させることが考えられる。




 小さな政府?そんなもの、存在しえないのです。あるのは、「効率的な政府を目指す」のがせいぜいです。

グローバル化が進む現代において,国民経済が一国だけで完結しえなくなっているという特質を,景気変動や,財政・金融政策における具体的な問題をもとに気付かせ,我が国における経済の動向が他の国民経済とどのように関連しているか,逆に他の国民経済の動向が我が国の経済にどのように影響を与えているかに気付かせることで現代経済の特質を把握させることも考えられる。




 株式市場が、なぜ、世界同時に動くのか、それが、どのように、新興国にまで影響を与えるのか、扱え!です。

「経済活動の在り方と福祉の向上との関連を考察させる」については,この中項目のこれまでの学習を踏まえ,総合的に考察させることが大切である。経済は国民生活や福祉の向上のために運営されるが,経済の発展を促進する効率性の追求と,国民福祉の向上で求められる公平性や公正さとは必ずしも一致するとは限らない。例えば,経済発展の結果,所得や資産の格差が開いたり,公害などの外部不経済が発生して国民福祉を阻害したりすることが起こる。その一方,所得再分配政策による所得の平準化は,国民生活を安定させるが,競争に対する誘因を弱め,経済の発展を低下させる要因になることもある。また,福祉の向上をいくら求めてもそれを裏付ける経済的な発展がなければその目標は達成できないことも指摘されている。このように経済において相互に矛盾,対立する事例を挙げながら,経済の在り方と福祉の向上の関連を考察させることなどが考えられる。このように経済において同時に達成できない事例を挙げながら,経済の在り方と福祉の向上の関連を考察させることなどが考えられる



 効率性(市場メカニズム)の追求と、公平・公正の両立など、解決できない(人類永遠の課題)ことが、示されているでしょう?どっちも、追求することは不可能(トレード・オフ)、しかも、「経済発展なんか必要ない」など、アホ論だって言っているでしょう?高福祉を達成するには、「経済発展GDP成長」がなければ、絵に描いた餅なの!!!

ここでは,国際経済に関する基本的な概念と理論について学習させ,国際的な相互依存の深化など,近年の国際経済の特質について把握させるとともに,国際経済の安定と成長に果たすべき日本の役割について考察させることを主なねらいとしている。
指導に当たっては,身近で具体的な事例を取り上げることによって,国際経済についての見方や考え方の基礎となる概念や理論の理解を深めさせるよう工夫する必要がある。また,国際機関に関しては,それぞれの機関の目的や役割などが理解できるように内容を工夫することが大切である。その際,「ア現代経済の仕組みと特質」との関連に留意し,特に市場の機能や国民所得などの考え方を生かしながら,国際経済の安定と成長が国民福祉の向上と相互に密接にかかわっていることを理解させる。

「貿易の意義」については,自国内で生産費が相対的に安価な財の生産に各国が特化し,自由に貿易を行うことで,それぞれの国に利益がもたらされるという比較優位の考え方について理解させ,貿易の意義と役割について気付かせる。また,この考え方に基づく自由貿易論と保護貿易論とを対比させながら,現代の貿易問題と関連させて理解させる。



 比較優位論の土台の上に立ってから、「自由貿易・保護貿易」が論じられるの。比較優位を理解できない人に、貿易論は語れないの。しかも、比較優位論から、「自由貿易すべき」などという意見は、出てこないの。事実と、意見は別なの。

「為替相場と国際収支の仕組み」については,対外経済取引に伴い通貨間の売買の必要が生じること,日本をはじめとする多くの国では,自国通貨と外国通貨に対する需給関係から為替レートが決定される変動相場制が採用されていることを理解させる。その際,財やサービス,資本の出入や物価水準,金利差など様々な要因が為替相場に影響を与えていることを理解させる。また,貿易などに基づく取引だけでなく,国際間の巨額の資金移動が為替相場を大きく変動させ,各国経済や産業,国民生活に大きな影響を与えることに気付かせ,為替相場の安定が国際的に重要な目標になっていることを理解させる。




 ね、主題が、貿易取引ではなく、巨大な資金移動がメインだっていうことが分かるでしょう?

国際収支については,国際収支統計の基本的な構成と,日本の対外経済取引の現状について理解させる。その際,国際収支の著しい不均衡が経済摩擦の一因となっていることに気付かせる。「国際協調の必要性や国際経済機関の役割」については,各国経済の相互依存関係が緊密化し経済のグローバル化が進展したことに伴い,国際経済の安定と成長のために経済政策面での国際的な協調が必要になっていることに気付かせるとともに,世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)などの国際経済機関が果たしている役割や課題などについて貿易や為替の学習に基づいて理解させる。また,国際復興開発銀行(IBRD)や経済協力開発機構(OECD)が世界的な貧困や経済格差の解決のために果たしてきた役割や課題についても触れる。




 これだけで、専門書、一冊書ける内容でしょう?

「グローバル化が進む国際経済の特質について把握させ」については,国内経済と異なり,国際経済では労働や資金などの移動に多くの面で制約があったが,経済活動が地球的な規模で自由に行われるようになっている現状と問題点に気付かせ,市場経済の原則に基づく一体化の動きが強まっている近年の国際経済の特質について把握させる。その際,計画経済から市場経済に移行しつつある地域,欧州連合(EU)のように経済統合,通貨統合を推進しつつある地域,東南アジア諸国連 合(ASEAN)のような発展途上国の中でも急速な経済成長を成し遂げた地域など,特徴的な地域について,その現状を調べさせたり,それぞれが国際経済の中で直面している課題について考察させたりする。



 グローバル化で、労働・資本の動きが、一体化していることも触れているでしょう?グローバル化と言っても、その形態は様々だということも触れているでしょう?

「国際経済における日本の役割について考察させる」については,日本が世界の生産額や貿易額において大きな割合を占めており,巨額の対外純資産を所有していること,日本の企業の中には多国籍化し,世界企業に成長しているものもあることなどについて気付かせ,国際経済の安定と成長のために果たすべき日本の役割について,家計や企業の行動及び,発展途上国に対する政府開発援助(ODA)をはじめとする援助や貿易問題への政府の対応などから考察させる。その際,自由貿易体制の維持や,国際通貨制度の安定のための連携や協調が,世界の経済問題の解決にとって重要であることに気付かせる。また,各種の非政府組織(NGO)が国際経済において果たす役割についても考察させる。



 これでも、本、2~3冊書けるでしょう(笑い)

 だから、学習指導要領で扱っているのは、経済学のエッセンスそのものなのです。だから、これにまじめに取り組めば、理解するのに、何年も、何十年もかかる話。この学習指導要領に基づいた、高校政治経済をマスターすれば、あなたも経済学者になれる(笑い)。


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マクロ経済学のミクロ的基礎づけ 教科書編


 
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清水書院 その2 『高等学校 新政治・経済 改訂版』H21.3 三訂版

清水書院『高等学校 新政治・経済 改訂版』H21.3 三訂版

…資本主義を否定して社会主義を唱える運動や理論(科学的社会主義)がさかんになったが、その中心となったのはマルクスやエンゲルスである。一方、資本主義の基礎となる市場経済が経済的には最も効率的であるとする理論がジェヴォンズ・ワルラス・メンガー 脚注)らにより主張された。

脚注)
ジェヴォンズはイギリス、ワルラスはフランス、メンガーはオーストリアの経済学者。彼らはスミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考えにもとづき、市場経済の効率性を厳密に証明する理論を作り上げた。


 高等学校用 「政治経済」「現代社会」教科書で、「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」という経済学者の名前が、出てくるのはこの教科書だけです。

<重要だが、必要か>

 平成22年3月20日、経済教育ネットワークで、「経済入試問題のあり方」というシンポジウムが開かれました。
 その会の代表である篠原総一同志社大教授は、『経済セミナー 2010・4/5』日本評論社で、大学入試問題について、このように批判しています。

…高校生の日ごろの学習は、大学入試を意識したものになっている。そして、どの大学でも、入学試験では、教科書に書かれた内容の中から出題されることが多い。そのため、入学試験では、「仕組みの働き」の理解を問うような問題が出されることは少なく、大半は事実と用語の名称を答えさせるという暗記の確認問題に流れてしまう。

 そして、例として、「(現在のある特定の)ファイナンシャルグループの前身銀行に当たらない(昔の)銀行名を答えさせる」問題を挙げ、教科書が「合併変遷史を掲載していることと無関係ではない」と分析しています。

「経済知とは何の関係もない、枝葉末節知識を問う」問題例として批判したのです。

 「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」という経済学者の名前、およびその思想を理解している教員は、経済学部出身者に限られます。はっきりいうと、公民科教員の、誰も知らない名前です。
 
 教科書に掲載されると、大学入試問題に出題されます。篠原先生が言う、「枝葉末節」知識であってもです。それを、一社で提供しているのが、上記教科書です。

 ジェヴォンズはイギリス、ワルラスはフランス、メンガーはオーストリアの経済学者。彼らはスミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考えにもとづき、市場経済の効率性を厳密に証明する理論を作り上げた。

 この教科書の記述を、正確に解説できる現場の高校教員は数%いないでしょう。経済学(経済史)的には重要な経済学者ですが、教員すら説明できない内容が、一般的な高校生の知識として理解されうるものかどうか

 「市場」を示す「需要・供給」曲線は、中学校の教科書でも出てきます。ですから、これは「市場経済」を学ぶ上で、必須項目です。上記3人は、この「市場」が一品、一品、一つ一つの財・サービス市場だけではなく、すべての財・サービス市場で、同時に均衡(成り立っている)ということを、主張した3人です。だから、「経済学(経済史)的には重要な経済学者」です。しかし、それと、高校教科書で取り上げるべき人かどうかは別問題です。
 
 一般的な教科書の場合、アダム・スミス(資本主義)→マルクス(共産主義)→ケインズ(修正資本主義)という流れで記述されます。また、80年代以降のレーガン・サッチャー路線の理論的支柱として、ミルトン・フリードマンが記述されることもあります。さらに、国際貿易の「比較優位論」として、リカードが登場します。 
 詳しい記述の資料集を除き、教科書で登場する「経済学者」といえば、基本は上記のとおりです。

アダム・スミスリカードマルクスケインズ→ミルトン・フリードマン
                   ↑
「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」は、上記の流れに従えば、スミスケインズの間、マルクス世代後期に属します。

<理論その2>

 ジェヴォンズはイギリス、ワルラスはフランス、メンガーはオーストリアの経済学者。彼らは①スミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考えにもとづき、②市場経済の効率性を厳密に証明する理論を作り上げた。

②市場経済の効率性を厳密に証明する理論


需給曲線 清水書院 新政治・経済 p93
需給曲線 清水書院 新政治・経済 p93 平成21年 三版.jpg

 私たちがおなじみの需要・供給曲線のグラフ(均衡理論)です。このグラフを理解する場合、「市場」とは、あるモノ(サービス)一つの市場を示すのか、それとも、すべてのモノ(サービス)市場全体を示すのか、という2つの見方があります。

 前者は、例えば、キャベツとか、ハンバーガーとか、缶ジュースとか、1品1品の均衡を示します。これを、「部分均衡論」といいます。

 後者は、例えば、日本国内で売られているすべてのモノ(サービス)…何百万、何千万個もあるでしょう…が、相互に関連しあいながら、均衡(バランス)しているというものです。これを「一般均衡論」といいます。この後者を説明したのが、ワルラス『純粋経済学要論』です
 
 一般的に、一人ひとりの消費者は、働いて収入を得ます。例えば20万円です。自分が働いて稼いだ20万円を、いい加減に使うことはないでしょう。自分が一番満足するように、その20万円を使ってモノ・サービスを購入します。食費(トマトやキュウリや大根)や、娯楽費、交通費、住居費などです。
「このブログ カテゴリ:リカード比較生産費説2 日常生活=貿易・特化 参照」

 生産者(企業)は、利益を得るように、モノ・サービスを売ります。そのさい、最も利益(利潤)が多くなるように売ろうとします。農家がトマトやキュウリや大根を販売するにしてもそうですし、東芝が原子力プラントや、自動車用モーターを売り込む場合も、出来るだけ「多くの利潤」を獲得しようとします。アパート経営者も、その地区で借りてもらえるような価格の中で、できるだけ高い価格設定をしようと考えます。

 このように、消費者は「効用」を最大化しようとし、生産者は「利益」を最大化しようとし、すべてのモノ・サービスの需要と供給が決まります。「トマトやキュウリや大根」や、「アパート家賃」etc・・・・・です。

 消費者は「効用」を最大化しようとし、生産者は「利益」を最大化しようとした結果、すべてのモノ・サービスの価格=均衡価格が決まる。そしてその均衡価格が存在すると主張したのがワルラスです。

 このワルラスの考え方は、アローとドブリューという経済学者によって、証明されました

 出典ヤフー百科事典「ドブリュー」の項目

 1954年に発表したK・J・アローとの共同論文「Existence of an Equilibrium for a Competitive Economy」において、競争による自由市場での一般均衡(経済体系全体にわたる均衡)、競争均衡状態の存在を証明した。1959年に出版された主著『価値の理論』Theory of Valueにおいて、理論はより厳密に証明されている。このアロー、ドブリューの一般均衡モデル体系は、新古典学派の基礎理論として大きな影響を及ぼした。「経済理論への新しい数学的分析手法の導入と一般均衡理論を厳密に再構築」した功績によって、1983年のノーベル経済学賞を受賞した。

②市場経済の効率性を厳密にとは、消費者も生産者も自分の効用と利益を追求した結果、すべての「消費者と生産者」がこれ以上ない状態で満足しているということです。これが「市場メカニズム」です。

 この理論によってワルラスは、シュンペーター(イノベーション理論で有名な経済学者)から「最も偉大な経済学者」と評されました。経済学史上「限界革命」と言われるほど、経済学に影響を与えました

 今、私たちが、需要・供給曲線によって「均衡価格」「均衡量」と説明しているモデルの裏には、このような理論があるのです。

 さて、2回にわたって、 「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」について解説してきました。これを、高校の「政治・経済」の授業中に行うことは可能でしょうか?あるいは、「需給曲線による均衡価格・量」のグラフの説明に、「必要」とされているのでしょうか。皆さん、どう思いますか?

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清水書院 その1 『高等学校 新政治・経済 改訂版』H21.3 三訂版

清水書院『高等学校 新政治・経済 改訂版』H21.3 三訂版

…資本主義を否定して社会主義を唱える運動や理論(科学的社会主義)がさかんになったが、その中心となったのはマルクスやエンゲルスである。一方、資本主義の基礎となる市場経済が経済的には最も効率的であるとする理論がジェヴォンズ・ワルラス・メンガー 脚注)らにより主張された。

脚注)
ジェヴォンズはイギリス、ワルラスはフランス、メンガーはオーストリアの経済学者。彼らはスミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考えにもとづき、市場経済の効率性を厳密に証明する理論を作り上げた。


 高等学校用 「政治経済」「現代社会」教科書で、「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」という経済学者の名前が、出てくるのはこの教科書だけです。

<重要だが、必要か>

 平成22年3月20日、経済教育ネットワークで、「経済入試問題のあり方」というシンポジウムが開かれました。
 その会の代表である篠原総一同志社大教授は、『経済セミナー 2010・4/5』日本評論社で、大学入試問題について、このように批判しています。

…高校生の日ごろの学習は、大学入試を意識したものになっている。そして、どの大学でも、入学試験では、教科書に書かれた内容の中から出題されることが多い。そのため、入学試験では、「仕組みの働き」の理解を問うような問題が出されることは少なく、大半は事実と用語の名称を答えさせるという暗記の確認問題に流れてしまう。

 そして、例として、「(現在のある特定の)ファイナンシャルグループの前身銀行に当たらない(昔の)銀行名を答えさせる」問題を挙げ、教科書が「合併変遷史を掲載していることと無関係ではない」と分析しています。

「経済知とは何の関係もない、枝葉末節知識を問う」問題例として批判したのです。

 「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」という経済学者の名前、およびその思想を理解している教員は、経済学部出身者に限られます。はっきりいうと、公民科教員の、誰も知らない名前です。
 
 教科書に掲載されると、大学入試問題に出題されます。篠原先生が言う、「枝葉末節」知識であってもです。それを、一社で提供しているのが、上記教科書です。

 ジェヴォンズはイギリス、ワルラスはフランス、メンガーはオーストリアの経済学者。彼らはスミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考えにもとづき、市場経済の効率性を厳密に証明する理論を作り上げた。

 この教科書の記述を、正確に解説できる現場の高校教員は数%いないでしょう。経済学(経済史)的には重要な経済学者ですが、教員すら説明できない内容が、一般的な高校生の知識として理解されうるものかどうか

 「市場」を示す「需要・供給」曲線は、中学校の教科書でも出てきます。ですから、これは「市場経済」を学ぶ上で、必須項目です。上記3人は、この「市場」が一品、一品、一つ一つの財・サービス市場だけではなく、すべての財・サービス市場で、同時に均衡(成り立っている)ということを、主張した3人です。だから、「経済学(経済史)的には重要な経済学者」です。しかし、それと、高校教科書で取り上げるべき人かどうかは別問題です。
 
 一般的な教科書の場合、アダム・スミス(資本主義)→マルクス(共産主義)→ケインズ(修正資本主義)という流れで記述されます。また、80年代以降のレーガン・サッチャー路線の理論的支柱として、ミルトン・フリードマンが記述されることもあります。さらに、国際貿易の「比較優位論」として、リカードが登場します。 
 詳しい記述の資料集を除き、教科書で登場する「経済学者」といえば、基本は上記のとおりです。

アダム・スミスリカードマルクスケインズ→ミルトン・フリードマン
                   ↑
「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」は、上記の流れに従えば、スミスケインズの間、マルクス世代後期に属します。

<理論その1>

 ジェヴォンズはイギリス、ワルラスはフランス、メンガーはオーストリアの経済学者。彼らは①スミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考えにもとづき、②市場経済の効率性を厳密に証明する理論を作り上げた。

①スミスの労働価値説とは異なり、主観的な効用が価値を決定するという考え

 モノには「価格」があります。その価格=価値はどのようについているのでしょう。スミスやリカードらの古典派は、モノの価格=価値は、そこに投入された労働量の大きさで決まると考えました。

 クギを作るのに10分、トンカチを作るのに20分かかるとすれば、交換比率は、釘1:トンカチ2、価格=価値は、1対2になる。これが労働価値説です。

 これは、労働投入(時間をかけてモノ作り)すれば、価格=価値が決まると言う理論です。
 ですが、次のような事例を説明できません。世の中には、どんなに時間と労力と手間隙(+資本=カネ)をかけても、「売れない=低価値=低価格」の商品があります。不人気商品です。

 昔、ビデオで、「ベータ方式」と、「VHS方式」というのがありました。ソニーが前者を生産し、東芝が後者を生産しました。ですが、「ベータ方式」は、結局売れずに、今ビデオでは「VHS方式」のものしか、残っていません。「ベータ方式」は、ソニーが莫大な労力と時間と資本(カネ)を投入しましたが、結局「価格=価値」は生まなかったのです。

 最近では、DVDで、東芝陣営「HD方式」と、パナソニック陣営「ブルーレイ方式」が覇権を競っていましたが、前者が市場から撤退しました。

 「労働投入(時間をかけてモノ作り)すれば、価格=価値が決まると言う理論」では説明がつかないのです。

 さらに、有名な例としては、アダム・スミスの例示した「水とダイヤモンド」があります。水は、価値が高い(絶対に必要なモノ)なのに「価格」がつかず、ダイヤモンドは価値が低い(装飾品だから、別になくても生活には影響がない)のに、「高価」です。

 これに対し、 「ジェヴォンズ・ワルラス・メンガー」は、需要と供給で価格=価値が決まると考えました。需要>供給であれば、そのモノは、希少価値があり、価格が高くなる。反対に 需要<供給であれば、モノがあふれており、価格が低くなると。

需給曲線 清水書院 新政治・経済 p93
需給曲線 清水書院 新政治・経済 p93 平成21年 三版.jpg

 水は需要<供給なので、「0円」です。ダイヤモンドは需要>供給なので、「高価」です。人気=価値があるならば、価格は高く、不人気=価値がないならば、価格は低くなります。

 これを、彼らは「限界効用」という考え方で説明します。

 夏の暑い日、のどが渇いているときに、冷えた1杯の水、コーラ、ビールをごちそうになると、効用=満足度は非常に高いです。ですが、1杯目はともかく、2杯、3杯・・・10杯となると、1杯目の効用=満足度より、9杯⇒10杯目の効用=満足度は落ちることでしょう。いくら、コーラやビールが好きでも、20杯、30杯は飲めません。

 一方、ダイヤモンドを1個もらうと、効用=満足度は高いです。ダイヤの場合、20個、30個ともらっても、その効用=満足度は変わりません。もらえばもらえるだけ「ありがたい」はずです。

 「限界効用」とは、「追加の1個(1杯)」をもらった時の「効用=満足度」のことです。水は「追加の1個(1杯)」につれ、「効用=満足度」が低下し、ダイヤモンドは、「追加の1個」になっても、「効用=満足度」が落ちません。ですから、ダイヤモンドは「価値=価格」が高いのだと。

 しかも価値を決めるのは「主観」です。ダイヤモンドにまったく興味がない人にとって、ダイヤモンドをいくらもらっても、「無価値」です。それよりも、「1本の花」や、「おいしいチョコレート」をもらったほうが高い「価値」を感じる人がいます。「花よりダンゴ」と言う人もいます。不思議な世界です。

 この考え方「限界効用」は、のちに経済学史上「限界革命」と言われるほど、経済学に影響を与えました

その2に続く

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教科書の間違い ホッブズ

<教科書の間違い ホッブズ>

帝国書院『高校生の新現代社会』H20.2.10 p98
 イギリスのホッブズは、国家や社会が成立する以前の状態を、「万人の万人に対する闘争」である自然状態とし、自分たちの生命や財産を守るために全員で契約を結んで、自然権を統治者(国王)にゆだねるべきだという社会契約説を唱えました。
   ↓
帝国書院『高校生の新現代社会』平成23年版 
 ホッブズは、国家や社会が成立する以前の状態を、「万人の万人に対する闘争」である自然状態とし、自分たちの生命や財産を守るために全員で契約を結んで、自然権を統治者(国王)にゆだねるべきだという社会契約説を唱えました。

 帝国書院は、間違いを指摘しても、堂々と乗せ続けていますね。ただし、来年度からは見直す予定だそうです。


帝国書院『アクセス現代社会2009』H21.2.25 
・闘争を避けるために自然権を国王に譲渡する契約を結ぶ
国王に絶対服従

とうほう『政治・経済 資料2009』2009年度見本 p15
・国民は自然権を委譲した統治者(国王)に服従

東京書籍『政治・経済』H20年2月10日 p8
…各人の自然権を主権者(君主)に委譲し…

桐原書店『新政治経済 改訂版』H20.2.28 p9
…絶対主権者を認めたので、絶対王政を擁護


 トマス・ホッブズ(1588-1679)は、イギリスの哲学者、政治思想家です。『リヴァイアサン』という著書の、「万人の万人に対する闘争」という言葉がひじょうに有名です。

1640年 ピューリタン革命
1651年 『リヴァイアサン』
1660年 王政復古(チャールズ2世)
1688年 名誉革命


ホッブズ『リヴァイアサン』水田洋訳 岩波文庫 1992 第1巻 p210-211
 これによって明らかなのは、人々が、彼ら全てを威圧しておく共通の権力なしに生活しているときには、彼らは戦争状態と呼ばれる状態にあり、そういう戦争は万人の万人に対する闘争だということである。


 彼は、人間は、古代哲学者アリストテレスが言う「人間はポリス的動物(政治的動物)」、つまり生まれながらにして、社会的な存在だとはみなしません。アリストテレスの見解は、「人間は~である」という「事実論」ではなく、「べき論」だと言うのです。人間は、一人一人、自然権を持っているのです。

『リヴァイアサン』第1巻p216
自然権とは、各人が自分自身の自然すなわち生命を維持するために、自分の力を自分が欲するように用いるよう各人が持っている自由である


その自然権を行使すると、「万人の万人に対する闘争」状態になります。ホッブズはこういいます。

『リヴァイアサン』第1巻p212
 こうしたことを考慮したことのない人にとっては、自然が人々をこのように分裂させ、相互に侵入し、滅ぼし合わせるということは、不思議に思われるかもしれない。…その人に自分のことについて次のことを考察させよう。…眠るときには扉に鍵をかけ、家にいるときでさえ自分の金庫に鍵をかけるだろう。しかも、自分に対してなされるだろう全ての侵害に復讐するための法があり、武装した役人がいることも知っている場合でもそうするのである。


 確かに、「どろぼう」『犯罪者』は世の中に絶えたことはありません。ですから、

『リヴァイアサン』第2巻p33
被造物(筆者注:人間)を外国人の侵入や互いの侵害から防衛し、そうして彼らを守…るための唯一の道は、彼らのすべての権力と、強さを一人の人間または人々の一つの合議体に与えることであって、そうして多数者意見によって彼らすべての意思を一つの意思とするのである。


 といって、一人一人の持つ自然権を、国家に譲り渡すのです。あとは、強大な権力を持つ国家に安全を保障してもらえばよいことになります。『リヴァイアサン(聖書に出てくる怪物』という国家にです。

 ただし、

東京書籍『政治・経済』H20年2月10日 p8
…各人の自然権を主権者(君主)に委譲し


 ではありません。「一人の人間または人々の一つの合議体」に譲るのであって、君主だけを念頭においてはいないのです。「共和国政府」でも良いのです。


<ホッブズは絶対王政を擁護?当時の王党派は、ホッブズを総スカン>

桐原書店『新政治経済 改訂版』H20.2.28 p9
…絶対主権者を認めたので、絶対王政を擁護


リチャード・タック『トマス・ホッブズ』田中浩・重森臣広訳 未来社 1995 p60-61
「実に『リヴァイアサン』において重要な意味を持ち、『リヴァイアサン』執筆の理由を示す箇所は今日の読者がほとんど読むことのない第三部と第四部(注:共和国よりの考え方だった)の議論だったのである。(略)『リヴァイアサン』の内容がどのようなものであるかを知って以後、王党派の旧友たちは、もはやホッブズと接触しようとはせず、『無神論』『異端』『背教者』といって非難を浴びせ始めた


『リヴァイアサン』はフランス亡命中に書かれました。帰国後も、彼の思想は無神論とみなされ、禁圧されたのです。

 強大な権力を持つ国家は、「キリスト教会」よりも上に立つとされたのですから、「王政を擁護」したとは、みなされていなかったのです。

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<教科書の間違い>教育出版『政治・経済 明日を見つめて』H20.1.20 見本

<教科書の間違い>

教育出版『政治・経済 明日を見つめて』H20.1.20 見本

国際収支表 センター試験.jpg


 この表を理解するには、下記のような国際収支表の全体像を覚えれば、一発です。考える必要もありません

2009年 国際収支表

 だから、センター試験のすべての項目を足すと、0になるのです。
ブログカテゴリー「国際収支表」 、教科書の間違い「国際収支表」参照

黒字が減れば、赤字も減り、赤字が増えれば、黒字も増えます。

 ところが、教科書は、間違ってはいないものの、的を射てない説明を繰り返します。その説明では、

経常(貿易)黒字資本収支赤字
経常(貿易)赤字
=資本収支黒字

という、大原則を理解できない生徒~大人が育ちます。その大人が記事を書くと、

日経H22.2.2『韓国1年ぶり貿易赤字に』
…1月の輸出入動向によると、貿易収支が4億7000万ドルの赤字となった。赤字は昨年1月以来1年ぶり。半導体の製造設備や自動車部品などの輸入が大幅に増えたのが響いた

日経H22.2.6『中国経常黒字昨年は35%減』
…経常黒字は前年を35%下回る2841億ドルだった。世界的な金融危機を受けた貿易黒字の縮小が響いた


と、「黒字が減るのはまずい」と書いてしまいます。

週間ダイヤモンド2010.3.27 p61
経常収支=資本収支.jpg

東大生でも、正答率は11.8%です。高校時代に、「政治経済」や「現代社会」で教えられていないんですね。


教育出版『政治・経済 明日を見つめて』H20.1.20 p127

 国際収支統計は、大きく経常収支と資本収支の二つに分けられる。
まず、経常収支は、第一に輸出から輸入を差し引いた貿易収支に,輸送・旅行などの取引を示すサービス収支を合わせた貿易・サービス収支、第二に雇用者の賃金や投資収益の取り引きを示す所得収支、第三に無償援助や国際機構への拠出金などを含む経常移転収支の三つに分かれる。
 次に資本収支は、第一に直接投資や証券投資を含む投資収支、第二にODAなどの援助を含むその他資本収支の二つに分かれる。
 国際収支が黒字ならば外貨準備高は増加し、赤字ならば減少する。

国際収支 教育出版.jpg


国際収支が黒字ならば外貨準備高は増加し、赤字ならば減少する。教科書の説明だと、次のようになります。
国際収支 教育出版 説明.jpg

 増加なのに、外貨準備は(マイナス=△)で記されます赤字なのに(+)で記されます

高校生に理解できるとは思えません(教えている教師もですが・・)。それを、このようにしたら、一発で理解できます。

教科書と同じ2004年(誤差あり)
国際収支表 教育出版 2004年.jpg

大切なのは、以下の仕組みです。

経常(貿易)黒字資本収支(資本収支・外貨準備増減・誤差脱漏)赤字

経常(貿易)赤字=資本収支(資本収支・外貨準備増減・誤差脱漏)黒字

 国際収支表は、「モノ・サービス」取引額が、「カネ」取引額に、同時に記載される「複式簿記」で記入されています。上の表で、「車輸出=100万円プラス」と、経常収支欄に記載されれば、「代金(預金証書)輸入=100万△」と、資本(カネ)欄に記載されるのです。

ですから,「モノ・サービス」取引額=「カネ」取引額になります。センター試験のすべての項目を足すと、「0円」になるのは、こういうわけです。

 さらに、資本(カネ)欄のプラス=黒字は、「日本円増」のことです。赤字=マイナス△は、「日本円減→外貨増」のことです。日本円が減るので、マイナス△で示します。

 これが「国際収支表」です。「黒字が増えれば赤字が増え、黒字が減れば赤字も減る」ということがわかれば、 「貿易黒字はもうけ」などと誤解することはありません

「貿易黒字=外貨増」のことです。 「貿易赤字=外貨流入」のことです。 「損とか得」ではないことがわかります。
 
教科書記述は、できるだけ簡潔に、本質を伝えることが求められます。

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