高橋洋一 嘉悦大
高橋洋一(嘉悦大学教授)。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010

p83~
130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。
…これはほとんどがアメリカ国債なので、実は100兆円の借金をして外債投資をしているのと同じことです。
…日本政府は日本円で100兆円を国民から調達してそのお金で外国債を買っているのです。その中身はほとんどアメリカ国債です。
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
p120~
これまでの説明でわかる通り、自由主義経済の建前からも不適当なものであり、実効性も疑われているのに、なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
<国際収支表は、バランスシート>
上記のように、外貨準備について述べているのですが、その外貨準備がどのように増減するかという、「国際収支表」について、この本では扱われていません。
おそらく、この先生は、バランスシート「国際収支表」について、理解していません。 「ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです」とか、「少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません」などの記述をしていることからも、分かります。
p51
経理や簿記を学校で学んだ経験はありませんが、現物のバランスシートを見た経験では人には負けるつもりはありません。
<国際収支表とは>
国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている
モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2009年の日本は

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。
例ア
日本の自動車会社が,車をアメリカに輸出します。代金は,10万円です。
自動車の輸出→財(モノ)の欄→貸し方(+)ア10
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)ア10
例イ
日本の輸入会社がアメリカの航空機を使い,代金を払う。代金は5万円です。
輸送サービス輸入→サービスの欄 →借り方(-)イ5
預金証書輸出 →その他投資の欄→貸し方(+)イ5
例ウ
日本が,地震に際し,食料援助を受けました。感謝状を輸出します。代金は3万円です。
食料の輸入 →財(モノ)の欄→借り方(-)ウ3
感謝状の輸出→経常移転の欄→貸し方 (+)ウ3
例エ
日本企業が,タイに子会社を作るため,子会社の株を買い,代金をタイの銀行に振り込みます。代金は2万円です。
株券の輸入 →直接投資の欄 →借り方(-)エ2
預金証書の輸出→その他投資の欄→貸し方(+)エ2
例オ
イギリスの投資家が,日本企業の株を購入します。代金は4万円です。
株券の輸出 → 証券投資の欄→貸し方(+)オ4
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)オ4
例カ
日銀が,民間銀行との間で,円売り・ドル買いをします。金額は1万円です。
日銀のドル輸入円輸出 →準備資産の欄 →借り方(-)カ1
民間銀行のドル輸出円輸入→その他投資の欄→貸し方(+)カ1

上記の表で、経常収支+5=資本収支-5になります。
「経常勘定(かんじょう)」の欄に記載された取引きは,経常移転収支(お金の無償援助)を除いて,資本勘定の欄に記載されるということです。つまり,経常収支+は,資本収支-に記載され,経常収支-は,資本収支+に記載されるのです。
正しい見方は,「国際収支表は,複式簿記で,プラス・マイナスが同時に記入される。だから,経常収支黒字ならば,資本収支赤字(経常収支赤字=資本収支黒字)になる」というものです。
その結果,「経常収支+資本収支(外貨増減・誤差脱漏含む)=0」に,必ずなります。
国際収支=0= 経常収支 + 資本収支
<外貨準備とは>
外貨準備とは何かです。

ウィキペディアより 図も
外貨準備(がいかじゅんび foreign reserve)とは、中央銀行あるいは中央政府等の金融当局が外貨を保持すること。保持している外貨の量を外貨準備高(がいかじゅんびだか)という。
円高を阻止するために、当局が「円売り・ドル買い」をした結果が、外貨準備高になります。 日本は、2003年~2004年にかけて、32兆8694円の為替介入を行いました。また、2010年にも野田財務大臣の元で、円高を回避するために、為替介入を行いました。

大規模な介入は2003年04年です。ですが、その後毎年「外貨準備」が増えるのは、その外貨=簡単に言えばドルを、証券や預金で運用するから(結果論)です。ドルをどこに持つかですが、日銀の金庫には保管しません。外国債や銀行口座に置くことになります。これが1,096,185百万ドルですから、黙っていても、利子を生みます。為替介入をしなくても、外貨残高はどんどん増えるのです。
以下、外貨準備の内訳です。
平成23年1月11日 財務省
平成22年12月末における我が国の外貨準備高は、1,096,185百万ドルとなり、平成22年11月末と比べ、4,846百万ドル減少した。
減少する場合もあります。円高・ドル安になれば、見掛け上、円建てでは減少しますし、保有する外債・金(ゴールド)が価格下落すると、外貨準備高は減少します。

これが、日本の「対外純資産」の一部を構成します。日本の約260兆円の対外純資産のうち、外貨準備は約100兆円を占めます。

<外貨準備は、増える>
なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
理由は、本人が述べています。
130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
あの、無くなることはありません。増える一方です。
「外国の国債を購入」は、国際収支表では、「外貨準備」になります。日本政府(日銀)のドル・ユーロのことです。110兆1031億円の外貨準備のうち、1,02兆6,365億円が、証券(外国債)になっています(22年 財務省)。
ドル札や、ユーロ紙幣をそのまま持っていても意味がありませんので、債券で運用します。この債券は、当然配当・利息を生みます。100兆円ですから、3%でも3兆円になります。22年度予算ベースでは、2兆5759億円分になりました。(財務省HP外国為替資金特別会計)これが「埋蔵金」とか称され、23年度一般会計予算に組み込まれたのは、新しいところです。
で、これが日本にとって、儲けかどうかです。
『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』p79

日本が、2003年~04年に32兆8694円の為替介入を行いました。その際、政府は「政府短期証券」を発行し、市場から「円」を調達し、その円を「外為市場」で売ります。
短期証券ですから、利息を払います。一方、外債も利息を生みます。短期証券利払い<外債利息であれば、日本の資産は増えることになります。
日経H23.2.21

このように、外国債の長期利率は、日本より高いのです。日本より、外国債で運用した方が、日本の「対外資産=純資産」を増やすことになります。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010

p83~
130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。
…これはほとんどがアメリカ国債なので、実は100兆円の借金をして外債投資をしているのと同じことです。
…日本政府は日本円で100兆円を国民から調達してそのお金で外国債を買っているのです。その中身はほとんどアメリカ国債です。
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
p120~
これまでの説明でわかる通り、自由主義経済の建前からも不適当なものであり、実効性も疑われているのに、なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
<国際収支表は、バランスシート>
上記のように、外貨準備について述べているのですが、その外貨準備がどのように増減するかという、「国際収支表」について、この本では扱われていません。
おそらく、この先生は、バランスシート「国際収支表」について、理解していません。 「ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです」とか、「少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません」などの記述をしていることからも、分かります。
p51
経理や簿記を学校で学んだ経験はありませんが、現物のバランスシートを見た経験では人には負けるつもりはありません。
<国際収支表とは>
国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている
モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2009年の日本は

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。
例ア
日本の自動車会社が,車をアメリカに輸出します。代金は,10万円です。
自動車の輸出→財(モノ)の欄→貸し方(+)ア10
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)ア10
例イ
日本の輸入会社がアメリカの航空機を使い,代金を払う。代金は5万円です。
輸送サービス輸入→サービスの欄 →借り方(-)イ5
預金証書輸出 →その他投資の欄→貸し方(+)イ5
例ウ
日本が,地震に際し,食料援助を受けました。感謝状を輸出します。代金は3万円です。
食料の輸入 →財(モノ)の欄→借り方(-)ウ3
感謝状の輸出→経常移転の欄→貸し方 (+)ウ3
例エ
日本企業が,タイに子会社を作るため,子会社の株を買い,代金をタイの銀行に振り込みます。代金は2万円です。
株券の輸入 →直接投資の欄 →借り方(-)エ2
預金証書の輸出→その他投資の欄→貸し方(+)エ2
例オ
イギリスの投資家が,日本企業の株を購入します。代金は4万円です。
株券の輸出 → 証券投資の欄→貸し方(+)オ4
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)オ4
例カ
日銀が,民間銀行との間で,円売り・ドル買いをします。金額は1万円です。
日銀のドル輸入円輸出 →準備資産の欄 →借り方(-)カ1
民間銀行のドル輸出円輸入→その他投資の欄→貸し方(+)カ1

上記の表で、経常収支+5=資本収支-5になります。
「経常勘定(かんじょう)」の欄に記載された取引きは,経常移転収支(お金の無償援助)を除いて,資本勘定の欄に記載されるということです。つまり,経常収支+は,資本収支-に記載され,経常収支-は,資本収支+に記載されるのです。
正しい見方は,「国際収支表は,複式簿記で,プラス・マイナスが同時に記入される。だから,経常収支黒字ならば,資本収支赤字(経常収支赤字=資本収支黒字)になる」というものです。
その結果,「経常収支+資本収支(外貨増減・誤差脱漏含む)=0」に,必ずなります。
国際収支=0= 経常収支 + 資本収支
<外貨準備とは>
外貨準備とは何かです。

ウィキペディアより 図も
外貨準備(がいかじゅんび foreign reserve)とは、中央銀行あるいは中央政府等の金融当局が外貨を保持すること。保持している外貨の量を外貨準備高(がいかじゅんびだか)という。
円高を阻止するために、当局が「円売り・ドル買い」をした結果が、外貨準備高になります。 日本は、2003年~2004年にかけて、32兆8694円の為替介入を行いました。また、2010年にも野田財務大臣の元で、円高を回避するために、為替介入を行いました。

大規模な介入は2003年04年です。ですが、その後毎年「外貨準備」が増えるのは、その外貨=簡単に言えばドルを、証券や預金で運用するから(結果論)です。ドルをどこに持つかですが、日銀の金庫には保管しません。外国債や銀行口座に置くことになります。これが1,096,185百万ドルですから、黙っていても、利子を生みます。為替介入をしなくても、外貨残高はどんどん増えるのです。
以下、外貨準備の内訳です。
平成23年1月11日 財務省
平成22年12月末における我が国の外貨準備高は、1,096,185百万ドルとなり、平成22年11月末と比べ、4,846百万ドル減少した。
減少する場合もあります。円高・ドル安になれば、見掛け上、円建てでは減少しますし、保有する外債・金(ゴールド)が価格下落すると、外貨準備高は減少します。

これが、日本の「対外純資産」の一部を構成します。日本の約260兆円の対外純資産のうち、外貨準備は約100兆円を占めます。

<外貨準備は、増える>
なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
理由は、本人が述べています。
130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
あの、無くなることはありません。増える一方です。
「外国の国債を購入」は、国際収支表では、「外貨準備」になります。日本政府(日銀)のドル・ユーロのことです。110兆1031億円の外貨準備のうち、1,02兆6,365億円が、証券(外国債)になっています(22年 財務省)。
ドル札や、ユーロ紙幣をそのまま持っていても意味がありませんので、債券で運用します。この債券は、当然配当・利息を生みます。100兆円ですから、3%でも3兆円になります。22年度予算ベースでは、2兆5759億円分になりました。(財務省HP外国為替資金特別会計)これが「埋蔵金」とか称され、23年度一般会計予算に組み込まれたのは、新しいところです。
で、これが日本にとって、儲けかどうかです。
『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』p79

日本が、2003年~04年に32兆8694円の為替介入を行いました。その際、政府は「政府短期証券」を発行し、市場から「円」を調達し、その円を「外為市場」で売ります。
短期証券ですから、利息を払います。一方、外債も利息を生みます。短期証券利払い<外債利息であれば、日本の資産は増えることになります。
日経H23.2.21

このように、外国債の長期利率は、日本より高いのです。日本より、外国債で運用した方が、日本の「対外資産=純資産」を増やすことになります。
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